こちらで取り上げた件。

事実誤認を前提に批評しているから話にならないんだけど、なんか大幅に加筆修正されていた。

加筆修正された内容がそもそも間違っているので、こういう事実誤認を前提に批評する人はなんとかならないもんかと考えさせられる。
根本的な事実誤認

この人の論旨は、「原付と自転車は他害性が違うのに同じ額の反則金は公平さを欠く」とし、原付は車重が80キロだとか、簡単に時速30キロを越える点を強調しているんだけど、
なんで原付=一般原付に話をすり替えているのだろう。
原付には一般原付と特定小型原付があり、どちらも同じ額の反則金が設定されている。
みんな大嫌いLUUPは特定小型原付ですが、車重は25キロ、最高速度は20キロ(スピードリミッター付き)。

電動アシスト自転車なんて、LUUPより重い上に時速24キロまでアシストされる(容易に特定小型原付より速くなる)。
他害性はほぼ同等、もしくは電動アシスト自転車のほうがわずかに高いとすら思われる。
原付=一般原付と話をすり替えている時点で、話の前提がおかしい。
「車重と速度に由来する原付との加害力の差を考慮し」という前提で書いてある部分は、すべて事実誤認に基づいたものになってしまう。
違反項目の解説がメチャクチャ…

道路交通法を全く知らない人が書いたとしか思えない。
交差点安全進行義務違反
交差点において、右左折の際に徐行しなかったり、必要な合図を出さなかったりすること。
全然違います。
右左折方法違反(34条1項/3項)と合図不履行(53条1項)は別問題。
その下にある環状交差点安全進行義務違反の解説も違う。
安全運転義務違反
安全運転の義務に違反すること。はっきりと該当する違反項目が他にない場合に適用される万能のカード。傘さし運転や周囲の音の聞こえない状態でのヘッドホンの使用などもこれに該当する。
安全運転義務の説明も全然違いますし(傘さし運転やヘッドホンは公安委員会遵守事項違反であり、安全運転義務違反にはならない)、万能カードではないことはとっくの昔に多数の判例にて確定しており、不勉強でデタラメを流すのはやめましょう。

指定場所一時不停止等
一時停止義務が生じるにもかかわらずそれが明示されない場所(一方通行規制の除外が適用される道を自転車で車と逆向きに通った際の、大通りとの交差点手前など)も数多く存在する。まずこれらを法規と合致するよう修正するべきだ。
そんな場所は存在しません。
一時停止標識がない「逆向き一方通行(自転車を除く)」については、左右の見通しがきかない交差点の徐行義務(法42条1号)や優先道路進行妨害禁止や広路車進行妨害禁止(36条2項)の適用はあるものの、一時停止標識がなければ一時停止義務は発生せず、「一時停止義務が生じるにもかかわらずそれが明示されない場所…数多く存在する」というのはガセネタ。

通行帯違反
車種や用途別の通行帯の区別に違反すること。自転車専用通行帯が整備されている場所でそこ以外を自転車で通行すると違反になる(自転車専用通行帯を車や原付で走行するのも違反)。
→ペイントだけの自転車専用通行帯(自転車専用レーン)は、市街地では路駐車で埋まってしまう。これは国内外を問わず既に常識といっていい。にもかかわらず日本では路駐車対策が停滞しており、自転車利用者は隣接する他の通行帯を、路駐車のドア開けや後続車におびえながら走ることを強いられている。まず移動の安全と自由が損なわれている現状を解消することが必須であり、それが達成されないうちは、使いものにならない自転車専用通行帯でも無理に走らなければというプレッシャーを生む反則金は適用すべきではない。
路上駐車等により本来通行しなければならない通行帯が通行できない場合は、「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき(20条3項)」になるのだから本来通行すべき通行帯以外を通行可能です。
「使いものにならない自転車専用通行帯でも無理に走らなければというプレッシャー」と書いているけど、無理な状態で無理に自転車専用通行帯を通行しなければならないルールなんてないのだし、ガセネタを前提にプレッシャーをかける姿勢は看過しがたい。
なお合図不履行については、警察庁が解釈を整理することを検討している。
たぶんこのレベルだとこういうことを知らないでしょうけど…

自転車制動装置不良
固定ギアの自転車では脚を踏ん張ることで制動作用が生じるので、これを後輪のブレーキ装置とみなすことも検討の余地がある。
この人、ヤバいんじゃないかな…
下り坂で車輪の惰性が働いている状況で、バックを踏んで制動できる人がいると思うのだろうか。
法律解釈も違うし、固定ギアのバック踏みをブレーキとみなす余地の話なんて視野が狭すぎる。
無知と不勉強

原付=一般原付と話をすり替えている時点で無価値な主張にみえますが、それを置いても道路交通法の解釈がおかしい。
そもそもこの話、条文上自転車には適用されない規定についても反則金が設定されてますが、それは単に施行令の規定の方法の話なのであって、条文上自転車に適用できない規定については青切符にはならない。
しかしこういうのを見ると「自転車乗りは道路交通法を理解してない」と揶揄されるのも仕方ない気がしちゃうのよね。
そもそも、国家公安委員会や警察庁は「原則は注意指導で、青切符は注意指導に従わない場合や、具体的危険がある場合」としている。
しかしこの人の根底にあるのは、「違反=青切符」でしょ。
自転車の駐停車違反について青切符を切るとしたら、例えば車道のど真ん中に駐停車して立ち去るような悪質な状態くらいしか考えられないわけで、そんなキチガイは滅多にいないのだから、反則金がいくらに設定されてようと関係ない。
速度超過にしても、理屈の上では制限速度30キロの道路を55~60キロで通行すれば反則金は12000円ですが、物理的にそれが可能な人がどんだけいるんだ?という話でもある。
施行令の規定上、改正内容は「原付→原付等」として自転車を含めただけなので、現実的に自転車に起こり得ない違反が含まれるのは立法技術上仕方ないだけのこと。
それにイチイチ噛みついたところで意味はないのよね。
凄まじい事実誤認をベースにした主張をしてますが、「自転車乗りは道路交通法を理解してない」と揶揄される理由がわかるし、そのように揶揄されても「残念ながらその通り」と認めざるを得ない。
青切符についてはいろいろ意見が出ているけど、「歩道通行したら全員6000円」みたいなガセネタをベースにした主張ばかりで、
「ガセネタを前提にしたら話がおかしくなるのは当たり前だろ…」と呆れしかないのよ。
無知と不勉強が世間を歪ませるという典型例にしか見えない。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


コメント
自転車制動装置不良の項目。
「固定ギアの自転車で足を踏ん張る」何のことかと思いましたが、ピストバイクのことなんですね。ピストバイクで、ブレーキ無しorブレーキ不良・故障でも、脚で踏ん張れば止められるのだから、盛業装置不良ではない、と主張してられるのですね。
そもそもブレーキ無しなら、通常の自転車・ピストバイクとも違反のはずですし、ピストバイクでブレーキ不良などという、非常にニッチなことを議論しても、建設的ではないですね。
コメントありがとうございます。
ピストのバック踏みは簡単ではありませんから…何を言ってるのかわからないレベルでこの著者はヤバい。