PVアクセスランキング にほんブログ村
スポンサーリンク

石川県加賀市の国道8号、自転車道計画のチグハグさ。

blog
スポンサーリンク

読者様から、石川県加賀市の国道8号の自転車道計画についてのお話を頂きました。
自転車道(交通法2条1項3号の3)については、「車道の部分」と定義されつつも、

三の三 自転車道 自転車の通行の用に供するため縁石線又は柵その他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう。

誰がどう見ても歩道の中にある構造を乱発し、通行義務(63条の3)があるのかないのかサイクリストを悩ませることがありますが…

スポンサーリンク

石川県加賀市の国道8号と自転車道計画

県内の、石川県加賀市の国道8号について、自転車走行空間がちぐはぐな印象を受けるのでご紹介します。

 

市内の国道8号では、「加賀拡幅」の事業名で6.4キロにわたる4車線化事業が行われています。
うち、松山交差点から黒瀬町(加賀大橋)までの約4.4キロについては、両側に植栽帯で自動車車道や歩道と区画された、幅2.0mの自転車道が整備されることになっています

参考資料:https://www.hrr.mlit.go.jp/kanazawa/douro/doc/kaga.pdf(2022年9月 国土交通省)

管理人
管理人
確かに国土交通省のパンフレットでは、松山交差点~黒瀬町までは両側2.0mの自転車道になっています(図示二段目、三段目)。

少しずつ拡幅が完了しており、完成区間のうち自転車道設置区間については、普通自転車歩道通行可規制や普通自転車の歩道通行部分規制が実施されています。(参考:平成28年1月15日付『石川県公報』第12867号)
自転車道ではなく歩道扱いなのですが、別にそれはよいのです。
着目したいのは、幅員2.0m自転車道が整備される一方で、自動車車道の左側端に自転車のピクトグラムが描かれているということです。

現場ストリートビュー(加茂交差点から福井方面を望む)

 


 

管理人
管理人
そもそも「自転車道計画」なのに「歩道の普通自転車通行指定部分」扱いの公安委員会規制を掛ける時点でお察し感はあります。
しかも車道には自転車ナビライン。
自転車道計画とはどこに行ったのやら。

○小まとめ

計画段階 現状
両側2.0mの自転車道 歩道の普通自転車通行指定部分と、車道には自転車ナビライン

このピクトグラムは、加賀市策定の『加賀市自転車のまち推進計画』(2018年4月策定・2019年4月改定)によると、『加賀市自転車利用環境整備計画』(平成13年)や『加賀市都市計画マスタープラン』(平成23年)に基づき平成26年度に、国道8号の1.5Km区間の路肩に自転車通行空間として整備されたものです。(『推進計画』pp.18-21)

先の国交省パンフと照らし合わせると、この区間を含む平成27年3月27日の加茂~黒瀬町間1.9Km【当然、幅員2m自転車道整備区間】の4車線供用と同時に、この路肩の「自転車通行空間」が整備されたことになります。
そもそも、「加賀拡幅」に自転車道を確保することになったのは、整備管理者の国交省によるスタンドプレイというよりかは、加賀市側の事情を十分に汲んだものであるようです。
住民参加の「PI手法」で検討されてきた「加賀拡幅」事業は、現在でも関係者のやり取りや議論・検討の様子をうかがい知ることができます。

『加賀市自転車のまち推進計画』(2018年4月策定・2019年4月改定)
https://www.city.kaga.ishikawa.jp/material/files/group/87/bicyclepan2.pdf

金沢河川国道事務所HP内 「一般国道8号 加賀地区の将来をかたる懇談会(H11.7.9~H14.3.5)」

一般国道8号 加賀地区

この中で、平成13年10月10日の「第6回 検討委員会」以降、自転車道の幅員を確保し、設置することになったのがわかります。


平成13年10月10日の「第6回 検討委員会」より

一般国道8号加賀地区整備計画 第6回検討委員会

その理由としては、「中代町~加茂町において自転車の利用が多く、さらに、加賀市では自転車道ネットワークを検討していることから、国道8号での自転車道の整備を考えている。」(第7回検討委員会資料 4. 国道8号の幅員の検討) と説明されます。

一般国道8号加賀地区整備計画 第7回検討委員会

つまり、「加賀拡幅」の幅員2mの自転車道は、加賀市の構想に基づいた”自転車通行空間”として平成13年以降確保されていたのです。

 

しかし、晴れて拡幅が完成した平成26年度に実際に行われたのは、自動車車道左側端にピクトグラムを描いて「自転車通行空間」とする“整備”。
その一方で、平成13年に確保された“自転車通行空間”も真新しい舗装を纏って、すぐ横で健在なのです。

「加賀拡幅」事業側で自転車道を整備するために、片側につき2.5m、両側で5mほど全体幅員が上積みで必要になったはずですが、そのための用地買収や工事費はいったい何だったのでしょうか?

