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数値の前提を無視した独り歩き。運転レベル向上委員会の間違い解説がメディアによって拡散されてしまう。

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全然知らなかったのですが、ちょっと前に取り上げたこちら。

誤解が多い「自転車の追い抜きルール(18条3項)」について語ろうと思う。
運転レベル向上委員会の人は「18条3項の違反かどうか?のみ」に固執して「事故防止」という観点はないようですが、パトカーが自転車の後ろに追従していることを「間違い」だと語っている。そして「追い越しするなとも追い抜きするなとも書いてない」と力説...

読者様から教えていただいたのですが、運転レベル向上委員会の間違い解説動画がメディアによって「正しい内容」と誤認させるかのように広められたらしい。

誤解だらけの自転車新ルール!警察も判断に迷う「はみ出し追い越し」の複雑な罠 - ライブドアニュース
チャンネル運営者氏が自身のYouTubeチャンネルで「【自転車追い越し・追い抜きの新ルール解釈】自転車を黄色実線ではみ出して追い越すのは違反?捕まる?最新ルールを徹底解説」を公開した。動画では、2

世も末だなと。

まず下記動画について、パトカーの運転方法を「間違い」だと断言してますが、

「追い抜きしなければならない」なんてルールはないのだから、状況からみて事故リスクがあると思うときに「追い抜きを差し控える」のは当然のこと。
この状況で慎重に追い抜きすることも間違いではないし、事故リスクを最大限評価して追い抜きを差し控えることも間違いではないのでして。

 

ところで運転レベル向上委員会は、このように述べている。

時速20~30キロの安全な速度まで減速すれば、追い抜くこと自体は可能であると明言した。

誤解だらけの自転車新ルール!警察も判断に迷う「はみ出し追い越し」の複雑な罠 - ライブドアニュース
チャンネル運営者氏が自身のYouTubeチャンネルで「【自転車追い越し・追い抜きの新ルール解釈】自転車を黄色実線ではみ出して追い越すのは違反?捕まる?最新ルールを徹底解説」を公開した。動画では、2

動画中ではこんなことまで言ってますが、

運転レベル向上委員会から引用

下記最高裁決定をどう捉えているのだろうか。
事案は最高裁判所第一小法廷 昭和60年4月30日。

 

事故現場は車道幅員3.38m。

時速50キロで通行し、自転車に対しクラクション。

自転車が有蓋側溝に避譲したので側方間隔60~70センチ、時速5キロで追い抜き。
不安定な状況で倒れた。

まずは原判決から。

時速約40キロメートルで大型貨物自動車(車幅2.47m、車長8.57m)を運転して東進中、前方道路左側を同方向に足踏み二輪自転車で進行している被害者(当時72歳)を発見したこと、その付近は、公安委員会が午前7時から午後7時まで大型貨物自動車の通行を禁止しておる道路であり、道路の幅員が約4mと狭いうえに、同人が老人であつて、やや左右に揺れて不安定な感じがしたことから、被告人はその場での追い抜きを差し控え、二回警音器を吹鳴したのみで、約5mの間隔を保つたまま約50m追従したこと、被告人は、道路左側に接する側溝が有蓋となる部分に差しかかる手前で、再び警音器を吹鳴して、道路左側を走行中の被害者の進路を、道路上から有蓋側溝上に進路変更をさせ、同人の自転車ハンドルの右グリツプの先端と被告人車との間に約60センチメートルの間隔をとつて、その右側を時速約5キロメートルの低速で並進をして追い抜きを開始し、サイドミラーで被害者の様子をうかがいつつ約13.4m進行した時に、それまで被告人車よりも遅い速度で並進しつつあつた被害者が、突然にふらついて被告人車の方に倒れかかつてきたので、直ちに急制動をかけ、約1m進行して停止したこと、被害者がそのようにふらついて倒れかかる直前の時点では、同人の自転車ハンドルの右グリツプの先端と被告人車との間に約70センチメートルの間隔が保たれていたが、被告人は、路上に転倒した被害者の上半身が被告人車の左後輪前のアンダーアングル(防護柵)の下に入りこんできたためにこれを回避することができず、左後輪で被害者の胸部を轢圧し、公訴事実記載のように傷害を負わせ、そのため死亡させた

