SACRAの実験、わざわざ接触交差のホイールを組み直して接触交差なしにしてやったのはなんでだろ?

先日のSACRAコラムとバイクラ5月号の記事の件ですが、

SACRAの【結線はもはや腐敗と不正の象徴】理論、実験方法に重大な誤りがあるのでは?と疑問に感じる。

バイクラ5月号の記事と、SACRAコラムを見て、それは違うだろ!と思った人は多いようです。
特に理系の人なら、実験結果と結論の出し方に疑問を持つかと。

いろいろご意見いただいてます

そもそもなんですが、スポークは引張で使われるという部分、これは定説なので今更なんなんだ?と思う人も少なくないようです。
あの実験で証明したのは、スポークはほぼ引張で使われるという事実。
それ以上については何ら証明していません。

で、いくつかの可能性として、読者様からもご意見頂いてます。

固有振動数の変化?

物理学では、物質は振動しており、その物質固有の振動数を持つわけですが、スポークを結線することで固有振動数が変化するのではないか?という話を頂きました。

一つの可能性としては、ホイールは走行中に振動しているわけで、スポークの結線により振動周波数が変化し、それによってユーザーが受ける印象が変わるという可能性はあるのかもとは思いますが、これについてどれくらい体感できうる要素なのかはちょっとわかりません。

最大張力が発生する位相が変わる?

スポークを結線することで、最大張力が発生する位相が変わる可能性があるのでは?というご意見も頂いてます。
このあたりなんて、それこそ歪みゲージを使って、結線あり、結線なしのホイールで計測すれば、ある程度の方向性は見えてきそうなものですが・・・

なぜSACRAさんが、比較対照試験に踏み切らなかったのかについては、大いに疑問。

あとどうでもいいところですが、SACRAさんの【例のコラム】、文字のフォントがやたら大きい上に改行なしだったりするので、凄く読みづらいですw
例のコラムって、例のポンプみたいw
コラムを見る限り、なんかおかしなオーラは感じますが。

いわゆる剛性評価で計るものではない?

結線あり、結線なしで剛性評価して有意差がなかったという研究報告は、古い資料であるようなんですが、そもそも結線することでユーザーが感じている【硬さ】が、剛性ではないという可能性もあるのでは?というところです。
剛性というと、物質の歪みにくさを現しているので、ホイールの硬さそのものと見るのが通常でしょうけど、例えば先ほど挙げた振動数の変化も、ある種のフィーリングとしては硬さと感じる可能性もあるのでは?ということです。

大変失礼ながら、SACRAさんがバイクラ紙上で行った実験、その結果については多くの人が既に知っていることだと思うんです。
そこから先の実験をすれば、新たな解明に役立った可能性はありますが、SACRAさんがやったのは初歩の基礎研究に近い段階。

ちょっともったいない気がします。

フィーリングと数字

SACRAさんは著書、ロードバイク本音のホイール論にて、このようなことを記しています。

リムを100g軽量化したときの効果はリム重量の2倍、かつ前後なので、400gの軽量化に相当。
体重62キロ、ウェア1キロ、バイク7キロの人における400gの軽量化の効果は、70キロ中の400g軽量化なので、エネルギー論としては約0.6%の効果しかない

エネルギー論としては、確かにたった0.6%の効果しかありません。
しかし、リム重量が片側だけで100g軽量化されたら、多くの人は別物のホイールと言うか、体感度は全く違うでしょう。

フィーリングという、定量化できないあやふやなものを指標にするからおかしくなるという意見もあるでしょうけど、数字上でどれくらいの変化があると、フィーリングに影響するのか?というところについても、もうちょっと議論があってもよさそうです。
ロードバイクに乗る上で、フィーリングはかなり大切な要素ですから・・・

リム軽量化に関していうと、たった0.6%のエネルギー変化でも体感上では【全く違う世界】になるのですから、剛性についても、どれくらいのホイール剛性の変化でフィーリングが変化しうるのか?

タイヤの転がり抵抗についても、数字上の違いでいうと、微小なところ。
フィーリングとしては大きく違うように感じるわけで。

もうちょっとデータを開示すべき

SACRAさんの例のコラムで、少し気になる表現がありました。

https://www.sacra-cycling.com/columns/wheel_elucidator2

【ハブからスポーク穴までまっすぐスポークが伸びていないとテンションでスポークに曲げがかかってしまうケースがありました。意外とスポークはまっすぐ抜けていないですね。】とあるのですが、これはどういう意味なんでしょう??
これ、最初意味が分かりづらかったのですが、バイシクルクラブ5月号にも気になる表現がありました。

今回計測に使ったスポークは駆動の際にテンションが下がるフリー側のスポークで計測した。またスポークがほかのスポークに干渉しないように、組み直して実験した。

バイシクルクラブ5月号106ページより

気になって調べてみたのですが、この実験で使っているだろうと思われるホイール、SACRAのKYLE5Bに見えます(違うかもしれませんが)。
メーカーサイトで見ると、たぶんフリー側のスポークは接触交差なんだろうなと思われます

https://www.sacra-cycling.com/products/kyle5b

実験で使ったホイール、バイシクルクラブの記載とSACRAのコラムでの記載を考えると、わざわざ接触交差があるホイールを、接触交差がないように組みなおしてますよね。

恐らくこの接触交差の部分が、SACRAコラムで書いている、

今回の実験についての補足ですがハブからスポーク穴までまっすぐスポークが伸びていないとテンションでスポークに曲げがかかってしまうケースがありました。意外とスポークはまっすぐ抜けていないですね。アルミスポークが計測に向いてると以前書きましたが向いてないかもしれないです。まっすぐスポークが抜けてるホイールじゃないときれいなデータにならないです。

https://www.sacra-cycling.com/columns/wheel_elucidator2

これと関連すると思うのですが、接触交差がある場合、純粋な引張だけではないデータが出たということではないでしょうか?
そうすると、話が全部変わってきませんか?
そして、接触交差なし、接触交差あり、結線ありの3パターンでデータを取れたはず。

