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「第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度」の話。

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最近、おかしな法律の読み方をする人が増えているのかな?と思うのですが、「追いつかれた車両の義務」に「第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度」って書いてありますよね。

(他の車両に追いつかれた車両の義務)
第二十七条 車両(道路運送法第九条第一項に規定する一般乗合旅客自動車運送事業者による同法第五条第一項第三号に規定する路線定期運行又は同法第三条第二号に掲げる特定旅客自動車運送事業の用に供する自動車(以下「乗合自動車」という。)及びトロリーバスを除く。)は、第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度(以下この条において「最高速度」という。)が高い車両に追いつかれたときは、その追いついた車両が当該車両の追越しを終わるまで速度を増してはならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。

なんかおかしな読み方をする人が。

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第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度

第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度

これは令11条のことを指します。

 

けどおかしな読み方をする人はこう。

・「第二十二条第一項の規定に基づく」、つまり「基づく」だからまず法22条1項を見る必要がある

・法22条1項では標識がある場合は標識最高速度に従い、標識がない場合は法定最高速度(令11条)に従うと書いてある

・つまり「第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度」とは、速度標識がある場合には速度標識の速度を指す

 

そもそも法律の読み方を理解してないのかなと思うけど、あえて分かりやすくするとこうです。

「第二十二条第一項の規定に基づく政令」で定める最高速度

法律と政令の関係性を理解していれば誤読は起きない気がしますが、法律の条文が政令に委任している関係です。
例えばこう。

法律の条文 対応する政令
法4条4項(信号) 令2条
法14条1項、2項 令8条
法22条1項 令11条

政令の条文は、例えばこのように「法◯条の政令で定める」という書き出しにして法律の条文と政令の条文の委任関係を明らかにしてます。

(目が見えない者等の保護)
第八条 法第十四条第一項及び第二項の政令で定めるつえは、白色又は黄色のつえとする。

このように法律の条文から委任された政令を、他の条文で流用する際には「◯条に基づく政令」という形で使う。

(運転者の遵守事項)
第七十一条
二 身体障害者用の車が通行しているとき、目が見えない者が第十四条第一項の規定に基づく政令で定めるつえを携え、若しくは同項の規定に基づく政令で定める盲導犬を連れて通行しているとき、耳が聞こえない者若しくは同条第二項の規定に基づく政令で定める程度の身体の障害のある者が同項の規定に基づく政令で定めるつえを携えて通行しているとき、又は監護者が付き添わない児童若しくは幼児が歩行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行又は歩行を妨げないようにすること。

追いつかれた車両の義務についてですが、法22条1項が委任した政令の規定を流用しているので、法22条1項の中身は関係ありません。
シンプルに政令を呼び出して流用しているだけなので。

第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度

正しく読むならこう。

「第二十二条第一項の規定に基づく政令」で定める最高速度

法22条1項を呼び出したわけではなくて、ダイレクトに令11条を呼び出しています。
法律と政令の委任関係を理解した上での法律独特の表現方法なので、それ以外の読み方はあり得ません。

 

なお、追いつかれた車両の義務は速度超過車両に対し譲る義務はないと考えられますが、理由としてはシンプルに「違反車を優先する規定ではない」から。

 

追いつかれた車両の義務は、速度超過車にも譲らないと違反なのか?
道路交通法27条には「追いつかれた車両の義務」がありますが、時々聞く意見はこれ。 確かに「速度超過車が追いついた場合を除く」なんて一言も書いていません。 ちょっと違う角度からこの問題について考えてみます。 (他の車両に追いつかれた車両の義務...

 

例えば道路交通法37条は右折よりも直進が優先する規定ですが、条文上は「直進車が信号無視した場合」や「直進車が速度超過した場合」は書いていない。

第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

しかし当たり前のようにこういう判断になる。

道路交通法第37条第1項所定の交差点における直進車の右折車に対する優先は、直進車が交差点に適法に入ったときだけに限るのであって、信号を無視して不法に交差点に入った場合には認められない。

 

昭和38年11月20日 東京高裁

道路交通法37条1項は車両等が交差点で右折する場合(以下右折車という)において直進しようとする車両等(以下直進車という)の進行を妨げてはならない旨定めているが、右規定は、いかなる場合においても直進車が右折車に優先する趣旨ではなく、右折車がそのまま進行を続けて適法に進行する直進車の進路上に進出すれば、その進行を妨げる虞れがある場合、つまり、直進車が制限速度内またはこれに近い速度で進行していることを前提としているものであり、直進車が違法、無謀な運転をする結果右のような虞れが生ずる場合をも含む趣旨ではないものと解すべきである。

 

富山地裁  昭和47年5月2日

条文にわざわざ書かなくても明らかだから書く必要がない。

追いつかれた車両の義務の変遷

なんか追いつかれた車両の義務について、全く関係ない話から意味不明な解釈に陥る人もいてビックリしますが、昭和24年当時の追いつかれた車両の義務はこれ。

 

