この人は話を盛るのが趣味なのか?と疑わざるを得ないんだけど、
運転レベル向上委員会より引用
①大阪高裁 平成15年2月27日判決は、対向車の渋滞停止の車列間から早足で横断した歩行者と、時速20~25キロで進行していた被告人車の衝突事故ですが、
早足を「猛スピードで飛び出した」として話を盛るのがわからん。
そもそも歩行者は猛スピードなんか出せない。
なおこの事件は刑事事件なので、被害者の過失が極めて大きいことと無罪になるかは関係がない。
要はこの事故、歩行者が対向車の渋滞車列間から横断した事故ですが、被告人が被害者の飛び出しについて「右前方約4.8mの地点に認め」た。
被告人に有利に空走時間を1秒、時速25キロで計算すると停止距離は10.38mとなり、回避可能性がなかったことになるので無罪(被告人に回避可能性がなかったことと、被害者の過失が大きいことは別問題)。
②千葉地裁 平成29年9月15日
この判例は路上横臥者を轢過したもの。
先に過失運転致死で起訴し、結審後に救護義務違反(道路交通法違反)で追起訴しましたが、
なお,本件事故については,被告人に対し,最高速度遵守義務違反および安全確認義務違反の過失による自動車運転過失致死被告事件に関し,罰金50万円の有罪判決(求刑も同額の罰金)が確定している(乙5,6)。本件道路交通法違反被告事件は,上記別件の判決期日直前に起訴され,当時の裁判体は,上記別件の再開,併合をしなかった。
千葉地裁 平成29年9月15日
過失運転致死罪は有罪ですが、衝突した認識がなかったことから救護義務違反が無罪になっただけの話。
救護義務違反は故意犯の処罰規定しかないのだから、事故が発生したことを認識できなければ無罪になるのは当たり前。
最高速度を遵守し前方注視していれば事故は起きなかったと判断されたから「過失運転致死罪は有罪」、しかし起こした事故を認識できなかったから「救護義務違反は無罪」。
③新潟地裁長岡支部 平成29年12月27日判決
「歩行者が信号無視で乱横断→衝突死亡。遺族が賠償請求」と書いてますが
運転レベル向上委員会より引用
信号なんてない場所だし、死亡事故ではない。
しかも以前この判例を解説していたときも「法定速度内だった」と解説しているけど、

この事故は法定速度を超過していた(時速60~70キロ)と認定されており、さらに言うと以前の解説では「車の直前5.8mで飛び出した」としているけど、
事故発生現場が中央分離帯から5.8mなのであって、全然違う。
信号無視でもなければ死亡事故でもないし、法定速度内でもなければ「車の直前5.8mで飛び出した」でもないけど、ここまで違う内容にされてしまうことを考えると判決文を読まずに解説しているとみるのが妥当かと。
ところで、これらの判例を「代表的な判例」としてますが、長岡支部判決は「民事無過失は珍しい」という点ではわりと知られている。
とはいえ、この3つの判例にしても話が盛られていたり、そもそも違う内容になっている。
歩行者の早足を「猛スピード」と盛るのはなかなか理解しがたいし、過失運転致死は有罪/救護義務違反は無罪の判例を「無罪判例」と紹介するセンスもわからん。
そもそもこの人は「判決理由」ではなく「判決結果」にこだわる人なんだとわかるのは、①と③を見る限り、なぜ無罪/無過失になったかの理由を全く捉えきれていないところ。
①については刑事事件なのだから、相手に過失があろうと被告人に過失があるなら有罪になるのだから、被告人の過失がいかに否定されたのかのみがポイントになる。
③については自賠法の規定により無過失の立証をしないと無過失認定にはならない。
ではどうして無過失の立証ができたのか?
運転レベル向上委員会の人は「相手が悪ければ自分の過失を帳消しにする」という比較考量論で捉えているからこういうまとめになるんだけど、自動車運転処罰法も自賠法もそういう規定ではない。
ただまあ、それ以前になぜ運転レベル向上委員会が判決内容を改竄しまくるのか疑問。





非常上告事件なんて、検察官が主張した内容が真逆になってますが…
検察官は「法令適用を誤って起訴して有罪が確定してしまったから、破棄して無罪にしてくれ」と主張したのが真実なのに、運転レベル向上委員会の人の謎解説だと「原略式命令は正当だ!」と真逆の主張をしたことにされてしまう。
民家の敷地内を「道路」と認めた判例にしても、運転レベル向上委員会の人が解説すると「小学校の校庭を道路と認めた判例」だとし、しかも「通称 小学校校庭事件」などというありもしない通称名まで付けられてしまいますが、

この人はフェイクニュースを量産して何をしたいのだろうか。
見解の相違ではなく事実無根な内容にされてしまうわけですが、皆さんも情報発信するときは事実無根な内容にならないよう気をつけましょう。
事実確認を怠ると、運転レベル向上委員会のように陰謀論に走ることになりますから…

ちなみにこの件の真相を深掘りしてもいいんだけど、

「ホテル、民泊可」にしたのはかなり前からというのが真相。
通達開示アタックを繰り返せばそれがいつからなのかはわかりますが、数ヶ月単位でかかる上に面倒なので深掘りはしません。
ところで上記大阪高裁判決は「指定最高速度が40キロ」の道路にて、「対向車が渋滞停止していた」ところを「時速20~25キロ」で走行中に「前方4.8mに横断歩行者を認めた」事例。
この事実関係においては回避可能性がないことは明らかですが、なぜ検察官が起訴したかがポイント。
要はこの事故、「もっと減速すべき注意義務があった」というのが検察官の主張で、予見可能性にかかる注意義務違反を問題にした。
しかしこの状況においてさらに減速すべき注意義務は課せないと判断し、時速25キロを前提にした回避可能性を検討するしかなく、その前提では回避可能性がないことは明らかだから無罪なのでして。
https://www.road-to-the-l4.go.jp/activity/courtcases/pdf/courtcases02.pdf
以前取り上げた、国がまとめた判例集に判決要旨がありますが、一般人が運転する上では「他人の有罪/無罪」という「結果」が大事なのではなくて、判決理由、つまり注意義務違反がなんなのかが大事なのよね。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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