ちょっと前に取り上げたこちら。

これ結論からいうと、自転車道(交通法2条1項3号の3)と捉えるしかなく、T字路右側の自転車道を通行する自転車は信号規制の対象です。
信号規制対象じゃないと、青信号で横断歩道を渡る歩行者と交錯するから当たり前なんですが、停止位置は停止線。

で。
おそらく90%以上の自転車は、この自転車道を通行する際に信号規制の対象だと気づかない。
歩道通行をデフォルトにしてきた方々からすれば、歩道であれば信号規制を受けないのだし、歩道と自転車道の違いなんてわかるわけがない。
そうすると悪意がない信号無視が多発することになる。
信号を遵守させたいなら自転車道用の信号を設置することも考えられますが、コストがかかる上に、信号遵守が期待できるかは別問題。
自転車道ではなく「歩道の普通自転車通行指定部分」に改変することもできますが(歩道に改変すれば信号規制を受けない)、歩行者との交錯を考えると何らかの減速構造を必要とする。
どっちがいいかはビミョーなのよ。
こういう部分は海外でもうまく機能してなくて、

これが現実。
自転車を優先すべきか
バスの運行を優先すべきか
バスの乗降客(歩行者)を優先すべきか
pic.twitter.com/MCGyjw2BCK— kazuhiko makimura牧村和彦#ストップ交通崩壊 (@mackey0318) June 27, 2025
自転車大国と言われるオランダでも実態はこう。
もっとも市の人口が膨らむにつれて、アムステルダムでは公共スペースの使い方が課題になっているという。自転車と歩行者のバランスを取るため、2017年からサイクリストだけでなく、歩行者も優先するという計画が進んでいる。
(中略)
サイクリストは自分たちの権利を主張するが、実際のところ彼らのマナーにも問題があるようだ。歩行者からは信号無視や突然の歩道への飛び出しといった苦情が出ており、ベビーカーや目の不自由な人にとっては脅威となっている。自転車走行中にメールをするという違反もあり、罰金も設けられたほどだ。
「歩行者ばかり優先」自転車天国アムステルダム、サイクリストから不満噴出 - NewSphere - Page 2町中に専用レーンが設置され、市民の最も手軽な交通手段として自転車が利用されているアムステルダムは、サイクリストの天国といわれている。ところが最近は、市の自転車に寛大な政策が歩行者優先にシフトしており、サイクリストから不満の声が上がっている。...
自転車は歩行者をあまり優先しません。例えば歩行者用の信号が青で渡っているとしましょう。横から来る自働車の信号は赤になっていますが、自転車の信号はないとします。すると自転車は歩行者を優先することなく、まっすぐ横から突っ込んで来ます(人にもよりますが)。そういう時は自転車を先に通したほうが安全です。
オランダの自転車道路事情とマナーオランダが自転車大国であることは有名ですが、その実態となると行ったことのない人にとってはイメージしにくいのではないでしょうか。また、ただ観光で都市を訪れただけで、実際に自転車に乗って見なければ、気付かないこともあります。 それでは実際にサイ
この国は都会のど真ん中でも横断歩道に信号がないことがあります。
日本に居た時と同じように渡り始めると、よく自転車にベルをならされます。びっくりして一歩後ずさると、そこにも自転車が突進してきます。 慌てて大きく前方に移動すると、そこは車道だったりするわけです…!
アムステルダムの横断歩道 - オランダ ログ
「サイクリストはドライバーよりもさらに反社会的です」と、37 歳のジェニファー ブラウワーは不平を言います。ジェニファー ブラウワーは視覚障害者として登録されており、サイクリストとの衝突にうんざりしていたため、賑やかな西部地区から街の静かな郊外に引っ越してきました。
Bloomberg - Are you a robot?
「私が一人で歩いたり自転車に乗ったりしている場合、アイコンタクトは通常、どちらが行き、どちらが譲歩するかを判断するのに十分です. でも今は赤ちゃんができたので、アイコンタクトをあまり信用していません。ある日、テンケート市場の近くで生後 4 か月の息子を押していた Menno van de Lustgraaf さん (33 歳) は言いました。「サイクリストは横断歩道で止まることはありません。ベビーカーを持っていても。」
Bloomberg - Are you a robot?
どうするのがベストなのか答えは見つかってなくて、オランダでも赤信号無視の自転車が横断歩行者を危険に晒しているとする。
信号がない横断歩道の現状は動画の通り。
昭和的な発想だと、立体交差、つまり歩道橋ですよね。
歩道橋については昭和40年代に多数の行政訴訟が提起され問題視されましたが、

大分地裁 昭和43年(わ)423号(業務上過失傷害、道路交通法違反)の判決に以下説示があったらしい。
「交通事故の増加という重大問題に対処するため為政者および警察関係者は例えば「歩道橋」の設置等による安易な方法での解決を考え、人間が自から作った自動車から身を守るため、自動車が人間を避けて通るのならいざしらず、人間が自動車に遠慮してそれを避けて通らなければならないという全く道理に合わない方法で(問題)解決を考えているが、「歩道橋」は明らかにヒューマニズムに反しているものであることを、為政者らは、人間性を取りもどしたところの一市民として、いま一度考え致さなければならない問題ではなかろうか。」と述べ、更に右被害者が身体障害者であって、歩道橋を利用することが肉体的心理的に苦痛であるため(平面)道路を横断しようとしたことも事故の一因をなしているとしたうえ、「前叙のような反ヒューマニズム的なものの設置等による安易な事故防止の考えに深く反省を求めたい。」と結んでいる。
判例タイムズ284号(歩行者の通行-その規制と保護など-)、東京地裁判事 久米喜三郎、p145
この事故は歩道橋を使わず横断し歩行者がはねられたものですが、歩道橋を使わなかった理由は障害者だからなんですね。
その前提で歩道橋を乱立させる政治を批判したらしい。
ちなみに乱発した行政訴訟は「歩道橋を乱立させて横断歩道を無くすのはやめろ」です。
障害者などは歩道橋を渡れないのだから、横断歩道を廃止されたら詰む。
なお私が知る限り、ほとんどの訴訟は「却下or請求棄却」です。
請求棄却ではなく却下になる理由は行政訴訟法の要件の問題。
結局、車両(自転車)と歩行者が交差するポイントの処理をどうすべきか?という話になりますが、
何がベストなのかはわかりません。
何せ海外オランダでも歩行者が自衛しているから事故数が抑制されているだけなので。
「信号を守れ」で魔法のように遵守しだすわけもないし…その意味では立体交差するのがベストなのですが…それは既に昭和の時代に失敗した政策でもある。
古い解説書をみていると当時どんな議論あったか知ることができますが、執務資料を一通り読んだ後に古い解説書をオススメする理由は、そういう背景を知ると現行法の理解が進むからなのよ。
さて、歩行者に高度な自衛を要求する社会が果たして正しいのか、この自転車道の構造から考えてみましょう。
歩行者には子供や障害者も含まれます。
そして自転車道をやたらプッシュする方々は、ネガティブな情報を隠して「対クルマ」を強調するけど、ネガティブな面もクリアした構造にブラッシュアップする必要があるのだから、そういう手法を使う方々は信用ならない。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。




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