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他の車両に「追い付く」とは?

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なんか凄まじい解説をしている動画をみて驚愕したのですが、法27条でいう「追いついた」「追いつかれた」について。

 

「追いついた」とはこうではなくて、

左右に並んだ状態が「追いついた」なのだと解説する人がいる。

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「追い付く」とはなにか?

素人さんの珍説を信じる前に、専門書を確認しましょう。

 

◯注解道路交通法

道路交通法を作った宮崎氏によると、27条でいう「追いついた」「追いつかれた」は法2条21号の解説と同じとしている。
では法2条21号の解釈。

「他の車両等に追いつく」とは、車両等が、その前方にある車両等に対し、第26条に規定する必要な距離にまで接近したことをいう。

宮崎清文、注解道路交通法、立花書房、1966

26条は車間距離保持の義務ですが、下記表現から前後関係であることはいうまでもない。

(車間距離の保持)
第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

◯最新道路交通法事典

「追いついた」とは

法26条にいう「必要な距離」にまで接近することである(同旨 横井・木宮54ページ、宮崎144ページ)

東京地方検察庁交通部研究会、最新道路交通法事典、東京法令出版、1974

ぶっちゃけた話この解釈は全解説書共通でして、法27条における「追いついた」「追いつかれた」とは前後関係。

 

なお、「追いついた」「追いつかれた」を左右に並んだ状態と解釈した場合には、法2条1項21号や31条が解釈不能に陥る。

二十一 追越し 車両が他の車両等に追い付いた場合においてその進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。
(停車中の路面電車がある場合の停止又は徐行)
第三十一条 車両は、乗客の乗降のため停車中の路面電車に追いついたときは、当該路面電車の乗客が乗降を終わり、又は当該路面電車から降りた者で当該車両の前方において当該路面電車の左側を横断し、若しくは横断しようとしているものがいなくなるまで、当該路面電車の後方で停止しなければならない

並んだ状態を「追いついた」としたら、31条なんてどう解釈するのかさっぱりわからない。

ところで

追いつかれた車両の義務を考えるときは、そもそもこの規定はなんのためにあるのか考えないまま文理解釈を始めて失敗する人が多い。
追いつかれた車両の義務における「安全」と「円滑」とは何を目的としてますか?に答えられる人は少ないし、その真意は道路取締令(大正時代)、少なくとも道路交通取締法(昭和22年)から考えないとわからないと思う。

 

ところで、追いつかれた車両の義務は昭和35~39年までは「進路を譲る義務」というタイトルになってました。
この規定についてはこのような国会答弁がある。

第34回国会 衆議院 地方行政委員会 第30号 昭和35年5月16日

○太田委員 二十七条の進路を譲る義務についてお話がありましたので、ついでにお尋ねをしておきますが、なるほど大都市は大体そうだろうと思いますが、この進路を譲る義務は、普通の自動車の場合は、最高速度によって、速度の早いものが先に行く、こういうことになるわけです。そういう点につきまして二十七条は、そういうものに追いつかれた場合はいかなる場合でもスピードのおそいものはよけなければならない、左に避けなければならないというのは原則としてはよろしいですが、非常に交通のラッシュのひんぱんなところにおきましては、左に曲がることによって、かえって左から来る車に接触するという危険があるのであってこの運用はしゃくし定木にならないように、事故を防止するという点からいって、あるいは運転手同士の間に、なぜ左に寄らないか、道路交通法があるじゃないかということでけんかになって、妙な秩序の紊乱が起きないように気をつけていただく必要があると思いますが、その点はいかがでしょうか。

○内海説明員 確かにお説の点はございまして、二十七条は道路交通の場合における一般的な規定をいたしましたので、これを確保いたしますためには、一方において通行区分帯を設ける、あるいは道路の整備をはかるということで、この原則が十分活用できるように措置していかなければならないわけでありますが、道路の実態によりましては、二十七条が厳格に適用されるとかえって混乱を生ずることもありますので、そういう点につきましては、その実情に応じて運転手の措置を是認する、あるいは実情に応じて警察官がそういう面に対する指導をしていく、そして結果的に事故が起きたりあるいは混乱が起きないようにしていくというふうな措置はとっておかなければならないと思います

道路交通法は安全と円滑を目的としてますが、27条を厳格に励行することが必ずしも安全でも円滑でもなく、むしろ事故リスクを上げることすらある。
その観点を無視して法を厳格に適用する必要なんてないわけで、いきなり文理解釈してごちゃごちゃいう人に欠けているのはそういうところなのよ。

 

さて、追いつかれた車両の義務における「安全」とは、何に対するリスクを回避しようとしているのでしょうか?
これを理解するには、道路交通法以前の同様規定とその解釈を確認しないとわからないと思う。

 

たまに「追いつかれた車両の義務は、中速車、高速車などの分類があった時代の名残」みたいに説明する人もいるけど、それは誤り。
なぜなら、その概念かなかった時代から進路避譲義務は存在したのよね。

 

◯道路取締令(大正9年)

第五條 牛、馬、諸車等前方ニ在ル者ヲ追越ス場合ハ止ムヲ得サルトキヲ除クノ外前者ハ左方ニ避ケ後者ハ其ノ右方ヲ通過スヘシ
2 前項ノ場合ニ於テハ後者ニ於テ音響器ヲ鳴ラシ又ハ掛聲其ノ他ノ合圖ヲ爲シ前者ノ避クルヲ待チテ進行スヘシ

これが現行27条2項の原型です。

 

さて、今回も答えは書きませんので気になる人はまず自分で調べましょう。
中速車、高速車などの分類はだいぶ後になってから登場したもの。

 

ちなみに「追いついた」「追いつかれた」は前後の「進路」が重なっていることが条件。

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