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「横断歩道を」横断しようとする歩行者。

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こんなのが話題になっています。

止まるべきという点については異論はありませんが、ちょっと気になる点を。

横断歩道を横断しようとする歩行者

これについて、

いろんな人
いろんな人
横断歩道から1~2mは離れた位置を横断する歩行者は、横断歩道を横断する歩行者と同視する。

 

ネットで探せばいくらでもこの情報は出てくると思います。
この情報自体はその通り。

 

ただね、一つ誤解しているのでは?と思う点がありまして。
これね、「民事の過失責任を問う上での話」なのよ。

 

道路交通法違反として考える場合も同じなのか?

 

実は前からこれについて気になってまして、警視庁に聞いたんですよ。

 

まず、「道路交通法上では」横断歩道とは横断歩道の道路標示がある部分のみを指し、「横断歩道から1~2m」という規定はない

四 横断歩道 道路標識又は道路標示(以下「道路標識等」という。)により歩行者の横断の用に供するための場所であることが示されている道路の部分をいう。

なので法律上は、路面標示から外れた部分は横断歩道ではない。

 

次に、歩行者には横断歩道が付近にあるときには横断歩道を使う義務があります。

(横断の方法)
第十二条 歩行者は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の附近においては、その横断歩道によつて道路を横断しなければならない。

運転者には、「横断歩道を横断しようとする歩行者」に対する一時停止義務が課されている。

(横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条
(前段省略)
この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。

そうなった場合、この状態を「横断歩道を横断しようとする歩行者」とみなせるかという問題になる。

なので警察的には「横断歩道から1~2mは横断歩道と同視」という考えがあるわけじゃなく「現場判断」と、仮に争った場合に「裁判所」がどう判断するかはわからないという姿勢のようでした。

 

ただし。
理屈の上では、こうも捉えられる。
横断歩道から外れた位置で待っているけど、「横断歩道を横断しようとしていた歩行者」。

「横断歩道を横断しようとする歩行者」の範疇とも捉えられなくはない。
立っている時点では、「横断歩道を横断しようとしていた」のか、「横断歩道から外れた位置を横断しようとしていた」のかはわからないから。

 

民事では横断歩道の1~2mは横断歩道と同視して考えますが、違反として考える基準と必ずしも一致しないのでね。
民事ということは、そもそも事故が起きたから裁判になっているわけだし。
なので通過していった車について、即座に違反と考えていいのかはやや怪しいのも事実。
一時停止すべきと思うけど。

 

状況からすれば、「これから横断歩道上を横断しようとする歩行者」とみなして一時停止義務があるとみなすほうが適切だとは思います。

 

道路交通法違反という観点だと、例えばこんな判例があります。
判例は最高裁判所第二小法廷 平成18年7月21日。
運転免許取消処分取消請求上告事件で、横断歩道と自転車横断帯が併設された場所において、自転車が自転車横断帯から0.8m外れた位置を横断して事故になったもの。

要はこの事件、自転車が38条1項の優先の対象なら、専らドライバーの不注意による事故となるし、優先の対象ではないなら話が変わる。

 

二審の大阪高裁は専ら運転者の不注意による事故とは言えないと判断しましたが、最高裁は以下のようにし専ら運転者の不注意による事故と認定しています。

4 しかしながら,原審の上記3(2),(3)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(中略)

 

(2) しかし,前記事実関係によれば,本件交差点においては信号機等による交通整理が行われていなかったところ,被上告人側道路に一時停止の規制があったのであるから,被上告人側道路の車両の通行よりも交差道路の車両の通行が優先する関係にあったということができる。さらに,車両等は,自転車横断帯に接近する場合には,当該自転車横断帯を通過する際に当該自転車横断帯によりその進路の前方を横断しようとする自転車がないことが明らかな場合除き,当該自転車横断帯の直前で停止することができるような速度で進行しなければならず,この場合において,自転車横断帯によりその進路の前方を横断し,又は横断しようとする自転車があるときは,当該自転車横断帯の直前で一時停止し,かつ,その通行を妨げないようにしなければならない(道路交通法38条1項)。前記事実関係によれば,被害者は,本件事故の際,自転車横断帯に接する横断歩道上を自転車に乗ったまま横断していたものであるがその横断していた所は,自転車横断帯の北側表示線の中心からわずかに約0.8m離れた所で,かつ,横断歩道上であることからすれば,被上告人において被害自転車の通行を優先させて安全を確保すべき前記義務を免れるものではないというべきである

 

最高裁判所第二小法廷  平成18年7月21日

自転車横断帯からわずか0.8m外れた位置で、かつ、横断歩道上であることは道路交通法38条1項の優先の対象としています。
ただし、二審は否定しているのね。(違反としては1~2mという基準がない証拠でもある)

 

つまり「民事の過失」として評価する際は「横断歩道から1~2mは横断歩道と同視」なんだけど、違反として検討する際には、民事と同じ基準では必ずしも考えられていない。
法律上は、横断歩道とは路面標示がある部分「限定」だし、歩行者には「横断歩道を」横断する義務(12条1項)、ドライバーには「横断歩道を」横断しようとする歩行者に対する一時停止義務(38条1項)を定めているわけで、「横断歩道から1~2mは横断歩道とみなす」なんて規定はないわけよ。

 

民事の基準が、そのまま道路交通法違反としての基準になるわけではないのでね。
私が知る限り、横断歩道もしくは自転車横断帯から外れた位置について違反として検討しているのは最高裁判例くらいしか思い浮かばない。

 

まあ、下図のように考えて、「横断歩道を横断しようとする歩行者」と考えるのが妥当かなと思うけど。
横断歩道から2mくらい外れた位置で、かつ、車道に向いているのだから、「これから横断歩道に移動してから横断しようとする歩行者」と捉えるべきか。
結果的に横断歩道から外れた位置を横断したとしても、「横断歩道を横断しようとしていた歩行者」と見なせる余地は十分あるのだから。

「横断歩道を横断しようとする歩行者」に該当する限りは一時停止義務があり、仮に横断する気がない歩行者だと分かれば徐行発進すればよい。

とはいえ

警察的には得意の「現場判断」と「裁判所がどう判断するかはわからない」というお決まりのセリフですが、まさにそうとしか言えないよね。

 

だって違反として検討する際には、何ら基準はないし。
違反として検討する際には罪刑法定主義の観点からも、厳格に扱わないといけないわけだから。

 

グダグダ言わずに「いいから止まれドアホ!」でいいのですが、横断歩道から1~2mという基準は民事の話。
警察的には必ずしもそのような基準では考えていないということです。
わからないなら止まるのが原則かなと思うけど、そもそも、「横断歩道から1~2m離れた位置を横断している歩行者」と、「横断歩道から1~2m外れた位置で横断しようと立っている歩行者」を同視することが間違いなのかも。
後者であれば、それこそ「横断歩道から3m離れた位置で車道に向かい横断待ちしている歩行者」も38条1項でいう「当該横断歩道を横断しようとする歩行者」に該当する可能性はあるのだから。
結果的に横断歩道を横断したか、横断歩道外を横断したかが問題ではない。

 

最高裁判例についても、0.8m外れた横断歩道上ではない位置ならどう判断するかはわからないのです。
判決理由は、あくまでもこれ。

その横断していた所は,自転車横断帯の北側表示線の中心からわずかに約0.8m離れた所で,かつ横断歩道上であることからすれば,被上告人において被害自転車の通行を優先させて安全を確保すべき前記義務を免れるものではない

 

最高裁判所第二小法廷  平成18年7月21日

※前記義務=38条1項

 




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