自転車にサーフボードを積むことが「違反」か?「文化」か?が話題になってますが、ほとんどの場合、道路交通法57条2項、都道府県公安委員会規則に抵触すると考えられる。

第10条 法第57条第2項の規定により、軽車両の運転者は、次に掲げる乗車人員又は積載物の重量等の制限をこえて乗車をさせ、又は積載をして運転してはならない。
(3) 積載物の長さ、幅又は高さは、それぞれ次の長さ、幅又は高さをこえないこととする。
ア 長さ 自転車にあつてはその積載装置の長さに0.3メートルを、牛馬車及び大車にあつてはその乗車装置又は積載装置の長さに0.6メートルを、それぞれ加えたもの
イ 幅 積載装置又は乗車装置の幅に0.3メートルを加えたもの
ウ 高さ 牛馬車にあつては3メートルから、牛馬車以外の軽車両にあつては2メートルから、それぞれの積載をする場所の高さを減じたもの
(4) 積載の方法は、次のとおりとする。
ア 前後 積載装置(牛馬車にあつては乗車装置を含む。)から前後に最もはみ出した部分の合計が、自転車にあつては0.3メートルを、牛馬車にあつては0.6メートルを、それぞれこえないこと。
イ 左右 自転車にあつてはその積載装置から、自転車以外の軽車両にあつてはその乗車装置又は積載装置から、それぞれ0.15メートルをこえてはみ出さないこと。
これについては神奈川県議会で質問と答弁がある。
令和6年第3回神奈川県議会定例会より。
◆脇礼子議員
質問の第7は、サーフボードを積載した自転車に対する指導取締りについてです。
私の地元である藤沢市では、1年を通じて老若男女が湘南の海岸でサーフィンを楽しんでおり、県内外から訪れる多くのサーファーでにぎわっている地域でもあります。多くのサーファーはお互いに声をかけ合い、安全に注意しながら楽しんでいると聞いています。
サーファーは皆、ロングボード、ショートボード等、様々な形状のサーフボードを運搬して海岸へやってきており、大半は自動車への積載による運搬方法であると認識していますが、藤沢市はじめ、海から近い地域に住むサーファーの中には、自転車に特殊な形状のキャリアを装着し、自転車の側面にサーフボードを固定して市街地を走行するサーファーも多数おられます。
サーフボードの固定が弱く、ぐらぐらとしていたり、小型の自転車に長いボードを積載していたり、サーフボードを積載していないのに特殊な形状のキャリアを畳まず、そのままの状態で通行しているなど、私も様々目の当たりにしています。
通行量の多い狭い道路では、特に自動車や人との接触の危険をはらみ、また、大きな事故につながる可能性もあります。私も、冷や冷やしながら運転することもあり、地域住民にとっては交通安全対策が深刻な問題となっています。
〔資料提示〕
残念ながら、自転車にサーフボードを積載して走行する一部サーファーの規範意識の低さも考えられることから、意識醸成のためには、前提として、県警察により正しいサーフボードの積載方法を周知徹底した上で、サーフィンに携わる団体や地元自治体の啓発、注意喚起といった活動が必要であり、道路における交通の安全と円滑を図る県警察において、サーフボードを積載した自転車に対する指導警告といった活動の推進が、サーファーが安全にサーフィンを楽しむためにも重要であると考えます。
先日、我が会派において、自転車・小型モビリティー対策について、県警察の今後の取組方針を警察本部長から答弁を頂いたところでございますが、湘南地区における個別の問題として、警察本部長に伺います。
サーフボードを積載した自転車に対する指導取締りについて、県警察における現在の取組、また、今後の方針について所見を伺います。
◎警察本部長(和田薫) サーフボードを積載した自転車に対する指導取締りについてお答えします。
自転車を含む軽車両の積載物及び積載方法については、道路交通法及び神奈川県道路交通法施行細則で規定されており、ハンドル操作を妨げたり、車両の安全を害すような方法で積載しないことのほか、積載物の重量や大きさ、積載の方法等について一定の制限が設けられております。
このため、サーフボードを積載した自転車の違反については、積載するサーフボードの長さや幅、積載装置による積載方法等、個別具体の状況により判断することとなりますが、県警察では、サーフボード利用者が多く認められる道路において、積載方法に違反するなどの危険な走行をする自転車利用者を認めた際には、指導警告を行っております。
県警察では今後とも、関係機関等とも連携しつつ、サーフボードの自転車への積載方法を含め、自転車利用者に対する正しい交通ルールの周知を図るとともに、再三の指導警告に従わず違反行為を継続するなど、悪質、危険な交通違反に対する取締りを推進し、自転車利用者の安全意識の向上に努めてまいります。
以上でございます。
◆脇礼子議員
次に、サーフボードを積載した自転車に対する指導取締りについてです。
自転車にサーフボードを積載して走行するには、一定の制限があることは理解いたしました。引き続き、積載方法に違反する等、交通事故に直結する悪質、危険な自転車利用者には厳正に対応していただく一方で、いまだ正しい積載方法や交通ルールを理解せずに走行する利用者が多数を占める昨今の現状は、歩行者との接触事故など、交通事故につながることが予想されることから、サーファーの安全を守るためにも、キャリアを装着した自転車利用者に対する正しい積載方法の周知を含めた広報啓発等の取組についても、一層推進していただくことを要望いたします。
