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なぜ?電動キックボードが無免許危険運転致傷で書類送検。

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電動キックボードといっても、特定小型ではないようですが。

運転免許が必要な電動キックスケーターを無免許で運転し、一方通行の道路を逆走し、バイクの男性にケガをさせたとして22歳のホストの男が検挙されました。

無免許危険運転致傷の疑いで書類送検されたのは、大阪市中央区のホストクラブに勤務する22歳の男です。

警察によりますと、男は9月28日午前7時半ごろ、免許の必要な電動キックスケーターに乗り、大阪市中央区の一方通行の松屋町筋を逆走。さらに交差点を右折しようとして、直進してきたバイクと衝突する事故を起こしていました。

この事故でバイクを運転していた男性(当時18歳)は転倒し、首をねんざするなど全治2週間のケガをしました。

警察は男を無免許過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕していましたが、その後の捜査で、一定のスピードを超え、故意に逆走していたことがわかり、今月20日、容疑を無免許危険運転致傷に切り替えて書類送検しました。

電動キックスケーター事故に危険運転致傷罪適用 無免許で逆走しバイク男性にけがさせた疑い 大阪初(読売テレビ) - Yahoo!ニュース
運転免許が必要な電動キックスケーターを無免許で運転し、一方通行の道路を逆走し、バイクの男性にケガをさせたとして22歳のホストの男が検挙されました。  無免許危険運転致傷の疑いで書類送検されたのは

さて、これはどのように考えるのでしょうか?

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無免許危険運転致傷

詳細は不明なのであくまでも推測を含むことをご了承ください。

 

まず、過失運転致傷でも危険運転致傷でも無免許による加重があります。

(無免許運転による加重)
第六条 第二条(第三号を除く。)の罪を犯した者(人を負傷させた者に限る。)が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、六月以上の有期懲役に処する。
4 前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の懲役に処する。

※第二条=危険運転致傷
※前条(5条)=過失運転致傷

 

これらはあくまでも危険運転致傷、過失運転致傷が成立する上で「無免許による加重」。
なので大元の危険運転致傷が成立する前提になりますが、

一定のスピードを超え、故意に逆走していたことがわかり

これから推測するに、以下の危険運転致傷を指していると思われます。

(危険運転致死傷)
第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

逆走の場合、「それ自体が通行妨害になる未必的な認識がある」とすることは既に確立された考え方。

○自動車専用道路の場合

所論は,危険運転致傷罪が成立するためには,相手の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することが必要であって,その未必的な認識では足りないとの解釈が立案担当者からも示されている(「刑法の一部を改正する法律の解説」法曹時報第54巻第4号71頁)と指摘した上,被告人の意思は,一貫して,警察車両から逃れることにあったのであり,被告人は,対向車両の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図していないから,被告人に人または車の通行を妨害する目的はなく,同罪は成立しない旨主張する。
たしかに,被告人は,警察車両から逃れることを意図して,Eバイパスを逆行したものである。しかし,自動車専用道路であるバイパスを逆行すれば,直ちに対向車両の自由かつ安全な通行を妨げる結果を招くことは明らかであり,バイパスを逆行することと対向車両の自由かつ安全な通行を妨げることとは,表裏一体の関係にあるというべきである。また,上記認定事実に照らせば,被告人が,警察車両の追跡から逃れるため,バイパスを逆行することを積極的に意図していたことは明らかである。そして,バイパスを逆行することを積極的に意図していた以上,被告人は,これと表裏一体の関係にある対向車両の自由かつ安全な通行を妨げることをも積極的に意図していたと認めるのが相当である

 

