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路側帯も交差点と判断した判例の詳細。交差点通行車両のルールが適用されるか?

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こちらで取り上げた判例について、

従うべき信号がわからない自転車乗りがいる世界は異常。
なかなか興味深い疑問が出てますが、自転車乗りの方、教えてください。路側帯を走行していれば、車道の信号が「赤」でも進んでいいでしたっけ? pic.twitter.com/qgtWHTrpzm— ジークフリート (@xxxSiegfriedxx...
読者様
読者様
記事にある「東京高裁 昭和60年3月18日(刑事)」について詳細を解説してほしいです。

これ自体は過去に記事にしてますが、あらためて争点を整理します。

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路側帯通行車両と交差点優先規定

この判例の事案概要から。

直進大型車が対向右折車に譲った際に、路側帯を時速50キロで通行してきたバイクと衝突した業務上過失致傷事件です。
もちろん被告人は右折車ドライバー。

 

何が問題かというと、路側帯を通行するバイクは通行区分違反ですが、交差点と解釈すれば37条により直進車優先となる。

第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない

まず一審、二審ともに路側帯は交差点の範疇だと確認している。

路側帯が設けられている道路においては、路側帯を含めた道路が交わる部分を交差点ということ、道路交通法37条は路側帯を含む交差点通行車両全体についてその進行上の優先関係を規定していること、同法37条にいう車両等には軽車両を含むこと及び路側帯を通行する車両についても直進車優先が適用されることは原判決の判示するところである。従って、右折車は、路側帯を適法に通行する自転車等の軽車両の直進車の通行を妨げてはならないことは明らかである。

東京高裁 昭和60年3月18日

この解釈は正当かと。
なぜなら、交差点の定義は「歩道と車道の区別があるなら車道」であり「歩道(歩道又は路側帯)と車道の区別があるなら車道」ではないから。

五 交差点 十字路、丁字路その他二以上の道路が交わる場合における当該二以上の道路(歩道と車道の区別のある道路においては、車道)の交わる部分をいう。

道路交通法上、路側帯は交差点の範疇に含まれますね。
つまり路側帯通行車両にも37条による優先権があることになる。

 

次に問題になるのは、通行区分違反を犯して路側帯を通行してきたバイクに優先権があるのか?
これについて東京高裁は、通行区分違反「のみ」を理由に優先権を否定するのは妥当ではないとする。
しかし路側帯の性質上、高速度の車両が通行することが予想されない場所とする。

しかし、路側帯は主として歩行者の通行の用に供するために設けられているもの(ただし、歩行者の通行が禁止されている自動車専用道路の場合を除く。)であって、軽車両だけが、著しく歩行者の通行を妨げることになる場合を除いて、通行を許されているにすぎず、この場合においても軽車両は歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行しなければならないもの(同法17条の2第2項)とされているのである。ところで、路側帯の通行を許された軽車両とは、人又は動物の力により運転する車両に限られる(同法2条1項11号、16条2項)のであって、これらの車両は自動車や原動機付自転車と異なりその性質上低速のものであり、かかる軽車両だけが歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行することを許されているにすぎない路側帯は、本来高速の車両の通行を全く想定していないものと考えられる。もっとも、現実には法律上路側帯の通行を禁止されている原動機付自転車や自動二輪車が路側帯内を通行する事態が時にみられるのであり、このような現実を全く無視することはできないが、このような場合であっても原動機付自転車や自動二輪車の側では適宜速度を調節して進行するのが一般的であり、これらの車両が時速50キロメートルもの高速度で路側帯内を通行することは通常予想されないところといわなければならない。そうすると、このような異常な走行をする直進車については、交差点における直進車優先の規定の適用はなく、右折車はかかる直進車に対してまでその通行を妨げてはならない義務があるものとは解されない。

