読者様からこちらについて質問を頂いたのですが、

[「昭和46年以前の38条1項が道路左側としていたのが、改正後は道路全域になった」というのはガセネタ]とする件がよくわからないのですが、改正後は「道路左側」の文言が削除されたのだし道路全域になっているのでは?
ちょっと整理しますね。
| 昭和35~38 | 昭和38~46 | 昭和46~ | |
| 条文 | 歩行者が横断歩道を通行しているときは | 歩行者が横断歩道により道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)を横断し、又は横断しようとしているときは | 横断歩道によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者があるときは |
| 対象① | 横断歩道全域 | 横断歩道の左側部分 | 横断歩道の進路の前方 |
| 対象② | 横断中の歩行者 | 横断中/横断しようとする歩行者 | 横断中/横断しようとする歩行者 |
| 対象①の範囲 | ![]() |
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※「進路」とは車体の幅のことで、歩行者保護の観点から38条1項でいう「進路の前方を横断する歩行者」は車両の幅+1~1.5m程度と解釈する。
「進路の前方を横断しようとする歩行者」は車両の幅+5m程度。

昭和38年改正では「横断歩道全域→横断歩道の左側部分」に対象範囲が狭くなってますが、一方では「横断中の歩行者→横断中/横断しようとする歩行者」として「横断しようとする歩行者」が追加されている。
そして従来は一時停止が完全義務化されてなかったところ、昭和38年改正は、で一時停止が完全義務化されたので、昭和38年改正は歩行者保護を強めたと理解できる。
じゃあ昭和46年改正はどうなのかというと、片側一車線道路では「道路左側」と「進路の前方」はほぼ同じだし対象が「横断中/横断しようとする歩行者」なのでほぼ変わっていない。
片側一車線道路の「道路左側を横断しようとする歩行者」は、右側歩道にいる歩行者も含みうるわけでして(つまり片側一車線道路なら「道路左側」も「進路の前方」も実質的な差はない)。
ところが複数車線の場合や幅員が広い一方通行道路ではむしろ対象が狭くなったことになる。
そもそもなぜ昭和46年改正で「道路左側→進路の前方」に変更したか?

| 進路の前方を横断する歩行者 | 進路の前方を横断しようとする歩行者 |
| 車体幅+1.5m | 車体幅+5m |
「道路左側」の時代、下記は「道路左側を横断する歩行者」になってしまうので、車両から遠ざかる方向なのに一時停止義務が発生してしまう。

不合理ですよね。
このバグを解消するために進路の前方に変更しただけなので、それ以上の意味はないし、片側一車線道路なら「道路左側=進路の前方」になり得ても、道路幅が広いならむしろ改正後は狭くなっている。

なので彼の解説内容はガセネタなのよね…
まあ、あそこの人がガセネタ流すのは毎度のことだし驚きはありません。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。





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