「ロードバイクが起こした事故」について判例を、と要望をいただいていたのでちょっと探してみたのですが、
理不尽と感じるか、正当と感じるかは判断が割れるかも。
事案は「赤信号無視の歩行者」と「青信号で交差点を通過しようとしたロードバイク」です。
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東京地裁 令和6年10月18日(民事)

判例は東京地裁 令和6年10月18日(民事)。
十字路交差点で「赤信号無視した歩行者」と「青信号で交差点を通過しようとしたロードバイク」が衝突した事故で、歩行者は死亡している。
時系列です。
・衝突12秒前(18:45:28)
被害者が歩道上を横断歩道に向かって歩いている。
・衝突7秒前(18:45:33)
被害者が横断歩道の南端に立ち、交互に左右を向いて周囲を確認。なおこの時点でも被害者の目の前を車両が進行している。
・衝突2秒前(18:45:38)
被害者が横断歩道を北に向かって歩き出す(赤信号)。
・衝突(18:45:40)
被害者が手前の車線を半分ほど北に向かって横断した時点で、被告運転のロードバイクと衝突。衝突の瞬間にも被告の対向車線上には少なくとも2台の車両が進行している。
ロードバイクの速度は20~30キロと認定されてますが、東京地裁が判断した過失割合はこちら。
| 歩行者(赤信号) | ロードバイク(青信号) |
| 90 | 10 |
さて、これをどう読み解くか。
判決文によると、被害者が横断歩道南端に立ち左右をうかがっている様子から「赤信号で横断することが予見可能」とみなした印象で、普通の自転車よりもスピードがでるロードバイクの運転者としては注意すべきだったとする。
しかし赤信号で、しかも対向車が通過していた状況で横断した歩行者に重過失があるのは当たり前なので、歩行者過失を90%としている。
「信頼の原則」という法理があるのはよく知られてますが、「特別な事情がない限り」赤信号無視する歩行者や車両を予見する注意義務はない。
今回のように横断歩道ギリギリのところで左右をうかがっている様子が「特別な事情」とも言えますが、
控訴せずに判決は確定しています。
理不尽と感じるか、正当と感じるかは人それぞれ違うかも。
ところで
20~30キロでも人に当たれば死亡するし、時速9キロで歩行者に衝突して死亡に至った事故もありますが、
わりと笑えないのは、自転車側が死亡するリスクも十分ありうるのよね。
ちなみにですが、一時不停止の自転車に驚愕したオートバイが衝突回避のために転倒し、対向車線にはみ出し轢過された事故すらありますが(もちろん自転車側は重過失致死罪で有罪判決)、
優者危険負担の原則から自転車と歩行者では対等な関係にはないとはいえ、青信号だからと安心せず挙動不審な歩行者には注意する必要がある。
とはいえ、「自分なら避けられた」という人がいたらちょっとムリがある気がする。
残念ながらこれもそうだけど、

注意していたとしてもなかなか厳しい場合もある。
まあ控訴してない点からしても、実質的にはバックにいる保険会社の意向であったんじゃなかろうか。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


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