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裁判官マップに思う危惧。

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「裁判官マップ」という、裁判官の口コミサイトみたいなのが開設されたという報道を見た人は多いのではないかと思う。
正直な感想としては、うまく機能せず誹謗中傷の温床になるんだろうなとしか見ていない。

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必ず「勝ち」と「負け」が存在する世界

裁判が特殊な分野だと思うのは、必ず勝ちと負けが存在する世界という点。
ここでいう「負け」とは、全面敗訴を意味しない。
例えば一億の損害賠償請求をして3000万しか認められなかった場合には、形式上は「一部認容、一部勝訴」であろうが、損害賠償請求した人からすれば不満が残る。

 

両者がWin-Winになるような判決というのはほぼあり得ない(両者がWin-Winになるなら、裁判を経るまでもなく示談交渉で解決すればよいのである)。
結局、判決に不満を持つ人が悪い口コミを書く捌け口になりかねない。

 

問題なのは、「判決に不満」という判決内容が「問題な判決」なのか、「妥当な判決」なのかが問われないまま悪い口コミを書くことが想定される点。
自分自身で裁判を経験して思ったけど、残念ながら訴訟指揮、論点整理、証拠認定に難があるケースは実際に存在する。
私も一審では、「そういう意味で主張してないこと」を違う意味に捉えられてしまいビックリしたことがある。

 

判決の妥当性がどうなのか?がきちんと検証されないまま、口コミを書く人が出てくるのはもはや必然だし、それこそ今のGoogleマップのように不平な書き連ねる場所になりかねない。

世論のリスク

残念ながら、判決文全体をきちんと理解してから意見を述べることをする人は少ない

 

例えば「ブレスケアひき逃げ事件」についてですが、一審は救護義務違反を認め有罪、東京高裁は無罪とし、最高裁は有罪とした。
うちでも何度か取り上げてますが、東京高裁判決の理屈はおかしい。
結果的に救護した点を重視し過ぎており、判決理由に難があることは様々な法学者も指摘していたことだから、最高裁が破棄し有罪にしたのは真っ当。

 

つまり高裁判決について、判決理由を批判すること自体は正当といえる。

「コンビニブレスケアひき逃げ事件」、最高裁が原判決を破棄し有罪確定に。
以前から注目し何度も取り上げてきた「飲酒運転発覚回避のため事故後コンビニにブレスケアを買いに行った事件」。かなり複雑な経緯を経た裁判なので先にまとめておきます。時期出来事2015/3横断歩道で被害者をはねて死亡させた<過失運転致死罪(自動車...

しかし苫小牧時速118キロ白バイ事故はどうか?
いまだ「冤罪事件」と信じる人が絶えない事故ですが、この事故で有罪判決が妥当な理由は、事実認定にある。

「苫小牧白バイ118キロ事故」について、札幌高裁が原判決を支持した理由。
いろいろ話題になった「時速118キロ白バイ」と「内小回り右折車」の事故。過失運転致死罪に問われた右折車ドライバーに対し、一審(札幌地裁  令和6年8月29日)は有罪判決、二審は原判決を支持し控訴棄却。そもそもこの判決の意味するところを報道が...

報道から感じるイメージは、「被告人は十分対向車を確認してから右折したのに、異常な高速度で白バイが突っ込んできた」。
しかし判決文をみるとわかるように、被告人が右折した際には既に白バイは79mに迫っており、「ほぼノールックで右折したところ、至近距離に迫っていた対向白バイを見落とし、その白バイがたまたま異常な高速度だった」が正解なのよね。

しかしインターネット上で冤罪事件だと主張する人は、判決文すら読まない。
ましてや刑事裁判を「加害者と被害者のどちらが悪いか?」で決まると信じる人も絶えず、正しい評価にならないのがオチ。

 

先ほど、ブレスケアひき逃げ事件の東京高裁判決は判決理由がおかしいと書きましたが、判決理由を非難することは正当でも、裁判官を非難するのはムリがある。

 

なぜなら、高裁だから裁判官三人による合議審になり、理屈の上では「裁判長は有罪、左右の陪席が無罪」だと判決は無罪になる。
最高裁以外は「合議の秘密」と規定されているから、三人の裁判官の間で意見が一致したのか、割れたのか、割れたなら誰が反対意見を述べたのかすらわからない。

 

報道では裁判長の名前しか出てこないけど、三人の間でどうだったのかすらわからないのに裁判長を非難するのはムリがある。
だからまともな人は判決理由のみを非難するのであって、裁判官という人を評価しない。

 

しかも、合議の秘密があるから事実無根な口コミを書かれたとしても、反論できないという歪みも抱えている。

 

そしてもっと問題なのは、判決文を読んだとしても判決内容を改竄して紹介するYouTuberがいることでして。

運転レベル向上委員会がエア判例や改竄を繰り返す理由と、AI時代の問題点。
こちらの件。運転レベル向上委員会は相変わらず存在しない判例を創作してますが、今に始まったことではなく、過去何度もやっているので驚きはない。判決年月日内容最判S53.3.30この日に運行供用者責任についての最高裁判決はないし、運転レベル向上委...

運転レベル向上委員会は過去、10件以上の判例の中身を改竄して紹介している。
このようにきちんと読めないまま裁判官を評価するYouTuberがいたり、それを真に受けて悪い評価をしてしまう視聴者が出るのも必然ですが、

 

なにせ、当の本人には何の反省もないのだから、誤った世論が形成されるのは必然。

必要なのか?

裁判官が評価される仕組みがないに等しい(最高裁を除き)という点では、このようなサービスも必要なのかもしれないけど、そのサービスが正しく機能するかについては危惧せざるを得ない。

 

民間の有料判例検索サイトだと、判決文にある裁判官名をクリックすると、その裁判官が関与した判例一覧が出てくる。
個人的にはその機能を使ったことはないし、今後も使わないと思うけど、裁判官マップにも似たような機能があり、その裁判官が関与した裁判の一部が表示されるらしい。

 

民間の有料判例検索サイトでは、関与した裁判例がズラリと多数出てくるけど、有料判例検索サイトですら全ての裁判例を網羅しているわけではない。
裁判官マップに表示される裁判例は、さらに少ない裁判例しか表示されないのだし、情報としては不足する。

 

訴訟指揮がおかしい、論点整理がおかしい、証拠価値の認定がおかしいということは残念ながら存在する。
判決理由がおかしいことも残念ながら存在する。

 

しかし現状の裁判の仕組みや世論の事実誤認などを考えると、歪んだ評価にしかならないのではないか?と危惧せざるを得ないのよね。
合議の秘密がなくなれば、まだ裁判官という「人」を評価することが可能になりそうな気もするけど、運転レベル向上委員会のように判決内容を理解せず、改竄して違う内容にしてしまうYouTuberがいることも考えると、やはり正しく機能しないのではなかろうか。

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