道交法の【進路変更】の概念。

ずいぶん前に書いた記事についてメールを頂いたのですが。
関係ない部分もあるので、まとめて書きます。

前にあったウーバーイーツとバスのトラブルについて質問。 これの件ですね。 図式化すると、...

進路を変える=車線を跨いで移動することなので、書いている内容は間違いではないか?

例えばこういうのが、道交法での【進路変更】に当たっていないとの主張のようです。

道交法での進路変更

道交法での進路変更は、26条の2にあります。

第二十六条の二 車両は、みだりにその進路を変更してはならない。
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。

この進路変更の意味が、車線変更を指しているとおっしゃっているのだと思いますが。

道交法での進路変更は、車線変更だけでは無いです。

道交法での進路変更は、

同一進行方向に向かいながらも進路を変えることで、左折と右折を除くもの全般

例えば道路自体の方向は南⇒北だとしたら、南⇒北に向かいつつも、ハンドルを切り車体に角度をつけて進路を変えることを意味します。
なので車線変更も進路変更の一部ですが、同一車線内で進路を変えることも進路変更に当たります。

例えばこれ。

一番下にいる黄色の車、あくまでも車線を跨いでいないという前提ですが、同一車線内でも進路変更に該当します。

で、恐らくですがイエローカットの話と混同しているのではないでしょうか?
道路表示【102の2】の話。

これ、法律上の名称は【進路変更禁止】となっているのですが、要はイエローラインがある場所では車線の変更を禁止しています。
これの根拠はこちら。

進路の変更の禁止)
第二十六条の二3 車両は、車両通行帯を通行している場合において、その車両通行帯が当該車両通行帯を通行している車両の進路の変更の禁止を表示する道路標示によつて区画されているときは、次に掲げる場合を除き、その道路標示をこえて進路を変更してはならない。

道路標示102-2でイエローラインが描かれている車両通行帯では、【その道路標示をこえて】進路を変更してはいけないとなってます。
進路変更禁止ではなくて、道路標示をこえた進路変更を禁止しているわけです。
道路標示を超える=イエローラインを超えた進路変更を禁止しているのであって、同一車線内の進路変更までは禁じていません。

で、進路変更の定義の話は調べればいくらでも出てくると思うのですが・・・

同一の車両通行帯又は車線内の行為であっても、進路延長方向に対し斜め(鋭角)に向いて進行すれば、進路変更に該当する。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%B2%E8%B7%AF%E5%A4%89%E6%9B%B4

進路変更は車両通行帯や車線の変更の有無とは関係ないため、同一車両通行帯内や同一車線内であっても(車線変更等を行っていなくても)、進路を変えれば進路変更を行ったこととなる。

https://law.jablaw.org/shinrohenkou

どうしても疑うようなら、執務資料道路交通法解説という本が図書館にあると思いますのでそちらを参照にどうぞ。
判例も探せばいくらでも出てきます。

進路変更の定義は、車線を変えることだけではないです。
同一車線内でも進路変更は成立します。

例えばなんですが、オートバイ。
暴走族が同一車線内でジグザグ走行してウェーイと騒いでますが、車線変更していないから進路の変更にならないと思います??
それが許されるなら、同一車線内でジグザグ走行しているオートバイを取り締まる根拠すらなくなります。

車の場合、車自体の幅と車線幅がかなり近いので、進路の変更=車線の変更とほぼ同義になることもあります。
ところが車線幅が広い道路なら、同一車線内でも真ん中、左寄り、右寄りと走れるわけで、左寄り⇒右寄りに変える行動も道交法上は進路変更とみなされます。

たぶん、イエローカットの話と混同されているのではないでしょうか?
イエローラインは進路変更禁止なんて名前が付いてますが、条文では【道路標示をこえた】進路の変更を禁じているので、イエローラインを超えない進路変更までは禁じていません。

