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「台車」が二輪車と事故になり、二輪車の運転者が被害者になる。

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いきなりですが質問です。
これを押して歩いている者は、道路交通法では何になりますか?

答えは軽車両です。
台車がオートバイと衝突し、オートバイの運転者が死んでしまうという悲しい判例があります。

台車の責任

判例は東京地裁、平成13年8月29日。
原告はオートバイ側、被告は台車の運転者(会社)です。

 

なぜ事故が起きたのか?
台車にゴミを積んで道路を横断した際に、かなりぼんやりしていたようでオートバイと衝突。
オートバイは避け切れなかった上、台車に乗り上げる形になってしまった。

 

その結果、オートバイはバランスを失い弾むように対向車線に投げ出され、対向車と衝突した死亡事故になります。

 

さて、この判例では台車を押して歩く人は歩行者なのか?というところも争点になっています。
けど、そこは一旦置いときます。

 

この事故ですが、オートバイの転倒事故として台車の存在がなかったことになっていたようです。
台車の運転者は、事故の後、台車を会社内に戻し救護義務も果たしてない。
その結果、台車が隠蔽されたことになり、オートバイの運転者が不注意により対向車と衝突した事故として処理されていた。

 

こういうの、本当に良くない。

 

ご遺族の方が「そんな運転をする人ではない」として独自に捜査をした。
その結果、台車の運転者ともコンタクトしたみたいだけど、「知らない」と否定。
その段階で匿名の電話があり、真相究明に至ったそうな。

 

台車の運転者は警察からの出頭要請に、事故とは無関係の壊れていない台車を持っていったりしたみたいだけど、最終的には不起訴(重過失致死)。
ご遺族の方が独自に捜査しなければ、オートバイが勝手に転倒して対向車に衝突した事故だという事実が確定してしまうわけです。

 

事実と真実は必ずしも一致しない。

 

さて、台車は道路交通法上では軽車両です。
以下のように判示してます。

被告らは、台車を押して道路を横断するに当たっては「歩行者」以上の注意義務は課されない旨主張するが、道路交通法2条3項にいう「小児用の車」は小児を運搬し、「二輪もしくは三輪の自転車」は人が搭乗するものであるのに対し、台車は荷物を運搬する物であり、同条1項11号が「荷車」を軽車両と定義し、リアカーも軽車両に含まれると解されていること、実質的に考えても、「小児用の車を通行させている者」「二輪もしくは三輪の自転車を押して歩いている者」は、被害者になるか加害者になったとしても同時に被害者でもあるのが通常であるのに対し、台車は、人が荷台に荷物を載せその身体から離れた位置で把手を押して動かす物であるから、台車を押している者は被害者にはならない場合があること、台車は、荷台の部分が低く走行車両から認識しにくいことやその材質等から、走行中の車両特に二輪車の妨害になり衝突すると危害を加える可能性があることなどに照らすと、台車を押して道路を横断する場合を単なる歩行者が道路を横断する場合と同視することはできず、前記注意義務が課されると考えるのが相当である。

 

東京地裁 平成13年8月29日

 

理屈の上では台車を押して歩道を通行することは通行区分違反になりますが、実態からみても車道を通行するのも不自然。
そんなことまで警察も問題視することはないけど、何か起きた際の責任としては車両として扱われます。

二輪車は

歩行者は赤信号、横断禁止、直前直後横断に抵触しない限りは許容されているし、車両は赤信号や25条の2(正常な交通を妨害する恐れがあるときは横断禁止)に抵触しない限りは横断可能です。

 

「抵触しない限り」は。

 

実際のところ、赤信号無視して横断することや直前直後横断の場合、車道を通行する二輪車は死ぬリスクが普通にあって、死ぬのは横断側だけじゃない。

 

以前こちらでも書いたけど、

 

個人的にはショックを受けた。
もう5年くらい前になりますが、東京都国分寺市で自転車と車が衝突し、自転車側が背負っていた乳児がお亡くなりになるという痛ましい事故がありました。6日午前、東京・国分寺市で自転車の女性が乗用車と接触して転倒し、おんぶしていた生後7か月の赤ちゃん...