(中略)

このような側溝の蓋の上を自転車が安全に通行できるとはみられず、ましてその自転車の側方を、大型貨物自動車が60ないし70センチメートルの近接した間隔をとつて追い抜くことは、両側からはさまれた形になり、過度の緊張感を与えることになつて危険であるとみられること、被害者は、前記のとおり被告人から警音器を吹鳴されて道路上から有蓋側溝上に進路を変更させられたのであるが、その地点より約20m東方(進行方向)には、前記ブロツク壁が切れて空地に通ずる広い入口があり、また道路の反対側(南側)は、道路幅を広げた待避所になつており、そこでは安全に追い抜くことができるのであるから、被害者もそのような場所で被告人車を避けようとしていたものとみられ、有蓋側溝上の走行という事態は、同人にとつては、警笛の吹鳴によりやむをえずとつた避譲の措置であつたとみられるところ、被告人としては、その当時、格別急ぐ必要がなかつたのであるから、被害者に対しそのような避譲の措置を無理にとらすことなく、安全な場所に至るまで追い抜きを差し控えることが極めて容易にできたこと、被害者が転倒したのは、被告人車を避けて緩やかに進行していた際に、前記のとおり約2センチメートル高く出ていて、少しぐらついている蓋にハンドルをとられて運転の自由を失い、周章狼狽して自転車を支える余裕もなく、自転車に乗つたまま路上に倒れたことによるものとみられるが、同人のその場所での転倒は、前記のような追い抜きの状況のもとにおいては、普通にありうることとして当然に予測可能であること、以上のような事実が認められる。

 

右認定事実によると、その付近は道路の幅員が狭く、有蓋側溝上に進路を変えて避譲した被害者が、自転車の安定を失つて転倒する危険が十分に予測されたのであり、かつその約20m先には安全に避譲できる場所があつたのであるから、自動車運転者としては、追い抜きを暫時差し控えるべき業務上の注意義務があつたというべきであるところ、被告人は、被害者が転倒する危険を全く予測せず、あえて無理な追い抜きをしたために、側溝の蓋に自転車のハンドルをとられて運転の自由を失い、狼狽して自転車に乗つたまま路上に転倒した被害者を自車左後輪で轢圧し、その結果、同人を死亡させたというのであるから、被告人の右業務上の注意義務違反による本件業務上過失致死の公訴事実は、優に肯認することができるといわねばならない。

 

昭和59年1月24日 高松高裁

なお、最高裁も同判決を是認しています。

 なお、原判決の認定によると、被告人は、大型貨物自動車を運転して本件道路を走行中、先行する被害者運転の自転車を追い抜こうとして警笛を吹鳴したのに対し被害者が道路左側の有蓋側溝上に避譲して走行したので、同人を追い抜くことができるものと思つて追い抜きを始め、自車左側端と被害者の自転車の右ハンドルグリツプとの間に60ないし70センチメートルの間隔をあけて、その右側を徐行し、かつ、被害者の動向をサイドミラー等で確認しつつ、右自転車と並進したところ、被害者は、自転車走行の安定を失い自転車もろとも転倒して、被告人車左後輪に轢圧されたというのであるが、本件道路は大型貨物自動車の通行が禁止されている幅員4m弱の狭隘な道路であり、被害者走行の有蓋側溝に接して民家のブロツク塀が設置されていて、道路左端からブロツク塀までは約90センチメートルの間隔しかなかつたこと、側溝上は、蓋と蓋の間や側溝縁と蓋の間に隙間や高低差があつて自転車の安全走行に適さない状況であつたこと、被害者は72歳の老人であつたことなど原判決の判示する本件の状況下においては、被告人車が追い抜く際に被害者が走行の安定を失い転倒して事故に至る危険が大きいと認められるのであるから、たとえ、同人が被告人車の警笛に応じ避譲して走行していた場合であつても、大型貨物自動車の運転者たる被告人としては、被害者転倒による事故発生の危険を予測して、その追い抜きを差し控えるべき業務上の注意義務があつたというべきであり、これと同旨の見解に立つて被告人の過失を肯認した原判断は正当である。

