大分の時速194キロ事故について、控訴審が即日結審したらしい。

この事件は時速194キロで直進した被告人が対向右折車と衝突し死亡させたものですが、一審は「進行制御困難高速度危険運転致死罪(処罰法2条2号)」を認めたものの、「通行妨害目的危険運転致死罪(同4号)」は認めず。
検察官は「通行妨害目的態様も認めるべき」として控訴し、被告人は「危険運転致死罪は成立せず、過失運転致死罪であるべき」として控訴。
なお両者の控訴は同じ日にされています。
報道によると、検察官は通行妨害目的態様の立証のために証拠と証人を請求したようですが、福岡高裁はいずれも認めずに即日結審した模様。
控訴審で証拠請求しても認められないことは多く、即日結審したから判決が変わらないわけでもない。
「ブレスケアひき逃げ事件」にしても、控訴審は即日結審したものの有罪から無罪にしており(最高裁は有罪判決)、

今のところ福岡高裁が何を示すかはわからない。
ところで、「進行制御困難高速度」にしても「通行妨害目的」にしても、警察・検察は今かなり力を入れている。
ちょっと前に酒田市の横断歩道手前停止車両を追い抜きして起こした事故にしても、通行妨害目的危険運転で送検したように法曹界のポイントは
・進路逸脱を伴わなかった事例について、進行制御困難高速度態様を立証できるか?
・「通行妨害目的」は未必的な認識で足りるか?大阪高裁判決をどう捉えるか?
この二点。
進行制御困難高速度態様については、立法当初から進路逸脱を伴わなかったとしても成立しうることが指摘されてますが、どうやって立証するかは難しかった。
大分地裁判決では、立証方法を確立しつつあると見ることができますが、福岡高裁の判断次第では振り出しに戻される可能性がある。
通行妨害目的態様については、未必的な妨害認識で足りるケースがあるにしても、未必的な認識の全てで認めるのはムリがある。
例えば「殊更信号無視危険運転致死傷罪」は、信号無視すれば他者の通行を妨害する可能性があるのは明白。
そうすると、未必的な認識で足りるとしたときには「殊更信号無視態様」には必ず「通行妨害目的態様」もセットになるのか?と言われたら疑問が残る。
結局、かなり曖昧なのよね。
ちなみに控訴審は一審で取り調べた証拠で判断できると考えたなら新たな証拠調べをせずに判決するので、即日結審し新たな証拠調べをしなかったから判決が変わらないとは言えない。
それこそ危険運転致死の成立を否定して過失運転致死になることもありうるわけだし、通行妨害目的を認める可能性もありますが、
今のところどっちに転びそうなのかは全くわからない。
ところで、検察官は新たな証拠調べを請求して却下されてますが、事後審はそうなる可能性があるから一審ですべきだったともいえる。
とはいえ、そもそも今回のような事例については、通行妨害目的態様をどうやって立証すべきか確立されておらずが手探り状態なんだと思う。
通行妨害目的危険運転致死については様々な論文を挙げてきましたが、未必的な妨害認識で足りるケースがあるにしても、未必的な妨害認識の全てを通行妨害目的態様とするのはムリがあるのでどこかで線引きする必要があると思う。

ただまあ、勘違いしちゃいけないのは過失運転致死だろうと危険運転致死だろうと、制限速度を遵守して前方注視しながら進行する義務があることには変わりないこと。
あくまでも「処罰」法の中での話でしかない。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


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