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「歩行者横断禁止」を破って横断し、有罪になるケース。

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道路交通法では「歩行者横断禁止」という規制があります。
このルール、罰則はありません。

(横断の禁止の場所)
第十三条
2 歩行者等は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない。

罰則がないものの、それを破って事故を起こした場合には有罪になります。

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歩行者横断禁止と重過失致死罪

判例、といっても略式命令なので正確な年月日は不明です。
事故発生は平成10年7月3日。
具体的な内容は「研修(法務総合研究所)」の2000年7月号に掲載されています。

 

事故概要。

・片側3ないし4車線、「歩行者横断禁止」の規制がある交差点付近
・被告人は歩行者横断禁止規制を破って横断し、反対車線の渋滞の隙間を通って横断。
・被告人が第2通行帯の渋滞の隙間を抜けて第1通行帯に達したときに、第1通行帯を時速55キロ(法定速度60キロ)で通行していた自動2輪車と衝突。
・自動2輪車の運転者は死亡。

イメージ図。

ガードレールの切れ目から横断したそうな。

 

被害者からすれば完全な不意打ち的に歩行者が飛び出てきたわけで、いわゆる直前横断でもあるため回避不可能。

 

この事故について、歩行者が重過失致死罪で略式起訴され、裁判所が認めて罰金40万で確定したという事案です。

(業務上過失致死傷等)
第211条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする

重過失致死罪は刑法211条後段。
歩行者横断禁止規制を破って横断したことが「重過失」として認定出来るか?という検察側の葛藤と検討が書いてあります。

 

というのも以前取り上げたことがありますが、歩行者横断禁止規制がある道路を通行する車両がどの程度注意義務を負うのかについては判例が割れてまして

 

「歩行者横断禁止」と責任。
読者様から質問を頂いたのですが、「歩行者横断禁止」の規制がある道路で、禁止規制を破って横断する歩行者と事故が起きた場合は過失責任がどうなるの?という話。 民事責任でいうなら、「歩行者横断禁止」の場所で歩行者が横断して事故になった場合、歩行者...

 

まずは前方不注視の過失を認めて有罪にした東京高裁 昭和42年5月26日判決。
ついで時速70キロ(30キロの速度超過)、スポーツ新聞をチラ見しながら運転していた被告人の過失はないとした東京地裁 昭和47年3月18日判決。

 

個人的には東京地裁 昭和47年3月18日判決は信頼の原則を「やり過ぎ」だと思ってますが、「研修(法務総合研究所)」の2000年7月号でもこの2つの判例を根拠に、被害者(自転2輪車)の過失をどう捉えるかが問題になった様子。

 

結局は被告人(歩行者)の過失は過失として評価し、被害者の過失は量刑判断で考慮するという方向で略式起訴したようですが、そもそもこの状況で被害者の過失とはいったい…

 

過失致死罪と重過失致死罪では法定刑がだいぶ違いますが、重過失とは以下のような場合を指します。

刑法209条、210条が通常の過失により死傷の結果を発生させた場合の規定であるのに対し、同法211条後段は重大な過失により右と同じ死傷の結果を発生させた場合に前2条に比し刑を加重する規定であり、右にいう重大な過失とは、注意義務違反の程度が著しい場合、すなわち、わずかな注意を払うことにより結果の発生を容易に回避しえたのに、これを怠つて結果を発生させた場合をいい、その要件として、発生した結果が重大であることあるいは結果の発生すべき可能性が大であつたことは必ずしも必要としないと解するのが相当である。

 

東京高裁 昭和57年8月10日

この判例は自転車が赤信号を時速10キロで無視し、横断歩道を青信号で横断した歩行者に衝突した事故です。
被害者は「加療約6か月間を要する左大腿骨頸部骨折、左足関節挫傷の傷害」ですが、重過失致傷罪として有罪。

歩行者の道路交通法違反に罰則がない理由

歩行者のルールには直前直後横断禁止や、横断歩道の付近での横断禁止、「歩行者横断禁止」標識の遵守などがありますが、これらのルールには直接的な罰則はなく、警察官の指示に従わずに横断した場合に罰則。

 

これ、昭和35年以前の道路交通取締法時代には歩行者にも罰則がありましたが、これらのルールを遵守しないことによる被害はもっぱら歩行者側にあるわけで、罰則で縛るよりも歩行者の遵法精神に委ねるほうがよいとして罰則がありません。
自転車の自転車横断帯通行義務(63条の6、7)も同様に直接的な罰則はありませんが、全く同じ理由です。

 

たまに「罰則がないほど、遵守しなくてもたいしたことないルール」と曲解する人がいますが、罰則がない理由はそこではありません。
罰則で縛ることで遵守率が上がらないことも一因とされます。

ただまあ現実的には、歩行者のルール違反で必ず被害を受けるのが歩行者、というわけではなくて、ちょいちょい「2輪車側」が死亡する事故が起きているのが現実。

 

これにしても、

たまたま第1通行帯を通行してきたのが4輪車なら被害者はもっぱら歩行者だし、たまたま第1通行帯を通行してきたのが2輪車なら、両方被害者になるわけだし。

 

「歩行者横断禁止」については実情と合わないケースもあるので評価が難しい面もありますが(横断歩道が遠すぎる、歩道橋しかなく車椅子が横断できない等)、直前直後横断を禁止している理由は、回避不可能な事故を多発させるからかと。

 

最近はエレベーター付きの歩道橋もありますが、必ずしもそうじゃない。
この事故にしても、横断歩道までそれぞれ53.1m、91.9mとなっているのですが、歩行者横断禁止規制を破って横断した場合、しかも直前直後横断で事故を起こした場合に歩行者が重過失致死罪に問われることになります。


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