最近になってマスコミも「小児用の車と認められる自転車は、道路交通法上は歩行者」だと報道して多少認知された気がしますが、

警察庁は古い通達で6歳未満、16インチ以下、時速8キロ程度までなら小児用の車(歩行者)としてますが、実態としては不明瞭。
今回の事案は7歳が乗る自転車が横断歩道ではねられた事故です。
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7歳が乗るマウンテンバイク
判例は名古屋地裁 平成25年3月12日。
事故の概要。
一灯式信号がある交通整理されてない交差点で、被害者は7歳マウンテンバイク(身長120センチ)。
南北道路を南進し横断歩道を通行中に、東西道路を西進していた加害車両と衝突。
被害者側は「赤点滅」、加害者側は「黄点滅」。
過失割合の争点は、被害者を「小児用の車」(歩行者)と認めるか?
被害者側は無過失の衝突ですが、仮に無過失ではないとしても加害者側に著しい前方不注視があるとして「過失修正30%」を主張。
加害者側は「被害者40%:加害者60%」から児童修正して被害者30%とすべきと主張している。
要は被害者を小児用の車と認めたなら歩行者扱いなので無過失になるし、自転車扱いであれば被害者側が赤点滅なので「一時停止規制側」になる。
で。
以前も複数の事例を取り上げてますが、小児用の車と認められたケースはほとんどないのが実情。
私が知る限り、4才11ヶ月が乗る補助輪付き自転車を小児用の車と認めた東京地裁S53.12.14くらいしかない。
7歳が乗るマウンテンバイクについては、裁判所はスピードが出ることから「自転車」と認定。
その上で裁判所は被害者20%、加害者80%と認定。
原告は対面信号の表示が赤色点滅であるところ、一時停止しなければならない義務があり、被告車が東西道路から接近しているにもかかわらず、横断を開始した点に過失が認められるが、原告は本件事故当時7歳の児童であり、横断歩道を通行していたことを考慮すれば、その注意義務の程度は成人に比べ限定的に捉えるべきである。
名古屋地裁 平成25年3月12日
加害者側の過失は前方不注視なのは言うまでもないですが、この場合は自転車側が一時停止規制なので基本過失割合は自転車40%。
横断歩道修正として自転車有利に5%、児童修正が10%としてもまだ25:75になりますが、加害者側から被害自転車を容易に視認できた点を5%修正した形でしょうか。
ぶっちゃけた話
子供の自転車を見かけた時に、それが道路交通法上「小児用の車(歩行者)」なのか自転車なのかなんてわかるわけもなく、どっちなのかは結果論でしかない。
なので、どちらが横断しようとしていても、車道通行勢がやるべき対処は変わらないことになる。
自転車と認められた以上、一時停止規制の対象になるのは仕方ないところですが、「赤点滅」の意味を理解している7歳がどんだけいるのだろうと考えてしまうのよね。
現実的にはこのような交差点は
左右の見通しがきかない交差点なので徐行義務(42条1号)になりますが、民事では徐行義務は基本過失割合に内包されている。
結局、やるべきことをするとしか言えないですね。
なお、示談交渉で「小児用の車(歩行者)」を主張した場合、おそらくは折り合いがつかず裁判になるかと。
何せ裁判所が小児用の車を認めた事例が少ないので…
けど、ちょっと前にマスコミが「小児用の車は歩行者だぞ!」と報道してびっくりしましたが

マスコミの記者さんって残念ながら勉強不足が多いけど、ちゃんと勉強する人もいるんだなと。
裁判所が小児用の車と認めるか?なんて結果論でしかないんですけどね。
当たり前ですが、自転車扱いならひいていいなんて理屈もないし。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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