こちらの事故。

横断歩道手前に停止している車両がいるにもかかわらず対向車線にはみ出してそれなりの速度で追い抜きして起こした事故ですが、警察は過失運転致傷から危険運転致傷に切り替えて捜査していると。
なぜこれが危険運転致傷の疑いになるかというと、実はこれ、「通行妨害目的態様」(処罰法2条4号)が成立しうるのでして。
第二条次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
4号の通行妨害目的態様は目的犯の処罰規定だから、妨害することを積極的に意図した場合に限ると立法府は説明していた。
しかし大阪高裁 平成28年12月13日判決は未必的な認識で足りるとし、通行妨害になる可能性を認識していれば足りるとする。
ア 本件罪の立法経過等に鑑みると,本件罪が「走行中の自動車の直前に進入し,その他通行中の人又は車に著しく接近し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し」たこと(以下「危険接近行為」という。)に加えて,主観的要素として,通行妨害目的を必要としたのは,従前,業務上過失致死傷罪等で処断されていた行為のうち,極めて危険かつ悪質で,過失犯の枠組みで処罰することが相当でないものについて,故意犯と構成することによって,その法定刑を大幅に引き上げる一方,後方からあおられるなどして自らに対する危険が生じ,これを避けるために,危険接近行為に及んだ場合など,悪質とまでいい難いものについては,本件罪の成立を認めないとすることにより,処罰範囲の適正化を図ったものと解される。
そうすると,本件罪にいう通行妨害目的の解釈は,上記のような立法趣旨に沿うものである必要があると考えられるところ,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う危険接近行為が極めて危険かつ悪質な運転行為であることはいうまでもないが,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行うのもまた,同様に危険かつ悪質な運転行為といって妨げないと考えられる。したがって,そのような場合もまた,通行妨害目的をもって危険接近行為をしたに当たると解するのが合目的的である。
ところで,本件罪は目的犯とされているから,通行妨害目的の解釈も,目的犯における目的の解釈として合理的なものである必要があるところ,目的犯における目的の概念は多様であり,各種薬物犯罪における「営利の目的」のように積極的動因を必要とすると解されているものもあれば,爆発物取締罰則1条の「治安ヲ妨ゲ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスル目的」のように未必的認識で足りると解されているものもあり,さらに,背任罪における図利加害目的のように,本人の利益を図る目的がなかったことを裏から示すものという解釈が有力なものもある。これを本件罪についてみると,本件罪において通行妨害目的が必要とされたのは,外形的には同様の危険かつ悪質な行為でありながら,危険回避等のためやむなくされたものを除外するためなのであるから,目的犯の構造としては,背任罪における図利加害目的の場合に類似するところが多いように思われる。そうすると,本件罪にいう通行妨害目的は,目的犯の目的の解釈という観点からも,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することのほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含むと解することに,十分な理由があるものと考えられる。
以上のとおり,本件罪にいう通行妨害目的は,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合をも含むと解するのが,立法趣旨に沿うものであり,かつ,目的犯の目的の解釈としても,理由のあるものと考えられるから,結局,本件罪の通行妨害目的は,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含むと解するのが相当である。
イ 原判決は,本件罪にいう通行妨害目的は,運転の主たる目的が人や車の自由かつ安全な通行の妨害を積極的に意図することになくとも,自分の運転によって上記のような通行の妨害を来すことが確実であることを認識して当該運転行為に及んだ場合にも肯定されると解するとして,東京高等裁判所平成25年2月22日判決・高刑集66巻1号3頁を援用しているから,同判決同様,そのような認識で当該行為に及んだ場合,自己の運転行為の危険性に関する認識は通行の妨害を主たる目的とした場合と異なることがないことを,上記のような解釈を採る理由としているものと解されるが,認識の程度が同じであればなぜ目的があるといえるのか不明であるし,なにより,そのような解釈を採ると,自分の運転行為によって通行の妨害を来すことが確実であることを認識していれば,後方からあおられるなどして自らに対する危険が生じこれを避けるためやむなく危険接近行為に及んだ場合であっても本件罪が成立することになり,立法趣旨に沿わないものと考えられる。また,原判決がいう「確実であることを認識して」とは,結局のところ,確定的認識をいうものと解されるが,確定的認識と未必的認識は,認識という点では同一であり,ただその程度に違いがあるにとどまるに過ぎない上,その判定は,確定的認識について信用できる自白がある場合や,犯行の性質からこれを肯定できる場合はともかく,当時の状況等から認識自体を推認しなければならない場合には,甚だ微妙なものにならざるを得ないから,そのような認識の程度の違いによって犯罪の成否を区別することが相当とも思われない。
