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横断歩道で一時停止後に発進するときは、歩行者との距離はどれくらい必要?

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横断歩道で歩行者を優先するために一時停止した後の話。
歩行者が自車の前を通過した後、歩行者が横断歩道上にいても安全側方間隔さえ確保していれば発進しても問題ありません。
しかし、その側方間隔がどれくらい必要なのかについては何ら明確なものはありません。

※イラストでは歩行者が向かっていますが、逆向きに歩いているとお考えください。

横断歩道ではなく歩道の事例になりますが、このような判例があります。

歩行者が引き返してきた事故

判例は名古屋地裁 平成3年1月18日。
差戻し後の一審です(差戻し前の二審は名古屋高裁 平成2年2月27日)。

 

事故の概要です。
被告人車は歩道を横切る前で一時停止しました。
車道に右折合流する予定です。

歩道に停車した車から降りた歩行者が、一時停止している被告人車の前を通過。

被害者が被告人車から3、4m西に歩行した時点で被告人車が歩道に進行しましたが、被害者が自分の車に戻るように引き返してきたため、被告人車と被害者が衝突した事故です。

差戻し前の一審は有罪にしましたが、二審は理由はわかりませんが差戻し(判決文見当たらず)。
なので差戻し後の一審になります。

検察官は、歩道は原則的に自動車の進入を予定していない場所であるから、歩道を横断することになる自動車運転者としては歩行者のいかなる動静にも対処しうるように慎重に安全確認をすべき注意義務があるとして、本件においては、概ね右認定と同様の事実を前提にしつつ、被告人車両の目前を通過した被害者に対しても、その後の安全確認は必要であり、特に被告人は被害者が自車の前を通り過ぎた後3メートルくらい先で立ち止まったのを認めたのだから、同人が引き返してくることは予見可能であった旨主張する。確かに、自動車運転者は歩道上の歩行者に対して相当高度の安全確認義務を負うべきであろう。また、被害者が被告人車両の目前を通過したからといって、同人がひき返してくること自体が予見不可能であったとはいえない。
ところが、本件において被害者は、引き返して被告人車両に衝突するまで、右後方を振り返ったまま歩いている。仮に同人が戻り始めたのが被告人車両の発進よりも時間的に前であったとしても、同人が戻り始めた地点は被告人車両の右方3、4メートルであり、一方被告人は被害者が右地点にいるのを認めてまもなく、緩やかに自車を発進させて歩道上に進出しているのであるから、同人が普通に前を向いて歩いてくれば衝突はしなかったはずであり、このことは、被害者が被告人車両の側面に衝突していることからも裏付けられる。そして、一般的には、自動車を運転して道路外から道路に出る際に、歩道上の歩行者が前を向いて歩いてくれることを信頼することは許されないとしても、本件のように、自動車が歩道直前でエンジンをかけながら車道に向かって停止しているその目前を通過した歩行者との関係では、これを認める余地がある。
すなわち、そのような歩行者は酩酊者や幼児その他注意力の乏しい者でない限り、通常は自動車が車道に出ようとしている様子に気がつくであろうし、気がつけば当然、引き返す際にも右自動車の動静に注意して行動するであろうと考えられる。しかも、いったん通過した歩行者が引き返してくること自体、予見不可能ではないにしても稀であるから、本件における被害者のように、一般の成人の歩行者が前記のような態勢にある自動車の目前を通過した後、ほどなくして後向きのまま、右自動車の動静に何らの注意を払わずに引き返してくることは極めて稀な事態であるといえる。運転者が通過後の歩行者が引き返してくるかどうかを確認することは望ましいことではあるが、運転者に対し、常に右のような稀な事態をも予想し計算に入れた上で引き返してくるかどうか確認することを求めるのはあまりにも酷であり、実際上も道路外から道路に出ることは極めて困難にならざるをえない。この場合には、たとえ歩道上であっても、引き返すという例外的な行動に出る歩行者に対し、事故回避のための一定の注意が求められてしかるべきである。
したがって、右の場合の自動車運転者としては、歩行者の通過後も長い間停止していたという事情(その間に停止中の自動車に対する歩行者の注意が薄らいだり、歩行者が前を向いて歩いていても衝突を避けられないほど近くに接近している可能性がある。)等がないかぎり、歩行者の側で自車の動静に注意を払ってくれることを信頼して運転することが許されると解すべきであり、結局、通過した歩行者が引き返してこないことまでを確認する注意義務はないというべきである。
本件においては、前記のような被告人車両の停止状況、成人である被害者がその目前を歩いて通過していったこと、被告人は、通過した被害者が右方3、4メートルという前を向いて歩いてくる限り衝突を回避できるであろう距離にいたのを確認し、その後間もなく自車を発進させたこと等に照らすと、右確認後発進前にさらに同人が引き返してくるかどうかを確認すべき注意義務があったと認めることはできない。そして、被告人は、このほかの点では、前記一3のとおり、一時停止後発進前に歩道上の歩行者等の有無を観察して、発進にあたって必要な安全確認の注意義務は尽くしており、被告人には、本件公訴事実における過失は認められない。

