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右折?横断?進路変更?どうやって分ける?

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そういえばこれ。

「右折だ!」とか「横断だ!」とか「進路変更だ!」とか様々な意見が出てましたが、確かに斜めに交差点を右折しようとしていたかもしれないし、横断しようとしていたかもしれないし、進路変更しようとしていたかもしれない。

 

これをどう分けるか、知ってますか?

 

例えばですが、転回。
転回の初期は進路変更でもあるし、途中は横断でもある。
これを分ける基準は一応あります。
下記は道路交通法違反被告事件の判例。
25条の2第1項はこちら。

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。

この規定はこうなります。

「歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは」
①道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をしてはならない。
②横断してはならない。
③転回してはならない。
④後退してはならない。

そのプレイが道路外右左折なのか、横断なのか、転回なのかを明らかにしないと道路交通法違反として切符を切ることが出来ませんが、

道路外に右折しようとしていたなら「横断違反」として認定できないし、転回しようとしていたなら道路外右折とも認定できない。
しかも、道路外右折、横断、転回はどれも初期プレイは同じで「右方向に進路を変える」でもある。
さらにいえば、例えば「転回」とは転回動作の全てが完了して180°回って初めて転回と呼べるのか(転回未遂は転回?横断?進路変更?)、それとも転回未遂も転回?などいくらでも屁理屈が成り立つ可能性がある。

検察官
検察官
正常な交通を妨害するおそれがあるのに転回したから違反だ!
読者様
読者様
えっ!?
転回しようとしていたけど転回の途中でしたよ?
まだ転回が完了してませんけど…
検察官
検察官
なら、正常な交通を妨害するおそれがあるのに横断したから違反だ!
読者様
読者様
えっ!?
横断する意思なんて全くなくて、転回しようとしていただけですよ。
転回は途中なので未遂だし、横断するつもりもなかったから横断でもないし。
25条の2第1項の違反になりませんよね?
検察官
検察官
屁理屈ばかり言いやがって!
転回するつもりで転回動作を開始したのだから転回だろが!?

 なお、道路交通法25条の2の1項は、横断、転回および後退の如き、交通の流れに沿わない車両の運転操作を放任するときは、歩行者又は他の車両の正常な交通を妨げ事故を発生させる危険が多いので、これを防止するためそれらの行為を規制しようとする趣旨であることから考察すれば、同条項にいう「転回」とは、同一路上において車両の進行方向を逆に転ずる目的でおこなう運転操作の開始から終了までの一連の行為を指称し、かかる目的で運転行為を開始すれば、方向転換が完了するにいたらなくても、同条項にいう「転回」に該当するものと解すべきである

最高裁判所第二小法廷 昭和46年7月2日

要は運転者が何をしようとしていたかの問題なのよ。
この判例は、転回する目的でプレイを開始したものの、方向転換が完了する前に事故を起こしたもの。

 

一審は「被告人は、原判示日時ごろ、原判示道路において、原判示被害者運転の普通貨物自動車の正常な交通を妨害するおそれがあるのに、原判示軽三輪自動車を運転して横断した」として正常な交通を妨害するおそれがあるのに「横断した」として25条の2第1項の違反が成立するとして有罪。

 

しかし弁護人が控訴し、「横断する意思」はなく転回しようとしていたのだから横断禁止違反にはならないし、転回については未遂だから違反にならないと主張。

 

二審は転回違反として有罪。
最高裁も「転回する意思でプレイを開始したなら、未遂でも転回」と判断したわけです。

 

なので冒頭の件について、被害者が右折しようとしていたというなら右折だし、横断しようとしていたなら横断だし、転回しようとしていたなら転回だし、進路変更しようとしていたなら進路変更です。

 

けど、どのみち違反なのよ。

プレイ 法条 内容
右折 37条 直進車妨害
横断 25条の2第1項 正常な交通を妨害するおそれがあるときは横断禁止
転回 25条の2第1項 正常な交通を妨害するおそれがあるときは転回禁止
進路変更 26条の2第2項 妨害禁止

外見上は横断とみなせますが、転回する目的だったなら転回だし、右折する目的だったなら右折。
結局どれを取っても違反だし、さほどこだわるポイントではない気がします。

 

そして民事で過失割合を争うときに、揉めることがあります。
若干不思議な判例がありまして。

これを「進路変更」とみなすか、「横断」とみなすか?
横断とみなした場合、信号無視になります。

 

なぜこれを争っているかというと、側道から急角度で進行した自転車が加入していた保険には「信号無視免責条項」がついていて、加入者の信号無視による事故については保険金を支払わない契約になってました。
つまり「横断」であれば赤信号無視なので保険金は支払われないし、「進路変更」なら支払われる。

 

なお、自転車は死亡しています。
判決は「赤信号無視による横断」なので請求棄却。

 

冒頭の事故にしても、本人が右折しようとしていたというなら37条の違反を適用するだけのこと。
37条でいう「直進車」は、全方向からの直進車を意味します。

道路交通法37条1項にいう「当該交差点において直進し………ようとする車両等」とは、右折しようとする車両等が右折開始まで進行して来た道路の進行方向、その反対方向およびこれと交差する道路の左右いずれかの方向へ直進する車両等をいうものと解すべきであるから、本件のトの字型の三叉路交差点を右折しようとする被告人運転の自動車と、それが進行して来た直路と交差する道路を、被告人運転の自動車が右折後に進行すべき方向と同一の方向へ交差点を直進すようとするA運転の自動車との間に、同条項の適用があり、A運転の自動車の進行を妨げた被告人に同条項違反の罪が成立するとした原判断は、正当である。

 

最高裁判所第三小法廷 昭和46年7月20日

何の目的でプレイを開始したかによって何の違反を適用するかは変わりますが、民事では実態から見て横断と捉えるんじゃないですかね。
刑事事件と見た場合には、何をしようとしていたか次第で適用する条項が変わります。

 

ただし「後退する目的で前進した」みたいな支離滅裂な話は通用しないでしょう笑。

 

ちなみに冒頭の件は「横断」とみなすのが適切でしょうけど、民事過失割合を決めるベースの類型は「広路車と狭路車が交差点で出会い頭に衝突した類型」になります。
民事は道路交通法違反を争うわけではなく注意義務違反を争うのですが、道路交通法の概念と民事のベースが必ずしも一致しないことに気がつかないと、話が噛み合わないのよね。

コメント

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