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論外だ!と言われましても、何の話なんだ?

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ちょっと前に、唐突に「テロリスト」呼ばわりされましたが、

 

テロリスト呼ばわりされました。
テロリスト呼ばわりされましたが、 これは喜んだほうがいいのか、キレたほうがいいのか、発狂すべきタイミングなのか悩みますね。 悩む程度に特に感情がない、というほうが正解なのかもしれません。 深読みするならば、「テロリストのようになれ!」という...

 

今度は記事内容と関係ないような…
えーと、大丈夫ですかね?

先日のツイートについては「テロリストになれ」という「フリ」なんだと理解しましたが、今回も深読みするならば、

歩行者に対して「手を挙げて渡る意志を示しましょう」、或いは「存在をアピールしましょう」のような運動をしろ!

という「フリ」なのか?
それとも、

歩行者に対して「手を下げて渡る意志を示しましょう」、或いは「存在をひたすら隠そう」のような運動
をしろ!

という「フリ」なのか…??

 

すみません、深読みし過ぎてしまう癖があるようで、どちらを意図しているかはよくわかりません。
日本語のセンテンスに隠されたメッセージを読み取るのはなかなか難しいですね。

 

ところで、そもそもなぜこの方がいうところの「論外」とやらが横行するのでしょうか。
そこを理解してないと、変わらないと思いますよ。

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ところで

今回は「過失」について。

 

横断歩行者とクルマが衝突した、ある事故判例(横断歩道ではない)についてですが、過失割合は以下のようになっています。

クルマ 歩行者
0 100

通常、このような事故はクルマの過失が80%。
これは以前も書いた新潟地裁長岡支部、平成29年12月27日判決になります。

 

横断歩行者に過失100%をつけた珍しい判例。
横断歩道がなく、かつ横断禁止ではない道路の場合、民事上では車にもかなりの過失がつきます。 目安は歩行者:車=20:80。 ところが、横断歩行者に過失100%とした珍しい判例もあります。 横断歩行者に過失100% ※画像と事故現場は関係ありま...

 

以前から書いているように、クルマのドライバーは過失があるから損害賠償責任を負うのではなく、「無過失の立証がないから」損害賠償責任を負う仕組み。

(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

なので、下記を立証出来なければ損害賠償責任があることになります。

①自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと
②被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと
③自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたこと

結構勘違いする人がいますが、「注意を怠らなかつたこと」を求めているので、道路交通法違反があったかどうかではない。
民法でいう「過失」は、予見可能な結果を回避しなかったことを指すので、道路交通法違反があったかどうかではない。

 

時々、「日本の道路交通には優先権がないから優先側にも過失がつく」みたいなことを語る人がいますが、そもそも争いの対象になるのは「過失」。

 

フランスの民事法なんてそもそも過失相殺規定(日本の民法における722条2項)が条文として存在しないので、日本と過失割合が違うのは当たり前です。
だって民事法の考え方が違うのだから。
判例の積み重ねで過失相殺自体はありますが、法律上は過失相殺規定がない。

 

なお、上の判例ではクルマは法定速度より10キロの速度超過があったと認定されています。
しかし無過失

原告には、夜間、幅員約30m(片側約13.8m)の国道を左右の安全確認不十分のまま横断したことについて過失が認められ、また、証拠によれば、被告車両に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことも認められるから、被告は、自賠法3条ただし書の適用により、同条本文の損害賠償責任を免れる
そして、以上の検討結果によれば、被告に民法709条所定の過失が認められないことが明らかであり、同条による損害賠償責任も負わない

 

新潟地裁長岡支部 平成29年12月27日

理由については判決文を全部読まない限り理解できないと思うし、判決内容がおかしいとも思わない。
また、「ある点」が否定されたからこうなるだけの話であって、ほとんどの場合には当てはまらないでしょう。
ある点とは、中央分離帯上で横断待ちしていた歩行者の存在は、いかなる方法でも視認できないとの判断だからです。
それを踏まえると、法定速度で進行していたとしても回避可能性がない。
なので、「請求棄却」になる。

 

なお、例えばフランスだとこの場合、人身損害については100%支払われるはず。

「フランスの制度」
人身損害は被害者の許し難い過失が事故の唯一の原因である場合を除き無過失責任が適用される。また、人身損害を被った被害者が運転者の場合を除き、過失相殺は適用されない。