広島高裁  平成20年5月27日

○片側一車線(追い越しのための右側はみ出し禁止)の場合

被告人が,車体の半分を反対車線に進出させた状態で走行し,C車両を追い抜こうとしたのは,パトカーの追跡をかわすことが主たる目的であったが,その際,被告人は,反対車線を走行してきている車両が間近に接近していることを認識していたのであるから,上記の状態で走行を続ければ,対向車両に自車との衝突を避けるため急な回避措置を取らせることになり,対向車両の通行を妨害するのが確実であることを認識していたものと認めることができる。
ところで,刑法208条の2第2項前段にいう「人又は車の通行を妨害する目的」とは,人や車に衝突等を避けるため急な回避措置をとらせるなど,人や車の自由かつ安全な通行の妨害を積極的に意図することをいうものと解される。しかし,運転の主たる目的が上記のような通行の妨害になくとも,本件のように,自分の運転行為によって上記のような通行の妨害を来すのが確実であることを認識して,当該運転行為に及んだ場合には,自己の運転行為の危険性に関する認識は,上記のような通行の妨害を主たる目的にした場合と異なるところがない。そうすると,自分の運転行為によって上記のような通行の妨害を来すのが確実であることを認識していた場合も,同条項にいう「人又は車の通行を妨害する目的」が肯定されるものと解するのが相当である。

 

東京高裁 平成25年2月22日

○片側一車線(追い越しのための右側はみ出し禁止)の場合

本件事故当時、対向車線には相応の交通量があり、被告人がこれを認識できなかったというような事情も窺えない。そうすると、被告人は、対向車線に自車を進出させれば、対向車の通行を妨害することになることは当然認識していたというべきである。

(中略)

このような場合、被告人は、自らの運転が、対向車両に自車との衝突を避けるため急な回避措置を取らせることになり、対向車両の通行を妨害するのが確実であることを認識していたものと認め

 

熊本地裁 令和元年12月20日

なので逆走することで通行妨害になることを未必的に認識しながら、しかも高速度で進行して事故を起こした(2条4号、妨害運転危険運転致傷)。
さらに無免許による加重が加わった(6条1項)。

 

従って無免許危険運転致傷で書類送検という話なんだと思われます。

 

ただこれ勘違いしやすいのは、書類送検です。
起訴したわけでもなければ、有罪が確定したわけでもありません。

 

書類送検が危険運転致傷でも、不起訴や過失運転致傷に切り替えての起訴もありうるし、さらにいえば起訴して有罪になるかもまだわからない。

おそらくは

きちんと示談して一筆もらえば不起訴になりそうな予感すらしますが、ある種の見せしめ的に書類送検を公表したのではないかとすら思います。

 

ちなみに、違法電動アシスト自転車で危険運転致傷罪(有罪)となった事例もありますし、

 

自転車が自転車に妨害運転をして有罪に。
「自転車が」被害にあった妨害運転の事例について質問を頂いたのですが、妨害運転罪ではなく「危険運転致傷罪(妨害運転)」であれば比較的最近の事例ですがあります。 しかも、自転車が自転車に妨害運転という内容。 妨害運転危険運転致傷罪 (危険運転致...

 

検察がどう判断するかですね。
ちなみに危険運転致死傷と言っても様々な類型があり、最近やたら話題になる立件が難しい危険運転は進行制御困難高速度危険運転(2条2号)。
大分の時速194キロにしても、なぜ検察官が進行制御困難高速度危険運転への躊躇ったかというと、

二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
危険運転致死と「進行を制御することが困難な高速度」。
危険運転致死の「進行を制御することが困難な高速度」とは、道路のコースに沿って進行できるか?が判断になるとされますが、 コーナーの限界旋回速度を越えていたかどうかが判断の分かれ目とも言われます。 高速度制御不能 限界旋回速度以下でも、限界旋回...

 

「進行制御困難な高速度」の意味が、市民感覚と立法者の意思にズレがあるからなかなか成立しない。
あくまで立法者は「コースの逸脱」についての高速度だと規定したけど、市民感覚でいう話は「危険な高速度全般」。
裁判官が悪いのではなく法律が悪いとしか言えませんが、見直しを求めていくようですね。

