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あの壁を直すのは「あなた」。

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高校生が無免許運転したわけですが(16歳は免許を取得できない)、

種子島の西之表市でパトカーに追跡されていた車が、フェンスや塀に衝突し、運転していた16歳の男子高校生ら3人がけがをしました。

種子島警察署によりますと、16日午前1時ごろ、鹿児島県西之表市西町の県道で、パトロール中のパトカーの追跡を受けていた貨物自動車=ピックアップトラックが、道路わきのフェンスに衝突後、さらにその近くのブロック塀に衝突しました。

車を運転していた西之表市の16歳の男子高校生と、乗っていた18歳の男性と15歳の少女の3人がいずれも打撲などのけがをして病院に搬送されました。

事故の前、男子高校生が運転する車は赤の点滅信号で一時停止せず、パトカーが赤色灯とサイレンを鳴らしておよそ1キロ追跡していました。

車は男子高校生の親の所有で、無免許運転だった

無免許で一時不停止 パトカー追跡の男子高校生事故 3人けが 鹿児島県西之表市(MBC南日本放送) - Yahoo!ニュース
種子島の西之表市でパトカーに追跡されていた車が、フェンスや塀に衝突し、運転していた16歳の男子高校生ら3人がけがをしました。 種子島警察署によりますと、16日午前1時ごろ、鹿児島県西之表市西町の県

さてこれ。
刑事についてまず考えますが、運転していた男子高校生は無免許運転(道路交通法違反)と同乗者をケガさせた過失運転致傷に問われる。
ここまでは分かりやすい話ですが、16歳の男子高校生は年齢的に免許を持っているはずがないのはよく知られた事実。
当然同乗していた「18歳の男性と15歳の少女」は、運転者が無免許だと知っていたと考えるのが自然なので、無理矢理同乗させられたみたいな事情がなければ無免許運転のほう助に当たるものと考えられます。

 

せっかくなので三人仲良く、無免許運転(ほう助を含む)として処罰されていただければ。
少年事件については家裁送致でしょうけど。

 

次に民事。
思いっきりブロック塀を破壊してますが、この壁を直すのは誰なのでしょうか?

まず、なぜかここで自賠法を持ち出す人がいてビックリしますが、自賠法の対象は人身損害に限定されるので物損については民法の規定による。
当然運転していた男子高校生(16歳)は不法行為責任として「あの壁を直すのはあなた」と認定されます。

 

ところで、何らかの事情により男子高校生(16歳)がきちんと弁償することが期待できない場合、当然任意保険からも支払いがないので「あの壁」の持ち主が泣き寝入りするのでしょうか?

 

所有者「あの壁を直すのはあなた!」
男子高校生「カネないっす…」

 

この場合、無免許運転だと知りながら同乗した2人について共同不法行為責任が認められる可能性もあるため、万が一のときは「あの壁を直すのはあなた」→「あの壁を直すのはオマエラ」に切り替えて弁償してもらうことも考えられる。
無免許運転の高校生が事故ることなんて予見可能なわけで、同乗者に共同不法行為責任が認められる可能性アリ。

 

ちなみに同乗者がケガした点の「人身損害の補填」は、自賠法3条でいう他人とは認められないこともあるので話がややこしい。

無免許運転の代償は、同乗者にも及ぶ。
全員16歳とのことなので、運転者が無免許だと知っていたと見なせるかと。 警察によりますと、岡山市の無職の少年(16)が運転する軽乗用車が右折車と左折車を分ける「交通島」と呼ばれる構造物に衝突したということで、少年は車外に放り出されていた状態...

このアホな事故を取り上げようと思ったのはちょっと理由がありまして。
どこかの弁護士センセイが集まる団体が呟いたツイートがなかなか秀逸で、今は見つからないけどこんな内容でして。

当研究会は自動車事故の勉強会をしています。
東京地裁の裁判官から「物損の請求原因に自賠3条を使うおおらかな訴状が散見されるから、皆さんで勉強会を開いたらいかが?」と言われて発足した団体です。

自賠3条は人身損害に対する賠償責任を規定しているので、物損の請求には使えない。
プロの弁護士センセイでもこんなミスをするわけですが、裁判官の言い方もなんかステキだなと笑。

 

わりとこういうミスは、プロの弁護士センセイでもやらかすらしい。

自賠法3条は運行供用者に対し人身損害を賠償するように定めている。

(自動車損害賠償責任)
第三条
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

運行供用者にはクルマの所有者が含まれることが多いけど、物損の請求には使えないからダメなのよね。

 

事案は全く違いますが、以前挙げたこちら。
民事一審は被告会社に対し自賠3条による人身損害の賠償責任を認めた一方(無過失の立証がない)、物損については過失の立証がないとして民法の賠償責任は否定。

ロードバイクの事故と、本当の原因。
何年か前になりますが、名古屋で先行する時速35キロで進行する大型車に対し、左側の狭いところから時速36キロで追い抜きしたロードバイクが事故に遭った件をご存知でしょうか? こちら。 この事故、民事の判例もあります。 刑事事件の内容 刑事事件の...

