運転レベル向上委員会の法律解釈は間違いが多発してますが、44条の話。
第四十四条 車両は、道路標識等により停車及び駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合のほか、停車し、又は駐車してはならない。
一 交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾配の急な坂又はトンネル
いわゆる交差点内駐停車禁止のルールである。
さて、運転レベル向上委員会の解説だと「法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合のほか」を取り違えてますが、どちらが正解なのでしょうか?
A、「法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合」であっても交差点内で停止することを許さない趣旨である。
B、「法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合」には交差点内で停止することを許す趣旨である。
答えはBだよね。
「法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合」であれば、交差点内であっても停車することが許される。
この場合の「◯◯のほか」とは、ニュアンス的には「◯◯を除き」になる。
なぜこんな簡単な条文を「難しい判断になる」などと語るのか不思議でならない。
例えばこのような判例がある。
一審は「被告人は昭和37年9月9日午後4時20分ごろ神戸市葺合区小野柄通8丁目1番地先道路の交差点の側端から約2メートルの地点において不法に普通乗用自動車を停車したものである」として、44条2号に違反するとした。
有罪とした理由はこちら。
自動車のドアが開きかけたので危険であるから、被告人が一時停車してドアを締めたのは適法であるが、その直後母親らしき人が子供を真中へやるからといつて一旦降車し、車の後を廻り反対側のドアから乗車するまで被告人はこれを阻止する十分な措置を採らず、その他妥当な方途を講じないで停車状態を継続していたものであるから、被告人の右の如くドアを締めるまでの停車は道路交通法44条にいう「危険を防止するため一時停車する場合」に該当するが、ドアを締めた後の停車は右除外事由に当らない
要するに、開きかけたドアを閉めるために交差点から2mの位置に一時停止したことは、44条柱書きにある「危険を防止するため一時停車する場合」にあたるから「適法」だが、その直後に子供を真ん中に座らせるためにクルマから降りて停車を継続したことを違法だと一審は判断。
この時点で、「危険を防止するため一時停止する場合」には交差点での停車を「許す趣旨」なのは言うまでもない。
そして大阪高裁は破棄無罪に。
被告人の司法警察員に対する供述調書及び原審における供述によると、被告人は自動車の後部右側ドアを締めるため原判示道路上に一時停車し該ドアを締めたところ、後部左側座席に乗車していた母親らしき人が後部右側座席の子供を真中にやるといつて左側ドアを開けて降車しようとしたので「降りては困る」と注意したが、母親はいきなり降車し車の後方を廻り反対側の後部右側ドアから乗車し座席の真中にあつた荷物をかわし、子供を真中に坐らせたこと、被告人は母親が降車したので「早くしてくれ」と急がせ、母親が乗車するや直ちにドアを締め発車したことが認められるのである。右事実によると、母親の降車は被告人の予期しない突然の出来事であるから、被告人は母親の降車を阻止できなかつた状況であつたといわなければならない。従つて、母親の行動を阻止しなかつたとして被告人を非難する原判決のこの点の判断は失当である。更に被告人として母親が降車した後車を他の適当な場所へ移行させ、改めて母親を乗車させることが可能であつたかどうかについて検討を加えてみるに、本件停車地点附近は交通の往来の頻繁なところで、被告人の車の前後にも交差点があり、他に適法に停車できる場所があつたとは証拠上認められず、(原審検証調書参照)殊に原審証人の第二回公判における供述によると、本件停車当時被告人の車の前後にバスがいたというのであるから、母親を残して発進することは却つて乗客に対しては勿論他の通行の人車に対する危険性を増長することになり、この危険を犯してまで停車を禁止することは法の目的に反するものである。従つて、母親が乗車するまで車を停車した被告人の措置は「危険を防止するため一時停車する場合」に該当するから、本件停車を不法な停車とした原判決の認定は誤りである。更に証拠を検討しても本件につき法定の除外事由が存在しなかつたことを認めることはできない。
大阪高裁 昭和40年7月10日
次。
38条1項後段の解釈もおかしい。

