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消えかけた横断歩道と、車両の注意義務。消えた横断歩道には停止義務はない?

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横断歩道が消えかけているのはよく見かけますが、

過失運転致傷罪に問われた運転手の刑事裁判では、横浜地裁川崎支部が19年11月の判決で「車両進行方向の横断歩道は完全に消失し認識することは著しく困難」だったとして、無罪を言い渡した。これを受けて被害者と家族は20年10月、運転手の勤務先と県を相手取り、1億3900万円の損害賠償を求めて民事訴訟を起こした。

 

「消えた横断歩道」ではねられた 摩耗を放置した神奈川県も一部責任を認め和解 劣化した白線は全国に:東京新聞 TOKYO Web
川崎市の横断歩道で歩行者が車にはねられた一因は「白線」が消えていたことにあると、道路標示を管理する責任を負う神奈川県が過失の一部を認め...

刑事は無罪(過失運転致傷)、民事は県が1割、勤務先が9割で和解したそうな。

 

ところでこれ、ちょっと気になる点がありまして。

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消えかけた横断歩道は無罪に?

道路交通法上、信号がない横断歩道は道路標識と道路標示の両方が必要になるので、横断歩道の道路標示が消えて視認できなければ「道路交通法上は」横断歩道が存在しないことになりますが、

(公安委員会の交通規制)
第一条の二
3 法第四条第一項の規定により公安委員会が横断歩道又は自転車横断帯(以下「横断歩道等」という。)を設けるときは道路標識及び道路標示を設置してするものとする。ただし、次の各号に掲げる場合にあつては、それぞれ当該各号に定めるところによることができる。

過失運転致傷罪って、道路交通法の義務違反のみならず「注意義務違反」を争う仕組み。
なので道路標示が消失しても道路標識の視認が可能なら注意義務違反として認定すること自体が不可能とも思えないのです。

道路交通法所定の義務と業務上過失致死傷罪における業務上の注意義務とは、一応別個に考えなければならない

 

最高裁判所第一小法廷  昭和48年3月22日

※業務上過失致死傷罪は現在は過失運転致死傷罪

 

ちょっと前から「標識不足の横断歩道」により違反の取消が相次いでますが、

 

標識漏れが約2400カ所…大丈夫ですかね。
全国各地で横断歩道の標識漏れによる「架空の横断歩道」が問題になってますが、発端は青森県でしたよね。 ところで、佐賀県警では県内約2400ヵ所で標識漏れだそうな。 佐賀県警は27日、県内17カ所の信号のない横断歩道で標識に不備があり、22人を...

 

過失運転致傷罪の注意義務を考える上では、運転者が「横断歩道が存在する」と認識すれば足りるわけでして。
検察官が何を主張して裁判所がどう判断したのか疑問が残る。
たぶん場所はここ。

 

 

事故発生が2018年10月31日、Googleマップが2018年7月。
確かに道路標示は7月時点でほとんどなく、それから3ヶ月後ならなおさらなのかな。
横断歩道の予告表示にしても、7月時点でだいぶ消えかけてますが、事故発生が「昼」なんですね。

 

 

そして道路標示はだいぶ消えかけてますが、道路標識は視認可能。
「車両進行方向の横断歩道は完全に消失し認識することは著しく困難」との判決だったようなので、横断歩道が存在しない前提で回避可能性を争ったのだろうか?
けど、方向によっては確かに車両の進行方向は完全消失してますね…

 

 

ここまでになると、さすがに横断歩道がないと見なして考えるしかなかったのかもしれません。

 

で、横浜地裁川崎支部の刑事事件判決文を探してみたのですが、みつかりませんでした。
ただし状況は違うものの、横断歩道の標示が一部消えて視認できない状況でも、「過去に何度もこの交差点を通行して横断歩道があることを知っていた」として注意義務違反を認定している判例もあるので(大津地裁 令和2年2月12日、過失運転致死)、道路交通法上の問題と過失運転致死傷罪の注意義務違反は別に考える必要があります。

