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「基本」と「絶対」は異なる。

まあ、基本はそうですよね。

ただまあ、「基本」はそうであっても「絶対」ではない。

横断歩道事故

これは以前も挙げた判例。

信号がない横断歩道は、歩行者が絶対的な優先になるというのが道路交通法38条の定めです。 さて、以下のように、「例外なく一方的に...

(1)  本件事故の現場は、南北道路と東西道路の直交する、交通整理の行われてない交差点(以下、「本件交差点」という。)の西詰めに存する横断歩道上である。
(2)  被告は、本件事故直前、加害車に義母、長男、長女を同乗させて運転し、時速約40メートルで西進し、本件交差点にさしかかつた。同交差点付近は、加害車の前照灯及び周囲に街路灯等により比較的明るい状況であつた。

被告は、本件交差点を過去に何度も走行しており、横断歩道の存在も認識していたが、同交差点にさしかかるに際し、左方(南側)道路方向に気を取られて横断歩道上の歩行者の確認を十分にはせず、かつ必要な減速をしないで時速40キロメートルのままで同交差点に進入した。

そして被告は、被害者に8.6メートルに接近した地点で初めて右横断歩道上のやや東寄り、中央線から約1メートル北付近の同女を発見し、急制動の措置を講じたが間に合わず、右横断歩道上のやや東寄り、中央線から約1メートル南付近で加害車前部を同女に衝突させて自車ボンネツト上に一旦跳ね上げた上、路上に転落させた。

(三)  被害者は、本件事故直前、うつむきかげんで、本件横断歩道上を北から南に小走りで横断中、加害車に衝突された。

2  以上の認定事実によると、被害者は、夜間、左右の確認をしないで、信号機の設置されていない横断歩道を小走りでうつむきかげんで横断したものであるから、本件事故の発生につき一因があるといわざるをえない。

被害者の年齢その他諸般の事情を総合考慮のうえ、同女の右過失と被告の前記過失を対比すると、被害者の過失が5パーセント、被告の過失が95パーセントとみるのが相当である。

神戸地裁 平成8年5月23日

被害者は80代です。
高齢者修正が5-10%入ることを考慮すれば、非高齢者であれば歩行者側の過失は10-15%でしょうかね(子供も修正されます)。

一応これで平成の判例。
38条は昭和53年以降改正されていません。

古い判例になるとこういうものも。

二  (責任原因および過失相殺)
そこで進んで本件事故に関する被告の過失の存否および被害者の過失の存否につき判断する。

(一)  〔証拠略〕を綜合すると、次の事実を認めることができる。

(1)  本件事故現場は、南方錦糸町駅方面から北方押上方面に通ずる通称四ツ目通り(歩車道の区別があり車道幅員16.6mで中央に都電軌道がある。)と、東方墨田区検方面より西方三ツ目通り方面に通ずる通称割下水通り(交差点より西方は歩車道の区別がなく幅員は14m)とが直角に交わる交通整理の行なわれていない交差点の西側に設けられた横断歩道(以下本件横断歩道という。)上である。交差点南側にも横断歩道(以下南側横断歩道という。)が設けられており、現場付近の制限時速は毎時40キロで、付近は夜間でも比較的明るい。人車とも交通はかなり頻繁である。

(2)  被告は加害車を運転して錦糸町駅方面から時速40キロ位で本件交差点に差しかかり、本件交差点を三ツ目通り方向に向けて左折するため左折合図をしつつ時速を約15キロ程度に落して、南側歩道を通過し、次いで道路左端との間に3.8m弱程度の間隔を置いて本件横断歩道を通過しようとしたところ、本件横断歩道上を南方から北方に向けて横断歩行中の被害者に、加害車の荷台左側アングル前部角が接触し、次いで左後車輪が接触し、よつて本件事故に至つた

(3)  被害者は訴外A(以下単にAという。)と共に錦糸町駅方面から押上方面に向つて帰路につき、四ツ目通り東側歩道を北に向つて歩行した後南側横断歩道を渡つて西側歩道に至つたのであるが、同所で押上方面に向うタクシーを拾うため、Aは右横断歩道からやゝ南に寄つた地点で寸時錦糸町駅方面から来るタクシーを捜し、被害者は横断歩道からやゝ北に寄つた地点でこれを待つていた。
ところがタクシーが容易に見付からなかつたので、押上方面に向つて歩きながらタクシーを捜そうと考え、被害者が先に立つて西側歩道を北に歩行して本件横断歩道に差しかかり、被害者が先づ横断歩道に入り、粉川が2m程遅れてこれに続いたが、その際Aはなおタクシーを求めて錦糸町駅方面を振り向き振り向き歩いていた。そして被害者が歩道端から3.8m弱程横断歩道に立ち入つたところで前記のとおり加害車に接触した。