3 法2条2号の法解釈について
所論は,法2条2号の解釈について,進行制御困難性の判断要素の一つである「道路の状況」には,道路自体の物理的形状だけでなく,道路上に存在する駐車車両のみならず他の走行車両も含まれると主張する。そしてその根拠について,進行制御困難な高速度であるか否かは自車が進行できる幅やルートとの関係において決せられるところ,自車が進行できる幅やルート,進行方法は道路自体の物理的形状のみならず,進路前方の障害物が存在するか否かによっても左右されることとなるから,例えば工事現場などの障害物がある場合と駐車車両や他の走行車両等がある場合とで何ら違いはなく両者を区別する合理的理由はないという。
所論は,その主張を裏付ける資料として,自動車運転による死傷事故の実情等に鑑み早急に罰則を整備する必要があるとの法務大臣からの諮問を受けて行われた法制審議会刑事法(自動車運転による死傷事犯関係)部会第3回会議での議事録に「駐車車両もある意味で道路のカーブと同視できる場合ではなかろうかと思います」との立法担当者の発言があることを挙げ,このことから駐車車両も「道路の状況」に含まれるとし,その上で,駐車車両と走行車両とを区別する合理的理由はないという。
たしかに,所論指摘の発言内容からすると,立法担当者側は「道路の状況」という要素に駐車車両の存在も含まれると想定していたことが読み取れる。しかしながら,駐車車両に加えて走行車両も「道路の状況」に含めることまで想定していたかについては疑問がある。
法制審議会刑事法部会第1回から第3回までの議事録を通読すると,その第2回会議では,立法担当者側から進行制御困難な高速度とはどのような場合かとの説明がされた際「したがいまして,このような制御困難な高速度に達していない場合であれば,例えば住宅街をそこそこの速い速度で走行いたしまして,速度違反が原因で路地から出てきた歩行者を避けられずに事故を起こしたような場合でありましても本罪には当たらない」旨の説明がされたこと,また,参加委員からの「道路が真っすぐであるか,幅がどの程度であるか,舗装が砂利なのかアスファルトなのかコンクリートなのか,あとはどの程度のアールで曲がっているのかということは具体的に勘案しなければ,あと,走っているのがポルシェなのかサニーなのかということは具体的に考えなければいけないことなんですが,他に歩行者がいるかどうか,それから他に車がいるかどうかこれは考えないという前提でなければ,私はいけないと思う」との発言に続けて,立法担当者側が「基本的には今おっしゃったことを念頭に置いて考えている」旨述べていること,さらに参加委員の意見としてではあるが「道路の客観的状況のほかに他の歩行者の在り方,それから他の車の在り方,それまで道路状況に含める含めないで相当変わってくるわけですね。そうすると,仮に歩行者,他の車まで具体的な道路状況の中に入れ込んで考えるというところまできて更に脇見をしたとしても,それは脇見との因果関係は認めませんとなると,際限なくこの条文が適用される範囲が広がってくるのではないかということになってこれは大変なことであるという感じをもっている」旨の発言があったこと,これもまた参加委員の意見として「法文にそんな言葉は使えないというご意見もあるかもしれませんが,例えば『制御することが物理的に困難な著しい高速度』と。『物理的』というのは,多分法文にはなじまないとは思うのですが,こういうような趣旨で,要するに今ここで議論になっているように,他の通行人の存在だとか,そういうものは基本的に含まない,客観的に車の性能,あとは客観的な道路状況との関係において制御困難であるということが明確に読み取れるような修飾語をどこかに付けていただけないかというふうに思います」旨の発言があったこと,その後に開催された第3回会議では,参加委員からの「確認になるのかもしれませんが,真っすぐな道を想定していただきたいと思うのですが,いわゆる何らかの対象を発見した後,その手前で正しく止まれないような速度で走っていたような場合には進行制御困難高速度には当たらないというふうな前回までのご説明だと思いますが,その点について変更がないか」との質問に対して立法担当者側は「その点は,変わりはございません。個々の歩行者であるとか通行車両があるということとは関係のない話でございます」と答えていることが認められる。この最後のやりとりについては,個々の歩行者や通行車両との関係で停止できなかったことをもって進行制御困難高速度に当たるわけではないことを述べたに過ぎず,「道路の状況」という要素に歩行者や他の走行車両を含まないという趣旨ではないとみる向きもあるが,要するに,立法担当者側は進行制御困難高速度に当たるかどうかの判断に際し,個々の歩行者や通行車両は考慮に入れないと述べているのであるから,それは「道路の状況」という要素に個々の歩行者や通行車両は含めないという議論と実質的に同じことを述べていると読むのが自然である。
そうすると,第3回会議までの立法担当者側の説明及び参加委員からの意見や疑問といった議論状況も踏まえ,かつ,立法担当者側は,一方で駐車車両もある意味で道路のカーブと同視できると述べていることとの対比からすれば,個々の歩行者や通行車両は進行制御困難性判断の考慮対象としては想定していない,すなわち,「道路の状況」という要素の中に歩行者や走行車両は含まれないとの考えに立っていると理解するのが自然である。したがって,立法担当者の発言の一部を踏まえて,「道路の状況」という要素に,駐車車両のみならず他の走行車両も含むとすることが立法者の意思であるとする所論には賛同できない。