検察官は,目的犯における「目的」の意義は多様であり,外国国章損壊(刑法92条)等のように,その目的が,構成要件的行為自体,または,その付随現象から,おのずと実現されるため,客観的構成要件該当事実を認識していれば,同時に,目的を有しているとも見られる犯罪類型にあっては,未必的認識で目的が充足されるとすると,故意とは別に目的を要求した意味がなくなり,そのため,このような場合の目的としては,目的の実現に対する未必的認識では足りず,目的が実現することを確実なものと認識することが必要であると解すべきであるとした上で,通行妨害目的は,まさにこのような場合であるから,相手方の自由かつ安全な通行を妨げることが確実であることを認識することが必要であり,このような認識がありながら,あえて危険接近行為に及ぶような場合には積極的な意図がある場合と同視し得るとして,通行妨害目的についての原判決の解釈に誤りはないというが,認識があることを前提としながら,その認識の程度によって犯罪の成否を区別するのが相当でないことは前記のとおりである。なお,検察官のように,「通行妨害目的」を肯定するためには通行妨害について確定的認識が必要と言い切ってしまうと,嫌がらせ目的で危険接近行為をしたが,通行妨害についての認識は未必的であったという場合,本件罪は成立しないことになりそうであるが,それが妥当であるかも疑問である。
一方,弁護人は,本件罪の立法過程では,行為者の主観的事情として,人の死傷に対する認識認容を求めないものとしたために,処罰範囲の拡大が懸念され,暴行や傷害等に準じた重い刑罰に見合った「極めて危険かつ悪質なもの」に処罰範囲を限定し,かつ,その範囲を明確にするために目的犯とされ,この点について,立法担当者が,「妨害する目的で著しく接近し」とは,「相手方が自車との衝突を避けるために急な回避措置を余儀なくされる」ことを「積極的に意図して自車を相手方の直近に移動させること」をいう旨明らかにしているから,本件罪では,客観的行為態様に加えて,主観をも考慮に入れて行為の危険性を判断しなければならないのであり,通行妨害目的が認められるためには,確実な認識が必要であるとともに,積極的意図も必要である旨主張する。
しかし,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う危険接近行為が極めて危険かつ悪質な運転行為であることはいうまでもないが,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行うのもまた,同様に極めて危険かつ悪質な運転行為といって妨げないと考えられることは,前記のとおりである。
ウ 以上の次第で,本件罪の通行妨害目的には,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図する場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含むと解するのが相当である。
大阪高裁 平成28年12月13日
そのほか、逃走目的で逆走し起こした事故について「通行妨害目的危険運転」を認定した広島高裁 平成20年5月27日や東京高裁 平成25年2月22日がある。
これらの事実に照らすと,被告人が,車体の半分を反対車線に進出させた状態で走行し,C車両を追い抜こうとしたのは,パトカーの追跡をかわすことが主たる目的であったが,その際,被告人は,反対車線を走行してきている車両が間近に接近していることを認識していたのであるから,上記の状態で走行を続ければ,対向車両に自車との衝突を避けるため急な回避措置を取らせることになり,対向車両の通行を妨害するのが確実であることを認識していたものと認めることができる。
ところで,刑法208条の2第2項前段にいう「人又は車の通行を妨害する目的」とは,人や車に衝突等を避けるため急な回避措置をとらせるなど,人や車の自由かつ安全な通行の妨害を積極的に意図することをいうものと解される。しかし,運転の主たる目的が上記のような通行の妨害になくとも,本件のように,自分の運転行為によって上記のような通行の妨害を来すのが確実であることを認識して,当該運転行為に及んだ場合には,自己の運転行為の危険性に関する認識は,上記のような通行の妨害を主たる目的にした場合と異なるところがない。そうすると,自分の運転行為によって上記のような通行の妨害を来すのが確実であることを認識していた場合も,同条項にいう「人又は車の通行を妨害する目的」が肯定されるものと解するのが相当である。
3 以上からすると,被告人には,対向車両の通行を妨害する目的があったということができるから,その目的を肯定して,被告人に刑法208条の2第2項前段の危険運転致死罪の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りはない。
東京高裁 平成25年2月22日
