エアロフレームやエアロホイールが遅い人でも有効というのは、真実でもあり嘘でもある。

空力について、メールを頂きました。

エアロフレームやエアロホイールが遅い人でも効果的だということは、スペシャライズドとかサーベロの実験で明らかになってますよね。
40キロ以上出せる人じゃないとエアロフレームやエアロホイールは無意味とか言ってマウンティングする人がいるけど、低速でもエアロは効果があることは、そんなの数字でちゃんと出ているわけだし、明らかにおかしいことに気がつかない哀れな人だと思います。
管理者さんはどう思ってますか?




回答致します。

サーベロの実験

これは当サイトでも一度書いたことがあります。

結局、ディープリムのエアロって低速でも【体感】できる?何キロ以上で巡航すればわかるもの?

この実験では、フレーム、ホイール、ヘルメットをエアロにした場合に、速い速度のライダーと遅い速度のライダーでの実験結果です。

上二つが【速い奴】、下二つが【遅い奴】です。
この実験によると、

ライダー フレーム、ホイール、ヘルメット 一時間で進む距離
速いライダー ノーマル 40km
エアロ 42km
遅いライダー ノーマル 30km
エアロ 31.392km

このように、遅いライダーでもエアロは効果的という結果は出ています。
スペシャライズドでも似たような実験結果があった気がします。

エアロというのは、遅い速度であっても有効な手段であることは実験結果より証明されています。

ですが

上で挙げた実験結果はそのまま認めるとして、じゃあどんな人でも常にエアロが最高なのかというと、これについては違うと思ってます。

この実験で、どのようなエアロパーツが使われたのかは不明ですが、分かりやすい例でホイールを挙げましょう。

エアロ系のホイールというと、ディープリム系です。
ディープリムと言っても、様々あります。
ROVAL CLX50のような、リム重量も軽くて空力にも優れているホイール。
カンパニョーロのバレットのような、アルミとカーボンのハイブリッドリムで重く、空力は優れているもの。
中華系の、空力には優れているけど剛性が低いホイール。

様々あります。
で、ROVAL CLXのように、リム重量も軽くて空力にも優れているホイールは、どの速度域でも効果的な可能性はあります。
ゼロスタート時の感触は、リム重量に依存する面が大きいのは皆さん実体験でご存じだと思います。
リムが軽いホイールは、ゼロスタート時に【スッ】と前に出るような軽快感がありますよね。
リムが重いホイールだと、ゼロスタート時に【ウッ】というような重さを感じます。

以前、読者様よりROVAL CLX32&50をお借りしたことがあるのですが、

【試乗インプレ】ROVAL CLX32&CLX50試乗。超ワイドリムカーボンクリンチャーは別格の世界だった。

ホイールの持ち主様は、ゾンダからROVALに変えているのですが、全ての速度域で違いを感じているそうです。
私は普段キシリウムエリートを使っていますが、低速域ではキシエリとの違いはあまりありませんでした。
高速域では明確に違います。
ていうか、ROVAL最強でした。

同じように空力に優れた、カンパニョーロのバレットですが、このホイールは明確にゼロスタートが重いです。
アルミリムにカーボンフードを付けた構造なので、リム重量はかなり重たいです。
バレットを低速域でしか使わないというなら、エアロよりも重量的なデメリットのほうが強く出ることが多いと思うんです。
そういう人はキシリウムとかシャマル、デュラC24とか、エアロ系よりも軽量系のホイールのほうがメリットが大きいでしょう。
特にレースに出るわけではないサイクリストの場合、信号待ちのたびにゼロスタートが来るわけですが、ゼロスタート時にリムが重いものだとしんどいです。


Campagnolo – Bullet (バレット) 50 カーボンクリンチャーホイールセット

中華カーボン系のホイールですが、リムハイトが50mmとかあるのは空力はいいのですが、剛性が低くロスした感覚のものもあります。
SACRAの旧型ホイールなんて、この典型ではないでしょうか?