 

昭和60年4月30日 最高裁判所第一小法廷

側方間隔60~70センチ、時速5キロの追い抜きについて「追い抜きを差し控えるべき注意義務があった」とする。
しかもこの事案は、先行自転車が後続車に気付いて避譲していたケースでもある。

事故発生リスクが見込まれるときに、追い抜きや追い越しを差し控えるべき注意義務があることは論を待たないのでして、「時速20~30キロの安全な速度まで減速すれば、追い抜くこと自体は可能であると明言」というのは全く理解してない証拠としか言えない。

さてそもそも、18条3項は何ら具体的な数値を挙げていない。
警察庁は一応の目安を公表している。

第213回国会 参議院 内閣委員会 第14号 令和6年5月16日

○塩村あやか君 ありがとうございます。
ということは、やっぱりその自転車を運転する側がしっかりといろいろな方向に注意をしておかなくてはいけないという形で、運転する人がちゃんと、自分は大丈夫なのかというのはやっぱりちゃんと自問自答しながら自転車に乗っていかなきゃいけないなというふうに思いました。ありがとうございます。
十八条、先ほど酒井先生の方からも質問あったと思うんですけれども、自動車などの車両は、特定小型原動機付自転車などの右側を通過する場合において、十分な間隔がないときは、当該特定小型原動機付自転車等の間隔に応じた安全な速度で進行しなければならないという規定を創設するということに今回なっております。
十分な間隔そして間隔に応じた安全な速度とは具体的にどのようなものを想定しているのか、分かりやすく教えてください。

○政府参考人(早川智之君) お答えいたします。
歩道における自転車と歩行者の事故件数が増加傾向にある中、自転車の車道通行の原則の徹底を図るためには自転車利用者が安全に車道を通行できる環境を整備することが重要であると考えております。
御指摘の規定は、車道における自転車と、失礼しました、自動車と自転車の接触事故を防止するため、自動車が自転車の側方を通過する際のそれぞれの通行方法を整備する規定でございます。本規定に定める自動車と自転車との間隔や安全な速度につきましては、自動車と自転車との具体的な走行状況に加えまして、道路状況や交通状況などにより異なることから、具体的な数値は規定していないところでございます。
その上で、あえて申し上げれば、例えばでありますが、都市部の一般的な幹線道路においては十分な間隔として一メートル程度が一つの目安となるものと考えているところでございます。また、このような十分な間隔を確保できない狭隘な道路におきましては自転車の実勢速度というものが、いろいろありますが、二十キロメートル毎時程度であるということを踏まえますと例えばこうした場合には、間隔に応じた安全な速度としては二十キロから三十キロ、これぐらいの速度というのが一つの目安になるのではないかと考えているところであります。
いずれにいたしましても、この規定の趣旨は、自転車の安全を確保しつつ、自動車と自転車の双方が円滑に車道上を通行することを確保することにありまして、自転車に危害を加えるような態様でなければ本規定の趣旨に反するものではないと考えているところであります。

一番の問題は、この「目安」の真意を理解せず、運転レベル向上委員会のように「時速20~30キロならOK」だと勘違いする人が出てくる点にある。
要するにこの「目安」は、「自転車の速度が20キロ」という前提における話であり、しかも判例を加味すれば「見通しがよく、自転車が不安定なところを通行しておらず、自転車に不安定性も見られない場合」の話であり、しかも「子供や高齢者は別」であろう。

自転車への側方間隔はどれくらい空けるべき?判例を検討。
先行する自転車を追い越し、追い抜きするときに、側方間隔が近すぎて怖いという問題があります。これについて、法律上は側方間隔の具体的規定はありません。(追越しの方法)第二十八条4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条において「...