 

それは置いといて、民事では県が責任を一部認めて和解したそうな。
神奈川県議会のホームページをみると、令和5年第3回定例会にて定県第81号議案として和解案が示され原案可決になってます。

 

報道をみると、以前から横断歩道が消えかけていたのだから直してくれ的な陳情があったようなのですが、半年経っても補修されなかったとあるので、県にも責任があるというのは当然のように思えますが、若干疑問なのは責任は「1割」なのか?という点。

 

まあ、おかしな道路標識についても陳情して即座に動くわけではないにしろ、「費用」がネックなんですかね。

直してくれと言っても

例えばこれ。

本来はイエローラインのセンターラインが続く道路ですが、センターラインは完全消失。
なぜ一部だけ書き直してあるかというと、交差点なのでセンターラインがないと優先道路を示せないからだと思われます。

 

交差点内だけにイエローラインが虚しく引かれた状況から一年以上経っても、交差点外にはセンターラインが復活してないので、よほどカネがないのか?と心配してます。

 

イエローラインがない以上、はみ出し追い越しは禁止されなくなってますが、そんな程度ならば最初から白線でもいいのではないかと疑うレベル。

 

横断歩道にしても消えかけている場所はありますが、直してくれと言わないと動かないし、そもそも直してくれと陳謝しても直してくれない。
誰が被害を被るかは明らかとしか。

 

なお、仮に横断歩道がないとみなされても交差点であれば道路交通法38条の2の義務はあるし、どちらにせよ事故回避義務があることになりますが、横断歩道の予告表示があれば「横断しようとする歩行者が明らかにいない」と言えない場合には減速接近義務があることに注意(38条1項前段)。
肝心の横断歩道が消失していたら確かに困りますが。


コメント

  1. ゆき より:

    標識が実質見えない/見えても事故の回避は出来ないとなったんですかね?

    オーバーハングもなにもない標識なので、走行車線にトラックやバスが居れば標識は簡単に見えなくなる。
    そして、事故現場はトラックやバスが多い場所なのでこの標識では隠れるのが当たり前。
    https://maps.app.goo.gl/nyQCACxgCg5MbS8B6

    そして、加害車両はタンクローリーなので、フルブレーキやハンドル操作での回避は、横転リスクが高く、回避手段は制限される。
    標識や横断者が視認できたとしても、回避可能性はなかった、みたいな結論だったのかしら。

    ちなみに、反対車線も、木が繁ってると標識が隠れる感じで良く見えない。
    https://maps.app.goo.gl/LuQWEuWVhJAzAH1z7
    無関係かもですが、刑事事件の無罪判決が出たのが2019年11月、
    2019年6月と2020年11月の間に、横断歩道のあるブロックの標識を隠す街路樹がバッサリ消えてますね。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      報道では何度か通行して横断歩道の存在を認識していたみたいな内容もあるので、

      1、標識が視認可能だけど、標示なしでは注意義務を認めなかった
      2、標識も視認不可能だった
      3、標示の道路右側部分が残っていたことを検察側がゴリ押ししたけど裁判所が否定した
      4、予告標示の存在を検察がゴリ押ししたけど裁判所が否定した

      何を争って無罪なのかで意味が違うと思うのですが、道路左側全部が消えるなんてなかなかないので、ちょっと気になる案件です。

  2. いんちょ より:

    教えてください。仮に横断歩道が無かったとしても横断歩行者はねたら有罪だと思うのですが、なんで無罪になったのでしょうか?

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      判決文が見つからないので無罪にした理由はわかりませんが、過失運転致死傷罪なので刑事責任を問える過失と、致死傷の間に因果関係がないと無罪になります。
      一般的には制限速度を遵守して前方注視して運転していても防げなかった事故なら無罪になります。
      当該事件の詳細はわかりません。

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