第三十八条
(前段省略)この場合において、自転車横断帯によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする自転車があるときは、当該自転車横断帯の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。)で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。
この規定は「2つの対象」に対し「2つの義務」を課している。
つまりバラバラ化するとこうなる。
②自転車横断帯によりその進路の前方を横断する自転車があるときは、その通行を妨げないようにしなければならない。
③自転車横断帯によりその進路の前方を横断しようとする自転車があるときは、当該自転車横断帯の直前(停止線があるときは停止線の直前)で一時停止しなければならない。
④自転車横断帯によりその進路の前方を横断しようとする自転車があるときは、その通行を妨げないようにしなければならない。
停止線の直前に至ったときに「進路の前方を横断しようとする自転車」に該当しなければ停止線での一時停止義務はないものの、このケースのように停止線と自転車横断帯が離れている場合には、自転車横断帯の直前に至ったときに「進路の前方を横断しようとする自転車」に該当することもありうる。
そのような場合においても、「その通行を妨げないようにしなければならない」という義務は残るのよね。
さて、38条1項後段の前身にあたる71条3号(昭和38年改正以前のもの)は、このように規定していた。
第七十一条 車両等の運転者は、車両等を運転するときは、第六十四条から第六十六条まで及び前三条に定めるもののほか、次の各号に掲げる事項を守らなければならない。
三 歩行者が横断歩道を通行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行を妨げないようにすること。
「通行を妨げない義務」を定め、妨げないための方法として一時停止又は徐行のどちらかを選択できた。
もちろん、義務は「通行を妨げないこと」なのであるから、徐行により通行を妨げることになるなら一時停止する必要がある。
現行38条1項後段の「通行妨害禁止義務」については、通行を妨げないための方法は明示されていない。
しかし多くの場合、一時停止しないと通行を妨げる結果になるだろうから、
今回のケースのように、停止線と自転車横断帯が離れている場合において、停止線を越えた後にも「進路の前方を横断しようとする自転車」に当たるのであれば、通行を妨げないために自転車横断帯の直前で一時停止することになるのよね。

※横断歩道を「自転車横断帯」、歩行者を「自転車」と読み替えること。
つまり38条1項後段の「自転車横断帯によりその進路の前方を横断しようとする自転車があるときは(又は横断する自転車があるときは)、その通行を妨げないようにしなければならない」という義務は、停止線を越えた後にも残る。
妨げないための方法は明示されていないものの、衝突リスクがあるなら一時停止する必要があるのは当然だし、それは「危険を防止するための一時停止」なのよね。
旧71条3号は昭和38年改正で現在と同じ形式に変わりましたが、その意図と解釈はこちら。
なお、本号においては、車両等の運転者に対し、一時停止する義務と歩行者の通行を妨げてはならない義務を並列的に課しているから、車両等の運転者は、およそ歩行者が横断歩道により道路の左側部分を横断し、または横断しようとしているときは、現実にその通行を妨げることになろうとなるまいと、かならず、まずは一時停止しなければならないこととなる。この点従前の本号の規定は、「歩行者が横断歩道を通行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行を妨げないようにすること」と定められ、車両等の運転者に対しては、歩行者の通行を妨げてはならない義務のみが課され、その方法としては、一時停止と徐行が選択的に認められていたから、状況によっては、かならずしも一時停止する必要がなかった。したがって、このような規定によっても、歩行者の保護は理論上は一応図られていたわけであるが、現実の力関係においては、車両等の方が歩行者に比してはるかに強く、歩行者が横断歩道に入るきっかけがなかなかつかめず、結果としてその通行を妨げられることが少なくなかった。そこで昭和38年の道路交通法の一部改正により、本号の規定を現行のように改め、車両等の運転者に対し一時停止の義務を課して歩行者に横断歩道に入るきっかけを作ることにより、その保護の徹底を図ることとしたわけである。
宮崎清文、条解道路交通法 改訂増補版、立花書房、1963(昭和38年)
ちなみにですが、警察的には「停止線での一時停止」にこだわる必要がないという解釈でして、このような停止線と自転車横断帯(横断歩道)が離れている場合には、どちらで一時停止しても法の趣旨である「横断歩行者(横断歩道)、横断自転車(自転車横断帯)の優先」を達成できることのみを重視している。
法の趣旨からすれば、そりゃそうだわなと。
けど運転レベル向上委員会って、こうした部分を理解してないから間違えるのよね。


法の趣旨を理解してない理由は、38条1項(71条3号)の改正史と改正理由を理解してないことにあるし、理解してないから「クラクション鳴らして蹴散らせ」とかメチャクチャな話をするのよね…
なぜこの人は、解説書を読まないまま独自論を創作するのだろう。
実際の運転に直結しない解釈なんて無意味なのよね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


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