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その事故はなぜ起きたのか?義務を確認する。

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こういう事故は時々報道されますが、

30日午後4時40分頃、尼崎市東難波町の市道の交差点で、自転車に乗っていた小学4年生の9歳の男の子がトラックにはねられました。

 

男の子は病院に搬送されましたが、頭の骨を折るなど、意識不明の重体です。

 

男の子は友達と遊びに行く途中、車道を横断していたところ、北に向かって走っていたトラックにはねられたということです。

 

警察によると、現場は信号のない交差点で、横断歩道はありましたが、男の子は、車道を渡っていたということです。

 

自転車乗った9歳の男児 トラックにはねられ意識不明 兵庫・尼崎市(関西テレビ) - Yahoo!ニュース
30日夕方、兵庫県尼崎市で自転車に乗っていた9歳の男の子がトラックにはねられ、意識不明の重体です。 30日午後4時40分頃、尼崎市東難波町の市道の交差点で、自転車に乗っていた小学4年生の9歳の男の

小学生に交通ルールの厳守を望むのはムリがあるわけで、大人が高度に注意するしかありません。
飛び出すもんですしね。

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大人の義務

事故現場はおそらくこちら。
トラックが北進中との話なので、トラックの進行方向に向いてます。

 

T字路が左右に連続するような、変形十字路とも言えますかね。

さて。
純粋に道路交通法の義務で確認してみます。

 

問題になるのはこちら。

(徐行すべき場所)
第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。

※優先道路=交差点内にセンターラインがある場合。

(横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条 車両等は、横断歩道に接近する場合には、当該横断歩道を通過する際に当該横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない

この場合、自転車が横断歩道を横断していたかはあんまり関係なくて、クルマの運転者が過失運転致傷に問われるか否かは、徐行義務(42条1号、38条1項前段)を果たしていたかどうかになります。

※左右の見通しというのは、左右どちらかのみでも徐行義務があります。

 

38条1項前段「横断しようとする歩行者が明らかにいないと言えない場合の減速接近義務」と、42条1号の徐行義務があることを考えると、2つの交差点を通過するまでは徐行義務があります。

 

自転車がどこをどの方向に横断したかは結果論でして、運転者が徐行義務を果たしており前方左右を注視していても防げないタイミングと速度で自転車が横断したのならば、不起訴もしくは無罪。

 

T字路が2つ連続している上、どちらの交差点も見通しが悪いので徐行してさらに横断歩道の左右を注視していたかになります。
横断歩道付近の見通しが悪ければ「横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合」とは言えないので、事実上徐行するしかありません。

 

結局のところ、飛び出してきたのが「横断歩道外を横断した自転車」なのか、「横断歩道を横断した歩行者」なのかは結果論に過ぎず、十分な減速をしていなければ「横断歩道を横断した歩行者」であっても停止できずに衝突してしまう。
横断歩道を小走りで横断する歩行者のことまで考慮して警戒する場面なので、最終的に衝突したのが自転車なのか歩行者なのかは単なる結果論でしかなく、どちらであっても減速接近義務&徐行義務は遡って免除されないのよね。

徐行義務

このような判例があります。

被告人は、昭和57年…ころ、普通乗用自動車(以下被告人車という)を運転し、兵庫県…交差点(以下本件交差点という)を西から東へ進入した際、折柄右方(南方)道路から交差点に向けて進行してきた被害者(当時74年)乗車の足踏自転車(以下被害自転車という)と衝突し、同人が原判示の傷害を負つたこと、本件交差点は、被告人が進行してきた東西に通じる幅員約4.0ないし4.5mの道路と、被害者が進行してきた南北に通じる幅員約4.1ないし5.1mの道路とが交差した場所であるが、同交差点から東への道路が南に寄つているため若干変形した交差点になつていること、交差点の周囲には商店など建物があるため東西、南北の道路とも左右の見通しが困難な交差点であるが、信号機等による交通整理は行われておらず、交差点北東の角にロードミラーが設置されているだけであること、なお、被告人が進行してきた道路は東行の一方通行と規制されていること、以上の事実が認められる。

見通しが悪い生活道路の交差点を、被告人車は東進。
被害者は自転車に乗り交差道路を北進。

 

一審は「一時停止又は徐行をして左右の安全を確認すべき業務上の注意義務を怠った過失」として有罪ですが、大阪高裁は以下の理由から無罪に。

原判決に示された法律判断によれば、自動車運転者は、本件交差点を西から東へ進行する場合には一時停止又は徐行(最徐行)をして左右道路の安全を確認すべき業務上の注意義務があるとしているところ、本件交差点が前説示のように左右の見通しの困難な、交通整理の行なわれていない交差点であるから、車両の運転者に道路交通法上の徐行義務があることは明らかであるが(道路交通法42条)、さらに進んで一時停止の業務上の注意義務があるかはにわかに断定できず、本件交差点は一時停止の交通規制は行なわれていない場所であるから、業務上の注意義務としても特段の事情なき限り、一時停止義務はないものというべきである。けだし、道路交通法は交通の安全と円滑を調和せしむべく徐行すべき場所或いは一時停止すべき場所を決めているのであって、例えば車の鼻先を出しただけで衝突を免れないような交差点や優先道路との交差点などでは、別に一時停止の交通規制を行つているのが通常であり、規制のない場合には、業務上の注意義務としてのものであつても、一般的には一時停止義務を課することは相当でないというべきである。

(中略)

そこでさらに進んで被告人の徐行の注意義務違反の有無について考察すると、道路交通法上徐行とは車両が直ちに停止することができるような速度で進行することをいうと定義されている(道路交通法2条1項20号)が、具体的に時速何キロメートルをいうかは明らかではないとしても、前記認定の時速5キロメートル程度であれば勿論、時速10キロメートルであつても徐行にあたるものというべく、本件において業務上の注意義務としての徐行としても、時速5キロメートル程度のものであれば、これにあたると解するのが相当である。原判決は本件のような交差点に進入する車両には単なる徐行より一段ときびしい最徐行義務があるかの如き説示をしているのであるが、最徐行とは具体的にいかなる速度をいうのかの点は暫らくこれを措くとしても、前記のように被告人が時速5キロメートル程度の速度で進行していたとするならば、被告人において徐行(最徐行を含めて)の注意義務はつくしているものと認めるのが相当である。従つて、被告人には公訴事実にいう徐行の注意義務を怠つた過失はないというべきである。

 

大阪高裁 昭和59年7月27日

時速5キロ程度で進行していた被告人には過失がないとして無罪に。
ここまできちんとやるべき義務を果たさない限り、無罪にはなりません。
まあ、この判例については一審は有罪判決なんですが笑。

 

報道の事故については詳細がわからないので評価しませんが、加害者が刑事責任を問われないラインは「徐行していたか」「前方左右、特に横断歩道左右を注視していたか」になります。
これらを果たしても防ぎようがない事故なら無罪だし、義務違反して徐行していなければ問答無用かと。

 

かなり大事なのが徐行義務ですが、かなり軽視されているのも事実。
子供が自転車で横断したというのは結果論だし、加害者からすると見通しが悪い(=何がいるかはわからない)から徐行義務があるわけで。

 

もちろん、自転車側にも注意義務違反があった可能性はありますが、他人がどうという前に自分に課された義務をするのみ。
やることをやっても防げなかったのか、やることをやらずに事故が起きたのかはわかりませんが、徐行義務違反はよくある話なので頭に入れておかないと有罪なんですよね。
自転車対自転車でも起こりうるタイプの事故なので要注意です。

 


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