許し難い過失には、信号無視すら含まれません。
また、物損部分については過失相殺されます。
あくまでも人身損害部分のみの話。

 

これ、どっちが優れているか?については、社会保障制度が他にどうなっているかの問題もあるので、一概には言えません。

なんか変な

今回この判例を取り上げた理由についてですが、

この方にとっては「論外」だそうな。
別にそれはそうだと思う面はあるし、それでいいんだけど、じゃあ社会のムードがそこに向かわない理由はどこにあるのか?というところ。

 

道路交通法の問題ですか?
上の判例は「直前横断」(横断歩道ではない)なので道路交通法違反だし過失になりますが、一方、「直前横断」が禁止されていない横断歩道でも必ず歩行者過失が0になるわけではない。

 

横断歩道での事故については、基本過失割合は歩行者0%。
しかし歩行者にも「過失」があれば過失相殺の対象になる。

状況 高齢者等 歩行者過失
広島高裁S60.2.26 横断歩道前で車両の状況を確認し、すぐに横断せずタバコに火をつけ確認せず横断開始 10%
神戸地裁H8.5.23 夜間、小走り 高齢者 5%
大阪地裁R2.9.25 昼間、直前横断 10%
東京地裁S46.4.17 左折時 ※20%
東京地裁S46.1.30 青信号で横断 20%
大阪地裁H28.2.3 死角 高齢者 5%
京都地裁 S48.1.30 夜間、横断歩道で四つん這いで探し物 70%
東京地裁S54.2.1 青色の表示中に本件道路の横断を開始し、センターラインの約3.5m手前付近で青色点滅の表示に変わつたが、極めて遅い歩調で横断し続け、センターライン付近で赤色の表示に変わつたが、なお従前どおりの歩行を続け、センターラインを少し越えた付近で本件車両用信号が青色信号と変わり、その後六秒程度歩行し続けた 40%

※東京地裁昭和46年4月17日判決は、二審で無過失になったかのような要旨あり(判決文不詳)。

 

横断歩道を横断する歩行者と38条の関係。判例を元に。
前回、横断歩道を横断する自転車についての判例をまとめましたが、歩行者についてもまとめておきます。 道路交通法38条1項とは 道路交通法では、横断歩道を横断する歩行者について極めて強い優先権を与えています。 (横断歩道等における歩行者等の優先...

 

令和になっても過失相殺している判例があるのが現状。
もちろん、ほとんどの場合は「示談」にて歩行者過失が0%でしょうけど。

 

なぜこうなるのか分析できているのか知りませんが、どこに問題があるのか把握しない限り、この人がいうところの「論外」は続くと思いますよ。
過失とは、「予見可能な結果を回避しなかったこと」なんですよ。
つまり不注意を意味する。

 

なお、刑事でも被害者に「過失」があれば量刑判断として考慮されることになります。
有名な東京高裁 昭和46年5月31日判決(業務上過失致死)にしても、被害者の「過失」を量刑判断としている。

所定刑のうち禁錮刑を選択するのを相当とするが、他方本件事故は4歳の幼児が横断歩道上を駆けて走つたことが重要な原因となつて生じたものであつて、その横断方法は本件の具体的状況下にあつてはまことに危険な横断の仕方であつたと考えられること、また幼児の監護者の不注意も看過しえないことを斟酌すると、被告人に対してあえて実刑を科するのは相当でないから、結局被告人を禁錮4月に処し、なお刑法25条1項に従い、この裁判確定の日から一年間、右刑の執行を猶予し、原審および当審の訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項本文に従い、その全部を被告人に負担させることとして、主文のように判決する。

 

東京高裁 昭和46年5月31日

優先権とやらの問題ではなく、「過失」の概念の話かと。

 

とりあえず、「フリ」なのかどうか判断つかないのであくまでも「事実」について書いておきます。
変えるべき点がどこにあるのかわかっているのかわかっていないのか知りませんが、「論外だ」というムードに世間がならない理由がここ。

 

Twitterなどで事故動画が流れたときに、ほとんどの人は「過失割合」の話を始める。
世間の評価は民事の過失割合であり、過失割合に影響する「過失」とは「予見可能なことを回避しなかったこと」
道路交通法の義務違反がなくても過失になるようなシステム。

 

たぶんこの方には意味がわからないでしょうけど、優先権とやらで決めるシステムじゃないのね。

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