 

名古屋地裁 平成3年1月18日

ということから、無罪とした判例です。

結局のところ

この事例では、一時停止車両が再発進した地点は「歩行者との距離が3、4m」。
歩行者が一般成人であれば、この距離感なら過失は否定できるかと思われます。
(横断歩道も同一に考えてよいかと。)

 

ところが、いくつかの要素により「歩行者が引き返す可能性が十分予見できる場合」は別。
要は予測不可能な動きをする可能性がある人、つまりは酩酊者や幼児などです。

酩酊者や幼児その他注意力の乏しい者でない限り、通常は自動車が車道に出ようとしている様子に気がつくであろうし、気がつけば当然、引き返す際にも右自動車の動静に注意して行動するであろうと考えられる。しかも、いったん通過した歩行者が引き返してくること自体、予見不可能ではないにしても稀であるから、本件における被害者のように、一般の成人の歩行者が前記のような態勢にある自動車の目前を通過した後、ほどなくして後向きのまま、右自動車の動静に何らの注意を払わずに引き返してくることは極めて稀な事態である

なお、この判例では被告人車が緩やかに再発進しているので問題にはなりませんが、横断歩道で一時停止して歩行者を優先してから再発進する際も、横断歩道を通過し終わるまでは徐行して警戒する義務はあると考えていいでしょう。

 

ちなみに民事の過失については、ゼロにはならないと思われます。
民事と刑事では過失について立証の深さが違うので、刑事では過失なし、民事では過失認定なんてザラ。

歩道を横切る前の一時停止義務

歩道を横切る前には一時停止、かつ、歩行者妨害禁止の義務があります。

(通行区分)
第十七条
2 前項ただし書の場合において、車両は、歩道等に入る直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない

遵守率はかなり低いような実感がありますが…

 

この規定、読めばわかるように「一時停止」と「歩行者妨害禁止」を並列的に義務としているため、両方達成して合法、片方欠いただけで違反になります。
まあ、頭がおかしい人が「歩行者妨害しなければ一時停止しなくても違反にならない」などとデマを流している話は聞いていますが、デマを流して被害を増やして何をしたいのやら。

 

問答無用に一時停止義務を課している理由は、歩行者の聖域を侵害しないように一時停止して「確認させる」ことにあるから。

 

ジャパンの歩道にはこのような草木があるわけで、

子供や車椅子の方などが見落とされる可能性があり、問答無用に一時停止義務としています。
結果的に歩行者を妨害しなかったら全て免責にはならない。

 

歩道や横断歩道は歩行者の聖域。
◯原は管理人の性域。

 

一時停止義務はかなり大切です。
なお、歩道の見通しが著しく悪い道路において、一時停止だけでは足りず、一時停止と僅かな前進を繰り返す義務があったとする判例も出ています。

 

車が道路外→車道に進入する際の、歩道に対する注意義務。時速40キロ弱で歩道通行する自転車を予見せよ。
車が道路外の施設から歩道を横切って車道に進入する際は、歩行者を妨げてはならない義務があります。 自転車は一応、歩道を通行することが可能です。 ただし自転車が歩道を通行する際には原則として徐行義務があります(63条の4第2項)。 しかも歩道の...

 

時速40キロで歩道を通行する自転車と、道路外から歩道を横断するクルマの注意義務。
以前書いた判例について、メールを頂きました。 ちょっと勘違いされているような。 過失運転傷害罪 この判例は刑事事件、過失運転傷害罪に問われたモノ。 過失運転傷害罪はこのように定義されます。 (過失運転致死傷) 第五条 自動車の運転上必要な注...

 

時速約40キロで歩道を爆走する自転車もどうかと思うけど、だからといって歩道を横切る車両の注意義務は消えない。
ちなみに、コンビニから車道に出る自転車も同じく一時停止義務がありますが、一時停止もしないし無確認で車道に出るノールック自転車もたいがいにしてほしいよね。

 

一時停止義務って、止まることがメインではなく、「止まって確認すること」が義務です。

自車の前を横断通過した後の側方間隔は、歩行者の状況次第で変わります。
一般的には自車の前を通過した後、発進時に3mもあれば問題にはならないと思われますが、歩行者の属性や挙動次第では5m以上必要になるかもしれません。






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