LUUP利用者が死亡した事故が報道されてますが、
LUUP利用者が死亡した事故は二件目になる。
一件目は特定小型原付施行前の実証実験中の事故で、駐車場の車止めに引っ掛かり転倒したとされている(なお飲酒運転だったとされている)。
さて、今回の事故について詳細が報道されてないことから、陰謀論に傾倒する人とかも出てくるでしょうが、
陰謀論の本質は、事故の本質から目を背け、推測と妄想に走る点にある。
今回は「事実」のみを取り上げようと思う。
まず今回の事故車両が電動キックボードタイプなのか、着座型特定小型原付(LUUPでは電動シートボードと呼んでいる)なのかはわかりません。
どちらのタイプも通常モードであれば時速20キロまで、特例モードであれば時速6キロまで出ます。
次に事故現場。
歩道には「自転車通行可」の標識があるので、特定小型原付は「特例モード(時速6キロモード)」であれば歩道通行可能。
歩道通行時には左右の指定がありませんから(道路交通法17条4項)、右側の歩道を通行しても逆走には当たらない。
次に事故現場は自転車横断帯だそうですが、特定小型原付が自転車横断帯を通行することを禁じた条文はないため、下記規定に抵触しない範囲であれば自転車横断帯を通行することは可能と考えられます。
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
結構勘違いされているのは、クルマが横断歩道を使って横断することも禁止されておらず、25条の2第1項に抵触しない範囲であればクルマが横断歩道を通行することも可能です。
道路交通法上、車両の横断歩道通行を直接に禁止する規定はない
「小児用の車の意義について」(警察庁交通局交通企画課 中澤見山)、月刊交通1979年7月(昭和54年)、東京法令出版
自転車横断帯についても同様で、車両が自転車横断帯を通行することは直接的に禁止されておらず、正常な交通を妨害するおそれがないなら可能。
報道によると、警視庁は「LUUPが渡った横断帯が片側通行であったのか、相互通行であったのか確認していて、片側通行だった場合は逆走にあたる可能性がある」として調査中らしいですが、「横断」という行為に左右はないし、現に自転車が自転車横断帯を通行する際に逆走という概念はありません。
なので被害特定小型原付が自転車横断帯を通行したことを「逆走」とは取れないでしょう。
もちろん正常な交通を妨害するおそれがあるときは横断禁止(25条の2第1項)なので、横断するにあたり十分な確認が必要と考えられます。
個人的に不思議なのはこれ。

自転車横断帯を通行する自転車用に「自転車専用」の信号がありますが、以前指摘したように、信号についた「自転車専用」の場合には特定小型原付に対する効力がない。

標識に「自転車」という補助標識があるときには特定小型原付を含みますが、信号に「自転車」という表示板があるときには特定小型原付を含まない。
標識は標識令、信号は道路交通法施行令に規定されていることから起きたバグと考えられますが、この場合、自転車横断帯を通行する特定小型原付は交差点についている三灯式信号に従うと考えざるを得ない。
まあ、現実的には自転車横断帯を通行する以上、自転車専用信号に従う注意義務はあるでしょうが。
さて。
事故の詳細はわかりませんし、わからないものは評価しようがありませんが、そもそもこのタイプの交差点は安全とは言いがたい。
仮に特定小型原付がこの自転車横断帯を通行したことが「逆走」と捉える余地があったとしても、交差点を右折するクルマからすると何の関係もない。
なぜなら、自転車については自転車横断帯を双方向に通行可能なのだから、相手が自転車ならアウト、特定小型原付ならセーフとはなり得ないのでして。
ただまあ、警視庁は「LUUPが渡った横断帯が片側通行であったのか、相互通行であったのか確認していて、片側通行だった場合は逆走にあたる可能性がある」として調査中らしいですが、「横断」と捉えれば左右はないものの、この自転車横断帯が交差点内にあると評価できることが問題を複雑にしている。
なお、道路交通法2条5号にいう道路の交わる部分とは、本件のように、車道と車道とが交わる十字路の四つかどに、いわゆるすみ切りがある場合には、各車道の両側のすみ切り部分の始端を結ぶ線によつて囲まれた部分――別紙図面斜線部分――をいうものと解するのが相当である。
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日
というのも、自転車が交差点内の自転車横断帯を通行する場合には「17条4項の規定にかかわらず」としていることから、自転車横断帯を通行する自転車には左側通行義務が適用除外だとわかる。
第六十三条の七 自転車は、前条に規定するもののほか、交差点を通行しようとする場合において、当該交差点又はその付近に自転車横断帯があるときは、第十七条第四項、第三十四条第一項及び第三項並びに第三十五条の二の規定にかかわらず、当該自転車横断帯を進行しなければならない。
しかし自転車横断帯を通行する特定小型原付が17条4項の適用除外になるという条文はない。
そうすると「交差点内を進行、かつ、横断ともいえる」場合に、特定小型原付が自転車横断帯を通行したことが逆走と捉える余地が全くないとは言えない。
警視庁が事故詳細を発表しない理由も、法解釈を聞かれたら返事に困るからなんだろうなと容易に予想されますが、
陰謀論を語る人が絶えないのは、交通安全について考えかいるわけではなくて、単にエンタメ化して注目を浴びたい一心でしかないのかなと。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。



コメント
これはユーチューバーではなく、テレビ局なんですね。
それにしては、LUUPを悪者にしたいように聞こえてしまいます。
報道としては、電動キックボード(と言ってますね)と言えばいいところを、
LUUPというサービス名を出して、問題があるような言い方に聞こえます。
局としての意向なのか、警視庁の意向なのかは分かりませんが。
コメントありがとうございます。
まあ、LUUP=嫌悪、という図式はありますから…