小径車については全くと言っていいほど興味がない分野なのですが、読者様から先日のステム長の記事について、
古い言い方だと、ステム長のことを【突き出し量】とか言いますが、これだと突き出しはゼロですよね?
これ私も前から疑問に思ってまして。
私も突いて出すのは大好きなんですが、突き出しがゼロだなんて・・・これでハンドリングとか上手く操作できるもんなのか??とずっと疑問に思っていたのですが。
実際、ロードよりも不安定なのは確かなんですが
先に書いてしまいますが、小径車のステムの突き出し量について。
小径車の前側のみピックアップします。
だいたい、こういうスケルトンになっているものが多いのですが、いわゆる突き出し量については、ここを見るようです。
フォークのラインはオレンジのほうなのですが、そのラインからハンドルまでが突き出し量。
なのでこういうスケルトンの小径車を見たときに、
これはステムの突き出しがゼロなのではなくて、きちんと確保されているわけです。
小径車全般に言えることですが、ロードに比べるとハンドリングはやたらクイックで、安定性は悪いです。
これは車輪の径が小さいから、という理由もあるんでしょうけど。
で、恐らくはトレイル値の関係なんだろうなと思うのですが。
トレイルは、キャスター角やフォークオフセットによって変化しますが、トレイルが大きくなるほど、直進安定性が増し、ハンドリングも安定傾向と言われます。
小径車の場合、どうしても車輪自体が小さいので、もしロードと同じ設計なら、
トレイルはかなり小さくなる。
車輪径が小さいので当たり前ですね。
いろいろ調べていくと、だいたいこんな傾向にはあるようです。
車種 | トレイル値 |
ロードバイク | 60mm程度 |
MTB | 75mm程度 |
小径車 | 48mm程度?? |
小径車の場合、そもそもジオメトリが載ってないものも多いのですが。
こちらのDV-1ではトレイルは48mmだとしています。
まあ、小径車のほうがトレイルは小さくなるのは目に見えてますし、かといって狂ったようにフォークを寝かせるのもアレでしょうし。
なのでこういう車種でも、
ステムの突き出しがゼロというわけではないようです。
ラレーは小径車でもジオメトリが公開されていたので、見て行きます。
こちら、ラレーのRSC。
こちらは先ほどの図のようにはなっておらず、フォークから自然にヘッドチューブが伸びてきて、ロードと同じような突き出しが明確なステムを使ってます。
いわゆるミニベロロードで、ホイール径は20インチ(ETRTO 451)。
ステム長は80mmもしくは100mm。
こちらはラレーのRSS。
同じくホイール径は20インチ(ETRTO 451)。
ステム長は80mm。
トレイル値とフォークオフセットだけをピックアップすると、
RSC | RSS | |
フォークオフセット | 38mm | 40mm |
トレイル | 45-47mm | 43mm |
ドロップ車とフラットバーでも設計は違うでしょうけど、ドロップ車のRSCはトレイル長め、フラットバーのRSSはそれより短めです。
ラレーのHPによるとこのように解説があります。
小径車の場合は、フルサイズと同じようにトレールの値ばかりを考えるわけにはいきません。タイヤの接地性もフルサイズとは異なります。フルサイズマシンとトレールを共通にしたところで、同じようなハンドリング特性が得られないのが現実です。RSWのこと、あるいはARAYAでの今までの小径車の実績なども踏まえて、できる限りフルサイズマシンに近いハンドリング特性を求めたのが現在のフレームスケルトンになっていると思います。
infoFAQ 小径車(ミニベロ)への賛歌
ママチャリのトレイルについても解説されていますが、ママチャリはむしろトレイルが小さい。
けど前カゴに荷物を入れることも想定しているのと、常用速度の問題からそのくらいがいい、と。
DAHONはジオメトリがありませんでしたが、こちらが14インチ。
こちらが20インチ。
20インチのほうがフォークのオフセットを大きく取ってトレイルを小さくする方向にしてますが、車輪径が違うので、実効トレイルは同じくらいになるのかもしれません。
ロードバイクと同じに見てもダメ
先ほど挙げたラレーのHPになかなか興味深いことも書いてありますね。
随分以前、アラヤのサイクル事業部のときに通学車用の軽快車でスポーツバイク並みにフォークのオフセットを短くして、フォークの曲げをきれいにして、その横にモデルさんの美脚をカメラに収め、「曲線美の美脚フォーク」として出したことがあります。フレームのヘッドアングルは従来の軽快車どおりでしたので、オフセットが短くしたため、スポーツバイク並みのトレールになってしまったのですが、製品が出た後「なぜか分からないけど、今年のこのモデルはなんとなく曲がりにくいと言う声がある」と代理店さんか伺いました。
infoFAQ 小径車(ミニベロ)への賛歌
車種ごとに自転車としての特性があって、それに応じたトレイルがあるということですね。
フォークだけ違う種類のものに変えると、走りの特性まで変わりうるわけで。
あんまりフォークだけ汎用品に変える人もいないでしょうけど。
ということで、このように見える車種でも、
ステムの突き出しがゼロと言うわけではありません。
このあたりの設計、なかなか興味深いところではありますが。
どうでもいいですが、通販で激安ロードを買って、テキトーに組んで、フォークが前後逆のままという人を見たことがあります。
恐ろしく走りづらいでしょうし、ブレーキがフォークの後ろについている時点でどうなの??と思うのですが。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
最後のフォークの後ろにブレーキがきている自転車、ブレーキシューの向きも変えていないと思うので、ハードブレーキングしたらシューがキャリパーから外れて大事故になると思われ…( ノД`)…
コメントありがとうございます。
実際その通りですが、フォークが逆の状態ではまともに走れないと思いますし、ハードブレーキングうんぬん以前の問題かもしれません。
高はしです。
古い記事への「今更」コメント失礼します。
私の感覚として、ステム長さは、他の要素に埋もれてしまうと感じています。
ハンドルを持つときはステムのクランプ部を持つ訳ではなく、主としてブレーキフーデットを握るので、ハンドル幅や送り量、ブレーキレバーの形状とかに埋もれてしまう印象です。
話題にもありましたように、ステアリングはトレールが支配的とは思いますが、24インチのロードを作ってもらったときに700cとトレールを会わせもらったら、全然曲がらないし、立ちこぎで「振れ」ない自転車になってしまったことがありました。
あと、ランドナーとかで、泥除けにクリップが当たらないようにヘッドを寝かせすぎると、ハンドル切る度にヘッドの上下挙動が大きくなるので、それも違和感になったりしました。
コメントありがとうございます。
今更だなんて、気にしなくていいですよ。
トレールもそれが全てというわけではないんですよね。
なのでフレーム設計ってほんと難しいんだろうなと。
小径車とロードでも同じ考えで作ると失敗しそうですし、開発者の方って偉大だなと感じます。