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高速度制御不能→妨害運転へ。

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大分の時速194キロ事故。
高速度制御不能危険運転での起訴を断念した大分地検に批判が集まっていましたが、高速度制御不能危険運転致死が「コースの逸脱」と解釈されている以上、やはり厳しい。

 

危険運転の件。
先日の「高速度危険運転」の件ですが、 判決文は一審、二審ともに裁判所ホームページにあります。 一審は津地裁 令和2年6月16日、 二審は名古屋高裁 令和3年2月12日。 一審のほうには事故...

 

署名活動の結果、再捜査を開始したと報道がありましたが、妨害運転危険運転致死への訴因変更を目指している、らしい。

妨害運転危険運転致死

危険運転致死の類型の中で問題になっているのはこれ。

(危険運転致死傷)
第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

2号の「高速度制御不能」は無理との判断なのか、4号の妨害運転を検討すると。

 

妨害運転危険運転致死の判例としては、以下があります。

 

まずはパトカーの追跡から逃れるためにセンターラインを越えて逆走したことによる事故について、妨害意思を認定し有罪とした東京高裁 平成25年2月22日。

(1)本件事故の現場の道路は,片側1車線で,中央線の表示によって,追い越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されているところ,被告人は,このような道路において,B車両とC車両の間で,中央線を跨いで車体の半分くらいが反対車線に出るようにして走行し,C車両が,減速して左に寄り,被告人車両に道を譲ってきたので,C車両を抜き去ってい
る。そのときの状況について,反対車線を走行してきたE及びAは,原審でそれぞれ証人として,一致して,被告人車両と衝突し接触する危険を感じて,自車を減速させて道路左に寄せた旨供述しており,そのことは,路側帯も含めた車線の幅員が約3.8メートルであり,E車両,A車両及び被告人車両の車幅がいずれも約1.7メートルであることからも首肯することができる。
(2) 被告人は,原審において,一方では,C車両が減速してきたときには,C車両に注意を払っており,前方右側の反対車線には注意を払っていなかった旨供述している。しかし,他方では,被告人は,中央線を跨ぐように走行していたところ,C車両が左に寄ってきたので,C車両と反対車線のE車両の間を抜けられると判断した旨,さらには,E車両とすれ違った後,C車両を追い抜かした旨を供述している。そうすると,被告人は,C車両を追い抜く際には,E車両等の反対車線の車両が接近してきていることを十分認識していたということができる。
(3) しかも,被告人は,先行するB車両及びその前のC車両を追い抜こうとして,反対車線に出たが,Dが反対車線の車両が接近してきていると注意を促してきたため,それに応じて,危険を察知して,前方のC車両を追い抜くことを躊躇し,いったんB車両とC車両の間に入っているから,C車両を追い抜くときには,Dから注意を促された反対車線の車両が間近に接近してきていることを認識していなかったはずはない。
2 これらの事実に照らすと,被告人が,車体の半分を反対車線に進出させた状態で走行し,C車両を追い抜こうとしたのは,パトカーの追跡をかわすことが主たる目的であったが,その際,被告人は,反対車線を走行してきている車両が間近に接近していることを認識していたのであるから,上記の状態で走行を続ければ,対向車両に自車との衝突を避けるため急な回避措置を取らせることになり,対向車両の通行を妨害するのが確実であることを認識していたものと認めることができる
ところで,刑法208条の2第2項前段にいう「人又は車の通行を妨害する目的」とは,人や車に衝突等を避けるため急な回避措置をとらせるなど,人や車の自由かつ安全な通行の妨害を積極的に意図することをいうものと解される。しかし,運転の主たる目的が上記のような通行の妨害になくとも,本件のように,自分の運転行為によって上記のような通行の妨害を来すのが確実であることを認識して,当該運転行為に及んだ場合には,自己の運転行為の危険性に関する認識は,上記のような通行の妨害を主たる目的にした場合と異なるところがない。そうすると,自分の運転行為によって上記のような通行の妨害を来すのが確実であることを認識していた場合も,同条項にいう「人又は車の通行を妨害する目的」が肯定されるものと解するのが相当である。
3 以上からすると,被告人には,対向車両の通行を妨害する目的があったということができるから,その目的を肯定して,被告人に刑法208条の2第2項前段の危険運転致死罪の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りはない。

 

東京高裁 平成25年2月22日

 

同じような事例では、広島高裁 平成20年5月27日があります。
こちらもパトカーの追跡から逃れるためにセンターラインを越えて逆走したことによる事故ですが、同様に有罪。