きれいなデータというのは、恐らく接触交差ありだと引張以外のデータも出たということで、それはそれで違う意味を持つ可能性があり、【きれいなデータではない】と断じること自体がよろしくないと思うのですが。
そして、接触交差自体を否定しているわけですが、

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https://www.sacra-cycling.com/columns/wheel_elucidator2

たぶん剛性面では差が出なくても、スポークの動きとしては接触交差では純粋な引張以外の動きが計測されたのではないかと。
【ハブからスポーク穴までまっすぐスポークが伸びていないとテンションでスポークが曲がってしまうケースがありました】と書いているわけで、接触交差では純粋な引張以外も働いた証拠だと思うのですが。

欲しいデータを得るために、実験の条件を変えることはあることですが、SACRAさんのコラムでは接触交差と結線を否定しているので、それは得られたデータとは異なる可能性が大です。

あとアルミスポークは計測に向いていないかもとあるのですが、いったいどういうデータが出てきたのかも含めて、開示すべきなんじゃないでしょうか?

ある程度、この文章の意味は理解しますが、恣意的にキレイなデータが出るホイールを選んだかのような表現とも受け取れますし、なぜキレイなデータが出なかったのか、その理由の詳細も含めて開示したほうが、説得力が増すと思います。

どうでもいい話ですが、モランボン組だとこういう歪みゲージで計測すると、どんなデータがでるんでしょうね。
モランボン組ってこんな奴。
https://www.gastorch247.com/post/20191103

縦剛性が上がると言われますけど、SACRAさんのホイール論としてはどうなんでしょうね?
まあ、モランボン組のホイールに歪みゲージつけても、きれいなデータは出ないだろうと言うことくらいは想像つきますが、想像だけで終わらせるのもつまらないというか、面白い解析できそうな気もするんですけどね。

あと、SACRAさんのコラムで、結線しても力学に関われないとありますが、

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引張でしかスポークが働いていないとして、交差部を固定して、

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これで力学に関われないということもイマイチよくわかんないのですが。

スポークは引張のみで使われている、ということを証明するために、接触交差なしに組み替えて計測したということはわかりました。
しかし、接触交差では歪みゲージで違うデータ(引張以外の要素)も計測されたように読めますし、そうであれば結線すればまた違ったデータが取れる可能性が高くなるわけで。

コラムでは【結線はもはや腐敗と不正の象徴】という衝撃的な発言まであるのですから、腐敗・不正だとする証拠となるデータがあるなら出せば済む話。
接触交差だけでも違うデータが出ているようなのに、腐敗と不正と断じることが不思議です。

あとこの実験、本来なら歪みゲージは同じ高さの位置に4方向つけるべきです。
こうではなくて、
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同じ高さにそろえるべき。

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スポークが細いから不可能なんでしょうけど。
接触交差でキレイな数字が出ない理由は、こういう要素もあると思います。

数字だけを見ない

数字での変化って、ある意味ではわかりやすいところなんですが、いくつか問題点はあります。

・その数字の出し方が、本当に適切なのか?
・数字がどれくらい変化すると、体感しやすいものなのか?

趣味としてロードバイクに乗る人って、例えば試乗会に行ったとき、試乗して得るのはフィーリングでしょう。
そしてそれが、新車購入のきっかけになるわけで。

AとBという二つのロードバイクがあったとして、フィーリングではAが上、数字ではBが上だったとして、どっちを買うの??というところではないでしょうか?
たぶん多くの人は、Aを買うでしょう。

この実験はあくまでもスポークのひずみを観察しているので、それが剛性とはまた違う意味を持つのですが、実験方法やデータ解析も含め、やはり疑義は残ります。
もう少しきちんと、全てのデータを出すべきだと思うのですが、どうなんでしょうか?

・接触交差なし
・接触交差あり
・結線あり

この3条件で同じ実験をして、比較対照試験を行うべきです。

最近のSACRAのホイール、かなりいいよ!という声もそこそこ聞きます。
なので今回の実験やコラムについては、ちょっと違うのでは?と残念に感じます。




コメント

  1. blank かんな より:

    このサクラの記事が上がった頃に見たブログで、そこの方が結線についてご自分の推論として挙げていたのが『交点を結線することで、テコの原理とかでスポークの変化する率や力点を変えてやり、ハブから外周に伝わるパワーロスを減らせる』でしたね。

    その方は建築系の知識から、地震対策の斜め梁や、吊り金物の振れ止めなどと同じく、三角を多くしてひとつのスポークへの力の集中を防ぐことができているんじゃとしていました。

    私もこの推論の方がサクラの実験より信憑性が高いように感じました。

    • blank roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      その推論ですが、恐らくはそういうところだと思います。
      SACRAさんがもったいないところは、様々な推論(効果がある、効果がない)がある中で、やろうと思えば実験してデータを取れたはずなのに、データを取ることなく結論を導いた点です。

      歪みゲージで、結線の有無での違いについてデータを取れたはずですし、結線なしでも接触交差では違うデータが出たようなニュアンスが含まれているわけです。
      そのブログの推論を裏付けるデータが取れる可能性もあったわけなのに、なぜかしてないというところが最大の問題だと思います。