道路におけるルール論とマナー論。

世の中いろんな人がいるなぁ、と思う今日この頃。
【ロードバイクに乗るときにマナーは必要ない、ルールですべて解決できる】みたいな主張をする人がいます。
ルールを理解しているとは思えないのでお察しなんですが、危険思想だなぁと思いまして。

ルールとマナー

端的に言うと、ルールは規則、マナーは礼儀。
ロードバイクに乗るときは、規則に従っていれば礼儀は必要ない・・・という考え方のようです。

自転車関係の法規を挙げると、代表的なところは道路交通法。
道路交通法施行令や各都道府県の道路交通規則も含みます。

マナーというのは礼儀だとか倫理観になるわけですが、第三者を不快にさせないためのもの、と捉えてもいいですし、ある種の品性とも言えます。
エチケットとも言えますが、結局のところ第三者に対するリスペクトのようなものと捉えることも出来ます。
食事のマナーとしてクチャクチャさせないなどは、第三者に不快な思いをさせないためのものと捉えることが出来るので、第三者に敬意を払っているとも取れる。

道路上のマナーというと、代表的なところではサンキューハザードはマナーの一種と捉えていいかと。
法令上はそのような義務が無いにもかかわらず、感謝の意思を伝えるための行動ですし。

ルールで全てを解決できると思うのは危険

法律、ルールで全てを解決できるのかというと、裁判まですれば白黒ハッキリするので法で解決出来るとも言えますが、現実的ではないケースも多々あります。

例えばよくロード乗りが憤慨している、追い越し時の側方間隔。

追越しの定義は
①先行車に追いついて
②進路を変え
③先行車の側方を通過し
④前に出る

追いつく前に進路を変えている場合や、進路を変えずに前に出ることは追い抜きに当たります。
追越しの場合、側方間隔については明確な規定はありません。

(追越しの方法)
第二十八条 車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。
2 車両は、他の車両を追い越そうとする場合において、前車が第二十五条第二項又は第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央又は右側端に寄つて通行しているときは、前項の規定にかかわらず、その左側を通行しなければならない。
3 車両は、路面電車を追い越そうとするときは、当該車両が追いついた路面電車の左側を通行しなければならない。ただし、軌道が道路の左側端に寄つて設けられているときは、この限りでない。
4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条において「後車」という。)は、反対の方向又は後方からの交通及び前車又は路面電車の前方の交通にも十分に注意し、かつ、前車又は路面電車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

28条は追越しのみに限定しているので、追い抜きの際は70条が関係するものと考えられます。

(安全運転の義務)
第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない

【できる限り安全な速度と方法】(28条4項)、【他人に危害を及ぼさないような速度と方法】(70条)としかありません。
ロード乗りでも、側方間隔が近すぎる追越しをされたとして騒ぐ人は結構多いですが、この条文、【前車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて】(28条4項)、【道路、交通及び当該車両等の状況に応じ】(70条)という前提条件があるので、一律に側方間隔が何メートルとは定めていないわけです。

よく教習所などでは、自転車を追い越すときには側方間隔を1.5m空けましょうと教えます。

例えば、先行自転車が時速12キロで走行していて、ふらつきもない。
狭い道路だったため、後続車が時速14キロ、側方間隔0.7mで追い越しした場合、それが危険行為になるのか?という問題が生じます(速度差2キロ)。
危険だと感じるかどうかは人それぞれ感覚の差が大きいので、何とも言えないところではありますが、大きく減速し徐行することで【できる限り安全な速度と方法】を実践したとみることも出来ます。
前車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて】(28条4項)、【道路、交通及び当該車両等の状況に応じ】(70条)という前提条件があることからも、一律に側方間隔を定めるのは合理的ではなく、ケースバイケースで考えましょうというのが立法趣旨です。

側方間隔については判例もありますが、判例は法ではない。
判例は、あくまでもその事故における過失や責任がどうなのか?を決めているだけなので、第三者に対しても拘束力を持つとは言えない。
お互いの速度域がどうだったか事実認定があって、その速度の条件下で追い越し時の側方間隔が適切だったか?が争点になっているわけですし。

その現場で、どれくらいの側方間隔が必要で、どれくらいの速度であれば危険ではないと言えるのかは一律に言えないわけです。
道路状況、交通量、お互いの速度など様々な要素で変わりうる。

だから教習所でよく言われる、自転車を追い越すときは1.5m側方間隔を取りましょうというのは、法ではなくマナーの領域と言えます。
実際、愛媛県では【思いやり1.5m運動】というものがありますが、法で側方間隔を規定していない以上、マナーとして1.5m空けましょうねというのが趣旨です。

https://www.pref.ehime.jp/h15300/1-5m/documents/15qa2807.pdf

1.5m空けて追越しすることで、自転車に対して安全性を確保することや、一つの礼儀として捉えているということになりますね。
道交法では具体的側方間隔を定めず、ケースバイケースで状況に応じてとなっているだけですが、抽象規定を具体化したマナーと言えます。

マナーなんて必要ないという人が、仮に自転車運転中に車に追越しされて、側方間隔が近すぎるとして怒ったとします。
追越しするときは1.5m空けろと教わったはずだ!などと。

法律上、側方間隔を明確に定めているわけではなく、【前車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない】なので、近すぎるだけであれば必ず違反であるとは言えない。
十分減速して注意しながら追越しする分には、1.5m空ける義務はないですし。
状況に応じて、【できる限り安全な速度と方法】であれば構わないという条文なのに、いつの間にか法の範囲を超えたマナーを相手に求めているという矛盾なんですよね。
マナーは必要ないと主張しつつも、いつの間にかマナーを求めている。

