こちらについて解説をしてほしいと読者様からメールを頂いたのですが、
本日のあたおか左折 pic.twitter.com/o9SY748loL
— ciclista_tetsu (@ciclista_tetsu) February 15, 2025
①何の違反になるか?
②妨害運転罪になるか?
③現行犯ではなくても切符を切れるのか?
二輪車に乗る人にとっては死活問題ですからね…
Contents
かぶせ左折は何の違反?
※本件は道路外左折ではなく交差点左折
これは進路変更禁止規定(26条の2第2項)でいいのかと。
かぶせて前に入った時点を違反と捉えるか、左折を実行した時点を違反と捉えるかはやや疑問がありますが、この規定は昭和46年改正以前はビミョーに違ってます。
◯昭和39年(26条2項)
昭和46年以前の26条2項だと、結果的に後車が追突を回避できたなら違反にならないのではないか?という疑問が生じる。
改正後は危険の範囲を拡大したと考えられる。
なお、この規定は故意犯の処罰規定しかありませんが、この場合の故意とは「進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがある」ことを認識していたかの話。
そもそも自転車が先行していた関係から「かぶせた」のだから、認識があったと捉えて問題ないかと。
この規定は妨害運転罪の構成要件に含まれますが、
八 他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であつて、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者
ニ 第二十六条の二(進路の変更の禁止)第二項の規定の違反となるような行為
警察の基準だと「妨害意思の認定には積極的意図が必要で、未必的認識では足りない」としている(具体的には反復性や継続性など)。
ただし危険運転致死傷罪における「通行妨害目的」の解釈として以下があることに注意。
本件罪にいう通行妨害目的は,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合をも含むと解するのが,立法趣旨に沿うものであり,かつ,目的犯の目的の解釈としても,理由のあるものと考えられるから,結局,本件罪の通行妨害目的は,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含むと解するのが相当である。
(中略)
確定的認識と未必的認識は,認識という点では同一であり,ただその程度に違いがあるにとどまるに過ぎない上,その判定は,確定的認識について信用できる自白がある場合や,犯行の性質からこれを肯定できる場合はともかく,当時の状況等から認識自体を推認しなければならない場合には,甚だ微妙なものにならざるを得ないから,そのような認識の程度の違いによって犯罪の成否を区別することが相当とも思われない。
(中略)
しかし,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う危険接近行為が極めて危険かつ悪質な運転行為であることはいうまでもないが,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行うのもまた,同様に極めて危険かつ悪質な運転行為といって妨げないと考えられることは,前記のとおりである。
ウ 以上の次第で,本件罪の通行妨害目的には,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図する場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含むと解するのが相当である。大阪高裁 平成28年12月13日
現行犯ではなくても切符は可能?
青切符については「現行犯のみ」と勘違いする人が多いけど、そのようなことはない。
交通反則切符の様式等並びに告知及び交通反則告知書等の作成の要領について
警察官及び交通巡視員(以下「警察官等」という。)が、道路交通法(昭和35年法律第105号)第126条に規定する反則者を認めたときの告知、交通反則切符の作成等については、「交通反則切符の様式等並びに告知及び交通反則告知書等の作成の要領について」(平成26年8月11日付け警察庁丙交指発第48号、丙交企発97号。以下「旧通達」という。)により、その要領等を定めているところであるが、道路交通法の一部を改正する法律(平成27年法律第40号)が平成29年3月12日から施行されることに伴い、別添のとおり「交通反則切符の様式等並びに告知及び交通反則告知書等の作成の要領」を定め、同日から適用することとしたので、部下職員に対する教養の徹底を図り、その運用に遺憾のないようにされたい。なお、この通達については、最高裁判所事務総局及び法務省と協議済みである。
また、旧通達については、この通達の実施に伴い廃止する。
警察庁交通局長から各都道府県の警察本部に宛てたもの。
一応、こうなっているわけよ。
第2 告知要領
6 非現認事件
反則行為を現認によらずに、捜査又は告訴、告発等によって認知し、反則者と認定した場合は、事件処理に必要な調書等の捜査書類の作成を行った後、告知書を交付すること。
現認ではなく捜査又は告訴、告発等でも青切符は可能ですが、若干ややこしいのは青切符は「車両」に切るのではなく「運転者」に切るもの。
車両が特定されても運転者の立証に失敗すれば青切符は切れないことになる。
オービスで顔写真を撮るのはそういう理由。
かぶせ左折は危険な行為ですが、要はこういうこと。
①この距離感で左折するなら、追い抜きしない
②仮に距離感を見誤って追い抜きしてしまったなら、左折前に後続自転車を先行させる
指定通行区分があるようなので34条1項「あらかじめできる限り左側端に寄って」は適用がありませんが、どうでもいいけどこの人って指定通行区分(35条)と34条の解釈を間違えていた人ですね。

その後理解したようには見えませんが…

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
被せ左折する人って、とにかく何枚も”被せ”ないと早く終わっちゃう人なのかもしれません。
最近のはどんどん薄くなってるから相当数が必要で、常に被せることを意識している。とか。
気のせいなら杞憂かもしれませんが、何か違う話をしてませんか?笑