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過失割合の考え方。

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正直なところ、過失割合の計算についてはあまり興味がありません笑。

 

横断歩道を横断した自転車と優先道路の関係について考察してみます。

過失割合の考え方

過失割合ですが、交通事故についてはある程度類型化された基本過失割合があり、それ以外の要素を含めて加算したり減算したりします。
ただしほとんどの判例では、なぜその過失割合に決めたのかについては詳しく書いてないのが一般的。

 

たまにこのように、詳しく計算根拠を説明している判例もありますが、あんまり一般的ではないような気がします。
この判例は横断歩道がない交差点を横断した小学生と車の事故。

以上によれば,本件は「横断歩道のない交差点又はその直近における横断」事故であると認められ,その基本的な過失割合は,原告20パーセント,被告80パーセントとするのが相当である。他に,この基本的過失割合を不当とすべき事情は認められない。
(イ) 基本的過失割合の修正項目について検討する。

① 児童修正
本件事故当時,原告が満10歳の児童であったことに照らすと,上記基本的過失割合のうち,5パーセントを原告の過失割合から減算するのが相当である。

② 被告の著しい過失
原告は,ⅰ本件事故日は,児童が精神的に高揚する秋祭りの日であり,被告にもお祭りの認識があったこと,ⅱ本件事故現場付近の歩道上では,児童の集団が車道方向を見ながら立っていたこと,ⅲ本件事故時の交通量が少なく,歩行者が本件道路を横断することが
予見されたこと,ⅳ被告は,減速も徐行もせずに,原告ほかの児童の動静に格別の注意を払うことなく走行したこと,ⅴ同乗者の叫び声ではじめて横断中の原告に気づいたか,少なくとも同乗者よりも後に原告に気づいてブレーキをかけたこと,ⅵ被告が原告を発見し
たとき,原告は既に被告車両のフロントガラスの正面に近いところまで来ていたことをあげ,被告は高度の注意義務を怠ったから,著しい過失があるとして,被告の過失割合に10パーセントを加算すべきであると主張する。
しかし,ⅰないしⅲの事実に基づき,原告が本件道路を横断することを予見し得る状況が認められたとしても,かかる予見をすべき義務は,もともと被告の負う前方注視義務に包含され,基本的過失割合の中で既に評価されているのであるから,前記事情が認められ
るからといって,被告に対し,さらに高度の注意義務が課せられたものということはできない。
また,ⅳないしⅵについてみても,これらは被告の前方注視が不十分であったことを示す事実ではあるが,それ以上に,脇見運転,著しいハンドル・ブレーキ操作不適切などの悪質な態様の義務違反行為を示すものとはいい難い。
以上によれば,被告に原告主張の著しい過失があったとまでは認められない。

③ 幹線道路修正
被告は,本件道路が幹線道路であることを理由に,基本的過失割合を修正すべきであると主張する。前記認定にかかる本件道路の幅員,本件事故当時の交通量,制限速度等に照らすと,そもそも本件道路が幹線道路であるか否か疑問があるが,仮に幹線道路であるとしても,それは,基本的過失割合を認定する上で当然考慮された事情というべきであるから,重ねて幹線道路修正をすることは相当でない。

④ 夜間修正
被告は,本件事故が夜間に発生したことを理由に基本的過失割合の修正を主張する
本件事故は,10月6日午後7時30分ころ発生したものであって,夜間の事故であるということができる。しかし,一般に夜間修正が認められているのは,夜間においては,歩行者からは前照灯を点灯した車両が進行してくるのを容易に発見できるのに対し,車両
からは歩行者の発見が必ずしも容易でないことを理由にするものであるから,夜間であっても,街路灯等の照明によって歩行者を発見することが容易である場合には,夜間修正はすべきでない。

これを本件についてみるに,前記認定事実によれば,本件事故現場は,近くにあるガソリンスタンドの灯りなどのために,やや明るい状態であり,走行車両の視界を妨げる格別の要因はなく,事故現場付近の見通しはよかったものである。現に,被告は,事故現場の約36.5メートル手前を走行中,事故現場付近の歩道上に,原告を含む児童らがお菓子の袋を持って立っているのを発見したのであるから,本件事故現場は歩行者の発見が容易であったということができる。そうとすれば,夜間修正を行うのは相当でない。

⑤ 原告の直前横断等
被告は,原告が斜め横断,車両直前横断したとして,基本的過失割合の修正を主張する。
斜め横断について検討するに,証拠(略)によれば,原告は,被告車両を認識しつつやや斜め左方向に横断を開始したことが認められるが,本件道路は幅員7.8メートルの片側一車線道路であって,しかも原告が横断を開始した直後に衝突していることから,
角に横断した場合と比較しても,横断距離には極めて僅少な差があるに過ぎない。また,原告が走って横断しようとした直後に衝突されていることから,横断時間の面でもほとんど違いはなかったといえる。そうすると,斜め横断による過失割合の修正は相当でない

いうべきである。
直前横断について検討するに,原告は,被告車両が時速約45キロメートルで走行中,被告車両の停止距離約20.77メートル(証拠略)よりかなり短い約15メートル手前で飛び出して横断を試みたものであって,客観的に危険発生のおそれが高いといえるか
ら,道路交通法13条1項本文で禁じられている「車両等の直前」で横断したものということができる。
原告は,被告が制限速度を遵守した上,前方を注視していれば,衝突前に被告車両を停止させることが十分可能であったとして,原告の直前横断を否定するが,制限速度違反や前方注視義務の不遵守は,被告側の過失として考慮されるべき事項であり,原告の過失として考慮すべき直前横断の問題とは区別して考えなければならないものであるから,原告の主張は理由がない。
よって,原告が直前横断をしたことによる基本的過失割合の修正を認めるべきであり,10パーセントを原告の過失割合に加算すべきである。