しかし数値の目安を公表すると、前提を無視して数値が絶対的なものだと勘違いする。
例えば、先行自転車に不安定性がみられるケースでは「1mなら十分な間隔」とは言えないのでして。

被告人がトラックを運転して時速約25キロで進行中、前方約30mの地点に自転車に乗っていく被害者の後姿を発見したので、時速を約20キロに減じ、警笛を鳴らしたが、避譲する様子もなく道路のほぼ中央を進行していたこと、約5mの距離に接近した際初めて後方を振向いたのでトラックの追進していることを気付いた筈であるのに、僅かに左側に寄ったのみでなおも避譲する気配もなく、そのふらつく様子からみて同人は酒に酔っていることが認められたこと、殊に同乗していた運転助手は被害者の自転車に乗っている様子がふらふらしていたので、運転者の被告人に対し酒に酔っているから危ないなあと話すと、被告人はそうかもしれないなあと答えたこと、以上の各事実が認められ、記録に徴しても右認定に誤りがあることは認められない。

 

ところで、進行中の自転車とその後から進行してくるトラックとの間隔(両者並行した場合の間隔)が1.30m程度の場合には、時速20キロという速度で車体の巨大なトラックが自転車を追越せば、自転車の搭乗者はトラック通過のあおりを喰い、周章して運転を誤り易く、ためにその際自転車をトラックに接触乃至衝突せしめ、その結果人の死傷を惹起することのあることは睹易い道理で、殊に本件の如く自転車の搭乗者が酒に酔っていた場合には右の危険は一層大きいことは勿論であるから、追越すトラック運転者としては警笛を十分鳴らしてトラックの接近乃至通過を熟知せしめるとともに、その自転車が停止又は十分な距離の個所に避譲して前記の危険の発生することがなくなったことを確かめた後に通過するか、さもなくば何時でも接触又は衝突を避け得るように速力を減じ、且つ助手をして自転車搭乗者の動静に注目せしめる等の措置を講じて通過する注意義務のあることは条理上当然であって、(中略)トラックと自転車の間隔を約1.30mにした程度のみを以て事足るものというを得ない。

 

昭和29年4月15日 仙台高裁

例えばこのような事案もある。

被告人は自動車運転の業務に従事しているものであるが、昭和37年3月18日午後4時45分ころ、大型貨物自動車(ダンプ型、車巾2.35m)に砂利約7.5トンを積載してこれを運転し、印幡郡栄町方面から成田市方面に向い時速約20キロで進行中、成田市松崎2067番地先道路(巾員約4.4mの粗砂利道)に差しかかつた際、前方約40mの道路左側を自転車に乗り一列になつて同一方向に進行中のA(当時10歳)他4、5名及びその右前方を同様自転車に乗り同一方向に進行中の児童を認めたので、速度を時速約15キロに減速し、右Aらの右側を通過しようとした。ところで同所附近の道路は前記のとおり巾員約4.4mの狭隘な道路であつて、進路右斜めにも自転車に乗つた児童が進行していた関係上、右Aらの右側を通過するに際し、同人らとの間隔を充分とることができない状況にあり、しかも道路に敷いた粗砂利は道路両側に片よつていて、道路左側部を自転車に乗車して進行中のAらが被告人運転の大型貨物自動車の接近してくるのに動揺して右粗砂利に自転車のハンドルをとられ転倒するが如き事態の生じた場合、その右横を近接して通過中の被告人運転の自動車と接触する危険のあることは被告人の如き自動車運転者としてはこれを当然予見すべく、従つてこれに備え、右Aらが道路左側端に安全に避譲するのを待つて進行するか同乗の助手に命じAらの行動を注視させる等して同人らの動静に細心の注意を払い進路の安全を確認しながら最徐行し、以つて事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのに、被告人はこれを怠り、Aらの右側を無事通過できるものと軽信し、同人との間隔を約70センチおいただけで、同人の動静に充分注意を払わす、前記速度のままその右横を通過しようとしたため、被告人運転の貨物自動車の接近してくるのに動揺して道路左側の粗砂利にハンドルをとられ自転車もろ共右方に転倒したAの頭部を自車後車輪で轢き、頭蓋骨折の重傷を負わせて、同人を即死するに致らしめたものである。