東京高裁 昭和60年3月18日

路側帯通行車両も37条により優先権があることを確認しつつ、高速度の車両を予見する注意義務はないとしている。

次に被告人の運転方法について。
被告人は路側帯通行2輪車を警戒して時速5、6キロで注意しながら右折した。

右通行余地を自転車、自動二輪車等が進行してくるに備えブレーキペダルに右足をのせ左方を注視しながら時速5、6キロメートルで進行したところ、左斜め前方約12mの地点を対向して進行してくる自動二輪車(以下、被害車両という)を認めて急制動し、被告人車の先端がわずかに路側帯内に入った地点で停止したことが認められるのであって、被告人としては右通行余地を対向して進行してくる車両に対して相当の注意を払っていたものと認められる。そして右の程度の注意を払っていれば、路側帯内を適法に進行してくる歩行者や軽車両は勿論、原動機付自転車や自動二輪車が進行してくる場合であってもそれらが適宜速度を調節して進行してくる限り、それらとの衝突を回避することが十分可能であったと認められる。もっとも、右の程度の注意では被害車両の如く路側帯内を時速50キロメートルもの速度で進行してくる車両との衝突を回避できないけれども、これを以て被告人の過失とみることは相当ではない。すなわち、前説示どおり路側帯は主として歩行者の通行の用に供するために設けられているのであり、例外的に自転車等の軽車両が歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行することが許されているにすぎないのであって、本来高速の車両の通行を全く予定していないのである(以下略)

 

東京高裁 昭和60年3月18日

本来高速度の車両が通行することが予想されない路側帯をあえて高速度進行してきたし、被告人の運転態度には十分注意を払っていたと認められるから無罪。

 

という判例です。
確かこの判例は実例判例集(警察庁交通企画課)に掲載されていたはず。

路側帯通行自転車については

路側帯通行自転車についてですが、例えば一時停止標識に従う義務がある。

理由はシンプルで、路側帯も交差点に含まれる上、停止線がない場合は交差点の直前と指定しているから。

(指定場所における一時停止)
第四十三条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。

交差点の範囲はここ。

なお、道路交通法2条5号にいう道路の交わる部分とは、本件のように、車道と車道とが交わる十字路の四つかどに、いわゆるすみ切りがある場合には、各車道の両側のすみ切り部分の始端を結ぶ線によつて囲まれた部分――別紙図面斜線部分――をいうものと解するのが相当である。

最高裁判所第三小法廷  昭和43年12月24日

そのほか、路側帯通行自転車であっても見通しがきかない交差点の徐行義務(42条1号)や信号遵守(施行令2条)、各種優先規定は当然適用される。

 

けどこれを見ると、ビックリするような珍説が大量発生しているでしょ。

道路交通法を理解してない、道路交通法を都合よく解釈しておかしな脳内法を創作するのはウッディタモリ氏に限った問題ではなく、一部の自転車乗りも同様なのよ。

 

法にきちんと規定されているのに、「根拠はない」と主張する人や

施行令2条の「備考1号」には停止線がない場合は交差点の直前と書いてあるにもかかわらず、都合よく切り抜きして誤認を誘う手口のしょうもない人や、

信号の種類 信号の意味
青色の灯火 三 多通行帯道路等通行原動機付自転車及び軽車両は、直進(右折しようとして右折する地点まで直進し、その地点において右折することを含む。青色の灯火の矢印の項を除き、以下この条において同じ。)をし、又は左折することができること。
赤色の灯火 二 車両等は、停止位置を越えて進行してはならないこと。

備考 この表において「停止位置」とは、次に掲げる位置(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前)をいう。
一 交差点(交差点の直近に横断歩道等がある場合においては、その横断歩道等の外側までの道路の部分を含む。以下この表において同じ。)の手前の場所にあつては、交差点の直前

何ら法律根拠がない独自説を唱える人など。

そもそも「車道の信号」ではなく「交差点の信号」だし、前提もメチャクチャ。

 

ウッディタモリがおかしな道路交通法を大量発表していたけど、都合よく解釈するのは一部の自転車乗りも同じなのよね。
ウッディタモリのようなレベルだとブロックしてしまうのが正解ですが、こういうヤカラについても同じなのよね。
都合よく解釈するだけで正しい解釈とは無縁だし、間違いに気づいても訂正するより論点すり替えに走るだけなので、議論する価値がない。

コメント

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