今回取り上げるのはこちらです。
島根県松江市でパトカーに追われていた車が倉庫に突っ込みました。運転手は信号無視の疑いで逮捕されました。
新谷俊季容疑者(25)は18日午前4時ごろ、松江市内を運転中、ふらつきながら走行していたため飲酒運転を疑われ、パトカーに停止を求められました。
新谷容疑者は信号無視を繰り返しながら逃走し、交差点を曲がり切れずに倉庫に突っ込みました。
大破した倉庫に人はいませんでした。
パトカー追跡中 車が倉庫に衝突 男逮捕 飲酒運転の可能性も 島根・松江市 | khb東日本放送島根県松江市でパトカーに追われていた車が倉庫に突っ込みました。運転手は信号無視の疑いで逮捕されました。 新谷俊季容疑者(25)は18日午前4時ごろ、松江市内を運転中、ふらつきながら走行していたため飲酒運転を疑われ、パトカーに停止を求められま...
なお同乗者三名は命に別状はない(軽症)だそうな。
今回考えるのは、これの行政処分です。
Contents
複数の信号無視+飲酒疑惑+軽症事故
さて。
報道からは「信号無視した交差点で曲がりきれずに事故を起こした」のか、「事故を起こした交差点では信号無視をしておらず、曲がりきれずに事故を起こした」のかハッキリしませんが、警察の追跡を振り切った後とあるので後者の場合として考えてみます。

先に信号無視から考えます。
一 違反行為に付する点数は、次に定めるところによる。
1 一の表又は二の表の上欄に掲げる違反行為の種別に応じ、これらの表の下欄に掲げる点数とする。この場合において、同時に二以上の種別の違反行為に当たるときは、これらの違反行為の点数のうち最も高い点数(同じ点数のときは、その点数)によるものとする。
2 当該違反行為をし、よつて交通事故を起こした場合(二の119から128までに規定する行為をした場合を除く。)には、次に定めるところによる。
(イ) 1による点数に、三の表の区分に応じ同表の中欄又は下欄に掲げる点数を加えた点数とする。ただし、当該交通事故が建造物以外の物の損壊のみに係るものであるときは、1による点数とする。
信号無視の点数は二点ですが、複数の別個の交差点で信号無視したことは「同時違反」にはならないため、信号無視した回数×2点が加算される。
10箇所の信号無視なら20点です。
次に飲酒運転。
| 飲酒量等 | 点数 |
| 0.15mg以上0.25mg未満 | 13 |
| 0.25mg以上 | 25 |
| 酒酔い運転 | 35 |
これについては報道からはわかりません。
次に事故に係る点数。

