今回取り上げるのはこちら。

報道内容が不十分で、イマイチ何の話なのかわかりにくい。
この事故は2021年7月に、被告人が「右折待ちの車列に追突」したことから始まる。
右折しようとして待機していた右折待ち車列に追突したはずみで、被告人車は対向車線に侵入した。
そして対向車線を原付に乗り通行していた被害者と衝突し、被害者は死亡した。
これについて、警察は危険運転致死傷罪の容疑で逮捕した。
2 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
第三条 法第三条第二項の政令で定める病気は、次に掲げるものとする。
二 意識障害又は運動障害をもたらす発作が再発するおそれがあるてんかん(発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)
※3条は準危険運転致死傷罪と俗称で呼ばれたりするが、法文上は危険運転致死傷罪に当たる。なお、てんかんであれば全て該当するわけではない。
しかし検察は嫌疑不十分として不起訴にした。
ご遺族が検察審査会に申し出て、不起訴不当の決議を経て再捜査し、危険運転致死傷罪などで起訴したという流れ。
ここまでで疑問を持つ人がいると思う。
危険運転致死傷罪は故意犯の処罰規定だから、「てんかんの影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」であったことを未必的にせよ認識している必要がある。
被告人は捜査段階から一貫しててんかんの影響であることを否認していたと読み取れますが、仮にてんかんの影響であることを認識していなかったとしても、過失運転致死傷罪には問えるのではないか?と。
要するに「前方不注視の過失」、つまり前をよく見ずに追突した過失で問えるのではないか?と。
こちらの記事をみてわかったんだけど、

要するに、事故を起こしたときに意識障害が起きてことは検察官/被告人ともに共通認識があり、意識障害により追突事故を起こし、そのはずみで対向車線に侵入し被害者を死亡させたことに争いはない。
しかし「てんかんの影響により正常な運転に支障が生じるおそれ」、つまり「てんかんであることの認識」と「正常な運転に支障をきたすおそれがあるてんかんの認識」がなければ危険運転致死傷罪には当たらない上に、
てんかんの認識がないのに意識障害が起きたのであれば前方注視義務は履行不可能であるから、前方不注視の過失を問うことが出来ず、過失運転致死傷罪にも当たらないことになる(長崎地裁佐世保支部 令和8年1月28日判決参照)。
さて。
被告人は過去にも事故を起こし、医師から二回「てんかんだから運転するな」と言われているそうな。
医師が言ったから被告人が認識していた…と必ずしもならないのは言うまでもないけど、
被告人は事故直後に同乗していた姉に「てんかんよ」と答えたことや(ドラレコに証拠があるらしい)、夫に「てんかんのことは主治医に言わないで」とLINEした記録もあるらしい。
これらを踏まえれば危険運転致死傷罪の故意は十分認定できると思われますが、あとは意識障害がてんかんによって起きたのかの立証も必要になる。
そして報道を見る限り、危険運転致死傷罪「など」で起訴したとのことで、運転避止義務違反の過失を元に過失運転致死傷罪を予備的訴因にしたのだろうか。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


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