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無免許運転罪で実刑判決。

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以前取り上げたこちら。

執行猶予中の無免許運転。
ちょっと前に、タイヤを脱落させ小学生にタイヤが激突して植物状態にさせた事故がありましたが、札幌地裁令和7年4月24日判決は、運転者について過失運転致傷罪の成立を認めたものの執行猶予判決。その人が無免許運転で逮捕されたと。さて。当然、前回の過...

タイヤ脱落事故(過失運転致傷罪)について有罪判決(懲役3年、執行猶予5年)となっていた者が、無免許運転を「少なくとも182回」繰り返したとして無免許運転罪(道路交通法違反)に問われたもの。
札幌地裁は拘禁刑1年の実刑判決とした。

【速報】"4歳女児タイヤ直撃"で執行猶予中に無免許運転…若本豊嗣被告(52)に拘禁刑1年の実刑判決 札幌地裁 | TBS NEWS DIG
執行猶予中に無免許運転を繰り返した罪に問われた若本豊嗣(わかもと・とよし)被告(52)の裁判で、札幌地裁は、拘禁刑1年の実刑判決を言い渡しました。若本被告をめぐっては、2023年、不正改造した車から外れた…

被告人は控訴しない方針らしいが、判決が確定すると自動的に執行猶予が取り消され、懲役3年、拘禁刑1年となる。

 

ところで、被告人はタイヤ脱落事故の過失運転致傷裁判において、今後運転しないことを誓っていたことも理由として執行猶予付き判決になってますが、結果的には無免許運転したことをみると、過失運転致傷裁判の判決が甘いと見る人も出てくる。

2 検討を要するのは、被告人Aの量刑である。
⑴ 判示第1において、被告人Aは、車の整備の豊富な知識・経験を見込まれて被告人Bから改造の依頼を受けたものではあるが、同犯行の際に被告人Aがした作業として認定できるのはタイヤをホイールに装着して被告人Bに渡したことまでであって、タイヤ突出の中核を担ったとはいい難い。
⑵ 次に、判示第2についてみると、被告人Aは、判示のとおり被告人Bから本件車両の足回りに異常があると聞かされていただけでなく、一般にワイドトレッドスペーサーを装着した車両は部品の影響でホイールナットが緩みやすいとの認識も有していたのであり、かつ、本件車両のワイドトレッドスペーサーは自らが装着したのであるから、本件事故当日、ホイールナットに不具合がある可能性に思い至り、運転を控えた上で、その点検義務を果たすことは容易であったはずである。かつ、被告人Aは、被告人Bと共に本件車両に種々改造を施したことによって、異常に気付きづらい車両となっているとの認識も有していたのであるから、走行に当たって十分な安全性を担保すべく、上記点検をすべき高い注意義務を負っていたといえ、以上を怠り漫然と運転した過失は悪質である。
その結果、いまだ幼く未来ある被害者が受けた判示の傷害は非常に重大で、全く落ち度のない被害者が、意識が戻る見込みがないと診断され、意思疎通できないという理不尽な状況にあり、父親の意見陳述等で明らかなように、被害者家族が峻烈な処罰感情を有することも当然である。
もっとも、広く本件事故の原因をみると、そもそも被告人Aが判示第2の運転をする前に、本件車両左前輪タイヤのホイールナット(以下「本件ホイールナット」という。)の締付けが緩んでいたことに根本的な原因があった。そして、検察官も同タイヤを取り付けてホイールナットの締付けを行ったのが被告人Aであるとは主張しておらず、その立証に照らしてもそれが同被告人であったとは認定し難い。すなわち、本件事故直後に保全された本件車両を検証した結果等に照らすと、本件車両は後輪のホイールナットが過剰に締め付けられ、他方、前輪のそれは締め付けが甘かったものと認められるところ、被告人Aは、自分がホイールナットを締める場合、過去に自動車整備の仕事もしていた長年の経験から、まずナットとボルトに損傷がないか感覚で確認するとともにナットを締め過ぎて損傷しないよう、手でナットを回せるところまで回し、その後インパクトレンチを使って締め、更に規定トルク値まできちんと締まるようにトルクレンチを使って締めるように必ずしており、本件車両のホイールナットのような締め方になるはずがない旨、自己が本件ホイールナットの締付けを行っていないことにつき一定の具体的かつ合理的な根拠をもって述べている。これに対し、被告人Bは、本件不正改造時に自己が果たした役割について捜査段階から小出しに供述を変遷させていること等からすると、前輪の取付けはしていない旨の同被告人の供述はにわかに信用できず、被告人Bが本件ホイールナットを付けた可能性は排斥できない。さらに、判示第1から第2までの間、被告人Bが数回にわたり悪路を含む場所で本件車両を走行させたことも認められ、この運転が本件ホイールナットの緩みを助長した可能性も否定できない。そして、本件ホイールナットの緩みは、一次的には同車両の所有者である被告人Bの責任で点検すべきものであることからすれば、被告人Bが被告人Aに本件車両の点検を依頼したことを考慮しても、本件事故時における本件ホイールナットの緩みにつき、最後にこれを看過して運転した被告人Aばかりを大きく責めることは難しい(なお、各検証結果等によれば、本件事故時にタイヤが脱落したのは本件ホイールナットの緩みが原因であって、判示第1の改造やそれ以前に被告人Aが行ったワイドトレッドスペーサー等の取付け自体は直接的な原因ではない。)。
加えて、被告人Aは、被告人Bから前記異常を伝えられた後、直前に自己が改造を施したフロントロアアームやステアリングダンパー等の確認はしており、点検に対して無関心だったわけではない上、これまでに判示第1と同様の改造をした際にホイールナットが緩んだ経験がなかったこと等からすれば、自身がした上記改造に異常の原因があるのではないかと思い込んで本件ホイールナットの点検をしなかったという懈怠が、厳しく非難されてしかるべきとまではいえない。
なお、検察官は、被告人Aが整備業経験者で知識を有することを指摘するが、被告人Aは本件車両の点検に業務として応じていたのではないから、本件において同被告人に特別に高度な注意義務があったというのは相当ではない。以上から、被告人Aの過失を重大とまで評価することにはいささか躊躇を覚える。
また、本件車両は任意保険がかけられていないため、十分な被害弁償は現時点では見込まれていないが、これも本来責められるべきは同車両の所有者たる被告人Bである上、被告人Aは入院費用等の実費のうち約200万円を支払っている。
⑶ 以上からすると、同種事案の量刑傾向を踏まえても、被告人Aに係る犯情が実刑が避けられないようなものとまではいえない。
⑷ さらに、被告人Aは交通事犯の前科4犯を有し、とりわけ本件の五、六年前に無免許運転等を繰り返した点は、自動車運転に対する規範を軽視する姿勢として無視できないが、その処罰は罰金刑にとどまっているし、本件につき自己の過ちを認め、今後自動車の運転をしないと誓うなど、自らの行動を反省する態度が認められる
そうすると、被告人Aに対して実刑を科すほかないとまではいえないから、主文のとおりの刑を量定した上で、法が定める最長期間、その刑の執行を猶予することとする。

