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「追い抜き目的」でも右側通行はムリ。

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こちらの続き。

追い越しか追い抜きかは、論点ではない。
イエローのセンターラインは「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」と名前がついてますが、 勘違いしてる人が多いけど、自転車は左端しか走行できないので、車は追い越しはしていない。側方通過扱いになるので、イエローラインを超えて、間隔さえ開けれ...

「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」という名前に引っ張られて「追い抜き目的の右側はみ出しはOK」と勘違いする人もいますが、

管理人
管理人
左側通行の除外(17条5項)には「追い抜き目的での右側通行」がない。
追い抜き目的の右側通行はそもそも禁止です…

なので追い越しなのか追い抜きなのかは何の関係もない。

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追い越しと追い抜きの違い

追い越しの定義はこれ。

二十一 追越し
車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。

解釈はこうなる。

条文 解釈
他の車両等に追い付いた場合 26条でいう車間距離に迫った状態
進路を変えて 「進路」=車体幅。道路進行方向に対し車両が進行方向を変えること
側方を通過 同一道路上で先行車の横を通過
前に出る 先行車の前に出た状態だが、車体全てが前に出る必要はない

「追い付いた」=26条でいう車間距離に迫った状態を意味するので、①は「追い付いた」。


しかし②は追い付いてない。

違う進路にいるので、これは「追い付いた」には当たらないことになる。
そして理屈の上では、追い付いてないけど自転車との側方間隔を取るために進路変更するケースもあって

これも「追い越し」ではなく「追い抜き」になる。
これが追い越しだろうと追い抜きだろうと、どのみち17条5項で許されてないのだから関係ないのよね。

 

ちなみに追い付く前に進路変更した場合も追い抜きになる。

これが追い付く前に進路変更したから追い越しではないとしても、そもそも追い抜きのために右側通行することは許されてないのだから、関係ない。

 

イエローライン(17条5項4号)と追い越し禁止(30条)を分けている理由については、「実務に直結した新交通違反措置要領」に詳しく書いてありますが、どちらも規制趣旨は「対向車との衝突防止」だそうな。
複雑な経緯から分けたことになりますが、これを読むとますます疑問なのは、要はイエローラインを安易に使いすぎなんじゃないかということ。

もともと車両が追越しをする場合、道路の右側部分にはみ出して行われるもの(甲の態様)と道路の左側部分のみで行われるもの(乙の態様)とがある。

乙の態様の追越しは、甲の態様の追越しに比べて危険度が低いことから昭和46年6月改正以前は、法30条の法定追越し禁止のみで一応十分であると考えられていた。
したがって法30条の規定に基づく公安委員会の追越し規制は、危険度の高い右側部分へのはみ出しによる対向車との衝突を防止することを主たる目的として運用してきた。
特に法17条5項4号の「当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合に限る。」という右側へのはみ出しの判断を個々の運転者の判断に委ねることが不適当な場合には、あらかじめ法30条の規定に基づく規制として、右側部分へのはみ出し通行することが危険な場所を追越し禁止場所として指定するという運用を行ってきたため、当該禁止場所において、危険度の低い左側部分での追越しをも一律に禁止するという結果になり、実務上においても追越し禁止の標識に「前車が二輪である場合を除く」という補助標識を付置して、実質的には右側部分へのはみ出しのみを禁止する規制が一部府県において行われていた。
右のような矛盾を解消するため昭和46年6月の改正で
○追越しのための右側部分はみ出し通行禁止(法17条5項4号)
○追越し禁止(法30条)
の2つの態様に分けて規定された。

関東管区警察学校教官室 編、「実務に直結した新交通違反措置要領」、立花書房、1987年9月

「当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合に限る。」という右側へのはみ出しの判断を個々の運転者の判断に委ねることが不適当な場合にイエローラインを使うのが本来の趣旨。
なのでイエローラインは「ここは絶対ダメ」というポイントに絞って使うべき。

 

これは「絶対ダメ」なケースですが、

見通しがいい直線路で何キロもイエローラインを使うと、メリハリがない。

名前に引っ張られない

「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」という名前に引っ張られて「追い越しじゃなく追い抜きだから」という主張をする人は絶えないけど

管理人
管理人
追い抜きのために右側通行することはそもそも禁止です…

名前に引っ張られて中身を見てないパターンが多い。
横断歩行者妨害にしても「妨害してないだろ!」と主張する人が絶えないけど、条文上は妨害しなくても違反が成立する。

横断歩行者妨害の「一時停止」と「通行妨害禁止」を分けている理由。
ちょっと前になりますが、こんなのがありましたよね。 これについて という声がまあまあありました。 条文上はこうなってます。 (横断歩道等における歩行者等の優先) 第三十八条 (前段省略)この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断...

この説明は昭和38年に「横断しようとする歩行者」に「一時停止義務」を作ったときの条解道路交通法(宮崎清文、昭和38年)が詳しい。

 

名前に引っ張られて中身を見てないパターンが多い気がするけど、横断歩行者妨害事案でよくある「妨害してないだろ!」についても、

管理人
管理人
関係ねーよ…
妨害してなくても一時停止義務があるのだから…

論点が違うのよね。

なお、本号においては、車両等の運転者に対し、一時停止する義務と歩行者の通行を妨げてはならない義務を並列的に課しているから、車両等の運転者は、およそ歩行者が横断歩道により道路の左側部分を横断し、または横断しようとしているときは現実にその通行を妨げることになろうとなるまいと、かならず、まずは一時停止しなければならないこととなる。この点従前の本号の規定は、「歩行者が横断歩道を通行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行を妨げないようにすること」と定められ、車両等の運転者に対しては、歩行者の通行を妨げてはならない義務のみが課され、その方法としては、一時停止と徐行が選択的に認められていたから、状況によっては、かならずしも一時停止する必要がなかった。したがって、このような規定によっても、歩行者の保護は理論上は一応図られていたわけであるが、現実の力関係においては、車両等の方が歩行者に比してはるかに強く、歩行者が横断歩道に入るきっかけがなかなかつかめず、結果としてその通行を妨げられることが少なくなかった。そこで昭和38年の道路交通法の一部改正により、本号の規定を現行のように改め、車両等の運転者に対し一時停止の義務を課して歩行者に横断歩道に入るきっかけを作ることにより、その保護の徹底を図ることとしたわけである。

宮崎清文、条解道路交通法 改訂増補版、立花書房、1963(昭和38年)

名前に引っ張られて中身を見てないパターンが多い…
「妨害してないだろ!」については「論点が違うだろ」が正解。

 

ちなみに追い越しか追い抜きかにこだわると、改正18条3項の解釈と盛大に矛盾して発狂することになりそうな気がする。

3 車両(特定小型原動機付自転車等を除く。)は、当該車両と同一の方向に進行している特定小型原動機付自転車等(歩道又は自転車道を通行しているものを除く。)の右側を通過する場合(当該特定小型原動機付自転車等を追い越す場合を除く。)において、当該車両と当該特定小型原動機付自転車等との間に十分な間隔がないときは、当該特定小型原動機付自転車等との間隔に応じた安全な速度で進行しなければならない。

なかなかややこしいけど、きちんと整理しないと盛大に矛盾して発狂する原因になりそう。

 

あとついでに。
38条1項(旧71条3号)の規定が「道路左側」だった昭和38~46年について、

「道路左側を横断しようとする歩行者」は、道路左側+5mだったのか?

という質問を頂いたのですが、すみませんが調べてもよくわかりませんでした。

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