東京高裁 昭和38年12月2日

道路自体の不安定性が認められるのに、側方間隔70センチ、時速15キロで追い抜きしたことを有罪とする。
なお、裁判所は①又は②を尽くせば結果回避は可能だと判断している。

 

①安全に避譲するのを待つて進行する
②同乗の助手に命じAらの行動を注視させる等して同人らの動静に細心の注意を払い進路の安全を確認しながら最徐行

①は「追い抜きを差し控えるべき注意義務」に当たる。

側方間隔の問題については、以前かなりの判例を挙げてますが、

自転車への側方間隔はどれくらい空けるべき?判例を検討。
先行する自転車を追い越し、追い抜きするときに、側方間隔が近すぎて怖いという問題があります。これについて、法律上は側方間隔の具体的規定はありません。(追越しの方法)第二十八条4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条において「...

これ、挙げようと思えば10件くらいは提示できる。
内容が被るから割愛したものもありますが、例えばこのような事案もある。

右事故発生につき被告人に業務上の過失ありや否やについて更に審判するのに、被告人は時速40キロ前後にて右現場に差しかかり、左前方に右Aが自転車に乗つて、被告人と同一方向に進行しているのを発見したのであるが、被告人は道路左端より少くとも2m強の間隔をおいて進行しており、右Aも右余裕間隔の間を被告人と同一の方向に進行しており、被告人の自動車の前方進路上に進出する等の気配もなく、互に前方に直進する限り、被告人は安全に同人の右側を通過して先行し得るものと判断しそのまま直進を続けたところ、突如Aが蛇行して被告人の自動車の前方進路上に進出したため、急遽急制動の措置に出たが及ばず、自動車左前部をこれに衝突せしめ事故の発生をみるに至つたものであることが認められるのである。而して証拠によればAは右現場近くの大衆酒場つるやにおいて相当量飲酒し歌など唱い酩酊して同店を立出で前記道路左側より自転車に乗つて進行をはじめたのであるが、被告人の自動車の前照燈によつて、後方より自動車の進行してくることは当然気付かなければならない筈であり、前記自動車の進路と道路左端の間には十分の余裕間隔があつてその間を直進しさえすれば、その右側を通過して先行する自動車と接触する等の危険を生ずる虞れもないのに、前記酩酊のため適切な注意力を欠いたか、若しくは自転車の操縦に自由を喪つたためにか、前記の如く蛇行して、被告人の自動車の進路上に進行したものと認められるのである。被告人が最初右Aの自転車を発見したとき、同人が右の如く酩酊して安全な自転車操縦が不可能であることが、その挙動等から判断し得る状況であれば、勿論被告人としても適宜滅速して、同人の動静を十分注視し、その安全を確認してこれより先行すべきことはいうをまたないが、本件の如く突嗟の間に右の如き判断を期待することはできないのであつて、この点についても被告人に注意義務違反があるとはなし得ないのである。また本件実況見分の結果明らかにされた被告人の自動車のスリツプの跡、被告人の自動車がAの自転車に衝突したと判断される地点等から勘案して、被告人は当時ほぼ制限最高速度内において進行していたか、或は若干これを超過していたとしても、これによつて本件事故を惹起したものとは認め難いのである。即ち前記スリツプの跡によつて判断し得る被告人がAの自転車に危険を感じ急制動の措置を講じた地点から勘案して、仮に被告人が右最高速度を超えていなかつたとしても到底Aの自転車との衝突を避け得なかつたことが認められるのである。従つて被告人の自動車の進行速度の点についても被告人には本件事故の原因とみるべき過失はこれを認めることはできない。よつて本件は被告人としては不可抗力によるものであつて、原判決が被告人に業務上の過失ありと認定したことは明らかに事実の誤認であつて判決に影響を及ぼすことが明瞭であるから破棄を免れない。

