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右折車と直進車の関係。直進車が暴走しても優先?

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ホント、こういう事故は防げた事故だと思うと残念でなりません。

この事故は去年6月、福山市霞町の交差点で右折中の軽自動車と直進中のスポーツカーが衝突し、軽自動車に乗っていた当時9歳の小学生の女の子が死亡したものです。
軽自動車を運転していた祖父(63)と付近を歩いていた60代の男性も大ケガを負いましたが、スポーツカーを運転していた36歳の男性医師にケガはありませんでした。

 

警察が防犯カメラを解析するなどしたところ、男性医師が速度100キロ以上で車を走行させていたことが分かり、軽自動車の右折を妨害した危険運転致死傷の疑いで13日、男性医師を書類送検しました。
任意の調べに対し男性は容疑を認めているということです。

 

また、軽自動車を運転していた祖父も対向車の確認が不足していたとし、過失運転致死傷の疑いで13日、書類送検されています。

 

Yahoo!ニュース
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他の報道を見る限り、危険運転致死傷は2条2号の「進行制御困難な高速度」のようなので、そちらは別に記事にします。
それと同時に、右折車側も過失運転致死傷の疑いで書類送検。

 

これについて検討します。

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道路交通法37条

直進車と右折車の関係は、道路交通法37条に規定されています。

第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

右折車は直進車の進行妨害禁止。
さて、報道の事故は直進車が時速100キロ以上とのことですが、道路交通法の優先規定は「適法に進行する車両に優先権を与える」という原則がある。
間違っても赤信号で直進して「オレ優先!」なんて話は通用しない。

 

速度についても同じです。

昭和46年法律第98号による改正前の道路交通法37条1項は車両等が交差点で右折する場合(以下右折車という)において直進しようとする車両等(以下直進車という)の進行を妨げてはならない旨定めているが、右規定は、いかなる場合においても直進車が右折車に優先する趣旨ではなく、右折車がそのまま進行を続けて適法に進行する直進車の進路上に進出すれば、その進行を妨げる虞れがある場合、つまり、直進車が制限速度内またはこれに近い速度で進行していることを前提としているものであり、直進車が違法、無謀な運転をする結果右のような虞れが生ずる場合をも含む趣旨ではないものと解すべきである。
けだし、直進車が制限速度をはるかに越えた速度で進行するような場合に迄右折車をして右直進車の進行を妨げてはならぬものとすれば、右折し終る迄に物理的に交差点に達し得る直進車がある限り、右折車はいつ迄も右折進行することができず、かくては、交通渋滞を招く反面、暴走車の跳梁を許す結果となり、到底安全円滑な道路交通を維持することにはならないからである。
従つて、右折車としては、直進車が制限速度内またはそれに近い速度で進行することを前提に、直進車と衝突する危険のある範囲内の前方の状況を確認し、かつ、その範囲内に進行する直進車の避譲をすれば、足りるのであつて、これ以上に制限速度をはるかに越える速度で進行する車両等のあることを現認している場合は格別、これに気付かない場合に迄そのことを予想して見とおしのきく限り前方の状況を確認し、かつ、全ての直進車を避譲しなければならぬ業務上の注意義務はない。

 

富山地裁  昭和47年5月2日

最高裁判所としては10~20キロの速度超過を予測して右折するとしています(最高裁判所第二小法廷 昭和52年12月7日)。

 

ただし、過失運転致死傷の成立要件は「運転に必要な注意を怠り」であって、「道路交通法の義務を怠り」ではない。

(過失運転致死傷)
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

37条の優先規定が仮に働かない場面でも前方注視して事故を回避する義務はあるのですが、おそらくは形式上の書類送検(そのまま嫌疑不十分になる)のかなと。

 

一応、制限速度40キロのところを時速70~80キロで直進した2輪車に対し右折車が衝突した事故について、右折車の過失を肯定した判例もあります。
(仙台高裁 平成5年2月5日)

 

