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進路変更態様の基本過失割合に内包された過失とは。

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ではこちらの件。

追い抜いた直後の割り込みの基本過失割合は「70:30」なのか?
運転レベル向上委員会が判例タイムズ39号を無視したデタラメな過失割合を解説してますが、7/10(金)PM11時頃の外環の大型トレーラーの事故だけど自分は後続車でした。なんとか追突を免れたし自分の後続車からも追突されなかったけど、運転手さんは...

このような「後続車が追い抜いた直後に割り込むように進路変更」の場合に、運転レベル向上委員会はいわゆる進路変更態様(先行進路変更車70%、後続直進車30%)を適用すると解説してますが、

 

判例タイムズ39号には「追い抜いた直後に進路変更の場合には対象外」書いてある。

 

これをどう理解するか?になりますが、要するに進路変更態様において「後続直進車30%」の過失割合が設定されている理由を理解しなければならない。

前車が適法に進路変更の合図をしていること、後車が制限速度を遵守していること、及び後車に前車の動静に対する軽度の不注視があることを前提として基本の過失相殺率を定めたしたがって、後方から進行してきた自動車が前車を追い抜いた直後に進路変更してきた場合などは、本基準の対象外である。

判例タイムズ39号

例えば以下のような状況においては、

多くの場合、後続直進車に「前方不注視」の過失がある。
前方不注視とは「制限速度内で前方注視していて先行車が進路変更した場合に急ブレーキをかければ衝突を回避できた」ことを意味する。

 

しかし後方から追い抜きしてきて割り込むように進路変更してきたなら、直進車には前方不注視の過失がない。
進路変更態様の基本過失割合に内包されている過失が「直進車の前方不注視」なのだから、前方不注視が認められない追い抜き直後の割り込みでは、基本過失割合の前提が当てはまらないわけよ。

 

そうすると、追い抜き直後の割り込みでは個別判断するしかないわけですが、

 

ほとんどの場合、直進車には予見可能性も回避可能性もないので、過失がない。
なお、

このような態様の場合でも、何の前触れもなく超至近距離で進路変更してきた場合も、直進車には前方不注視の過失がないのだから、基本過失割合を適用するまでもなく無過失になる。

 

判例タイムズ39号に書いてあるけど、各態様の適用条件となる「基本過失割合に内包された過失」を理解して適用するか否かを検討するようにとしている。
そして例えば「右直事故だから」みたいな安易な理由で右直事故の基本過失割合を適用するのはダメとも書いてありますが、

 

運転レベル向上委員会の人って判例タイムズ39号を全く理解してないらしく、「右直事故だから」とか「優先道路/非優先道路だから」みたいな安易な理由で基本過失割合からスタートすると誤った解説を繰り返している。

 

その結果、大分時速194キロ事故は右折車のほうが悪いなどと誤った解説をして誹謗中傷してしまうわけですが、下記を理解せずに判例タイムズを開くのはご法度なのよね。

② 本書は、事故類型ごとに、過失相殺率を定めるに当たっての一般的な判断基準を定立しているが、各事故類型を適用する前提として、いくつかの条件を設定している。この点については、各事故類型の記載中にも必要に応じて注意喚起しているが、その詳細は、各章の冒頭のほか、序章・用語集において記載している。この前提条件について誤った認識の下で各事故類型を適用して過失相殺率の判断をしてしまうと、本書が想定する過失相殺率とは異なった結果となりかねないため、具体的な事案に各事故類型を適用するに当たっては、当該事故類型の適用の前提となる条件の検討をおろそかにしないようくれぐれもご留意願いたい

③ 本書記載の各事故類型における基本の過失相殺率は、当該事故類型における典型的な事故態様を前提として定めたものであるところ、実際の交通事故の態様は千差万別であるし、過失相殺率の判断要素となり得る個々の事情も事案ごとに異なるのであるから、本書を参照する場合にも、実際の交通事故の態様や個別事情を捨象して、本書記載の各事故類型に画一的に当てはめようとする姿勢は相当とは思われない。実際の交通事故の態様や個別事情を踏まえ、類似する事故類型の基本となる過失相殺率とその修正要素のそれぞれの背景にある考え方を適切に理解した上で、柔軟にこれらの基準を適用する姿勢が望まれる。

④ 本書における各事故類型では、交通事故の被害者にも過失ないし落ち度があったことを前提として、基本となる過失相殺率を定めているものが多いが、そのような事故類型であっても、必ずしもその事故態様等から類型的に被害者に過失ないし落ち度があった蓋然性が高いとはいえない場合もあるため、当該事故類型の適用の前提として、「~に~義務違反がある場合を想定している。」旨を記載するなどして注意喚起を図っているところである。もっとも、そのような記載の有無にかかわらず、個別具体的な事情を踏まえると被害者に過失ないし落ち度があったと認められないときは、当然のことがながら、修正要素を考慮するまでもなく、当該事故類型を適用して過失相殺をするのは相当ではないことになるので、注意されたい。