進路変更と車線変更は定義が違います。

追越しの話

せっかくなのでそのまま追越しの話へ。
道交法の追越しの定義はこちら。

二十一 追越し 車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。

追越しは4要素を満たすことが条件になります。

車両が他の車両等に追い付いた場合
その進路を変えて
その追い付いた車両等の側方を通過
当該車両等の前方に出る

これらを全て満たした場合が道交法での追越しになります。
どれかが欠けても追越しにはなりません。

追い付くというのは道交法26条の車間距離を指すとされます。

(車間距離の保持)
第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

同一進路というのは同じ車線内であれば無条件に成立するのではなく、前後の車両の車体の一部もしくは全部が重なっていることを指してます。
追突を避けるための規定なので、同一車線内でも進路が重なっていないなら【追い付いた】にはなりません。

左右いずれかに方向を変えないで直進した場合におけるその車両の幅に相当する道路の部分

「同一の進路」とは、追従車の進路と先行車に進路とが、(中略)、その一部又は全部が重なり合っているものをいい

野下文生 道路交通執務研究会、執務資料 道路交通法解説、p249、東京法令出版、2017

・追い付いていないので追越しにならない事例

・追い付く前に進路を変更しているので、追越しにはならない事例

同一車線内ですが、道交法上では進路変更が成立します。

・追い付いてから進路を変更して、側方通過して前方に出たので追越しになり、左追越しで違反になる事例

道交法解釈はこうなります。

で、車の場合、物理的に同一車線内で追越しや追い抜きが不可能になります。
1つの車線内に2台も通れるような道路はまずないでしょうから。

二輪車の場合は同一車線内で追い抜きが発生する。

前に何かで、【同一車線内での追い抜きは成立せず追越しとなる】みたいに間違いを書いているのも見たことがありますが、そんなことは全く無くて、二輪車同士、二輪車と車の関係性なら普通に同一車線内で追い抜きが成立します。
同一車線内で車と車の追い抜きも成立しますが、実際には物理的に不可能なことがほとんど。
どんだけ広い車線なんだという話ですねw

まあ、このあたりの正しい解釈は法律解釈の詳細が書いてある本でも見れば普通に解決しますし、執務資料 道路交通法解説では判例付きで解説されているので、見たらいいかと。

法律を語るときは、条文をみてその定義を確認しないとだいたい間違います。

ということですが

で、実態としてなんですが、ロードバイクでの追い抜きは全く推奨していません。
こういうのですね。

※前車が4輪車だという前提の話です。

普通に危ないので。
道路幅が異常に広いようなところは別として。
ギリギリのすり抜けは、バスやトラックだと死角に入っていて見えていませんし。

法律上は問題ない行動でも、安全か危険かという観点ではしないほうがいいという事例です。
こういうので事故が起きた時って、ネット上ではよく

いろんな人
いろんな人
ロードバイクのすり抜けは左追越しだから違反!!

みたいな意見は多々出ます。
追い付いてから進路を変えてすり抜けたなら、左追越しになるので違反です。

追い付く前に進路を変えているなら違反ではないです。
まあ、あまりにも側方距離が近い場合に、安全運転義務違反が成立する可能性はゼロではないですが。

法解釈を知った上で、それが安全か危険かはまた別の議論なんですね。
そうじゃないと議論が取っ散らかって意味不明にしかならない。

危険性を下げるためには、むやみやたらにすり抜けはしないほうがいいです。
路肩が広い場合等でも、コンビニなどに入ろうとする対向右折車がいることもあるので、ちゃんと空気読める人以外は無理しないほうがいいでしょうし。

謎の車間が空いているなら、何かあると警戒すべき。

大型車が先行しているならなおさら。
対向右折車からしても、ロードバイクからしても死角で見えませんし。

あるSNSで、ロード乗りが対向右折車と衝突したみたいな話が出てました。 恐らくは交差点ではない・・・のかなと思うのですが、第一通行帯が自転...

ということで、

道交法の進路変更は、車線変更だけではないです。
同一車線内でも進路が変われば進路変更です。
法律上問題ない行為と、安全なのか危険なのかは全く別問題。