自転車の積載規定が目的とするのは、積載物による「他害性」と、自転車自体が不安定になることでの「自転車乗り自体の危険性」の両面があると考えられますが、
他害性のメインになるのは歩道通行又は歩車道の区別がない道路での歩行者に対する危険。
不安定化したり、車体が長くなることで何かに引っ掛けて自爆するリスクもあるだろうし、歩行者に引っ掛ければケガさせるのは当たり前だから他害性と自爆性を分けて考える必要もない気がする。
県警の方針はあくまで「注意指導」で、「再三の指導警告に従わず違反行為を継続するなど、悪質、危険な交通違反に対する取締りを推進」。
これは警察庁/国家公安委員長が発表する青切符運用基準と同じです。
国家公安委員会委員長記者会見要旨
令和5年12月26日(火)11:02~11:09
問 自転車運転の青切符を盛り込んだ報告書が国家公安委員にも報告されたと思います。そこでお伺いしたいのは今後の教育の問題です。特定小型原付でも具体的な教育があまりなされている様子がなくて、今後、警察庁だけではなくて文科省とか総務省とも連携しなければならないと思います。閣僚としてどのように働きかけるおつもりかお願いします。
答 まずご指摘の自転車につきましては、近年、対歩行者との事故が増加傾向にあるとこういうふうにまず認識をしております。そのことを踏まえまして、警察庁においては、本年の8月以降、有識者検討会を開催してきたところでございます。お尋ねのとおり、このたび、有識者検討会においては、安全教育、違反の処理、交通規制の3点に関して、今後の取組の方向性について提言をする中間報告書が取りまとめられ、提言いただいたところでございます。
このうち、交通安全教育につきましては、官民の知見により、それぞれの年齢層、ライフステージに応じた安全教育に係るガイドラインの策定をいたしまして、安全教育の質の担保をすることが提案されているところでございます。これを実現するためには、教育現場や自治体との連携が非常に重要であるため、関係省庁に対して必要な働き掛けを行っていくよう、警察庁を指導してまいりたいと考えております。
そのようにしっかりと連携をいたしまして、やってまいりたいと思っておりますが、違反の処理につきましては、自転車利用者による交通違反を交通反則通告制度の対象とすることが提言をされておりますが、制度の運用に当たっては、指導警告をまず原則といたします。これに従わないなどの特に悪質、あるいは危険な違反に限っては青切符による取締りを行うことにより、目的である違反者の行動改善を促すこと、こういった取組をしっかりとやってまいりたいと考えております。問 取締りについては、まず切符を切るということではないということですね。
答 申し上げたとおり、まずはやはり指導警告これを原則といたしておりますので、報道等では即青切符というイメージが残っておりますが、やはり交通ルールを守っていただき、結果的に事故が起こらないことが私どもの目的でございますから、その点については、申し上げたとおりでございます。
国家公安委員会委員長記者会見要旨
結局のところ、現実的には取り締まりされることがないから野放しになっていると見ることができますが、少なくともこの状態で歩道通行するのは違うと思う。
けど湘南にいけば、非普通自転車と思われるビーチクルーザーにサーフボードを積み歩道通行しているのを見かける(ビーチクルーザーを「ビーチク」と略することには賛成し難い)。
わりとややこしいのよね。
選挙のときに自転車に幟旗をつけて走る自転車を見かけますが、一応はあれについては違反になりうるのでして。
「文化」を主張するのであれば、サーフボードを積載しながらも安全を確保できる積載方法を提案するなど、業界団体が頑張るべきなんじゃなかろうか。
というのも以前から指摘する通り、自転車ルールについては必ずしも合理的とは言い難いものもある。
タンデム自転車の2人乗りについては規制緩和されましたが、そもそもなぜ規制する必要があったのかと聞かれたら悩ましいわけでして。
サーフィンしない人からすれば単なる危険行為にしか見えないのだから、サーフィンする人たちで安全と利便性を両立する方法を考えて提案しないと、何も変わらないのよね。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
サーフボードを載せるキャリアをサーフボードショップで販売してたら、一般の人は、法的にも大丈夫だと思ってしまいますね。元記事を読めば、ロングボードはアウト、ショートでもアウトの可能性があるとのことなので、ショートボードでさらに短めならOkという風に読めます。
人が少ないうちは、みんな安全にやってても、人が増えてくると、自分勝手な人が混じってくるのは世の常で、そうなったら、批判も出てきて、今の、市議会に取り上げられるような状態になるのでしょう。
因みに、ビーチクルーザーは、普通に略すと、「ビークル」と乗り物全般を指してしまい誤解を生むので、「ビーチク」で良いかと思います。
コメントありがとうございます。
ビーチクのほうが誤解の原因笑