◯昭和24年(令24条3項)

24条
3 前項の合図があったことを知った場合において、前車が後車よりも法第16条第1項および第2項の規定による順位が後順位のものであるときは、前車は、後車に進路を譲るために道路の左側によらなければならず、その他のときは、追越を妨げるだけの目的をもって後車の進路を妨げる行為をしてはならない。

昭和24年当時は車両の優先順位が後順位の場合のみ進路避譲義務を課してました。

第十六条 車馬及び軌道車相互の間の通行についての順位は、左の各号の順序とする。
一 緊急自動車
二 緊急自動車以外の自動車及び軌道車
三 自動車以外の車馬

 

◯昭和35年

昭和35年に道路交通法が制定されたときに、以下に改正。
旧法では優先順位が後順位なら譲る義務でしたが、昭和35年には後順位のほか、同順位、先順位の場合にも一定の場合に進路避譲義務を課した。

(進路を譲る義務)
第二十七条 車両(道路運送法第 三条第二項第一号に掲げる一般乗合旅客自動車運送事業又は同条第三項第一号に掲げる特定旅客自動車運送事業の用に供する自動車(以下「乗合自動車」という。)及びトロリー バスを除く。)は、車両通行区分帯の設けられた道路を通行する場合を除き、第十八条に規定する通行の優先順位(以下「優先順位」という。)が先である車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、道路の左側に寄つてこれに進路を譲らなければならない。優先順位が同じであるか又は後である車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。
(通行の優先順位)
第十八条 車両相互の間の通行の 優先順位は、次の順序による。
一 自動車(自動二輪車及び軽 自動車を除く。)及びトロリーバス
二 自動二輪車及び軽自動車
三 原動機付自転車
四 軽車両

旧法令における相当規定および相違点(旧法16条3項、旧令24条3項)

 

旧法令においては優先順位の車両に追いつかれた場合のみ、避譲義務を課していたが、新法では、右のように同順位または後順位の車両に追いつかれた場合であっても、一定の場合には同じく避譲義務を課すことにした。

 

条解道路交通法、宮崎清文、1961(昭和35年)、立花書房

 

◯昭和39年

現在と同じく、「政令で定める最高速度」の優劣に変更。
旧18条「車両の優先順位」は削除。

 

こういう流れです。

 

「第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度」と現行規定に書いてありますが、「基づく」だからまず法22条1項を見なければならない…というのは典型的に法律の誤読をするパターン。
法律の条文が政令に委任しているので、ダイレクトに令11条を呼び出しています。

 

正しく読むならこう。

「第二十二条第一項の規定に基づく政令」で定める最高速度

法22条1項が令11条に委任しているので、政令のみを見なければならない。

 

どの解説書も「第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度」=令11条と書いてあると思うけど、法律独特の表現を誤読したら解釈を間違ってしまうのは当たり前なのかもしれません。

 

ついでに「誤読」について。
38条1項と38条の2はどちらも横断歩行者妨害について規定していますが、表現方法が違います。

38条1項 38条の2
当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない その歩行者の通行を妨げてはならない

「その通行を妨げないようにしなければならない」と「その歩行者の通行を妨げてはならない」は意味が同じ。

 

なぜ表現方法を変えているかですが、38条1項は2つの義務を課しているから。

当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない

①当該横断歩道等の直前で一時停止しなければならない
②その通行を妨げないようにしなければならない

 

これをこのように表現すると意味が変わってしまう。

当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その歩行者の通行を妨げてはならない


①当該横断歩道等の直前で一時停止してはならない
②その歩行者の通行を妨げてはならない

 

おかしな誤読に繋がるから表現を変えているだけで、意味はどちらも歩行者の横断妨害禁止なんですよね。

 

並列的に2つの義務を課すときと、そうではない場合で表現を変えている理由は単にそれだけ。

 

道路交通法に限らず法律の条文って読みにくいけど、ワケわからない読み方をする前に複数の解説書や立法当時の説明をみればわかると思いますが、謎の読み方をしてしまう前に調べないのかな?と不思議に思う。


コメント

  1. noName より:

    この手の法律の誤読の話題だと、一般人が理解できるようにわかりやすくするべき論が出るけど
    日本語なんてどんなに丁寧に書いても異なる解釈をしようと思えばできるから、
    ある一定のルールに沿って作ってルールに沿って紐解けば誤読を極力防ぐ、ある種のプログラム言語みたいな作りが法律なんですけどね。

    読み解く能力(時間)が無い大多数の人のために弁護士って士業があるくらいなのに、読み解くルールも勉強しないで自分の直感で読んだ法律解釈が正しいと思うのは何なんでしょう。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      ワケわからん読み方をする前に専門書を読めば納得しそうな気がするのですが、なぜか読まない人が多数という…
      なかなか理解し難いところです。

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