ロードバイクのトレンドは、時代とともに変化している気がします。
ずっと前は軽量化がトレンドでしたし、一時期は剛性がトレンドでした。
前作に比べて剛性が〇%アップ!みたいな宣伝文句を見たことがある人は多いでしょう。

そして、最近のロードバイク界のトレンドは、確実にエアロです。
空力について優れていることを宣伝文句にしている商品は結構あります。

で、何を言いたいのかというと、軽量化、剛性、空力と3つの要素があるとして、どれかにこだわりすぎるのは、物事の本質から外れる可能性を秘めていると思っています。
バレットとかは極端な例かもしれませんが、バレットは遅い速度域の人が使うと、明確につらいホイールです。
30キロ台後半を維持できるライダーにとっては、リムが重くてよく転がるし、空力的にもいいでしょうからメリットはありますが、時速30キロ以下で走るライダーにとっては、バレットよりもそれこそゾンダとか、キシリウムエリートを選んだほうが楽に感じる場合も多いと思うんです。
速度的な差としてはどうなるのかわかりませんが、長距離走った場合の疲労感は確実に違うでしょう。
また頑張って30キロくらいで走っている人と、普段は40キロ巡航できる人の時速30キロ走行でも意味は違うと思います。

エアロマンセー!なのは、確かに実験結果から明確に出ています。
ですが、例えば時速25キロくらいで走っているライダーに、フレームもホイールもエアロにして重くすることが、必ずしも速いことにはならないと思ってます。

実験で使われるエアロパーツというのは、結構な値段のエアロパーツを使っているだろうと推測されます。
つまり、軽くて空力もよいというパーツである可能性が高いわけです。

空力、剛性、軽量性、この3つの要素から、バランス良くその人に応じて組み合わせるのが最速で最も楽に感じると思うので、私自身は【エアロマンセー!】とは思っていません。
エアロはどの速度域でも効果があるということを認めつつ、人によってはそれでもエアロよりも軽量性に重きを置いたほうがラクに速く走れる可能性もあります。

バランス感覚って必要だと思う

今回頂いたメールですが、あるサイトのリンクが貼ってありましたが、こちらの判断で削除しています。
というのも、確かにエアロは有効です。
数字上でも出ています。

でも、エアロがすべてではありません。

リンク先の記事は、エアロだけに注目した記事ですが、そういう記事を読んだときに、バランス感覚を持つべきだと思っています。

エアロは有効だということを認めた上で、エアロがすべてではないことを認識したほうがいいと思うんですね。

ロードバイク界って、同じようなことを繰り返している気がします。
剛性マンセーの時代には、いろんなメーカーが剛性を上げることに注視していたように思います。
剛性はロードバイクの1つの要素ですが、全てではありません。

分かりやすいところで例を挙げると、ビックプーリーだと思っています。
ビッグプーリーは、シマノは販売していません。
シマノ以外のサードパーティが、【このほうが抵抗が減って速くなるよ】と考えて出している商品です。

ではシマノはなぜビッグプーリーを出さないのかというと、駆動系のロスよりも変速性能を重視しているからではないでしょうか?
他社製にすれば、シマノが設計している変速性能よりは落ちます。
恐らく、シマノとサードパーティでは求めている方向性が違うのだろうと思いますが、変速性能も駆動系の抵抗も、どちらもロードバイクでは大切な要素です。

これも極端な例ですが、低速でもエアロが最優先だというなら、ヒルクライムでもエアロフレームとエアロホイールが増えるはずです。
しかし、一般人のヒルクライムでは重量制限もないので、軽量フレームと軽量ホイールを使うでしょうし、プロ選手の山岳ステージでも、エアロパーツで戦うことはあまりないと思います。
ただし、プロ選手はあえて山岳ステージでエアロフレームを使う場合もあります。
これは空力を求めているのではなくて、重量制限回避のためと言われます。
プロ選手の場合、6.8キロの重量制限があるのですが、プロ選手が使うような機材で普通に組むと、余裕で6.8キロ以下になってしまいます。
その場合、フレーム内に重りを付けたりするのですが、重りをつけると重心バランスが狂うので、そうであれば最初から重量が重めなエアロフレームのほうがバランスがいいと考えることもあるそうです。

エアロがすべて、と考えてしまうと、視野が狭くなってしまうと思うんですね。
エアロが大切なことは認めつつ、ほかの要素も考えて、自分に最適なパーツを使う。
これが大切です。
エアロはどの速度域でも効果的というのは実験結果で出ていますが、だからといってエアロを求めると全ての人が速くなるわけでもないですよね。
速度域や乗り手によっては、エアロよりも軽量性に重きを置いたほうがいい場合もあると思います。
それを昔の人は、【エアロが効果的なのは時速30キロ台後半から】と言う表現にしたんだと思ってます。
それ以下の速度なら、エアロで重くするよりも軽量性のほうが効果あることが多いよ!という意味なのかと。
ちなみにですが、こういった表現がよく使われていた頃と言うのは、エアロホイールというと重めのものばかりだったからだと思います。
最近のディープリムって、エアロだけでなく軽量性も追及しているものも多いので、必ずしも上の表現に当てはまるとは限らないかと。