民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂6版〕別冊判例タイムズ39号

例えば優先道路対非優先道路事故の基本過失割合は、4輪車同士だと優先道路通行車10%、非優先道路通行車90%になっている。
優先道路通行車に10%の基本過失割合が設定されている理由は、多くの優先道路対非優先道路事故において、優先道路通行車に軽度の前方不注視等の過失(道路交通法36条4項)が認められることから、あらかじめ10%の基本過失割合を設定している。

 

しかし、優先道路通行車に前方不注視等の過失が認められない「非典型例」があり、それについては基本過失割合の適用を考えるまでもなく無過失になる。

 

実例↓

原告車は、最高速度が時速40キロに制限されているのに、これに違反し、時速50キロ余りで走行していた。また、反対車線が渋滞していることを認識していたために、進路右側の見通しは非常に悪かったが、進行している南北道路に交差する道路が存在すること自体は認識していた上、左側を注意してみれば交差する道路の存在を認識し得る状態にあったのであり、しかも、交差道路があれば、そこから急に飛び出してくる車両等が出てくる可能性があることは認識していた。上記のような道路状況からすれば、原告としては、反対車線の渋滞により右方の交差道路及びそこから本件交差点に進入してくる車両等の発見が難しいのであるから、交差道路から本件交差点に進入してくる車両との衝突を避けるため、交差道路を見落とさないために十分に前方注視して進行すべきであった。また、少なくとも最高速度である時速40キロ以内の速度で走行するべきであった。
しかし、上記認定のとおり、被告車は、別紙見取図②の位置からアクセルを踏んで急いで同③の位置まで進行して、本件事故を発生させたのであるから、被告車は、原告車が本件交差点の直近に迫った時点で、それを見落として突然原告車の前に現れたものということができる。そうであるとすれば、原告が、仮に、②の位置に停車している被告車を認識したとしても、そのような状況で被告車が停止しているのであるから、当然、被告車は、原告車が通過するまで停止し続けてくれるものと考えて、そのまま進行して本件交差点を通過しようとするのが自然な状況であるといえる。そうすると、原告が左方を注視して交差点の発見をすることまではしなかった点は、本件事故の発生には何の影響も与えなかった(交差点を発見しても、原告は、被告車が停止し続けることを当然期待してそのまま進行したものと考えられる。)というべきである。したがって、本件事故の発生につき原告には、過失相殺をされるほどの過失まではなかったと認めるのが相当である。なお、原告車が時速50キロ余りで走行していた点は明らかに道路交通法違反ではあるものの、被告車が突然北行き車線に進入したことからすれば、仮に、原告車が時速40キロで走行していたとしても本件事故の発生を回避することはできなかったと考えられるし、時速40キロであれば原告の受傷がどの程度軽くなったかも明らかではないから、過失相殺をするのは相当ではない。

 

名古屋地裁 平成23年8月19日

控訴人車は、優先道路を進行していたのであるから、本件交差点を進行するに当たり徐行義務(道路交通法36条3項,42条)は課されておらず、問題となるのは前方注視義務(同法36条4項)違反である。前方注視義務は、「当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等・・・に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。」というものである。したがって、控訴人は、本件交差点を通過するに当たり、優先道路を進行中であることを前提としてよい。すなわち、交通整理の行われていない交差点(本件交差点もこれに当たる。)において、交差道路が優先道路であるときは、当該交差道路を通行する車両の進行妨害をしてはならないのであるから(同法36条2項)、控訴人は、被控訴人車が控訴人車の進行妨害をする方法で本件交差点に進入してこないことを前提として進行してよく、前方注視義務違反の有無もこのことを前提として判断するのが相当である。そうすると、優先道路を進行している控訴人は、急制動の措置を講ずることなく停止できる場所において、非優先道路から交差点に進入している車両を発見した等の特段の事情のない限り、非優先道路を進行している車両が一時停止をせずに優先道路と交差する交差点に進入してくることを予測して前方注視をし、交差点を進行すべき義務はないというべきである。本件においては、前示の事故態様に照らし、上記特段の事情は認められない。

 

名古屋高裁 平成22年3月31日

ところが運転レベル向上委員会の解説内容って判例タイムズとは異なる独自論になっていて、「36条4項があるから必ず優先道路通行車にも10%がついてくる」になっているでしょ。
違うのよね。
判例タイムズや実務、裁判所の考え方と全く異なる独自論になっている。

 

判例タイムズ39号を理解して正しく運用するには、それぞれの類型における前提条件、内包された過失を理解しなければならない。
それを理解せず当てはめるのはご法度だと書いてあるわけですが、

 

進路変更態様の基本過失割合には「追い抜いた直後に割り込むように進路変更してきた場合には対象外」だと書いてあるのに、無理矢理当てはめてしまう運転レベル向上委員会もどうかと思う。
毎回のように誤った解説をして何をしたいのか謎ですが。

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