これは十分「横断歩行者妨害」(38条1項後段一時停止違反)になりますが、
昼間に警察に捕まりました。
横断歩行者妨害等。
右側に背中を向けて歩いてる人がいたのに止まらなかったから??渡ろうとしているという認識はなく、ドラレコで確認したら振り向いてはいましたが。これで捕まるんですね。9000円です。 pic.twitter.com/2P9CM5BHwb— ゆりまり (@RF1h8JarMh58636) September 12, 2024
要はこれ、右側路側帯を同方向に歩く歩行者が横断する可能性がある以上、「横断しようとする歩行者が明らかにいない」とは言えないため減速接近が求められる。
第三十八条 車両等は、横断歩道に接近する場合には、当該横断歩道を通過する際に当該横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。(後段省略)
そもそも死角がある以上、右側路側帯を同方向に歩く歩行者がいなかったとしても同様に減速接近義務を求められる。
そして横断歩道に到達した歩行者が横断する方向に向いた以上、「横断しようとする歩行者」なので一時停止義務が生じる。
第三十八条
(前段省略)この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。
「横断する歩行者」と「横断しようとする歩行者」があるときには、一時停止&通行妨害禁止。
この場合は一時停止してないので問答無用に一時停止違反が成立する。
ちなみにこの義務、停止線で停止することを求めているので、停止線を過ぎた後には義務がないのではないか?みたいな話をする人もいるのですが、前段にて「当該横断歩道を通過する際に」としていることと、歩行者保護を謳う趣旨から考えると横断歩道を通過し終わるまでの間は義務を負うというのが定説かと。
行政事件では以下判断があります。
原告は、道交法38条1項は、横断歩道等に「接近する」車両等に適用される規定であって、横断歩道上を既に進行中の車両等に適用される規定ではないから、原告車両が本件横断歩道上の進行を開始した後に本件車道の横断を開始した本件被害者は、「横断し、又は横断しようとする歩行者」に当たらないと主張する。
しかしながら、前記(2)で説示したとおり、原告車両と本件被害者は、本件横断歩道上か、又は本件横断歩道に極めて近接した地点で衝突しているのであるから、原告車両が本件横断歩道に接近した時点では、本件被害者は既に本件車道横断を開始していたか、又は横断しようとしていることが明らかな状態にあったことが推認され、これを覆すに足りる証拠はない。また、仮に、上記のような推認が及ばないとしても、横断歩道等によって道路を横断する歩行者等の安全を図るという道交法38条1項の趣旨に照らせば、車両等が横断歩道等を通過中に、その車両等の進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等が現れた場合であっても、例えば歩行者等が急に飛び出してきたなど車両等運転者が注視していても歩行者等の通行を妨げない行動に出ることが困難な場合を除き、車両等運転者は、同項に基づき歩行者等の通行を妨げないようにする義務を負うものというべきである。東京地裁 令和元年12月19日
まあ、冒頭の動画については路側帯を同方向に歩く歩行者の動きに注意して、もうちょい減速しているべきだったというところでしょうか。
ちなみに当該交差点は優先道路がなく左右の見通しが効かない交差点なので、交差点に入ろうとする際はどのみち徐行義務があるので注意。
第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。
※優先道路とは交差点内にセンターラインがある場合。
要は42条の徐行義務と、38条1項前段の減速接近義務が事実上重なるわけで、どのみち徐行する必要がありますがどの程度の徐行なら問題ないのかについては状況次第なのよね。
右側路側帯を歩く歩行者が「横断しようとする歩行者」になる可能性が高い以上、もうちょい減速していたらベターだったのかと。
一時停止義務と通行妨害禁止義務は別要件になってますが、このような規定にしている理由は昭和38年に旧71条3号を改正した経緯をみると分かりやすい。
元々は「横断する歩行者」に対する通行妨害禁止義務しかなかったところ、歩行者に横断歩道に入るきっかけを作るために「横断しようとする歩行者」があるとに一時停止義務を定めたわけでして。
昭和35年 | 昭和38年 | |
対象 | 横断歩道を通行する歩行者 | 道路左側の横断歩道を横断し、又は横断しようとする歩行者 |
義務 | 妨害禁止(一時停止or徐行) | 一時停止かつ妨害禁止 |
なお、本号においては、車両等の運転者に対し、一時停止する義務と歩行者の通行を妨げてはならない義務を並列的に課しているから、車両等の運転者は、およそ歩行者が横断歩道により道路の左側部分を横断し、または横断しようとしているときは、現実にその通行を妨げることになろうとなるまいと、かならず、まずは一時停止しなければならないこととなる。この点従前の本号の規定は、「歩行者が横断歩道を通行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行を妨げないようにすること」と定められ、車両等の運転者に対しては、歩行者の通行を妨げてはならない義務のみが課され、その方法としては、一時停止と徐行が選択的に認められていたから、状況によっては、かならずしも一時停止する必要がなかった。したがって、このような規定によっても、歩行者の保護は理論上は一応図られていたわけであるが、現実の力関係においては、車両等の方が歩行者に比してはるかに強く、歩行者が横断歩道に入るきっかけがなかなかつかめず、結果としてその通行を妨げられることが少なくなかった。そこで昭和38年の道路交通法の一部改正により、本号の規定を現行のように改め、車両等の運転者に対し一時停止の義務を課して歩行者に横断歩道に入るきっかけを作ることにより、その保護の徹底を図ることとしたわけである。
宮崎清文、条解道路交通法 改訂増補版、立花書房、1963(昭和38年)
歩行者妨害になるかならないかは関係なく「横断しようとする歩行者」がいる場合にも一時停止義務を課すことで、歩行者が横断歩道に入るきっかけを作ったのだと説明している。
この手の話って、よくあるのが「妨害してない!」みたいな言い訳。
この件については一時停止違反なので通行妨害があったかなかったかは関係ないし、なぜ一時停止義務を作ったか経緯を知るのが理解が進むかと。
「それは妨害と言えるのか?」みたいな議論になりがちなんだけど、そもそも論点が違う。
「横断歩行者妨害」という言葉に惑わされてなぜ一時停止義務があるのかを考えない人が多いけど、この場合は通行妨害禁止義務違反ではなく一時停止義務違反を取るので、論点が違うのよね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
こんばんは。お世話になります。
例えばなのですが、
横断歩道を自動車で通過中に、近くに歩行者を発見し停止した。
自分の車で横断歩道の大部分を塞いでしまっている。
このまま停止していると歩行者の邪魔になってしまう。
このような場合どうするのが法的には正解になるでしょうか?
ご回答いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。
安全が確認されるまでは発車できません。
要は仕方ないのです。
ご回答ありがとうございます。
横断歩行者のための停止なので横断歩道を塞いでしまっても妨害にはあたらない、という解釈でよいでしょうか?
コメントありがとうございます。
正直なところケースバイケースでして、もっと減速していれば横断歩道を塞がずに停止できたと評価される可能性もあります。
その場合は違反になります。
ご回答ありがとうございます。
なるほど、理解しました。
全く関係ないのですがここにきてコルナゴがリムブレーキモデルを出してきたのは
「おっ」となりました。
リムブレーキ使いとしてはちょっと嬉しくなったりします。
まあ私には完全に手が届きませんが・・・
ありがとうございました。
いえいえ。
コルナゴの意図はさっぱりわかりません…