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「ぼく、知らなかったもん!」は通用するのか?

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先日のこちら。

 

路側帯通行自転車と、交差点の関係性。一時停止やその他の規制を受ける?
先日もチラっと書きましたが、 17条4項にこれがある以上、路側帯を通行する自転車に対しては、車両に対する規制の全てが課されるわけではない。 道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。) ところで。 ...

 

路側帯を通行する自転車も一時停止義務がありますが、そもそも。
路側帯には停止線もないし、一般人の感覚だと歩道と路側帯の違いがわかってないなんてザラ。

 

43条は停止線自体は必須要件ではありませんが、一般人の感覚だと路側帯通行自転車は一時停止義務がないと勘違いする可能性もあります。

(指定場所における一時停止)
第四十三条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
路側帯は交差点の範囲に含まれます(2条1項5号)
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「ぼく、知らなかったもん!」

当然のように、こういう抗弁が予想されます。

読者様
読者様
路側帯には停止線もないし、一時停止義務があるなんて知らなかったもん!
歩道を走っていたら一時停止義務がないじゃん!
路側帯と歩道の違いがわかんない!

 

法の不知による錯誤の問題になりますが、刑法上はそう甘くはない。

(故意)
第三十八条
3 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。

この場合、一時停止標識自体はあるわけだし、一時停止標識がある以上は、路側帯にも一時停止効力が及んでいるかを知っていたのか?の問題になります。

一時停止の判例ではありませんが、法を知らなかったことがどう影響するかについて興味深い判例が2つあります。
どちらも古い判例ですが、福島県公安委員会規則にてサンダル履き運転が禁止されていたことを知らずに運転したことを有罪に出来るか?というもの。

 

まず、土浦簡裁 昭和38年2月25日判決。
茨城県在住の被告人が初めて福島県内を運転し、

 

「サンダル履き運転が公安委員会規則で禁止されていたことを知らなかったもん!茨城県は違反じゃないもん!」

 

と反論した事件です。
土浦簡裁は無罪としています。

被告人は福島県においてサンダルをはいて自動車等を運転することが違法である点について認識を欠いていた訳であるが、かかる場合においても被告人に対し故意の成立を認めるべきであろうが、この問題に関しては刑法第38条第3項の解釈と関連して争いのあるところであるが、同条項の文理から直ちにすべての場合に故意の成立に違法性の認識が不要であると解することはできない。本来一定の行為が犯罪として処罰に値するのは、それが反社会的性格を有しているが故であり、その行為自体からすでに反社会性が窺えるようなものについては、行為者において更にそれが法によつて処罰されるものであることを認識するまでもなく、故意の成立を認めて差支えないと言うべきであるが、その行為自体は社会倫理的意味において無色であつて、それが刑罰法規で禁じられたことにより、法規違反としてはじめて反社会性を取得するようなものについては、行為者においてそれが法によつて処罰されるものであることを認識していない以上故意の成立がないものと言わなければならない。以上の解釈に基づいて以下考察すると自動車を運転する者が、運転に関する或る事項を、それが法によつて禁止されていることを知らずに行つた場合、その者に故意ありと言うべきか否かは、その当該禁止事項の内容・性質によつておのずから異つてくるものであり、まず当該禁止事項の内容・性質からみてそれが運転者として当然守らねばならないことであり、運転者一般に対しその禁止規定を俟つまでもなく、その行為に出ないことが期待されるような場合にあつては、運転者がかかる行為を為すことの認識を有する以上、故意の成立要件に欠けるところはなく、更に進んでこれが法によつて禁じられているということの認識までは不要というべきである。
これに反しその禁止事項の内容・性質からみてそれが禁止されていることが、運転者として意外のことであり、運転者一般に対し、それが法によつて禁止されているということを承知していない限り、特に当該禁止行為に出ないことが期待できないような場合にあつては、かかる行為を為すことの認識があるだけでは、行為者に故意があるものとは言えず、その者に故意ありとするためには、更にそれが法によつて禁止されているということの認識を有していることが必要というべきである。

 

土浦簡裁 昭和38年2月25日

 

次の判例は東京高裁 昭和38年12月11日判決。
同じく福島県内でサンダル履き運転をしたことについて、福島県公安委員会規則で禁止されていたことを知らなかったから無罪とした一審判決について、検察官が発狂して控訴した事件です。

 