あと本筋とは離れてしまうのですが、メールで頂いたマウンティングという単語、私は好きになれません。
ようは上に立ちたがる意見だという意味なんだと思いますが、

40キロ以上出せる人じゃないとエアロフレームやエアロホイールは無意味とか言ってマウンティングする人がいるけど、そんなの数字でちゃんと出ているわけだし、明らかにおかしいことに気がつかない哀れな人だと思います。

これって、あなた自身もマウンティングしているのではないでしょうか?
哀れな人だとマウンティングしていると思うのですが。

こういうのってマウンティングじゃなくて、異なる意見をぶつけているだけだと思うんですね。
そこに【マウンティング】という用語を使うことで、雰囲気を悪くしているだけにしか見えないんですね。
自分と異なる意見だと思うなら、理論と証拠を出して説明すればいいだけの話です。

私が今、某自治体と訴訟中なことは何度か書いていますが、訴訟で出す文章なんて、この方の言い方を使うならば、マウンティングの応酬です。
某自治体からも、【原告の主張には理由がありません】とか普通に書かれますが、それに対して理論的に反論するだけの作業です。
マウンティングではなくて、単にお互いの主張をぶつけているだけの話。

それをマウンティングと表現するのは、私は好きになれません。

【時速〇×キロ以下でしか走れない人には、エアロフレームやエアロホイールはあまり有効ではない】

このような意見というのは、ある意味では正しいこともあるのです。
わざわざ重くするよりも軽量化に注視したほうが速くなるケースもあります。

【エアロは低速域でも有効】

これも真実です。
真実だということと当時に、それが全てではないことも事実です。
ロードバイクの要素には、エアロ、軽量化、剛性、駆動系の抵抗、タイヤの転がり抵抗など様々あるわけですが、どれか一つに固執すると、ロードバイクの本質を見失うと思っています。
最近エアロ、エアロと言われるのは、メーカーの戦略だと思うのですが、【それが全てではないんだ】という立場で物事を見ると、もっと視野が広がると思うんですね。

エアロが効果的、というのを如実に表わしているのは、こちらではないでしょうか?

1:49あたりからですが、リカンベントにエアロカウルをつけた一般人が、プロ選手と同じ速度で単独巡航しています。
リカンベントはロードバイクなんかよりも体勢が低く、空気抵抗がロードバイクとは比べ物にならないほど少ないので、ある意味では世界最速のエアロ系自転車とも言えます。
リカンベントに、さらに空気抵抗を減らすためにエアロカウルを付けているわけですので、ロードバイクよりもはるかに空気抵抗は少なく巡航可能です。


RANS(ランズ)ROCKET

ただし、リカンベントは一般的には普及していません。
理由はいくつかありますが、
・低い位置を走っているため、自動車のドライバーやトラックのドライバーから見ると視認性が悪く、危ない。
(そのため、一般公道では旗をつけている場合も)
・立ち漕ぎは不可能
・登りには弱い
・一般的に高価な自転車であることが多い
・取り扱い店自体が少ない、ほとんどない
・低速域では不安定


RANS(ランズ) PHOENIX

動画の解説では【これでツールドフランス戦ったら・・・】とジョークをかましてますが、たぶんですがこれってスプリントできませんので、集団のままゴールになるのではないでしょうか?
登りで遅れる人が結構出そうなので、ある意味では登り勝負で集団をバラバラにして先頭に出た人が勝ちみたいな。
まあ、これで峠の下りなんて、怖すぎると思いますけどね・・・
ヒラヒラ曲がれるのかも不安ですし、空気抵抗少ない分どんどんスピード上がりますし。

ある意味では、空気抵抗の大切さはリカンベント見れば明らかです。
ずいぶん前にサイクリング中に、前にリカンベントがいたのですが、ロードでは追いつくのが厳しいくらい速かったです。

今回の記事、何が言いたいかというと、【どんな速度でもエアロは効果的】ということは真実です。
でも、ロードバイクってそれだけじゃないですよね?というのを再認識してもらいたいのです。

最近は雑誌やネットでも、エアロ!エアロ!が主流です。
ワイヤー全て取り払うと何秒短縮!とか書いてあったりしますが、確かにエアロは大切な要素です。
でもエアロだけで成り立っているわけではないことも事実です。

一昔前は軽量化!軽量化!ばかりでしたし、その後は剛性!剛性!でした。
どれか1つに固執すると、物事の本質を見失うと思ってまして、エアロでも軽量化でも剛性でも、どれも効果はあるんです。
そのなかで、自分の中でどういうバランスを求めるのかではないでしょうか?

風洞実験のデータとか、数字化すると科学的であるかのような錯覚を受けます。
正確には科学的であることは間違いないとしても、それが全てではないということを認識するのも大切です。




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