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不起訴事案を危険運転致死傷罪で起訴した理由。

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今回取り上げるのはこちら。

【速報】持病のてんかんによる発作で22歳女性が死亡する事故を起こしたなど危険運転致死傷の罪に問われた女 「てんかんの発作が起きたわけではない」起訴内容否認し無罪主張 逮捕後一度は不起訴も 遺族の検察審査会申し立て経て起訴(関西テレビ) - Yahoo!ニュース
5年前、持病のてんかんによる発作で当時22歳の女性を死亡させるなど3人を死傷させる事故を起こした、危険運転致死傷の罪に問われた56歳の女の裁判が、和歌山地方裁判所で始まり、「てんかんの発作が起きたわ

報道内容が不十分で、イマイチ何の話なのかわかりにくい。

 

この事故は2021年7月に、被告人が「右折待ちの車列に追突」したことから始まる。
右折しようとして待機していた右折待ち車列に追突したはずみで、被告人車は対向車線に侵入した。
そして対向車線を原付に乗り通行していた被害者と衝突し、被害者は死亡した。

 

これについて、警察は危険運転致死傷罪の容疑で逮捕した。

第三条
2 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする
(自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気)
第三条 法第三条第二項の政令で定める病気は、次に掲げるものとする。
二 意識障害又は運動障害をもたらす発作が再発するおそれがあるてんかん(発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)

※3条は準危険運転致死傷罪と俗称で呼ばれたりするが、法文上は危険運転致死傷罪に当たる。なお、てんかんであれば全て該当するわけではない。

 

しかし検察は嫌疑不十分として不起訴にした。
ご遺族が検察審査会に申し出て、不起訴不当の決議を経て再捜査し、危険運転致死傷罪などで起訴したという流れ。

 

ここまでで疑問を持つ人がいると思う。
危険運転致死傷罪は故意犯の処罰規定だから、「てんかんの影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」であったことを未必的にせよ認識している必要がある。
被告人は捜査段階から一貫しててんかんの影響であることを否認していたと読み取れますが、仮にてんかんの影響であることを認識していなかったとしても、過失運転致死傷罪には問えるのではないか?と。

 

要するに「前方不注視の過失」、つまり前をよく見ずに追突した過失で問えるのではないか?と。

 

こちらの記事をみてわかったんだけど、

「お別れも言えず突然…娘は顔じゅう傷だらけ」多重事故に巻き込まれ22歳の娘が死亡 一時は“不起訴”も5年経て女の初公判 被告は無罪主張「てんかんではないと…」遺族の思いは【裁判詳報】(MBSニュース)|dメニューニュース
和歌山市でてんかんの発作で意識障害に陥るおそれを認識しながら車を運転して事故を起こしたなどとして危…

要するに、事故を起こしたときに意識障害が起きてことは検察官/被告人ともに共通認識があり、意識障害により追突事故を起こし、そのはずみで対向車線に侵入し被害者を死亡させたことに争いはない。
しかし「てんかんの影響により正常な運転に支障が生じるおそれ」、つまり「てんかんであることの認識」と「正常な運転に支障をきたすおそれがあるてんかんの認識」がなければ危険運転致死傷罪には当たらない上に、

 

てんかんの認識がないのに意識障害が起きたのであれば前方注視義務は履行不可能であるから、前方不注視の過失を問うことが出来ず、過失運転致死傷罪にも当たらないことになる(長崎地裁佐世保支部 令和8年1月28日判決参照)。

裁判例結果詳細

さて。
被告人は過去にも事故を起こし、医師から二回「てんかんだから運転するな」と言われているそうな。
医師が言ったから被告人が認識していた…と必ずしもならないのは言うまでもないけど、

 

被告人は事故直後に同乗していた姉に「てんかんよ」と答えたことや(ドラレコに証拠があるらしい)、夫に「てんかんのことは主治医に言わないで」とLINEした記録もあるらしい。
これらを踏まえれば危険運転致死傷罪の故意は十分認定できると思われますが、あとは意識障害がてんかんによって起きたのかの立証も必要になる。

 

そして報道を見る限り、危険運転致死傷罪「など」で起訴したとのことで、運転避止義務違反の過失を元に過失運転致死傷罪を予備的訴因にしたのだろうか。

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