東京高裁 昭和36年6月6日

道路左端から2m強ということは、自転車との間隔は1m以上かと考えられますが、先行自転車に不安定な様子もなかったところ突如進路変更してきたから回避可能性はない。
しかし、「被告人が最初右Aの自転車を発見したとき、同人が右の如く酩酊して安全な自転車操縦が不可能であることが、その挙動等から判断し得る状況であれば、勿論被告人としても適宜滅速して、同人の動静を十分注視し、その安全を確認してこれより先行すべきことはいうをまたない」としているように、この事案は先行自転車に不安定性が見られなかった事案でしかなく、不安定性が見られるケースでは側方間隔1m強、時速40キロで通過することは許されない。

以前かなりの判例を挙げてますが、数値だけに着目すればバラバラ。
しかし問題になるのは「先行自転車の様子」「道路の状況」なのであって、それを理解しないまま「時速20~30キロで追い抜きならOK」だと勘違いする人が出てくるのよね。

警察庁が示した「目安」の前提を理解せず一律に語るから間違えるのでして。

しかし運転レベル向上委員会も大丈夫なのか心配になるが、こんな内容を「承諾」したらしい。

続いて、黄色実線区間での追い越しについては、第17条が適用されると解説した。黄色実線は標識等ではみ出しが禁止されているため、自転車を追い越すために線を越えることは原則として違反になると説明。ただし、これは進路が重なる「追い越し」の場合であり、進路が重ならない「追い抜き」であれば適用外になるという複雑な構造を解き明かした。

誤解だらけの自転車新ルール!警察も判断に迷う「はみ出し追い越し」の複雑な罠 - ライブドアニュース
チャンネル運営者氏が自身のYouTubeチャンネルで「【自転車追い越し・追い抜きの新ルール解釈】自転車を黄色実線ではみ出して追い越すのは違反?捕まる?最新ルールを徹底解説」を公開した。動画では、2

追い越しの場合も追い抜きの場合も、17条4項の違反になるのに…
それを取り締まるかは別問題で、警察の交通捜査教本によれば「車体の半分以上が右側にはみ出していること」が必要だとしていたりする。

しかし、間違っている内容をメディアが取り上げるのもある意味凄いよね。
情報発信者が道路交通を正しく理解しないから、世間が勘違いする。
そして数値が前提を無視して独り歩きするのも、こうした情報発信者のせいなのよね。

コメント

  1. tk10 より:

    「AIライター自動執筆記事」じゃあどうにもならなそうですね

    誤った情報としてyoutube側に都度報告されたらどうでしょうか
    報告に数が必要なら記事化に際して報告しやすいようまとめられ呼びかけられたら協力します
    私も過去に報告してますが、ここなしでは指摘できる知識もないですし
    載らなければそもそも閲覧しませんし、まあ載っても閲覧してませんけど

    コメント非公開望む

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      YouTubeの通報システムもAI運用と言われてますから、無意味かと。

  2. 匿名 より:

    初めてコメントいたします。
    匿名にて失礼いたします。愛知県在住のしがなき自転車乗りでございます。

    貴サイトにて度々「運転レベル向上委員会」を糾弾なされておられます。
    全くそのとおりで、多数のおかしな解説にあきれているところです。
    (私は裁判判例や解説書等は全くの無知ですし、
     道路交通法並び関連法の詳細な理解もできてはおりませんが、
     通常の日本語解釈をもって道路交通法を読解して明らかにおかしな解説があるところ、
     彼(同じ愛知県在住のようですが)は恥ずべきことをしているものと思います)
    特に、あの歩行者や自転車を見下していること明らかな鼻持ちならぬ口調には
    我慢がなりません。
    愚痴はここまで、本記事の記載についてコメントさせてください。
    今年4/1に改正された(もう少し言えば、不文律であったものが明文化された)自転車に対する側方間隔+速度のルールについてですよね?
    これって、私が車の免許を取るときに教官から「1.5mくらい」間隔を取るように、無理ならちょっと速度を落としてやれよ、と言われた覚えがありますし、まともなドライバーさんはそのようにしてくださったと思います。(普通に考えて当たり前ですし、道交法でいえばおそらくは18条2項の応用なのでしょう。自転車は個々に速度とかが違うのだから、歩行者とは少し違って個々に対応しなければならないのだけれど、大体相対速度が5~10km程度になるように、という話かと思います)「
    どうしてこんな当たり前のことがあたかも大問題のように取り上げられ、なし崩し的に側方間隔なんて必要ないだろ、みたいな話になりかねないのか、悲しく思います。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      以前も書いてますが、そもそも業務上過失致死傷判例において注意義務違反とされてきたものを道路交通法上の義務にしただけでして、以前から注意義務はありました。
      今さら騒ぐことは、注意義務を軽視してきたに過ぎず、的外れなんですよね。

      そしてそれに便乗してデタラメばかりのYouTuberにも呆れます。

  3. 匿名 より:

    ご返信ありがとうございます。
    先ほどは長文並びに括弧等の誤字失礼いたしました。
    そうですよね。ごく当たり前の話を単に明文化しただけの事で、
    それに乗じてヤレ側方間隔だのは知ったことか、
    ヤレ速度も20~30kmにしてやったんだからこれでOKだろ、
    といった考え方になりやしないかと危惧します。

    愚論ながら…
    中央線が黄色実線(いわゆるハミ禁違反道路)であるがために
    自転車を抜くことができない問題(貴サイトでも度々取り上げている17条5項4号関連)を
    あげつらう愚かなYoutuberもいますが。少しは物を考えてほしいものです。
    現行の道交法を遵守できるような車道になっていないのならば、
    遵守できるような車道にしてやればいいじゃないか、とどうして考えないのでしょうか?
    例えば、先のハミ禁違反道路なら、対面通行を諦めて一方通行にすれば、
    自転車は左側端、車は右寄りで走ろう、でとりあえずこの問題自体は解決するでしょう。
    そして、それを以てママチャリのお母さんだって安心して走れる車道だってできるはずです。
    (無論、次にはこれまで対向車線を走っていた連中をどうするんだだとか、
    諸々の課題が発生するから、それを解決しなければいけないのは明白だけれでも)
    これくらいのことを言えばよいのに。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      一方通行化は迂回路が必要になり、迂回路がないまま一方通行化することは移動の自由を制限しかねないため(憲法上疑義がある)、非現実的です。

      そもそもイエローのセンターラインは昭和46年改正にて「対向車との衝突を防止するため」に導入されました。
      17条5項4号本文には、追い越しのために右側通行できる条件を「当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合に限る」としてますが、イエローのセンターラインは「当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合」であるか否かの判断を運転者にさせずに、一律禁止することになる。
      つまり「当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合」の判断が難しい場所や判断させるまでもなく見通しがきかないカープに限定して使うべきなのに、現実には何キロにも渡って見通しがきく場所にも使われていることが問題なのでして。

      「この500mはイエロー」「次の1kmはホワイト」「次の900mはイエロー」みたいにメリハリをつけて設定すれば解決する話ですが、それを妨げるのが公安委員会の意思決定システムです。
      イエローのセンターラインを設定するには、始まりと終わりの住所地と距離を登録する必要がありますが、15キロに渡って延々とイエローのセンターラインにするには、登録件数は1件になります。
      それを細切れに20分割したら、登録件数は20倍になり手間がかかり、人間の心理としてやりたくないでしょう。

      なので根っこがどこにあるか見極めて改善を促す必要があると考えます。

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