こちらの記事で書いた内容に質問を頂いたのですが、
句読点の位置と、前段が「すること」、後段が「停止をし」として違う表現にしていることをみても、「かつ」は後段のみにかかることは明らかですが
駐車違反は「人が乗っていればセーフ」なのか?読者様から質問を頂いたのですが、駐車の定義。十八 駐車 車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)、又は車両等が停...
これの正しい読み方はこうなる。
①車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)をいう「又は」
②車両等が停止(特定自動運行中の停止を除く。)をし、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあることをいう
典型的な誤読パターンはこれ。
①車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあることをいう。「又は」
②車両等が停止(特定自動運行中の停止を除く。)をし、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあることをいう。
「かつ」が「継続的に停止すること(前段)」と「停止をし(後段)」の両方に掛かると勘違いしやすい。
これですが、「又は」とはなんなのか?なのよ。
もしこういう規定だったなら、「かつ」は両方に掛かる可能性が高くなる。
| 現行法 | 「かつ」が両方に掛かるパターン |
| 車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)、又は車両等が停止(特定自動運行中の停止を除く。)をし、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあることをいう。 | 車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)又は車両等が停止(特定自動運行中の停止を除く。)することで、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態をいう。 |
前段が「◯◯こと」としているのだから、「又は」として挙げるものも「◯◯こと」として並列的表現にする必要があるのよね。
右バージョンでは「こと」を前段と後段で揃えて、「かつ」の文章から「こと」を省いて、何と何が並列なのかを表してみました。
駐車の定義については「人が乗っていたらセーフ」というガセネタが横行する。
法文上は継続的停止であれば駐車にあたるのでして、前段については「その車両等を離れて直ちに運転することができない状態」である必要はない。
以前、法律は一度バラバラにして考えるほうが分かりやすくなると書きましたが、「バラバラ化の失敗」はわりと起きます。
例えば25条の2第1項。
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
この規定をバラバラ化するとこうなる。
車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは
①道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をしてはならない。又は
②横断してはならない。又は
③転回してはならない。又は
④後退してはならない。
典型的な誤読パターンは、「道路外の施設若しくは場所に出入するための横断」と読んでしまうこと。
バラバラ化に失敗すると重大な勘違いになりますが、その勘違いを解くのが専門書なのよね。
そもそもなぜ上のように読むのが正解かというと、この規定は昭和46年以前はこうだった。
第二十五条 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、横断し、転回し、又は後退してはならない。
昭和46年以前は「道路外に右左折」することを「横断」としていた。
昭和46年改正で左横断、右横断を「道路外に右左折」と変えたことによる措置です。
とは言え、執務資料はプロ向けなので一般人には読みにくい(一般人が読むと誤読しやすい)。
バラバラ化したチャートを先に示した解説書があると分かりやすくなりそう。

駐車の定義についても誤読しやすいパターンですが、法律の知識がない人が道路交通法解説をするときに起こりやすい。
わりとややこしいのは、専門書を読んだとしても根本的な法律知識がないと専門書を誤読する。
というのもこれ。

運転レベル向上委員会の人は、下記のように左折する車両には横断歩道での一時停止義務(38条1項後段)があるとしてますが、


38条1項後段は「横断歩道により進路の前方を横断しようとする歩行者があるとき」に一時停止義務を課している。
左折車の「進路の前方」に横断歩道もなければ横断しようとする歩行者もいないのだから、38条1項後段の義務発生要件を満たさない。
◯左折車の「進路」

ところが運転レベル向上委員会は執務資料の記述や福岡高裁判決を引用して、あたかも持論が正解であるかのように語る。
要は執務資料も福岡高裁判決も読み間違っているだけなのよね。
道路交通法38条1項は、「車両等は、横断歩道に接近する場合には、当該横断歩道を通過する際に当該横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者があるときは、当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。」と規定しているところ、右規定の趣旨、目的が横断歩道における歩行者を保護、優先することにあることは言うまでもなく、右趣旨、目的及び右規定の改正経過並びに同法1条に照らして解釈すれば、右に規定されている「その進路の前方」とは、車両等が当該横断歩道の直前に到着してからその最後尾が横断歩道を通過し終るまでの間において、当該車両等の両側につき歩行者との間に必要な安全間隔をおいた範囲をいうものと解するのが相当であり、右38条1項後段の規定は、車両等の運転者に対して、当該横断歩道により右の範囲を横断し又は横断しようとする歩行者があるときは、その直前で一時停止するなどの義務を課しているものと解される。
福岡高裁 昭和52年9月14日
福岡高裁判決をみても横断歩道を通過しない車両には38条1項後段にいう「その進路の前方」が関係しないことは明らかとしか言いようがないけど、あそこの人はきちんと読まずに切り抜きするから意味を取り違えてしまう。
きちんと読まないところはこのような事案にも現れており、