(4)  加害車が右のようにして本件交差点を左折するに当り、被害者が本件横断歩道に踏み出す直前の西側歩道角(交差点南西角)付近への見通しは、加害者運転席が南側横断歩道をやゝ過ぎる頃まではフロントガラス越しにこれを見通すことができ、それ以後はフロントガラス越しの視界からは外れるが、なお運転席左側面の窓越しにその胸部以上を見通すことができる。

以上のとおり認められ、証人Aの証言中加害車の速度に関する部分は採用せず、他に右認定を左右すべき証拠はない。

(二)  ところで問題は、被告が左折に際し被害者の動静に対し払つた注意の程度および被害者の横断歩行態度であるが、右認定の事実と前掲の各証拠ならびに被害者が本件横断歩道を駆け出したとみるべき証拠はなく〔証拠略〕に照らし同人は通常の歩行速度で横断を始めたと認むべきことを綜合して、次のとおり推認するほかはない。

即ち、被害者は前記のとおり本件横断歩道に差しかかりこれに歩を進めたのであるが、その際Aがなおタクシーを捜して錦糸町駅方面を振り向いていたので、被害者もまたタクシーを捜してもしくはAに話しかけるため同方向を向き、あるいはそのため寸時歩を止めるようなこともあつた。
また本件横断歩道を横断歩行するに当つても右のことに気をうばわれていたため左右の安全を確認することなく、漫然と歩行した。
一方被告は加害者運転席が南側横断歩道に差しかかる少し手前から同歩道を通過する頃までの間に西側歩道角付近にいる被害者を発見したが、たまたまその頃被害者が直ちに本件横断歩道に踏み出すことはないと思われるような態勢にあつたためこれに気を許し、その後は運転席左側面窓から同人の動静を注視するなどしないで、視点を同人から外してそのまま左折進行し、本件交差点を通過しようとした。

〔証拠略〕によれば、被告は本件横断歩道に差しかかる頃まで被害者から眼を離さなかつたと供述しているけれども、前掲事実関係に照らして措信しえない。

その他右認定を左右すべき証拠はない。

(三)  右事実に照らし考えるに、横断歩道脇に歩行者が居る場合にその前を通過しようとする自動車運転者は、左右の安全不確認のまま横断しようとする歩行者もあることを慮つて、終始その動静に注意するかあるいは歩行者が自動車の通過を認めて横断を差し控えていることを確認してから通過すべきものであり、しかも本件では、加害車は大型貨物自動車で左折進行中なのであるから、加害車にとつて歩行者に対する見通しが不充分となる時間がある一方、歩行者にとつても直進車に比してその確認が難かしく、またいわゆる内輪差も大きくかつ車両最後尾が横断歩道を通過し終るまでの時間経過も比較的長いのであるから、右のような注意は一層厳にしなければならない筋合いである(具体的には、充分に減速して、歩行者の動静と進路前方とを交互に確認しつつ、歩行者が横断を開始する姿勢を示したときには直ちに停止できるように進行すべきである。)ところ、被告にはこれを怠つた過失があり、そのため本件事故を惹起したものといわなければならない。

そうすると被告は不法行為者として民法709条により、被告Bは代理監督者として民法715条2項によりそれぞれ本件事故に基づく損害の賠償責任があり、また被告会社の免責の抗弁も失当に帰するから被告会社は加害車の運行供用者として右同様の責任があることとなる。

(四)  しかし一方前記認定の事実によれば、被害者にも横断歩道を歩行するに当つて左右の安全確認を怠つた過失があるものといわなければならないから、賠償額の算定に当りこれを斟酌すべきであり、前認定の事故態様に照らし、20%程度の過失相殺をするのが相当である。

東京地裁 昭和46年4月17日

この当時の38条は今でいう前段が明文化される前(昭和42年改正道路交通法)。

(横断歩道における歩行者の優先) 第三十八条 車両等は、歩行者が横断歩道により道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)を横断し、又は横断しようとしているときは、当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。

自転車が信号機がない横断歩道で歩行者と衝突した事故で歩行者に10%つけた事例もあります。
リンク先に載ってますが、掲載書籍は私も確認済み。

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たまたま検索してヒットした記事なんですが、ちょっとこれはいかがなものかと思うところがありまして。 まあ、気持ちは分からないでもないですが。...