以上認定したとおり,被告人は,被告人車を運転して,信号待ちのため交差点手前で停止中,警察官に職務質問されそうになったことから,酒気帯び運転の発覚を免れようとして被告人車を発進させ,逃走を開始したところ,警察車両が追跡してきたため,Eバイパスを逆行すれば,警察車両もそれ以上の追跡を諦めるであろうと考えて,その逆行を始めたものである。そして,その後の被告人車の走行状況にかんがみると,被告人は,何台もの対向車両とすれ違ったり,対向車両と衝突する危険を生じさせたことから,そのままEバイパス上り線を逆行し続ければ,さらに対向車両と衝突する危険が生じることを十分に認識しながら,警察車両の追跡から逃れるためには,その危険を生じさせてもやむを得ないと考え,敢えて逆行を継続したものと認められる。なお,実際に被告人車が対向車両と衝突してしまえば,それ以上逃走することができなくなるところ,被告人は,上述のとおり,本件事故に至るまでの間は,対向車両と衝突する危険が生じた際,いずれも対向車両に急ハンドルや急ブレーキ等の措置を取らせるなどして,被告人車との衝突を回避させたことから,被告人車がさらにEバイパス上り線の逆行を続け,対向車両に同様の措置を取らせて衝突を避けさせることにより,逃走できることを期待して,逆行を続けたものであることが認められる。
そうすると,被告人は,警察車両の追跡から逃れるため,逆行を継続することにより 対向車両が被告人車と衝突する危険を生じさせるとともに, 逃走を続けるために,対向車両に対し被告人車との衝突を避けるための措置を取らせることをも意図しながら,逆行を継続したものということができる。
所論は,危険運転致傷罪が成立するためには,相手の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することが必要であって,その未必的な認識では足りないとの解釈が立案担当者からも示されている(「刑法の一部を改正する法律の解説」法曹時報第54巻第4号71頁)と指摘した上,被告人の意思は,一貫して,警察車両から逃れることにあったのであり,被告人は,対向車両の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図していないから,被告人に人または車の通行を妨害する目的はなく,同罪は成立しない旨主張する。
たしかに,被告人は,警察車両から逃れることを意図して,Eバイパスを逆行したものである。
しかし,自動車専用道路であるバイパスを逆行すれば,直ちに対向車両の自由かつ安全な通行を妨げる結果を招くことは明らかであり,バイパスを逆行することと対向車両の自由かつ安全な通行を妨げることとは,表裏一体の関係にあるというべきである。また,上記認定事実に照らせば,被告人が,警察車両の追跡から逃れるため,バイパスを逆行することを積極的に意図していたことは明らかである。そして,バイパスを逆行することを積極的に意図していた以上,被告人は,これと表裏一体の関係にある対向車両の自由かつ安全な通行を妨げることをも積極的に意図していたと認めるのが相当である。広島高裁 平成20年5月27日
主たる目的がパトカーから逃走であっても、バイパスを逆走すりゃ対向車を妨害することは明らかで、妨害することを認識していたのだから表裏一体の関係にあるとして通行妨害目的を認定。
これらの枠組みを応用すると、横断歩道があり横断歩道直前に停止車両があることを認識しているなら、横断歩行者優先中の可能性があることを理解でき、それをあえて高速度で対向車線にはみ出して追い抜きすれば、歩行者の通行妨害になる可能性があることを認識していた…という理屈は成り立ちうる。
ところで「時速194キロ直進事故」の大分地裁判決は、「進行制御困難高速度危険運転」(法2条2号)を認めたものの、「通行妨害目的危険運転」(法2条4号)は認めず。
検察官の主張趣旨は、一般道で194キロ出せば他者の妨害になることは明らかなのだから通行妨害目的があるという話ですが、大分地裁は同号は積極的な妨害意思が必要と解した。
2 法2条4号の罪の成否
⑴ 前記のような被告人車両の速度や本件交差点への進入形態等に照らし、被告人は、重大な交通の危険を生じさせる速度で、被告人車両を右折進行中の被害者車両の直近に移動させたものと認められる。
⑵ ところで、法2条4号の「人又は車の通行を妨害する目的」とは、歩行者又は道路上を通行する車全般に自車との衝突を避けるために急な回避措置をとらせるなど、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することをいい、これらについての未必的な認識、認容があるだけでは足りないと解するのが相当である。
そこで検討すると、前記第2の1⑵の事実関係及び被告人の公判供述によれば、被告人は、本件当時、被告人車両を運転して直進車優先の本件道路の第2車両通行帯を西進し、被害者車両との衝突地点の手前約728mの地点において、被告人車両の前後及び対向車線を進行する車両は存在しないとの認識の下、アクセルを強く踏み込み始めるとともに、前方の状況を確認すべく前照灯をハイビームにし、同衝突地点の手前約331mの地点で本件交差点の対面信号機が青色を表示しているのを確認した後、時速約194.1kmの速度で被告人車両を走行させて本件交差点に進入したものであり、その際、対向右折進行してきた被害者車両に対して積極的にその通行を妨げる動機があったことをうかがわせる事情もないから、被害者車両の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図していたとは認められない。
これに対し、検察官は、本件道路は、対向右折車両が来ることが当然に想定される道路であること、時速約194.1kmという速度による走行は、当然に対向右折車両と衝突するか、衝突を免れるとすれば同車両に急な回避行動をとらせるほかない行為であること、そもそも被告人車両にとっては対向右折車両に気付くこと自体が困難であること、被告人がこれらの事情を認識していたことから、被告人には、対向右折車両等が存在した場合、同車両等の通行の妨害を来すのが確実であるとの認識があったといえ、このような認識がある場合にも「人又は車の通行を妨害する目的」があると認められる旨主張する。