札幌地裁 令和7年4月24日

しかし、執行猶予付き判決にした理由のメインは「今後運転しないことを誓ったこと」ではないのは判決文から明らかなのだし、せいぜいダメ押し的な意味合いかと。

 

ところで今回の裁判、検察官が182回の無免許運転罪の立証をしたなら、182個の無免許運転罪が成立し併合罪となる。
複数回の無免許運転罪は併合罪なのでして。

第一、弁護人の控訴趣意一は、法令適用の誤りを主張し、原判決は、被告人の七回にわたる本件無免許運転行為を刑法四五条前段の併合罪と解して、併合罪加重を施しているけれども、本件の場合は、犯意の同一性、継続性、犯罪の同一性(同一構成要件の充足)、被害法益の単一性等の観点から、包括一罪と解すべきであるというのである。

しかしながら、犯罪の個数は、社会通念から見た犯罪行為の回数、法益侵害の回数、犯意の個数等種々の観点から総合的に観察して決すべきところ、自動車の無免許運転罪においては、特定の日に特定の車両を運転したときに、社会通念上一回の犯罪行為がなされ、その都度道路交通の安全と円滑に対する危険が生じたものと考えられ、これらの点に着目すれば、たとえ無免許運転の犯意が数回にわたって同一または類似のものであるとしても、特定の日に特定の車両を運転した毎に一罪が成立するものと解するのが相当である(広島高等裁判所昭和四一年四月一四日判決(高刑集一九巻三号二九六頁))、東京高等裁判所昭和四四年一〇月一三日判決(高刑集二二巻五号七五四頁)、同裁判所昭和四九年六月一三日判決(判例時報七五八号一一八頁)参照。)。してみれば、被告人が、原判示のとおり、昭和五〇年一二月二三日、同月二五日、同月二六日、同月二九日、同月三〇日、同五一年一月七日および同月一二日の前後七回にわたり、無免許で普通乗用自動車を運転した本件行為につき、七個の無免許運転の罪が成立し、これらが刑法四五条前段の併合罪の関係にあるものとして処断した原判決は、法令の適用を誤ったものとはいえない。論旨は理由がない。

東京高裁 昭和51年10月18日

ただまあ、間違い解説でお馴染みの運転レベル向上委員会は包括一罪にしかならないというデタラメ動画を流してしまう。

きちんと理解することが大事だし、免許取り消し後の無免許運転は実刑リスクが高い上、複数回の無免許運転なら罪は重くなり実刑リスクが高まるし、執行猶予中なら執行猶予取り消しリスクが高まる。
執行猶予が抑止力になればタイヤ脱落事故判決も結果的に意味があったと言えるし、抑止力にならずさらに犯罪を重ねたならタイヤ脱落事故判決が結果的に甘かったともいい得るが、

 

結果をみてから「ほら見たことか」と論評する結果論者ってなんかみっともないように思うのよね。
結果次第で結論が左右されちゃっているのだから。

 

ちなみに無免許運転については、一発目からいきなり実刑になることはほとんどないものの、3回目の無免許運転で実刑判決にした判例がある。

原動機を使わずに惰性で下った原付は「運転」と言えるか?
ちょっと面白い判例があるのですが、判例タイムズ2023年7月号(1508号)に掲載されたものです。詳しくは判例タイムズを買って読みましょう笑。下り坂をエンジンを使わずに惰性で進行した原付は「運転」と言えるか?が争点です。エンジンを使わずに惰...

ちなみに冒頭の件については、被告人は控訴しない方針と報道されてますが、控訴したところで182個の無免許運転罪、前科、悪質性を考えれば無意味だからでしょう。

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