二段階右折ついでにですが、まあまあ困るのは自転車が右折する際にはいかなる状況だろうと二段階右折義務があります(法34条3項、令2条1項)。
例えばこのように変形T字路で、しかも複数車線ある場合はどうするのが正解なのかという話になるわけです。
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浜須賀交差点の二段階右折
この交差点を下方向から右方向に右折したい場合。
自転車の右折ルールによると「交差点の側端に沿って」になるので交差点に範囲が決まらないことには右折するラインがわからないことになります。
第三十四条
3 特定小型原動機付自転車等は、右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿つて徐行しなければならない。
要はどっちが交差点の範囲なのか?になります。
なお、交差点の範囲には隅切りを含みます。
何度も書いているように、まず、変形T字路の交差点を「斜め」に捉えた名古屋高裁がある。
本件においては、駅前通の車道と乙通の車道とが丁字形をなして交わる部分すなわち別紙図面AFBCDEA各点を順次直線で連結した範囲内の車道部分が交差点である。その部分の全部が交差点であることは、疑がない。
名古屋高裁 昭和38年12月23日
一方では「垂直」に捉えた広島高裁判決もある。
広島高裁 昭和45年3月19日
高裁判例がこんな感じなので、①も②もどっちでも正解としか言えないですよね笑。
最高裁が判断した事例はありません。
なお「交差点の側端に沿って」とはいえ、厳密に隅切りまで沿う必要はないでしょう。
②だとかなりビミョーな位置で停止することになりますが、「信号待ちする必要性」については法令を抜きにすれば悩ましい。
横断歩道が右折先にあるならまだしも、横断歩道もない状況で青信号に変わるのを待ち続ける理由についてはよくわからなくなります。
そうなると、この交差点を右折するロードバイクの大半はこうなる(いいか悪いかは別として)。
左折巻き込みを喰らわないように左側端からやや右にシフトして、交差点の範囲を②と捉えて真っ直ぐ進行し、そのまま右折する。
もちろん、この交差点においては③がルール上ダメなのは確かですが、
②で信号待ちをする理由についても、イマイチよくわからなくなるのよね。
「ルールだから」という理由で停止することがベターですが、じゃあそのまま進行した自転車が非難に値するのか?については悩ましいのですが、私なりに思うのは②の停止地点において信号の灯火を確認可能なら信号に従う義務があるし、信号が確認できないなら従う義務がないと捉えています。
以前挙げたこれなんかはちょっと特殊でして、どっちを選んでも二段階目の信号の灯火が見えない。
真剣に解釈した場合
判例からすると、①も②も正解になります。
②のような不自然な位置で停止する必要性については悩ましいですが、「ルールだから停止する」というのが無難。
しかしこの位置で停止したところで信号の灯火を確認できない交差点もあります。
そういう場合に停止する必要性はないと思いますが、結局、自転車の二段階右折なんて真剣に考えてこなかったから警察のホームページでも「バカでもわかる90度交差点」しか説明がない。
複雑な形状の場合などは「なるべく安全なラインを選ぶ」としか言えないよね。
そもそも高裁判例でも交差点の範囲はバラバラなので、正解は一つではないという時点で破綻している気がします。
行政的に自転車を進行させたいルートがあるならナビラインで示すべきだし、法自体もイマイチなので改正してほしいのですが。
ちなみに警察官でもT字路の二段階右折を理解していないケースがまあまああったりするのと、仮に間違えたとして可罰的な違法性はないので取締りされることはめったにありません。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
交通量や右側の横断歩道の有無、信号の出方(右左折分離か)あたりを総合的に見て、判断ですかね。個人的には右側横断歩道が無いか歩車分離の場合は、②のルートを取りつつ、信号が見えないルートを取る事が多いですね。横断歩道アリ、かつ分離でない場合は①ですかね。
コメントありがとうございます。
結局のところ、状況次第で変わるので何とも言えなくなるんですよね笑。
なかなかややこしい。