ウ 過失割合についての結論
以上によれば,原告の基本的過失割合は20パーセントであるところ,児童修正により5パーセントを減算し,直前横断により10パーセントを加算すると,原告の過失割合は25パーセントとなる。

 

松山地裁 平成17年6月16日

このように詳しく書いてある判例はそんなに多くはありません。

横断歩道と優先道路

横断歩道を横断した自転車と車が衝突した事例。
車が通行していた道路が優先道路(36条2項)の場合で考えてみます。

 

基本過失割合は、

 

優先道路を通行する車:非優先道路を通行する自転車=50:50です。
優者危険負担の原則を加味しても50:50。

 

2つの判例について検討しますが、判決文の中ではどのような計算なのかまでは書いてありません。
なのであくまでも予想としての話になります。

 

①福岡高裁 平成30年1月18日

車が優先道路と判断されています。
おそらく、このような考え方だと思われます。

車(優先) 自転車
基本過失割合 50 50
横断歩道通行 -10
高齢者 -10
判決 70 30

※判決文では細かい数字は出てこないため予想です。

 

横断歩道通行を自転車に有利に修正する理由は、横断歩道を横断しようとする「歩行者」に向けた注意義務があるからだと思います。
ただし、自転車が横断歩道を通行したことを有利に修正してない判例もあるので注意が必要です。

 

なぜ?横断歩道で自転車が優先にならない理由。
先日の記事についてなんですが、と何名かの声を頂きました。どこかに書いた気がしますが、きちんと理解しようと思うとかなり話が長くなるので、読む気しないと思いますよ。とりあえず書きます。結論から先に結論から。法解釈上、どちらも成り立ちます。38条...

 

ちなみに同判例は原告が0:100と主張し、被告は35:65が相当と主張していたので、実質的には被告の主張がほとんど通った形。
そもそも、被告側は事故を起こして過失があることについては争っていないわけで、こういうのを「原告勝訴」とは言わないように思うのですが。

②大阪地裁 平成25年6月27日

この判例も車が優先道路。
制限速度40キロ道路にて、対向車線が渋滞のため横断歩道右側が見えないにもかかわらず、遅くとも時速50キロ以上で進行。

車(優先) 自転車
基本過失割合 50 50
横断歩道通行 -10
制限速度オーバー +15
子供 -10
判決 85 15

※判決文では細かい数字は出てこないため予想です。

 

横断歩道の見通しが悪いにも関わらず、制限速度を越えて進行していた点を重過失として捉えていると思われます。

 

横断歩道を横断した自転車と、優先道路の判例。
以前こちらで挙げた福岡高裁の判例ですが、横断歩道を横断した自転車を優先道路の進行妨害(36条2項)としています。一応、似たような判例はあります。横断歩道と優先道路判例は大阪地裁、平成25年6月27日。イメージ図です(正確性は保証しません)。...

 

③東京地裁 平成28年11月1日

車が優先道路です。

車(優先) 自転車
基本過失割合 50 50
横断歩道通行 -10
ブレーキとアクセルを踏み間違え +10
判決 70 30

※判決文では細かい数字は出てこないため予想です。

 

優先道路と横断歩道。
こちらの記事にいろいろご意見がある方々から質問を頂いていたことの続きです。この中で、横断歩道を横断した自転車が優先道路の進行妨害(36条2項)とした判例を紹介してますが、この考え方、さほど珍しいものではないようです。ただまあ、このように妄想...

双方ともに

横断歩道を横断した自転車を優先道路の進行妨害と見ている判例はいくつかありますが、結局のところ「歩行者に向けた減速義務(38条1項前段)」の範疇で自転車もカバーしようという発想なので、減速しないどころか制限速度を越えて進行していたら重過失として捉えているような印象です。
基本過失割合は50:50、横断歩道を通行したことを有利に修正して60:40がスタートでしょうか。

 

歩行者と似たような過失割合にはなりませんが、優先道路が関係してない判例だと自転車の過失は0~20%程度。
車が著しい高速度進行していた場合などには自転車を0%にした判例もあります。

 

あと、逆に自転車が100%というか、支払い済み保険金を全額返還せよという判例もあるにはあります。

 

当たり屋さんを防げない。
こちらのアンケートですが、まあいつも通り、機材に関係ないアンケートは低調です笑。ちょっと気になる意見があります。民事の過失割合頂いたご意見。自転車側のフラツキも含めて、事故時の車側過失が100%になるなら数値規定なしでも良い。民事の過失割合...

 

横断歩道を横断しようとする自転車に対しては38条による優先権がないものの、歩行者に向けた注意義務の範疇で自転車もある程度保護しようとするのが38条の考え方とみればいいと思う。

 

時々、「車が自転車に譲ることなんてないだろ!」と主張する人がいますが、横断歩道は明確に「譲っている」と思いますよ。
自転車に対して譲る義務はないですし。

 

まあ、過失割合というのは、事故が起きたから発生するわけであって、事故が起きなければ過失割合なんてないのですよ。
何も起きなければどっちにも責任なんてないですから。

 






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