路上横臥者を轢過して無罪になった判例として千葉地裁 平成29年9月15日判決を紹介してますが、「それを避けることが可能なのか?」というテーマで語るにはこの判例は不適切。
なぜならこの判例は救護義務違反、つまり事故を起こした後の責任についての判例なので、避け得たかについては別問題だからです。
現にこの事故については、過失運転致死罪(事故を避け得たか?)については有罪になっている。
なお,本件事故については,被告人に対し,最高速度遵守義務違反および安全確認義務違反の過失による自動車運転過失致死被告事件に関し,罰金50万円の有罪判決(求刑も同額の罰金)が確定している(乙5,6)。本件道路交通法違反被告事件は,上記別件の判決期日直前に起訴され,当時の裁判体は,上記別件の再開,併合をしなかった。
千葉地裁 平成29年9月15日
けどこれにしても、運転レベル向上委員会が救護義務違反に関する行政処分(点数計算)を毎回間違える理由がわかるのよね。
運転レベル向上委員会は救護義務違反に付加点数をつけるという、道路交通法にはない謎解説を繰り返してますが、

一 違反行為に付する点数は、次に定めるところによる。
1 一の表又は二の表の上欄に掲げる違反行為の種別に応じ、これらの表の下欄に掲げる点数とする。この場合において、同時に二以上の種別の違反行為に当たるときは、これらの違反行為の点数のうち最も高い点数(同じ点数のときは、その点数)によるものとする。
2 当該違反行為をし、よつて交通事故を起こした場合(二の119から128までに規定する行為をした場合を除く。)には、次に定めるところによる。
(イ) 1による点数に、三の表の区分に応じ同表の中欄又は下欄に掲げる点数を加えた点数とする。ただし、当該交通事故が建造物以外の物の損壊のみに係るものであるときは、1による点数とする。
付加点数は「当該違反行為をし、よつて交通事故を起こした場合」に付けるとしている。
救護義務違反は「事故発生後の話」なのでして、救護義務違反によって交通事故が起きたわけではない。
救護義務違反によって交通事故が起きたわけではないのだから救護義務違反に付加点数は付かないのに、「救護義務違反+付加点数」と紹介して本来の点数より低くしてしまう(本来は「事故発生原因の違反行為」+「付加点数」+救護義務違反)。
横断歩道事故ならば横断歩行者妨害(38条1項)に「よって」交通事故が起きたのでして、義務の発生点と因果関係を整理出来てないから条文を読んだとしても意味を取り違えるし、専門書を読んだとしても誤読する。
駐車の定義にしても運転レベル向上委員会の解説は誤りですが、彼のややこしいのは専門書や判例を引用することで持論が正解であるかのような印象付けをすること。
よくよく読めば引用元の意味が違うことはわかるし、判例についてはそもそもガセネタだと気づくんだけど、

わりと危惧するのは、内容を精査しないまま運転レベル向上委員会の解説を盲目的に信じる人がいるところなのよ。
ちょっと前にメディアが「歩道があるときには75センチ開けて駐車するのがルール!通達にも書いてある」としてましたが、

そのような通達は存在しない。
けど「通達があります」と書けば、それが権威がある正当解釈だと印象付けしてしまうのでして…運転レベル向上委員会の人がやっているのも、それと同じような話なのよね。
「判例はこれです」としながらも、判決文の内容とは全然違う内容に改竄されている。


ところが原典を確認する人が少ないのか、「判例があります」としてガセネタを紹介されても盲目的に信じる人がわりといる。
こういう人たちはなんとかならないものかと考えてしまいますが…
ところで、運転レベル向上委員会が判決文とは異なる判例に改竄して紹介した事例は既に10件はある。
この人が判例解説をする場合、そもそも本当にそのような判例なのか真実性を確認しないといけないことになる。
インターネット上で情報を流す人の中にはこういう人たちがいるので、疑ってかからないとダメなのよね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。



コメント
読み間違えて五分以内の運転手のワンオペ荷下ろしで検挙されて文句言う人結構いますよね
コメントありがとうございます。
読み間違えてしまう人が多いですが、そもそも読んでない人が多い気がします。