所論は,危険運転致傷罪が成立するためには,相手の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することが必要であって,その未必的な認識では足りないとの解釈が立案担当者からも示されている(「刑法の一部を改正する法律の解説」法曹時報第54巻第4号71頁)と指摘した上,被告人の意思は,一貫して,警察車両から逃れることにあったのであり,被告人は,対向車両の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図していないから,被告人に人または車の通行を妨害する目的はなく,同罪は成立しない旨主張する。
たしかに,被告人は,警察車両から逃れることを意図して,Eバイパスを逆行したものである。
しかし,自動車専用道路であるバイパスを逆行すれば,直ちに対向車両の自由かつ安全な通行を妨げる結果を招くことは明らかであり,バイパスを逆行することと対向車両の自由かつ安全な通行を妨げることとは,表裏一体の関係にあるというべきである。また,上記認定事実に照らせば,被告人が,警察車両の追跡から逃れるため,バイパスを逆行することを積極的に意図していたことは明らかである。そして,バイパスを逆行することを積極的に意図していた以上,被告人は,これと表裏一体の関係にある対向車両の自由かつ安全な通行を妨げることをも積極的に意図していたと認めるのが相当である。

 

広島高裁 平成20年5月27日

続いては大阪高裁 平成28年12月13日。
この事件の概要はこちら。

本件は,被告人が,普通乗用車を運転し,Aが運転し,B及びCが後部座席に乗車したオートバイ(被害車両)の通行を妨害する目的で,約1.9㎞にわた
って追走し,その間,指定最高速度40㎞毎時を超える時速約60㎞ないし90㎞で追い上げ,あるいは,右後方約55㎝や後方約1.1mないし約5.8mにまで接近するなど,被害車両に著しく接近し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で運転して,Aに被告人車両と同等以上の高速度で走行させ,的確な運転操作等をできなくさせて,被害車両を道路縁石に接触させ,Aらもろとも同車を転倒させるなどして
,Aに上行大動脈起始部断裂及び左右心耳破裂の傷害を負わせてその場で死亡させるとともに,Cに加療約2か月間を要する左腓骨骨折,左前腕挫創,左下腿挫創,左膝打撲,左膝挫創の傷害を,Bに加療16日間を要する左手関節捻挫,左肘関節打撲・表皮欠損創の傷害を負わせたという事案である。

大事な部分のみ抜粋。

本件罪の通行妨害目的には,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図する場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含むと解するのが相当である。

 

大阪高裁 平成28年12月13日

3つの判例は裁判所ホームページに掲載されています。
なお、大阪高裁判決では先に挙げた東京高裁判決を批判的に捉えている点もポイント。

原判決は,本件罪にいう通行妨害目的は,運転の主たる目的が人や車の自由かつ安全な通行の妨害を積極的に意図することになくとも,自分の運転によって上記のような通行の妨害を来すことが確実であることを認識して当該運転行為に及んだ場合にも肯定されると解するとして,東京高等裁判所平成25年2月22日判
決・高刑集66巻1号3頁を援用しているから,同判決同様,そのような認識で当該行為に及んだ場合,自己の運転行為の危険性に関する認識は通行の妨害を主たる目的とした場合と異なることがないことを,上記のような解釈を採る理由としているものと解されるが,認識の程度が同じであればなぜ目的があるといえるのか不明であるし,なにより,そのような解釈を採ると,自分の運転行為によって通行の妨害を来すことが確実であることを認識していれば,後方からあおられるなどして自らに対する危険が生じこれを避けるためやむなく危険接近行為に及んだ場合であっても本件罪が成立することになり,立法趣旨に沿わないものと考えられる。

 

大阪高裁 平成28年12月13日

 

時速194キロというとんでもない高速度で進行した上、その高速度が危険回避目的ではないことは明らか。
そのような超高速度自体が他の車両の安全な通行を妨害する認識があった、という方向に持っていきたいのでしょうか。

法が悪いとしか

危険運転致死は危険な運転の中からさらに一部のみを類型化したものと言われてますが、一般市民感覚の危険運転とズレがあることが問題。

 

ただまあ、個人的には大分地検を責めるのはちょっと違うんじゃね?と思うのですが、時速194キロで直進したことについて積極的な妨害意思があったとは言えない。
結果的に妨害になる認識がある、という方向からなら立証可能なのかを再捜査したものと思われます。

 

世の中恐ろしいもので右直事故だから右折車(被害車両)にも過失があると考える人すらいますが、道路交通法37条は制限速度を大幅に超過した直進車を優先する規定ではない、というのが既に確立された見解。

 

道路交通法37条の直進車優先と判例。直進車が暴走しても直進優先?
ちょっと前にも書いたのですが、まとめておきます。 第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。 ※直進車が違法走行した事例を...

 

民事でも100:0案件です。

 

一般市民感覚で読めば、4号は煽り運転に対する規定だと取れますし、大分の件は2号の高速度制御不能危険運転なんじゃないの?と思います。
けど法解釈上、確かに4号妨害運転もありうる。
今後も注目される案件ですが、国は法改正するつもりはないのでしょうか。





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