ロードバイクのタイヤにはクリンチャータイヤ、チューブラータイヤ、チューブレスタイヤの三種類があります。
チューブラータイヤは最も歴史が古く、自転車独特のタイヤ形式と言えます。
真円状になっていてタイヤ内にチューブが縫い付けられており、リムにセメント(もしくはリムテープ)を使って接着するというタイヤです。
一方、初心者がロードバイクを買うときは、100%クリンチャータイヤです。
完成車付属のホイールは100%クリンチャータイヤですし、もしバラから組み上げる場合でも、初心者にチューブラーホイール&チューブラータイヤを勧めるショップは恐らくは皆無でしょう。
さてプロレースの現場では、いまだに使われるのはチューブラータイヤです。
中にはクリンチャータイヤを使っている選手もチラホラいますが、主流はチューブラータイヤと言っていいでしょう。
チューブラーVSクリンチャー その1
近年、クリンチャータイヤのほうがチューブラータイヤに比べて転がり抵抗が低いというデータがいろんなところから出ています。
これの理由ですが、チューブラータイヤは真円状になっているのに対し、クリンチャータイヤはサイドウォールが立っているような形(つまりはチューブラータイヤよりも直線的)であり、それによりクリンチャータイヤのほうが空力が良くなるというのが一つ。
また、真円状のチューブラータイヤに比べ、クリンチャータイヤのほうが接地面の変形が少なく、それにより転がり抵抗が低くなるというのが理屈として挙げられています。
逆にチューブラータイヤのメリットは何なのかというと、タイヤというよりもリムの形状の問題で、チューブラーリムのほうが軽いということが挙げられます。
クリンチャータイヤは、リムにタイヤを引っ掛けるためのフック構造が必要ですが、チューブラータイヤはセメントで貼り付けるだけなので余計な構造が不要ということです。
これをまとめると
チューブラー | クリンチャー | |
メリット | リムが軽い | 転がりがよく、空力がいい |
デメリット | 転がりが悪い?空力が悪い? | リムが重い |
このような感じです。
悪い?と書きましたが、あくまで比較論の話です。
チューブラーVSクリンチャー その2
次に考えたいことですが、パンク時の問題について考えます。
まず、クリンチャーの中でも【カーボンクリンチャーホイール】についてですが、これは原則としてラテックスチューブの使用が禁止です。
クリンチャーホイールの場合、リムとチューブが直接接触しています。
カーボンクリンチャーは、アルミクリンチャーホイールに比べてリムの放熱性が悪く、そのためリムが高温になります。
ラテックスチューブは熱に弱く溶けてしまう可能性があり、下り坂でブレーキを当て効きさせているとアルミクリンチャーでもパンクの原因になります。
チューブラータイヤですが、レーススペックのチューブラータイヤの中に入っているのは、ほぼ間違いなくラテックスチューブです。
チューブラータイヤの場合、リムと直接接触するのはチューブではなくタイヤです。
なのでチューブラーホイールではラテックスチューブへの影響は少ないため、問題は出にくいです。
ブチルチューブとラテックスチューブの違いですが、意外と知られていませんがパンク時の空気の抜け方も違いがあります。
大きな穴が開くようなパンクだとどちらも即座に空気が抜けますが、小さい穴だとラテックスチューブについてはスローパンクになるケースが多く、一気に空気が抜けることが少ないです。
高速域で急に空気が抜けたらどうなるかは皆さんがご存知だと思いますが、多くのケースでは落車になるでしょう。
バイクコントロールも効かなくなりますし、非常に危険な状態です。
次に、空気が抜けてペシャンコになった状態を考えてみます。
クリンチャーホイールの場合、タイヤがペシャンコになった場合はリムが地面に接触します。
一方のチューブラータイヤですが、リムのサイドのせり出しがクリンチャーリムよりも小さいので、パンクしても地面に接触するのはあくまでタイヤのことが多いです。
これの違いですが、タイヤというゴム部分が接地しているのと、リムの金属部分が接地しているのではバイクコントロールに差が出る可能性があります。
なのでパンクして急激に空気が抜けた場合、クリンチャーリムのほうが若干ですが危険性が高まる印象です。
どっちも危険な状態ですが。
チューブラー | クリンチャー | |
ラテックスチューブ | 〇 | (カーボンリムの場合) |
パンク時の挙動 | クリンチャーよりはコントロールできる | コントロールが難しい |
プロがチューブラータイヤを使う理由
勝手な個人的な見解ですが、プロがチューブラータイヤを使う理由は、安全性という要素が高いのではないでしょうか?