さて、この平成26年度の整備の後に制定されたのが、先の『推進計画』です。
ここでは、平成26年度ピクトグラム整備区間を含む国道8号が「加賀市自転車ネットワーク路線」の「自転車アクセスルート」に選定・指定されています(『推進計画』p.74)。(図7-13中、8号線の国道マークがある辺りが、平成26年度ピクトグラム整備区間)
そのうえで、「車道の左側端を前提とした、自転車通行空間の整備方法」(p.77)が検討され、「自転車アクセスルート」の整備形態について、国のガイドラインを参照しながら加賀市における仕様が決定されます(pp.83-87)。

そして、車の交通量や速度を踏まえて整備形態が選ばれ、「加賀拡幅」の幅員2m自転車道整備区間は、「自転車道」の整備形態とすることが晴れて示されます(pp.93-94)。

【もっとも、自転車道の加賀市仕様が「幅員2メートル以上の一方通行」(p.83 図7-27)とされた時点で、「加賀拡幅」区間は詰んでいるような気もしますが・・・ 道路を横断して反対側自転車道へ移動できるのが、概ね400m以上の間隔になるであろう信号交差点か、適宜設置される地元車・農耕車向け横断地下道ぐらいしか・・・】

しかし、これでは終わりません。
「すでに、車道通行している自転車利用者や今後、車道通行に転換する可能性のある自転車利用者の安全性を速やかに向上させなければならない場合」(p.95)には、車道通行を基本に現況の道路空間を活用した暫定形態をとるとし、その結果現況の道路幅員を踏まえて、「加賀拡幅」区間は平成26年度ピクトグラム整備区間(=幅員2m自転車道完成済み)を含め、路肩に各5mの青破線と白破線を設置する「C-1 車道混在型」とされました(p.95-96)。

最終的な整備形態は、この暫定形態に必ずしも限らない含みは持たせていますが、1.9キロにわたって既に幅員2m(+植栽帯)の自転車道が完成していても、車道混在型としてしまうところを見ると、もはや「加賀拡幅」区間の幅員2m自転車道は見向きもされてず、無かったことになっているのでは、と思います。
正直、現況をどう判断して「車道混在型」にしたのか、理解に苦しみます。
国道8号ですから大型車の数も多く、かなりのスピードでバンバン通ります。
スペースがないならまだしも、すでにあるのですから、少なくともママチャリのような自転車を自動車車道に出すのは・・・?
この区間に限っては、あまりにも車道左側端走行に拘りすぎだと思います。

管理人
管理人
そもそも「自転車道」計画が「歩道の普通自転車通行指定部分」になっている点もイマイチ理解に苦しむし、しまいには「車道混在(自転車ナビライン)」を併用するという…

さて、先の国交省パンフは表紙右下の表記から2022年9月版であることがわかりますが、標準断面図で明らかなように幅員2.0mの自転車道の計画はまだ生きています。
というか、未だ工事中の区間(松山町~加茂町間)が2.2Km残っており、そのすべてが幅員2.0m自転車道整備区間です。
これからも新規に作られます。
くどいよう様ですが、『推進計画』でこの区間は「C-1 車道混在型」とされています。

 

ここまでは、我が子を見捨てた加賀市に無責任さを感じてきましたが、加賀市側の計画で活用する気がなさそうな幅員2.0m自転車道を作り続けようとする国交省に対しても憤りを覚えます。
2019年4月改定の『推進計画』が平成13年計画の幅員2.0m自転車道を捨てる気ならば、『推進計画』においてクルマの速度が高いこの道路で本来理想とされている(pp.93-94)、「一方通行の自転車道」(これ自体、使い勝手が悪い気もしますが)を整備するように努めるのが本来の姿でしょう。
少なくても『推進計画』策定後3年は時間があったはずです。
幸い、植栽帯も含めて幅員に余裕はあるのですから、全体幅員はそのままに、組み換えでどうにかできるでしょう。(植栽帯をもう少し削れば、比較的余裕のある双方向自転車道が作れそうですが)
もちろん、都市計画変更など道路整備者だけではどうしようもない事情があるのかもしれません。
それでもやはり、平成13年計画を引きずったままの整備は、加賀市側がこの自転車道を見捨てていると思われる今、もはや何を目指しているのかがわかりません。(もっとも、『推進計画』を策定した協議会に、国交省も人を出しているのですよね・・・)

管理人
管理人
なんでしょうね。
このチグハグさは。

数年のうちには、残り区間の4車線化拡幅も完成するでしょう。
沿道の人々が提供してくれた先祖代々の大切な用地、そこに作業員の方々が汗水流し、真心を込めて作った、真新しい縁石や舗装。
総合学習向けサイトで「住民の意見をもとに、歩道と分離した独立の自転車道を計画」(北陸地方整備局HP「ふれあいプログラム」内「ほくりく社会資本見学ガイド」内「一般国道8号加賀拡幅」https://www.hrr.mlit.go.jp/tiiki/manaviva/index.html )したことが見学ポイントとして胸を張ってアピールされる、このプロジェクトに関わった人々の努力の結晶である幅2.0mの自転車道。
そんな開通を控えた自転車道の傍らでは、『推進計画』に基づき“ここを通ってね!”と、今まさに車道混在型の自転車通行空間がペイントされようとしている・・・ そんな未来の素敵な光景が、目に浮かぶようです。