この場合、信頼の原則を否定するだけの「特別な事情」があったから右折車の過失を肯定したわけですが、要は

普段から60~70キロで直進する車が多いことを知っていたことや、時速70キロ超で直進する車があることを知っていた

普段から当該道路にて、アホみたいにビュンビュン飛ばす車が多いことを知っていた以上、それを予測する注意義務があるとして信頼の原則を適用せず。

司法警察員作成の前記実況見分調書及び平成4年2月10日付け捜査報告書によれば、本件事故現場付近の国道は、最高速度が時速40キロメートルと指定されているものの、本件事故は前記のとおり午後10時8分ころに発生したものであり、この夜間の時間帯は、交通量が閑散としており制限速度を遵守せず、時速60ないし70キロメートルで進行する車両も稀でなく、時速70キロメートルを超過している例も認められる。被告人の司法警察員及び検察官に対する各供述調書によれば、被告人は本件事故現場を日頃頻繁に通行しており、このような交通事情については知つていたものと推認される。

 

4  本件において、前述のとおりA車は時速70ないし80キロメートルで進行してきたものであり、被告人が当初〈3〉地点で〈ア〉地点にいたA車を認めた時点で直ちに右の高速走行まで予測すべきであつたと断定するのは躊躇されるとしても、右折車の運転者たる被告人としては、対向直進車であるA車の動静を注視すると共にA車の接近にもかかわらずなお安全に右折できるか否かを確認すべきであり(本件当時は夜間で、二輪車の対向直進車の速度の確認は昼間に比べてより困難であるから、一層その必要性があるといえる。)、しかるときは、A車が右のような高速走行をして更に接近することも当然認識し得るに至ると考えられるから、A車が通過するまで進行を一時差し控えて事故の発生を回避すべきであり、これを要するに被告人には〈3〉地点で〈ア〉地点のA車を認めた際その動静に注視し、一時停止して同車の通過を待つなどA車の進路を妨害しないようにして右折進行すべき業務上の注意義務が課せられていたといわざるを得ない。なお、この場合、右のように高速走行車とはいえ優先通行権のあるA車の接近する状況下にあつては、いわゆる信頼の原則を認めて右折車の運転者たる被告人にA車の動静注視等の注意義務を免除するのは相当でない。しかるに、関係証拠によれば、被告人は、A車に対する十分な動静注視を怠り、A車が二輪車か四輪車かの識別もせず(被告人の原審及び当審公判廷における各供述参照)、その速度の確認も十分しないままA車の到達前に右折を完了することができると安易に思い込み、そのまま右折・進行したため本件事故に至つたことが明らかであるから、被告人にはA車に対する注視を怠つた過失があるというべきである。

 

仙台高裁 平成5年2月5日

まあ、普段から時速100キロ超で直進する車が多い道路だったとか、何らかの理由で対向直進車の速度超過を予見可能だったとか、前方不注視のまま右折を開始したみたいな事情があれば別でしょうけど、基本的には大幅な速度超過車は「直進優先」を主張できないと見るべきかと。

 

道路交通法37条の直進車優先と判例。直進車が暴走しても直進優先?
ちょっと前にも書いたのですが、まとめておきます。 第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。 ※直進車が違法走行した事例をメイ...

 

直進優先

この手の事故のときに「直進優先」という言葉のみで考える人が一定数いますし、37条には速度がどうとか書いていない。

第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

信号の有無も書いてありませんが、当たり前な話として「適法に進行する車両」を優先するという意味でしかない。
そうじゃないと赤信号で直進して「オレ優先!」が通用してしまうワケで不合理過ぎて笑えない。

道路交通法第37条第1項所定の交差点における直進車の右折車に対する優先は、直進車が交差点に適法に入ったときだけに限るのであって、信号を無視して不法に交差点に入った場合には認められない。

 

昭和38年11月20日 東京高裁

道路交通法の解釈って一つの解説書や判例を見ただけでは理解できないし、複数の判例や解説書をみて整合性を考えないと間違った解釈に陥ります。
けど、報道の事故は直進車が暴走していなければ防げた事故じゃないかと思うし、速度超過って重罪なんだと思う。

 

「クルマは急に止まれない」と言いますが、いやいや、時速100キロは「止まる気がない」の間違いでしょ?と。

 

いまだに時速100キロを一瞬で時速0キロにする技術は開発されてないのです。
一般道で速度超過すると自爆するシステムなら搭載可能なのかもしれませんが、街中で自爆が相次いでしまうのかもしれません。

 

なお、追いつかれた車両の義務にしても「優先規定」の一種なので、速度超過車に譲る義務はありません。



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