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[回答編]クイズ右直事故と過失割合。

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さて、こちらの件。

クイズ右直事故と過失割合。
今回は皆さんに考えてもらいたい事故の過失割合についてです。形式的には右直事故。では事故の態様。・訴外B車は時速90キロ程度で交差点に向かっていたところ、対向車が右折してきたのをみてブレーキを掛けて減速した(急ブレーキではなく、速度が速すぎる...

事故の態様をおさらいします。

 

事故の態様。

 

・訴外B車は時速90キロ程度で交差点に向かっていたところ、対向車が右折してきたのをみてブレーキを掛けて減速した(急ブレーキではなく、速度が速すぎるために右折車と衝突するリスクがあると考えた)。
・訴外B車が減速したところを追い抜いたバイクは、追い抜いた後にブレーキを掛けて転倒した。
・転倒したバイクはそのまま滑走し、右折車の左後部側面に衝突した。
・訴外B車は右折車ともバイクとも接触、衝突はしていない。

さてバイクと右折車の過失割合ですが、裁判所の判断はこちら。

バイク 右折車
100 0

この判例の詳細は後日詳しく書きますが、右折車には予見可能性も回避可能性もなく過失がないと判断された。
そのポイントはいくつかありますが、要するに著しい高速度と言える訴外B車ですら急ブレーキをかけるでもなく容易に衝突を回避できる距離だったこと、右折車は十分な安全確認を行って右折を開始し、右折がほとんど完了した位置において左後部側面に衝突してきたのだから、回避可能性もない。

 

で。
過失割合って本当に誤解が多く、その最たる例は大分の時速194キロ右直事故ですよね。
運転レベル向上委員会は右直事故の基本過失割合を理由に右折車のほうが過失が大きいなどとデタラメな解説をしてましたが、

時速120キロ直進車と、交差点右折車が衝突。過失割合はどうなる?
何年か前に大分で、時速194キロで直進するクルマと交差点右折車が衝突する事故がありましたが、一般原則としては右折車が劣後します(道路交通法37条)。第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しよう...

直進車が著しい高速度の場合には基本過失割合を適用せず個別判断になるというのは民事では常識なのでして。
基本過失割合が想定する事故態様、基本過失割合に内包された過失が当てはまらない非典型例なのだから、基本過失割合を適用しないことは当然。

 

現に大分時速194キロ事故については、刑事一審において「損害全額」が賠償される見込みだとする。

その上で、被告人が、常習的に高速度走行に及んでいたことなど自己に不利益な事実を率直に認めたり、本件事故現場での献花を続けたりして、反省の態度を示していること、未だ若年であること、両親が出廷して社会復帰後の監督を申し出ていること、被害者の遺族に対して保険により損害全額の賠償がなされる見込みがあることのほか、被告人の責めに帰し得ない事情のため公訴提起から公判審理までの期間が長引き、被告人として不安定な状態に置かれ続けたことといった一般情状も考慮し、主文の刑を量定した。

大分地裁 令和6年11月28日

つまり、直進車100%という過失割合については合意していることが窺われる。
そりゃ、時速194キロの直進車を予見し回避することは右折車には不可能なのだから、様々な判例に照らしても直進車100%で示談することは当然。
大分の件は当初、保険会社が「右折車のほうが過失が大きい」と言ってきたそうですが、著しい高速度だったことが判明して撤回したらしい。
そりゃ、時速194キロという著しい高速度の直進車を夜間に避けて右折するなんて不可能なのだから、当然だわな。

 

今回取り上げた判例についても、右直事故の基本過失割合に内包された過失、つまり右折車に過失がある前提が崩れているのだから、基本過失割合を適用するまでもなく右折車は0%になる。

 

判例タイムズ39号の冒頭にはわりと大事なことが書いてある。

②本書は、事故類型ごとに、過失相殺率を定めるに当たっての一般的な判断基準を定立しているが、各事故類型を適用する前提として、いくつかの条件を設定している。この点については、各事故類型の記載中にも必要に応じて注意喚起しているが、その詳細は、各章の冒頭のほか、序章・用語集において記載している。この前提条件について誤った認識の下で各事故類型を適用して過失相殺率の判断をしてしまうと、本書が想定する過失相殺率とは異なった結果となりかねないため、具体的な事案に各事故類型を適用するに当たっては、当該事故類型の適用の前提となる条件の検討をおろそかにしないようくれぐれもご留意願いたい。
③ 本書記載の各事故類型における基本の過失相殺率は、当該事故類型における典型的な事故態様を前提として定めたものであるところ、実際の交通事故の態様は千差万別であるし、過失相殺率の判断要素となりうる個々の事情も事案ごとに異なるのであるから、本書を参照する場合にも、実際の交通事故の態様や個別事情を捨象して、本書記載の各事故類型に画一的に当てはめようとする姿勢は相当とは思われない。実際の交通事故の態様や個別事情を踏まえ、類似する事故類型の基本となる過失相殺率とその修正要素のそれぞれの背景にある考え方を適切に理解した上で、柔軟にこれらの基準を適用する姿勢が望まれる。
④ 本書における各事故類型では、交通事故の被害者にも過失ないし落ち度があったことを前提として、基本となる過失相殺率を定めているものが多いが、そのような事故類型であっても、必ずしもその事故態様等から類型的に被害者に過失ないし落ち度があった蓋然性が高いとはいえない場合もあるため、当該事故類型の適用の前提として、「~に~義務違反がある場合を想定している。」旨を記載するなどして注意喚起を図っているところである。もっとも、そのような記載の有無にかかわらず、個別具体的な事情を踏まえると被害者に過失ないし落ち度があったと認められないときは、当然のことがながら、修正要素を考慮するまでもなく、当該事故類型を適用して過失相殺をするのは相当でないことになるので、注意されたい。

運転レベル向上委員会は優先道路対非優先道路の過失割合(10:90、4輪同士の場合)は、交差点安全進行義務があるから「必ず優先道路通行車にも過失がついてくる」と語る。
しかし判例タイムズ39号をきちんと読めばわかるように、10:90の基本過失割合は「優先道路通行車に過失が認められる場合」を前提としており、優先道路通行車に過失が認められない場合、つまり予見可能性も回避可能性もない場合には基本過失割合を適用するまでもなく非優先道路通行車が100%になる。

 

「個別具体的な事情を踏まえると被害者に過失ないし落ち度があったと認められないときは、当然のことがながら、修正要素を考慮するまでもなく、当該事故類型を適用して過失相殺をするのは相当でない」

 

デタラメばかり語ることに何のメリットがあるのかわかりかねますが、リアルな現場では過失0%は普通にあるのよね。
基本過失割合を適用しない右直事故もあるし、過失割合を考える上での第一歩は「基本過失割合を適用する事案か、それとも個別判断する事案か」なのよ。

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