わりと民事はややこしいけど、自賠3条は運行供用者が「無過失の立証をしない限り賠償責任を負う」仕組み。
あくまでも被害者保護の観点から立証責任を転嫁しているので、人身損害のみに限定される。

 

プロの弁護士センセイでも「物損に自賠3条!」と主張して裁判所からダメ出しを食らうことがあるらしいけど、民事はかなりややこしい上に難しい。
冒頭の件については、そもそも無免許運転しなけりゃおかしなことにはなってないし、一時停止していればパトカーから停止命令もないし、ましてや停止命令を振り切って逃走した末の事故なので何ら同情の余地はない。
無関係な他人をケガさせなかった分だけマシですが、三人仲良く刑事事件として扱ってもらうのが良さそうですね。

 

あの壁を直すのはあなた方なんですよ。
基本的には運転者、万が一のときは共同不法行為責任を発動させる手も。

 

ちなみに同乗者について共同運行供用者と認定され、他人性を主張することはできないとした判例も。
このあたりは様々な事情によって左右されるので、必ずこうなるとは言えませんが。

 

事案ですが、Xが親の目を盗んで借りたクルマを無免許で運転し事故を起こし、同乗者Aが死亡
Aの両親がXとY(Xの親)に対し民法709条により損害賠償請求を、さらにクルマの所有者Zに対し自賠法3条により損害賠償請求したもの。

 

ややこしいので整理します。

人物 内容 裁判の立場
Z クルマの所有者で、Yにクルマを貸していた 被告(自賠3)
Y 無免許運転したXの親で、クルマの管理をしていた 被告(民709)
X(16歳) 親の目を盗んでクルマを借り無免許運転して自損事故を起こした 被告(民709)
A(16歳) 無免許運転したXの助手席に座り、自損事故により死亡した 親が原告

前記認定事実によれば、被告Zは、本件車両の保有者として、自賠法3条の運行供用者と認められる余地がある。
ところが、前記事実関係によれば、亡Aは、本件事故当時、中学時代の同級生である被告達の誘いに応じて、無免許である同被告の運転する車両に同乗したのみならず、本件車両の持ち出しの際には運転席に乗り込んでこれを容易にしたり、石持漁港からは自らも無免許で本件車両を運転し、その後、自己の携帯電話に電話がかかってきたことから、再び被告達に運転を替わってもらったのである。このような事情からすれば、亡Aは、被告達とともに、本件車両の共同運行供用者の地位にあったものと認められる。
一方、証拠によれば、被告Zは、平成12年5月に本件車両を被告Yに預けて以降はこれを使用することもなく、被告Yにその管理に委ねていたものと認められる。

このような事実関係からすると、被告Zが本件車両の運行供用者にあたるとしても、同被告の本件車両の運行に対する支配は、間接的、潜在的、抽象的であるのに対し、亡Aの運行支配は、はるかに直接的、顕在的、具体的であり、このような場合、亡Aやその相続人である原告らが、被告Zに対し、自賠法3条の他人であることを主張して同条による損害賠償を請求することは許されないというべきである。

青森地裁 平成14年7月31日

自賠法の請求ができなくても、運転者に不法行為責任(民法709)を求めるので全く受け取れないわけではないにせよ、無免許だと知りながら同乗したならだいぶ過失相殺…
青森地裁の事案については、クルマの所有者に対する自賠法の賠償責任を否定したものの、運転者と親については民法上の賠償責任を認めた(ただし4割の過失相殺)。

亡Aは、被告達による無免許運転行為に積極的に加担して危険の発生に寄与し、また、同被告による無謀で危険な運転を容認していたものといわざるを得ず、本件事故の発生については相当の帰責性があるといわなければならない。したがって、過失相殺の規定を類推し、原告らに生じた損害からその4割を減額するのが相当である。

無免許運転って、知りながら同乗すると刑事の処罰対象にもなるし、事故になればさらにややこしい。
学校のセンセイに説教レベルで済まない話ですが、そういう知識もなけりゃ考えたこともないからこうなるのかと。

なお、以前どこかで書いたように交通事故の後に自力で裁判することをオススメしない理由の一つは、物損の請求原因に「自賠3条!」みたいなおかしな間違いをしやすいこと。
過失割合云々以前の間違いをするわけで、オススメしない。

コメント

  1. あああ より:

    和田アキ子かっ!

    ※突っ込めと言われた気がしたので・・・

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