 

この事故は優先道路に対し、車の列の隙間から横断して起きた事故。
なかだか数十m迂回することすら横着し、しかも対向車の動静を確認せずに横断したら事故る可能性があることは予見できる。
これも、車じゃなくてオートバイだったらオートバイ側も死ぬリスクがあるわけだけど、

 

「自転車は横着した乗り物」などと正当化されたら、たまったもんじゃなくて、優先道路うんぬんを仮に知らないとしても、この状況で安全に横断出来ると思うほうが問題。
せめて、ここで一度確認しろと。

こういうのは自転車に重大な過失があることは明らかだけど、悪いものを悪いと捉えずに、無理矢理道路構造に話を転嫁させることは理解しがたい。
車だろうと自転車だろうと歩行者だろうと、悪いものは悪いなんだよね。
悪いものを悪いと評価できないあたりに、偏りを感じる。

 

自転車道作っても自転車道の中で逆走して事故なんて起きてるのに、現実見ろって話。

 

最近も、横断歩道が赤信号でも道路交通法38条の優先権があるとか寝言語っていた奴がいるけどさ、

 

ついでなので、横断歩道の歩行者優先規定の歴史。
なんかグダグダ言ってる奴がいますが、話の流れ上、横断歩行者妨害について調べた内容をまとめておきます。横断歩道を横断する歩行者に対する道路交通法の規定は、なかなか不思議な歴史を辿っています。先にネタバレ。昭和42年道路交通法改正時に説明されて...

 

正直、いい加減にしろとしか思ってなくて。
どんだけ勉強不足なのか知らないけど、どこの世界に赤信号無視の歩行者を優先させる法律があると思うんだ?
昭和35年に道路交通法ができたときから、38条(当時は71条3号)は赤信号無視した歩行者を対象にしていない。
以下、昭和42年道路交通法改正時の警察庁交通企画課の説明。

この改正内容の第二点は、従来の第一項および第二項の区別を廃止したことである。改正前の第38条は交差点における交通整理の有無によって第一項と第二項を分けて規定していたが、車両等の義務の内容としてはいずれも「歩行者の通行を妨げてはならない」ことを規定していた。したがって、規定をこのように分けていた実益は、交通整理の行われている交差点において優先の適用を受ける歩行者を「信号機の表示する信号または警察官の手信号等に従って横断している」歩行者に限っていたことにあると考えられるが、本来このような優先の規定は適法な歩行者にのみ適用になると解するのが当然のことであるので(注2)、今回の改正を機にこの区別を廃止したのである。

 

(注2)この点については、改正前の第71条第3号すなわち改正後の第38条第1項の規定についても、信号無視の歩行者に優先権を与えたものでないのは解釈上当然のことであると考えられていた

 

警察庁交通企画課 浅野信二郎、警察学論集20(12)、p37、立花書房、1967年12月

ワケわかんないこと広めて、赤信号無視を容認するような謎法律を創造しないで欲しいんだよね。
マジで。
一応、大学の先輩が赤信号無視した歩行者を避けて死んでるんでね(オートバイ)。
看過しがたい妄言。
こういう根拠もない説を創造する奴がいるから、歩行者も勘違いしかねない。

 

さて、判例に戻ります。
警察ですら台車の存在が事故の原因だということを見落とししていたワケですが、逆に言えば容易に隠せるくらい証拠に乏しい。
過失割合は、オートバイ:台車=75:25です。

 

自転車が横断して起きた事故と同程度に収めた印象ですが、ご遺族の努力がなければ闇の中です。
優者危険負担の原則もあるし、死んだオートバイの運転者は何も語れないまま裁判で認定された「事実」が確定するワケです。

 

ロードバイクに乗っていても、歩道からノールックで車道に来てみたりする自転車はいるし、ナチュラルに信号無視する自転車とか歩行者もいるけどさ、信号無視した人が怪我したり死んだりするのは、そうなる蓋然性があることを知った上での話だし、結果については自分で受け止めるしかない。
予想される結果が現に起きたなら、それは自分自身で受け止めるしかないから。
けど、その結果「他人」が怪我したり死んだりするのは不条理そのもの。

 

二輪車なんて、簡単に死んじゃうから。
いくら自衛とは言え、最低限守るべきことすら守らずに他人を怪我させてはいけない。

 

これは横断歩道で止まらない車も同じね。

 

自転車に対しても、難しいルールを知れという話じゃない。
信号守る、左側走る、ちゃんと見る。
本来、これを守るだけでほとんどカバーされているけど、信号守らず、逆走して、ノールックでアタックされたらお手上げ。

 

先日の判例についてちょっと補足。
先日挙げた判例なんですが、ちょっと補足。なぜ車道ロードバイクにも5割の過失が付いたかまず、事故の前提から。・原告(ロードバイク)は車道を通行していた。・被告(自転車)は歩道を通行していた。・歩道には配電ボックスがあり、被告の身長よりも高かっ...

 

判例の件は台車が加害者になるという珍しい交通事故ですが、「匿名の電話」なるものがなければ事故の真相は闇の中のまま。
それでいいんですかね。





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