交差点を曲がりきれずに同乗者を負傷させた点で安全運転義務違反(2点)となりそうですが、この場合「酒気帯び運転/酒酔い運転」と安全運転義務違反は「同時に二以上の種別の違反行為に当たるとき」に該当する。
そのため、酒気帯び運転の基準値以下であれば安全運転義務違反+付加点数になり、酒気帯び運転/酒酔い運転として基準値以上であれば高い点数のほうだけになり「酒気帯び運転/酒酔い運転+付加点数」になる。
軽症とのことで「加療15日以上30日未満(専ら運転者の不注意)」だとすると付加点数は6点。
| 0.15未満 | 0.15~0.25 | 0.25以上 | 酒酔い | |
| 信号無視 | 2×回数 | 2×回数 | 2×回数 | 2×回数 |
| 飲酒点数 | – | 13 | 25 | 35 |
| 安全運転義務違反 | 2 | – | – | – |
| 付加点数 | 6 | 6 | 6 | 6 |
| 計 | 8+2×回数 | 19+2×回数 | 31+2×回数 | 41+2×回数 |
仮に信号無視が8回なら、アルコール0.15以下なら計24点になり、アルコール0.25以上であれば47点になる。
そしてちょっとややこしいのは、アルコール0.15未満の時には処分が変わること。
第百二十五条
2 この章において「反則者」とは、反則行為をした者であつて、次の各号のいずれかに該当する者以外のものをいう。
一 当該反則行為に係る車両等(特定小型原動機付自転車を除く。)に関し法令の規定による運転の免許を受けていない者(法令の規定により当該免許の効力が停止されている者を含み、第百七条の二の規定により国際運転免許証等で当該車両等を運転することができることとされている者を除く。)、第六十四条の二第一項の規定により当該反則行為に係る特定小型原動機付自転車を運転することができないこととされている者又は第八十五条第五項から第十項までの規定により当該反則行為に係る自動車を運転することができないこととされている者
二 当該反則行為をした場合において、酒に酔つた状態、第百十七条の二第一項第三号に規定する状態又は身体に第百十七条の二の二第一項第三号の政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態で車両等を運転していた者
三 当該反則行為をし、よつて交通事故を起こした者
無免許運転(1号)、酒酔い、酒気帯び運転(2号)、違反行為に「よって」事故を起こした者(3号)は反則者として扱わない、つまり赤キップになり書類送検されて刑事処分へと進むとする。
しかし、もしアルコールが0.15未満であれば2号に該当せず、安全運転義務違反に「よって」事故を起こしたことは間違いないとしても、信号無視に「よって」事故を起こしたわけではない。
そうすると、信号無視については青切符で反則金(もちろん信号無視の回数×9000円)と、それとは別に安全運転義務違反については過失運転致傷罪として書類送検されることもありうる。
要するに、信号無視は反則金、過失運転致傷は刑事罰ということもありうる。
もちろんアルコール0.15以上であれば、信号無視についても125条2項2号により反則者として扱わないため、その場合は過失運転致傷罪+信号遵守義務違反罪+酒気帯び運転罪の併合罪となりうる(信号無視分が反則金にはならない)。
理屈の上ではこのようになりますが、細かい事情で多少変わりうる。
例えば、複数回の信号無視のうち、最後の信号無視については事故発生と因果関係があると判断されることもあるでしょうし。
例えば信号無視して右折した結果、交差点を曲がりきれずに事故に至ったのならば、信号無視と事故発生に因果関係があるとして最後の信号無視分は酒気帯び運転と「同時違反」になるでしょうけど、信号無視した後数百メートル進行して起こした事故の場合は話が変わる。
問題なのは
仮に酒気帯び運転だとしたときには、同乗者がそれを知りながら同乗した場合には人身傷害保険は「同乗者の重過失」として支払われない点。

もちろん運転者の対人対物賠償責任保険からは支払われるし、軽症とのことなので自賠責保険でまかなえるでしょうけど。
結局のところ、酒気帯び運転なら「やめろ」だし「同乗するな」になるし、酒気帯び運転ではないとしても信号無視して逃走するなという話になる。
ところで、反則金と刑事罰の関係性はわりと興味深い。
反則者とは
反則行為をした者であって、この制度の適用を受ける者である。一定の違反行為者を行政の分野からとらえた概念である。ただし、次の者は、反則行為をした者であっても反則者とはしない。その趣旨は、本来この制度が一定の比較的軽微な違反行為を反則行為とし、これに関して処理手続を定めることとしたものであるが、車両等の運転者の道路交通法違反事件につき、事案の軽重、性質に応じて合理的に処理するという目的からみれば、違反行為についてだけでなく、その違反行為をした者についても、反社会性または危険性に応じて処理することが適当と考えられたからである。このような観点から、反則行為をした者であっても、悪質または危険性の高いまたはこの制度の適用になじまない次の者を反則者から除外し、この制度を適用せず、当初から刑事手続により処理することとしたのである。
東京地方検察庁交通部研究会、「最新道路交通法事典」、東京法令出版、1974
逃げる段階で犯した違反は、事故とは「同時違反」の関係にはないため、都度加算される。
複数の違反行為が絡む場合には処分が複雑化します。
結局、逃走して違反を重ねても自分に跳ね返ってくるだけで何もいいことはない。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。



コメント