違法電動アシスト自転車については何度も取り上げてますが、
国内で販売されている電動アシスト自転車の2つの製品で、人がこぐ力を補助する能力が法律の基準を超えていることが確認され、事故につながるおそれがあり危険だとして、国民生活センターなどが製品名を公表し、使用を控えるよう呼びかけています。
基準超の電動アシスト自転車 “使用控えて” 製品名を公表 | NHK【NHK】国内で販売されている電動アシスト自転車の2つの製品で、人がこぐ力を補助する能力が法律の基準を超えていることが確認され、事…
【電動アシスト自転車と称した製品に注意!】
京都府警察の捜査で判明した道交法の基準に適合しない2銘柄に加え、同事業者販売の8銘柄も適合しないおそれがあるとの情報提供が警察庁からありました。
8銘柄のうち国民生活センターが入手できた2銘柄は、テストの結果、適合しないことが判明しました。— 消費者庁 (@caa_shohishacho) April 19, 2023
そもそも、どこに問題点があるのでしょうか。
違法電動アシスト自転車が横行する理由
道路交通法上、電動アシスト「自転車」として認められるには道路交通法施行規則1条の3に規定された基準を満たさなければなりません。
時速24キロ以上ではアシスト力が掛からないこと等が条件になり、基準を越えたものは原付扱いになります。
そもそもなぜ違法電動アシスト自転車が横行するのでしょうか?
問題点は主に2つ。
①販売規制が出来ない
道路交通法が適用されるのは、国道や県道などのいわゆる道路のほか、一般交通の用に供するその他の場所」(法2条1項1号)。
私有地でも道路交通法が適用になる場合はありますが、例えば工場の敷地内など一般人が自由に通行できない場所は道路交通法が適用されません。
つまり、違法電動アシスト自転車といっても道路交通法が適用されない場所で乗ることは完全なる合法です。
「工場敷地内で使うっす!」という人に対して何ら文句のつけようがないし、販売を規制する法律もない。
なので販売業者としては「公道では使えません」と書いた上で販売することは何ら違法性がなく、購入者がどこで乗るかなんて知ったこっちゃないというスタンスがまかり通る原因になります。
②摘発しにくい
「違法電動アシスト自転車」は道路交通法上「原付」になりますが、そもそも現場の警察官が規定に適合した自転車かどうかを調べる手段がありません。
そして道路交通法は刑法なので、故意犯じゃないと処罰することはできませんが、故意ということは乗り手が「違法電動アシスト自転車」であることを認識していないと成立しない。
なので現場の警察官は注意しかできないのが実情。
警視庁管内では、「違法電動アシスト自転車だと明らかなもの」については、一回目は注意指導しどこの誰なのかを記録として残し、同じ人が二度目の違反時に赤切符にしているようです。
どうしても、購入者とすれば「適法自転車」だと誤解して購入しているケースがある以上、いきなり逮捕はできないわけです。
販売規制出来ないし、摘発しにくいのが問題点と言えるかと。
警察も手出ししにくい
警察としてもなかなか摘発しにくいわけですが、昨年、不正競争防止法違反(誤認惹起)で販売業者を摘発した事例があります。

これは電動アシスト自転車ではないのに「電動アシスト自転車」だと偽って販売したことが理由。
けど、「わかっている業者」はこんなマヌケなことはしない。
「公道では走れません」ときちんと注意喚起して販売し、ユーザーがどこで乗るかは知ったこっちゃないぜ!というスタンスなので、やはり販売規制は出来ないことになる。
なお、報道にあるように法律の基準を超えていることが確認されたとしても、強制的に回収する手段もありません。
理由はシンプルで、「道路交通法適用外の私有地で乗ることは完全なる合法」な上、「違法電動アシスト自転車の所持自体は違法ではないから」になります。
持っているだけで違法性があるわけではないし、道路交通法が適用されない場所で乗ることは完全なる合法。
なので強制的に回収されることもありません。
販売規制&許可制にすべきだったのでは?
結局のところ、立法時からこのような事態になることは予想できたはず。
なのでそもそも基準に適合しないものは「販売自体を原則禁止」にし、工場などの私有地で使う人には「許可制、条件付き所有可能」にするような仕組みじゃないと、最初から無理があったのではないでしょうか。
けど本当にややこしいのは、違法電動アシスト自転車って、保安装備をつけてナンバープレートをつければ「原付としては合法」。
そもそも、このようにいくらでも抜け道が用意されていたものが今になって表面化しただけなのかもしれません。
販売自体を差し止める法律はないし、所持することも違法性はない。
道路交通法の適用外の私有地で乗ることは完全なる合法。
何かしら販売規制しない限りは、いつまでも同じことの繰り返しとしか言えません。
いつの時代にも法律の抜け道ばかり探しては販売する業者は絶えませんが、警察としても即座に検挙しにくいのが問題ですが、それは最初からわかっていたこととも言えますので、遅かれ早かれこうなる運命だったとしか言えません。
なお、いわゆる「自転車店」として店舗を構えていても、フル電動自転車(アクセル付き)を堂々と販売し「警察の前ではペダルを回せばバレない」と説明してきた店すらあるので、なかなか救いようがない人種もいるわけです。
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