そのほか、左右を確認せずに横断した歩行者に注意義務違反としている判例もあります。
 

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先日の記事について追記。 横断歩道事故で歩行者に過失 横断歩道事故の場合、赤信号無視以外なら「原則」は歩...

こうした判例が一般的なのかというと、原則は横断歩道の歩行者事故の場合、赤信号じゃない限りは歩行者の過失は0%。
けど判例によっては過失をつけてます。

そもそも民事の場合、過失=道路交通法違反なんて法律はどこにもないので、民法709条がいうところの過失だと判断されたら歩行者にも過失がつくケースはある。
歩行者側に過失がつくケースは以下の通り。

・夜間
・幹線道路
・歩行者が容易に事故を回避出来る場合

民法709条の過失は、予見できることを回避しないことを意味する。
「絶対に歩行者が無過失」なんてことはない。
あくまでも「原則」。

ちなみに横断歩道以外の事故では、歩行者に過失100%つけたものもあります。
この事故態様の場合、従来から言われる過失割合の標準は歩行者:車=20:80程度が基本ですが、無過失の立証を果たした珍しい判例。

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横断歩道がなく、かつ横断禁止ではない道路の場合、民事上では車にもかなりの過失がつきます。 目安は歩行者:車=20:80。 と...

比較的最近の事例です。

そもそも

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横断歩道事故の場合、判例自体そこまで多いわけじゃない気がします。
交通事故の場合、基本的には示談。
原則は歩行者が過失0%なので、5%とか10%を争い裁判することにメリットがない。
裁判にかかる時間と手間と費用を考えたら、歩行者側の過失0%の主張を飲んで示談したほうが良いし。
また、示談が済んでいることは刑事責任上でも量刑判断に影響する可能性があるので、過失0%で示談して被害者にきちんと誠意を見せることも大切。

まあ、本当の意味での誠意というなら、きちんと一時停止していれば何も起きなかったわけですが。
何か起きてから見せる誠意よりも、何も起こさないことが本当の意味での誠意じゃないかと思いますが、人間って何か重大なことを起こさない限りは慢心したり、過信したりあるんだと思う。
失ってから気づくよりも、失う前に気づかないと。

裁判している事例を見ると、そもそも過失割合は争わず、損害額について争っている場合もあります。
全過失が車にあることは双方が認めており、損害額の算定についてのみ争っている場合もあります。

38条って、「横断しようとする歩行者がいたら一時停止」みたいな書き方しているところが多いけど、これが最大の間違いだと思う。

横断歩道の存在を察知したら脊髄反射のごとく減速を開始し(速度調節義務)、横断しようとする歩行者がいないことを確認したら義務解除。
減速している段階で横断しようとする歩行者を発見したら、そのまま一時停止。

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「居たら止まれ」じゃなくて、横断歩道の存在を察知したら脊髄反射レベルで減速しろという規定。
脊髄反射はしなくてもいいけど、横断歩道の予告標示を見たら脊髄反射するくらいじゃないとそもそも止まれない。

38条上では問題だけど、業務上過失傷害罪は無罪なんて判決すらあります(東京地裁 平成15年12月15日 差戻し審)。

原則には例外はあるけど、今の時代、よほどのことがない限りは歩行者が適法に横断して事故に遭ったら過失は無しが多いかと。

民事の過失割合って、道路交通法違反だけを争っているわけでもないし、立証責任は当事者にあるわけで、当事者がおかしな主張をすれば結果もお察し。
ちょっと話は変わりますが、池袋暴走事故。
あれ、車は赤信号無視して横断歩道に突入しているわけで、過失割合は車が100%になることは間違いない。
けど示談ではなく民事も訴訟している。

これの意味を理解できずに誹謗中傷する人もいるみたいだけど、絶対に過失100%から動きようがないのに裁判をすることの意味を理解できないのは、いかがなものかと思う。
請求額をいくらに設定しているのかは知りませんが、「認諾」させないためにたぶん高めに設定しているでしょう。
なぜ認諾させないようにするかについては、書かなくてもわかるかと。
日本国は認諾して逃げた事例がありましたけど、お金を目的にしてないから高めに設定するということの意味を理解できない人もいるんだなと思うと悲しい。




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