高速域でパンクした場合に、ラテックスチューブでスローパンクになりやすいということと、空気が抜けてもリムと地面の接地がクリンチャーよりも少なく、コントロールできる可能性があるということではないでしょうか?
プロ選手の高速域でのパンクなら、クリンチャーだろうがチューブレスだろうが落車につながるリスクは高いですが、その中でもわずかにチューブレスタイヤのほうがバイクコントロールできる可能性があるということかと。
まあ、実際のところは単にスポンサーの問題だけなのかもしれませんが。
それとわずかな空力や転がり抵抗よりも、リムの軽さを重視しているだけかもしれません。
ちなみにですが、経済性を考えたらクリンチャータイヤの圧勝です。
チューブラータイヤはパンクした場合、タイヤごと交換です。
クリンチャータイヤはチューブの交換だけで済みます。
タイヤの値段も、クリンチャーのほうが安いですよね。
プロがレースで使う分には、スポンサーからの提供なので経済性を考える必要はありません。
一般ライダーは、お小遣いからやりくりする人もいるでしょうし、経済性というのは重要です。
よく、タイヤの性能はどっちがいいの?と聞かれますが、個人的にはチューブラーの乗り味のほうが好きです。
なんですが、セメントで貼って、乾かしてなど面倒なので、初心者には間違いなくクリンチャータイヤを勧めます。
チューブレスはどうなのよ?と聞かれますが、チューブレスも乗り味は好きです。
乗り心地は抜群にいいです。
しかしながら、パンクした場合の対処がクリンチャーよりも面倒だということと、タイヤごと交換になるため経済性が悪いということ、さらにクリンチャータイヤよりもチューブレスタイヤを嵌めて空気を入れるのは難しいことなどを考えると、やっぱりクリンチャータイヤの手軽さというのは最強なんじゃないかと思います。
チューブレスについては、ロードバイクではイマイチ流行らないというか、チューブレスタイヤを作っているメーカーが少なすぎです。
正直なところ、私の感覚ではクリンチャーがチューブレスに比べて転がりがいいとか空力がいいという感覚は全く分かりません。
これを体感できるのはプロレベルの高速域での話なんじゃないかと思っちゃいますが、初心者はやはりクリンチャーが一番適しているというのは間違いない事実かと思います。
Campagnolo – Bora Ultra (ボーラウルトラ) 35 クリンチャーロードホイールセット
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
クリンチャータイヤでもチューブレス対応リムとの組み合わせならば「タイヤごとバースト」しなければスローパンク的なエア抜けの印象があります。ロード自体はまだ8カ月程しか乗ってませんが、過去2回ほど経験したパンクでは35km/h程度の速度から安全に停車できる程度にはエアが持ちました。
とは言え、私自身はクリンチャーしか乗った事が無いのでチューブラーと比べてのエア抜け速度の比較は分かりません。
コメントありがとうございます。
スローパンクの場合、かなりゆっくりと空気が抜けるため、数分から数時間程度乗れる状態になっていることもあります。
クリンチャーの場合、チューブレスリムだからスローパンクになりやすいということはあまり考えにくいように感じます。
あくまでも空気保持の機構の問題なので、クリンチャーでもラテックスチューブ使用ならスローパンクになる確率は上がりますが、ブチルチューブだとスローパンクになることはあまりありません。
チューブラーは慣れるとパンク時のタイヤ交換が楽という人もいますが、チューブラーはタイヤをテープもしくはセメントで接着させる必要があり、テープでもすぐに走り出すことは危険です。
なのでチューブラーでタイヤ交換できても、実態としてはゆっくり慎重に走って帰ることにしかならず、まともに走れる状態になるわけでもありません。
チューブラータイヤでもタイヤ自体に穴が開かず、ケーシングも切れていなければ修理は可能ですね。ただ、一旦タイヤを開いてチューブを修理もしくは交換し、また針と糸で縫い閉じると言う手間が必要ですが。
私が80年代にMTB方面から自転車を始めたのもこのチューブラーのパンク修理の事を図解入りで読んで「こんなのできねー」と思った為。
ロードに乗るようになってから知り合った方で、チューブラーを通常使用している人がいますが、慣れるとパンク時のタイヤ交換はクリンチャーより早く出来るとの事でした。更に、その人は先に書いた方法でのパンク修理もご自身でやられてます。