こちらは有罪。

違法の認識が犯意成立の要件でないことについては、従来大審院の判例としたところであつたが、新憲法施行後においても最高裁判所は、刑法第38条第3項の解釈として有毒飲食物等取締令違反被告事件につき、犯罪の構成に必要な事実の認識に欠けるところがなければ、その事実が法律上禁ぜられていることを知らなかつたとしても、犯意の成立を妨げるものではない旨の説示をして、従前の判例を維持し(昭和23年(れ)第203号、同年7月14日大法廷判決、刑集2巻8号889頁参照)、その後も同裁判所は、「自然犯たると法定犯たるとを問わず、犯意の成立には、違法の認識を必要としない。」とし(昭和24年(れ)第2276号同年11月28日第三小法廷判決、刑集4巻12号2463頁参照)「犯意があるとするためには、犯罪構成要件に該当する具体的事実を認識すれば足り、その行為の違法を認識することを要しないし、またその違法の認識を欠いたことにつき過失の有無を要しない。」として(昭和24年(れ)第1694号同26年11月15日第一小法廷判決刑集5巻12号2354頁参照)、右大法廷判例の趣旨に従つた判決をしており、当裁判所も、右各判例の見解に従うのが正当であると思料する。
本件において、昭和35年福島県公安委員会第14号福島県道路交通規則第11条第3号は、道路交通法第71条第7号の規定に基づき車輌等の運転者が守らなければならない事項として「運転の妨げとなるような服装をし、又は下駄、スリツパ、サンダルその他これらに類するものをはいて自動車又は原動機付自転車を運転しないこと」と規定しているところ、被告人の原審第1回公判調書中の供述記載、司法警察員作成の犯罪事実現認報告書および被告人の当審公判廷における供述によれば、被告人は、昭和37年9月13日午後4時40分頃福島県双葉郡富岡町大字本岡字前谷地内道路において、サンダルをはいて普通自動車を運転した事実を認識しており、ただ、右規則第11条第3号の規定を知らなかつたにすぎないものであることが認められるから、右各判例の趣旨に徴し被告人の本件所為は、刑法第38条第3項にいわゆる法の不知に該当し、その犯意を欠くものではないといわなければならない。

 

東京高裁 昭和38年12月11日

以上から「ぼく、知らなかったもん!」というわけにはいかないことになります。

 

まあ、まだ反則制度導入前なので起訴されてますが、当時は福島県のローカルルールなんて知らんわ!という気持ちはわからなくもない。
少なくとも茨城県と東京都では当時サンダル履き運転は禁止されていなかったそうですから…

路側帯の一時停止義務

路側帯には停止線もないし、歩道と区別がついてない人もいるし、路側帯を通行する自転車には一時停止義務がないと勘違いしても、法自体は停止線を必須要件にしてないので、

(指定場所における一時停止)
第四十三条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
読者様
読者様
路側帯には停止線もないし、一時停止義務があるなんて知らなかったもん!
歩道を走っていたら一時停止義務がないじゃん!
路側帯と歩道の違いがわかんない!
管理人
管理人
はいはい。
知らなかったもん!は通用しないから。

 

以上で終了します。
まあ、43条には過失犯の処罰規定もあるし、「知らなかったもん!」は通用しないかと。

 

ただまあ、路側帯通行自転車のルールが分かりにくいことは確かなこと。
交差点の範囲に路側帯を含むことにしても、知らない人は知らないでしょうし。

 

おっと、「知らなかったもん!」は通用しないんでしたね笑。

 

当時福島県のローカルルールなんて他県の人が知るわけもないし、ましてやインターネットなんてない時代。
こんなもんを起訴するのはなかなか不思議ですが、

 

「ぼく、知らなかったもん!」

「はいはい。有罪。」

 

一時停止義務については勘違いが事故に直結するので、きちんと理解する必要がありますね。
そもそも、自転車には一時停止標識が関係ないと勘違いしている人すらいますが、もちろん「知らなかったもん!」は無意味な主張になります。

 


コメント

  1. とおりすがり より:

    そもそも一時停止しっかり守ってる自転車が稀
    俺だけ止まって他の糞チャリは素通りしてくなんて日常茶飯事

    どうなってんだよこの国

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      確かに、そもそも停止しない自転車は多いですね。
      アホを尻目に自分だけは止まるのが漢ですよ。

  2. jukka より:

    でも違反は全国統一基準にしてほしいな
    愛媛県でしたっけ?罰則無いけど歩行者に逆走あるの
    あれに罰則あったら知らなかったもんが通用しそうな気がする

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      愛媛県ルールは公安委員会規則ではないのであまり意味はありませんが、そもそも、道路交通法上は歩道の両方向通行を認めていて、しかも「歩道一方通行」という規制標識は別にあることを考えると、そもそも愛媛県条例は違法なんじゃないかと思ってます。
      上位法に反する条例は無効なので。

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