 

原判決もまた,所論と同様に,駐車車両と他の走行車両とを区別する合理的理由はない旨説示しているところ,立法者意思も一つの検討要素としつつも,本件事案の特殊性を考慮し,被害者感情なども勘案した結果としてこれまでの実務の在り方を変えるものとして原判決が示したような法解釈もあり得るのではないかと
解する余地もないわけではない。そこで,法2条2号の法解釈について更に検討を加えることにする。
駐車車両は路上等に静止状態で置かれている。したがって,それとの接触や衝突を避けるための進路(幅やルートが制限される場合もあり得る)を想定し,想定した進路を前提として進行制御困難性を判断することは難しいことではない。
これに対し,他の走行車両の存在を進行制御困難性の判断要素に含めるということは,他の走行車両の移動方向や移動速度を前提にして,その車両との接触や衝突を避けるための進路を想定し,この想定した進路を前提として進行制御困難性を判断することになる。原判決が,他の車両の存在によって自車の通過できる進路の幅やルートが制限され,そのため,そのままの高速度で進行するとハンドルやブレーキの僅かな操作ミスにより自車を進路から逸脱させる危険が生じる状況,と本罪における故意の対象を明示したのは正にそのような考えに基づいた帰結にほかならない。しかし,走行車両は文字通り走行状態すなわち可動状態に置かれており,その移動方向や移動速度は不確定かつ流動的である。したがって,自車周辺に存在する走行車両は様々な可能性により自車の進路の障害となり得るのであり,こうした走行車両との接触や衝突を避けるための進路も不確定かつ流動的にならざるを得ない。
このような事前予測が困難な不確定かつ流動的な要素を抱える他の走行車両の存在を進行制御困難性の判断要素に含めるということは,類型的,客観的であるべき進行制御困難性判断にそぐわないといわざるを得ず,罪刑法定主義の要請である明確性の原則からみても相当ではない。
また,他の走行車両の存在を進行制御困難性の判断要素として考慮できるとすると,本罪の故意の対象として,他の走行車両の動静及びそれが自車の進路に及ぼす影響等についての認識・予見が求められることになるが,認識・予見の程度の具体性をいかに強調したところで,不確定かつ流動的な事情が前提とならざるを得ないことに照らせば,認識・予見の有無の判断に際し,過失犯における予見可能性の有無との区別が曖昧となり,過失犯として処罰すべきものを故意犯として処罰することになるおそれも否定できない。
そもそも危険運転致死傷罪は,悪質・危険な運転行為による死傷事犯のうち過失犯として処罰することが相当でないものを故意犯とし,傷害・傷害致死に準じた重い法定刑で処罰しようと定められた罰則強化規定であることに鑑みると,処罰対象となる危険運転行為は悪質・危険な類型に限定されているとみるべきであるから,解釈によってその処罰対象を拡大することは法の創設趣旨にそぐわないといわざるを得ない。

 

名古屋高裁 令和3年2月12日

ところで冒頭の件は、なぜ故意に逆走したのですかね。
全く意味がわからない。
勝手に電柱にぶつかる自爆系ならともかく、二輪車からすれば逆走車を避けるために転倒するリスクもあるし、話になりません。


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