しかし、検察官の主張は、通行妨害目的の対象車両の認識は未必的であってもよいことを前提としているが、同目的の要件は、客観面で通行を妨害する危険性が存在していることを前提とした上で、主観面で、そのような危険性の認識・認容を超えて、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図している場合に、法2条4号の罪の成立を限定する面にその意義があるから、それとの関係上、飽くまで妨害することの認識ではなく対象車両の認識であるとはいえ果たして未必的であってもよいのか疑問が残る。その点は差し置いても、被告人において、真実、本件交差点に存在する対向右折車両等の通行の妨害を来すのが確実であると認識していたのであれば、被告人車両の速度に照らし、対向右折車両等との事故を発生させて自身の生命や身体を危険にさらすこともまた十分認識し得たことになるが、そのような危険を冒してまで高速度走行に及ぶ意思を有し、現に高速度走行に及んだものとは認め難いから、対向右折車両等の通行の妨害を来すのが確実であるとの認識があったと推認するには合理的な疑いが残る。
結局、本件の事実関係の下においては、弁護人も主張するとおり、被告人が、被告人車両を運転して本件道路を直進する際、場合によっては対向車線から本件交差点を右折進行する車両があり、場合によってはこれらの車両が急ブレーキをかける必要が生じる可能性があると考えていたこと(被告人の供述も同旨である。)を認定し得るにとどまるから、被告人に「人又は車の通行を妨害する目的」があったとは認められない。
未必的な妨害認識では足りないとしたのが大分地裁判決。
ただまあ、最近の検察庁の動きをみると、通行妨害目的危険運転の立証に積極的で十分ひっくり返せると考えているから控訴したのかと。
ところで、危険運転にしても過失運転にしても、被害者が重体であることには変わらない。
そもそも道路交通法38条2項を新設した理由はこれ。
しかしながら、横断歩道において事故にあう歩行者は、跡を絶たず、これらの交通事故の中には、車両が横断歩道附近で停止中または進行中の前車の側方を通過してその前方に出たため、前車の陰になっていた歩行者の発見が遅れて起こしたものが少なからず見受けられた。今回の改正は、このような交通事故を防止し、横断歩道における歩行者の保護を一そう徹底しようとしたものである。
まず、第38条第2項は、「車両等は、交通整理の行なわれていない横断歩道の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、当該横断歩道の直前で一時停止しなければならない」こととしている。
もともと横断歩道の手前の側端から前に5m以内の部分においては、法令の規定もしくは警察官の命令により、または危険を防止するために一時停止する場合のほかは停止および駐車が禁止されている(第44条第3号)のであるから、交通整理の行われていない横断歩道の直前で車両等が停止しているのは、通常の場合は、第38条第1項の規定により歩行者の通行を妨げないようにするため一時停止しているものと考えてしかるべきである。したがって、このような場合には、後方から来る車両等は、たとえ歩行者が見えなくとも注意して進行するのが当然であると考えられるにかかわらず、現実には、歩行者を横断させるため横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出たため、その歩行者に衝突するという交通事故を起こす車両が少なくなかったのである。
そこで、今回の改正では、第38条第2項の規定を設けて、交通整理の行われていない横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとする車両等は、横断歩道を通行し、または通行しようとしている歩行者の存在を認識していない場合であっても、必ずその横断歩道の直前で一時停止しなければならないこととし、歩行者の有無を確認させることにしたのである。車両等が最初から歩行者の存在を認識している場合には、今回の改正によるこの規定をまつまでもなく、第38条第1項の規定により一時停止しなければならないことになる。
「一時停止」するというのは、文字通り一時・停止することであって、前車が停止している間停止しなければならないというのではない。この一時停止は、歩行者の有無を確認するためのものであるから、この一時停止した後は、第38条第1項の規定により歩行者の通行を妨げないようにしなければならないことになる。また、一時停止した結果、歩行者の通行を妨げるおそれがないときは、そのまま進行してよいことになる。警察学論集、「道路交通法の一部を改正する法律」、浅野信二郎(警察庁交通企画課)、立花書房、1967年12月
昭和40年代頭には問題になっていた態様が令和にも起きてしまうわけですが、80年近く前から問題になっていた態様が起きてしまうのは、この規定の真意が理解されてないからなのよね。
容疑者が「横断歩行者を妨害することが確実」と認識していたか、もしくは「横断歩行者を妨害する可能性があると認識していたか」で若干話は変わりますが…
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


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