こういう結果に陥るのも、結局は法を理解していないからなんだろうなと思うわけです。

実際、側方間隔についての判例を見ると、事故が起きた場合の判例しかないので、事故が起きていない状況であれば問題視されていないのが現状。
煽り運転が社会問題化しているこの時代に、マナーが不要だと考える人がいるというのも凄いですが。

ちなみに道交法70条は具体性が無い抽象的規定です。

(安全運転の義務)
第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない

道交法が制定された昭和35年に、70条については国会にて【拡大解釈しないこと】とする決議が出ています。
一歩間違うと、拡大解釈して70条違反が成立するという暴論が出始めるので、それは違いますよという確認をしていることになります。

思いやりで1.5m空けましょう、ということはマナーなので、それが1.0mだから70条(もしくは28条4項)に違反するのか?というと、必ずしも側方距離だけで決まるものではないということです。
その状況次第では側方間隔1.0mだから必ず危険とも言えないので、【前車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて】という条件下で、【できる限り安全な速度と方法】であれば違反になるわけでもありません。

ただまあ、側方間隔が近いと、人によっては嫌がらせされたと考えるケースも出てきます。
他人に対するリスペクトと礼儀、誤解を生まないためにマナーとして【思いやり1.5m運動】があると考えたほうがいいかと。

道路交通法は特別刑法に当たるので、違反or違反ではないがハッキリします。
起訴されて有罪になるか、違反切符を切られて納得した場合は違反となりますが、いくら映像で見せても不起訴になれば違反ではなかったとなる。
70条のように具体性がない抽象規定もあるので、どこからが違反と線引きできないものなんて普通にあるんですよね。。。
違反ではなくても他人が不快に思う行動も道路上にはあるわけで、そこを補完することで他人とのコミュニケーションを円滑にするのがマナーと言えます。

マナー不要論という恐ろしさ

ロードバイクに乗る上でマナーは不要、ルールですべて解決できると思い上がった人も道路上にはいるということです。

マナーがなぜ必要なのか?というと、極論すれば道路上でのコミュニケーションだと思うんですね。
法律違反とは言えない行動でも、道路上で他人を不快に思わせる行動もある。
不快に思うかどうかはその人次第なので、何とも思わない人もいるし、過剰なくらい反応する人もいる。

そういうことから起こるトラブルを避けるためにマナーがあるわけで、マナー不要論などというトンデモ論を主張する人がいたら、コミュニケーション能力が低いのかなと心配になります。

煽り運転は、何らかの行動で不快に思ったことが原因で発生すると言われますが、違反とは言えなくても相手が不快に思う行動は普通にあります。
実際のところ、煽り運転された側に何らかの違反があったケースもありますが、違反とは言えないグレーゾーンけど不快に思わせうる行動なんてある。
グレーゾーンを埋める存在であり、かつ第三者へのリスペクトを表すのがマナーなのかもしれません。
マナー=他人への配慮、リスペクト、礼儀と捉えることが出来ますが、配慮や礼儀が無くてもいいんだという危険思想の人もいる、と考えてロードバイクに乗ったほうが安全運転に繋がるかもしれません。

何かにつけて道交法違反だと騒ぐ人もいますが、そういう人の主張を見るとそもそも道交法の趣旨を理解していないケースが多いように感じます。
何年か前に【幅寄せは暴行罪】という論調が広まりましたが、そもそもなぜ暴行罪になったのか?という具体的内容まで検討せずに、単に追い越し時の側方距離が近かっただけで【暴行罪!】と主張するようなトンデモ論も結構ありました。
なぜ暴行罪が適用されたのか、そこに目を向けない限り安易かつ間違った主張を繰り広げるだけ。

ロクに調べもせずに、なんでもかんでも違反だと考えるアホもいるんだよなぁ・・・
マナーは法律上のグレーゾーンを埋めるために必要なんだと考えることも出来ます。
グレーゾーンは白にも黒にもなりうるわけですが、白であっても他人を不快にさせうる行動なんて世の中には普通にある。
安易な意見ってホント怖いなと思います。

サンキューホーン

当サイトでは事故防止のために、後ろから大型車が来た場合などで、強引な追い越しが予想される場合には信号待ちの時などに【進路を譲る、先に行かせる】ことを推奨してます。
こういう状況になったとして、

どっちが速いかは明白なので、後続車を先に行かせるため、一時的に歩道に上がるとか、

信号が青になると同時にやや左に逸れて、先に行かせるとか。
だいたいは信号待ちの時にチラチラ後ろを見て、後続車を気にしている雰囲気を出しておけば、ロードバイク側の行動の意図を読み取ってくれます。

最近だと、サンキューホーンとかサンキューハザードで感謝されることも多いです。
こういう行動は法律上の定めには当然ないですが、道路上の第三者をリスペクトしているからリスペクト返しされるわけで。
誰にも敬意を払わない人が、誰かに好かれることなんて無いですし。

もちろん道路構造、道路幅、交通量など総合的に判断してイチイチこういう行動をしないこともありますが、マナー不要、法律守ればそれでいいと考えているような人だと、事故に遭いやすいのかなと。
こういう先に行かせる行動は、単に自分が事故に遭いたくないから、疑わしきは先に行ってもらうというだけなんですが。
道路上でマナーは不要と考える人は、ある種コミュニケーションを放棄しているともいえるので、怖いなと思います。
人間、一人で生きているわけではないですからね。

サンキューホーンは大型車のドライバーの中でも廃れつつあるらしいですが・・・

うちから駅に行くまでの道路は、片側一車線で歩道もなく、狭い路側帯があるだけのところが数キロ続きます。 バス同士のすれ違いも困難な場所がある...

道路上にはマナー不要という恐ろしい考えを持っている人もいることも、知っておいたほうがいいかもしれません。