こちらの記事について読者様からメールをいただきました。

軽症交通事故では自動車運転処罰法5条但し書きを適用すべき事案については、原則不起訴になります。
しかし問題なのは、通常の過失よりも悪質性が高い過失については略式起訴で罰金刑もあるところでして、検察・警察は以下のように分けているようです。
①赤信号だと確定的に認識しながら信号無視した→危険運転致傷罪
②赤信号である可能性を未必的に認識しながら信号無視した→重大な過失として扱う
③赤信号であることを見逃して結果的に信号無視した→重い過失として扱う
④見切り発進や錯誤的に、結果的に信号無視してしまった→???
①であれば危険運転致傷罪を検討し、②や③については軽症とは言っても通常の過失よりも重い重大な過失/重い過失として過失運転致傷罪(略式起訴で罰金刑)として扱う。
問題は④で、通常の過失よりも重いけど、重い過失/重大な過失とまでは言い切れないこともあるから、交差点の状況や信号無視に至った経緯を捜査してあとは検察官に判断を委ねる「相当処分」にするようです。
前回記事に書いたんだけど、要するに「歩行者用信号に釣られて誤発進した」という行為は、赤信号と認識しながら信号無視したケースとは明らかに悪質性が違うし、ましてや「赤信号を見逃して進行した」という事案とも悪質性が異なる。
ある種の錯誤的なニュアンスで勘違いしたというほうが正確がなのかも。
かといって軽度な過失とも言えず、対面の三灯色信号を確認していれば起きなかった問題でもある。
そういう事案が、5条但し書きを適用すべき事案なのかはなかなか難しい。
警察では判断がつきかねるから、相当処分という意見をつけて検察に送ったんでしょうね。
ところで、軽症交通事故でも5条但し書きに該当しないと考えられる場合には略式起訴(罰金刑)になる。
無免許運転や酒気帯び運転、救護義務違反を伴う場合はもちろんのこと(これらは過失運転致傷罪との併合罪である)、信号無視や横断歩行者妨害なども略式起訴になるかと。
道路交通法上、故意の信号無視と過失による結果的な信号無視は別ですが、以前も書いたけど道路交通法には過失処罰規定がないものもある。
37条(右折劣後)なんかも過失処罰規定がありませんが(故意犯は120条1項2号により5万以下の罰金)、過失により37条に違反し、かつ他人に危害を及ぼす方法と認められる場合には70条の過失犯(119条3項、10万以下の罰金)を適用できるとする。
道路交通法70条の安全運転義務は、同法の他の各条に定められている運転者の具体的個別的義務を補充する趣旨で設けられたものであり、同法70条違反の罪の規定と右各条の義務違反の罪の規定との関係は、いわゆる法条競合にあたるものと解される(最高裁昭和45年(あ)第95号同46年5月13日第二小法廷決定・刑集25巻3号556頁参照)。すなわち、同法70条の安全運転義務は、他の各条の義務違反の罪以外のこれと異なる内容をもつているものではなく、その構成要件自体としては他の各条の義務違反にあたる場合をも包含しているのであるが、ただ、同法70条違反の罪の構成要件に該当する行為が同時に他の各条の義務違反の罪の構成要件に該当する場合には、同法70条の規定が同法の他の各条の義務違反の規定を補充するものである趣旨から、他の各条の義務違反の罪だけが成立し、同法70条の安全運転義務違反の罪は成立しないものとされるのである。
つぎに、同法70条の安全運転義務違反の罪(ことに同条後段違反の罪)と他の各条の義務違反の罪とは、構成要件の規定の仕方を異にしているのであつて、他の各条の義務違反の罪の構成要件に該当する行為が、直ちに同法70条後段の安全運転義務違反の罪の構成要件に該当するわけではない。同法70条後段の安全運転義務違反の罪が成立するためには、具体的な道路、交通および当該車両等の状況において、他人に危害を及ぼす客観的な危険のある速度または方法で運転することを要するのである。したがつて、他の各条の義務違反の罪の過失犯自体が処罰されないことから、直ちに、これらの罪の過失犯たる内容をもつ行為のうち同法70条後段の安全運転義務違反の過失犯の構成要件を充たすものについて、それが同法70条後段の安全運転義務違反の過失犯としても処罰されないということはできないのである。
これを本件についてみるに、道路交通法(昭和46年法律第98号による改正前のもの)25条の2第1項の「車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、後退してはならない。」との規定の過失犯たる内容をもつ行為は、直ちに道路交通法70条後段の安全運転義務違反の過失犯の構成要件を充たすものではなく、具体的な道路、交通および当該車両等の状況において、他人に危害を及ぼす客観的な危険のある速度または方法による運転だけがこれに該当するのであるから、道路交通法(昭和46年法律第98号による改正前のもの)25条の2第1項違反の過失犯が処罰されていないことから、その過失犯たる内容をもつ行為のうち道路交通法70条後段の安全運転義務違反の過失犯の構成要件を充たすものについて、同法70条後段違反の過失犯として処罰できないとはいえないのである。
そうすると、道路交通法(昭和46年法律第98号による改正前のもの)25条の2第1項違反の過失犯たる内容をもつ被告人の本件後退行為につき、道路交通法70条後段の安全運転義務違反の過失犯処罰の規定の適用がないとする理由はなく、かえつて、同法70条の安全運転義務が、同法の他の各条に定められている運転者の具体的個別的義務を補充する趣旨で設けられていることから考えると、他の各条の義務違反の罪のうち過失犯処罰の規定を欠く罪の過失犯たる内容を有する行為についても、同法70条の安全運転義務違反の過失犯の構成要件を充たすかぎり、その処罰規定(同法119条2項、1項9号)が適用されるものと解するのが相当である。
最高裁判所第一小法廷 昭和48年4月19日
ただし安全運転義務違反の過失犯を認定するには、いかなる過失があったかを確定する必要がある。
「他人に危害を及ぼすような速度と方法で運転した」ことが過失なのではない。
同法70条は、「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」と規定している。それ故同法119条2項により過失による安全運転義務違反として処断するためには、過失によつて、「他人に危害を及ぼすような速度と方法で運転した」事実を確定しなければならない。
踏切の直前で停止せず、かつ、安全であることを確認しないで車両を運転して踏切に立ち入り、列車と衝突して列車に乗つていた人を死傷に致した場合には、過失致死傷の罪が成立することは論をまたないけれども、一方踏切直前で停止せず安全を確認しないで進行した点で道路交通法33条違反の故意犯(同法119条1項2号の罪)が成立するのであつて、この場合過失による同法33条違反の罪(同法119条2項の罪)が成立するものではない。踏切直前で停止せず、安全を確認しないで進行した行為は、一面においては、過失致死傷罪の構成要件である過失の内容をなすから、過失致死傷罪を構成するのであるけれども、踏切直前で停止せず安全を確認しないで進行したとの行為は、それ自体故意による道路交通法33条違反の罪を構成する。過失による同法33条違反の罪が成立するためには、前方注視義務を怠つたため、踏切のあることに気づかず、その直前で停止せず、安全を確認しないで進行したというように、停止せず安全を確認しないこと自体について過失が存することを要する。このことは同法70条(安全運転の義務)違反の罪についても同様である。最高裁判所第一小法廷 昭和46年10月14日
一部の規定については、故意犯よりも過失犯のほうが法定刑が重いことになりますが、注視義務という基本的なことを怠り進行したことは重いのよね。
過失運転致傷罪については、悪質とは言えない軽症事案は不起訴が通常ですが、時に悪質性の評価が悩ましい場合があり、今回のケースがまさにそれなのかと。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


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