かねてから思うことがあったので、熱くなってしまいました。
私は自転車、特に高速域のロードバイクのことはわかりませんので、「加賀拡幅」の2.0m自転車道の出来や、加賀市の『推進計画』で示された整備形態が妥当なのかは判断しかねます。
ただ言えるのは、この「加賀拡幅」の2.0m自転車道整備は行政側の位置づけとして、迷走しているということです。
国交省の道路整備と、地元自治体の自転車走行空間整備の方針とで、もはや整合性が取れていません。(ちなみに、『推進計画』策定時のパブコメは2件、改定時は0件だったそうです・・・)
正直、利用させる気のない自転車道分の用地買収や工事費を考えれば公金の濫用ではないかとすら思っています。

【個人的な意見としては、この区間では加賀市仕様の自転車走行空間整備などせず、「普通自転車の歩道通行可」と「歩道通行部分」規制に留めておくことが一番円満な気がします。歩行者との分離は交差点部以外完了しているので、あとは“腕に自信のあるロードバイクは車道順走で勝手にどうぞ、逆走需要や低速域の自転車は幅2.0mの歩道通行部分にどうぞ”で十分なのでは?】

国道8号を自動車で通るたびに、怒りと、憤りと、それに、見捨てられたけど生まれてこなければいけない幅2.0m自転車道への憐れみと、複雑な気持ちになります。
ただ、サイクリストや道路構造屋さんからはどう見えているのかも気になります。
もし管理人様にお時間がありましたら、この可哀そうな幅2.0m自転車道さんを供養してやっていただけると、幸いです。

いろいろ疑問

まず、「両側2.0mの自転車道(交通法2条1項3号の3)」を作るぜ!と決めて、一応は分離構造風にしていますが、

 

なぜか公安委員会は「歩道の普通自転車通行指定部分(交通法63条の4第2項)」と意思決定。

約1150mに渡り、普通自転車通行指定部分にしています。
ちなみに「自転車道」の場合は公安委員会の意思決定は不要で、工作物で仕切りを作れば成立します(自転車道の標識は必須条件ではない)。

 

そして自転車ナビラインは別に設置。
何が起きるとこのように計画とのズレが出るのかはわかりませんが、いろいろ謎過ぎて意味がわからない。

 

あと細かいところを言うならば、「普通自転車通行指定部分」は白線が要件なので、本来は好ましくない気がします。

植栽帯が途切れている部分には白線があるから要件を満たすのでしょうか?

 

一応可能性としては、全て完成した後に「普通自転車通行指定部分」を解除して自転車道にする…なんて面倒なことをするとは思えないし、そんなことしたら自転車ナビラインを描いた費用も無駄になるので、よくわかりません。

 

そもそも、このような幹線道路に自転車道を作るには「自転車一方通行」はふさわしくない。
なので、双方向通行の自転車道にするか、「歩道の中にある自転車レーン(法定外)」にするかになってきますが、見た感じ「歩道の中にある自転車レーン(法定外)」でも「普通自転車通行指定部分」になっているケースがあることは知りませんでした。

 

この道路について、なぜ計画がコロコロ変更(?)されているのかは全くわかりません。
国土交通省と自治体の連携がおかしいのかもしれないし、違う要因で変更されたのかもしれないし。

 

あと、ママチャリとロードバイクでは思惑が一致しないというのも事実です。
スピードを出すロードバイクの場合、狭い双方向通行の自転車道って極めて相性が悪いのも事実。
実際のところ、国道16号相模原なんてほぼ100%のロードバイクは車道を通行してますし。

 

相模原市、国道16号の自転車道。車道を走ると違反ってホント!?
車道と自転車道の通行について、質問をいただきました。先日車道をロードで走っていたところ、交差点にいらした警察官に注意を受けました。曰く「自転車専用道がある場合はそちらを走ってください」とのこと。でも自分的にそれは自転車専用道が連続している場...

 

単に通行義務があることを知らないサイクリストが多いだけかもしれませんが…

 

石川県の状況に詳しくないのでなぜ自転車道もどきと自転車ナビラインの併用になっているのかはわかりませんが、何か理由があるのかないのかはわかりません。
平成13年頃と状況が変わってきたからなのか知らないけど、自転車道として作った部分を「普通自転車通行指定部分」にするあたりはなかなか香ばしい。

 

そもそも、国のガイドラインなんて気にせず利便性を追求すべきと思っていますが、ガイドラインなんかあるからそこから外れることを恐れるのかもしれません。

 

なぜこのようなチグハグな進行になっているのか、ご存知の方がいましたら教えてください。


コメント

タイトルとURLをコピーしました